含浸法により調製したPd触媒に関し, 真空ならびに種々のガスふん囲気下におけるPd結晶粒子の熱安定性について検討した。Pdの結晶粒子径はCO滴定法により測定した2),3)。
(1) 真空下でのPdの熱安定性
調製したPdの分散性は担体の種類により異なり, Al
2O
3>SiO
2, SiO
2•Al
2O
3であった。また, 熱安定性に関しても, Al
2O
3に担持させたPdがとくにすぐれていた (
Tables 2, 3との比較)。
表面積ならびに細孔径分布の異なる5種のl
2O
3担体 (
Table 1) について, Pdを担体に対し0.1~5wt%担持させ, それらの熱安定性を比較した (
Figs. 1~3)。いずれの触媒も熱処理の初期にPdの結晶粒子の成長がおこるが, 数時間後に成長はとまり, Pd結晶粒子は一定の値 (
Dlimit. Pd) となって安定化した。各触媒について, Pdの結晶粒子径から担体表面上のPdの被覆率 (触媒g当りのPd結晶粒子の総断面積/触媒g当りの担体の表面積×100) を算出した結果, Pdの被覆率と
Dlimit. Pd との間に直線関係が成立し (
Fig. 4), Pdの被覆率の小さい触媒ほど
Dlimit. Pd は小となることが示唆された。これより, 熱安定性のよい触媒をつくるには, Pdの被覆率を小さくする, 換言すれば, 表面積の大きい担体を用いるまたはPdの担持量を少なくすることが必要であることがわかる。Pdの結晶粒子の成長がとまり, 安定化した時点での結晶粒子の間隔は750~1,500Åと算出された (
Table 4)。
(2) 種々のガスふん囲気下におけるPdの熱安定性
酸素, 水素ならびに (酢酸+酸素) の3種のガスについて, それぞれのガスふん囲気下でPd/Al
2O
3触媒を加熱処理し, Pd結晶粒子の成長の度合を調べた。酸素および水素のガスふん囲気中での熱安定性 (600°C) は, 真空下での場合とほぼ同様であるのに対し, (酢酸+酸素) ガスで熱処理した場合には, 低温下 (200°C) においてPd結晶粒子の顕著な成長が認められた (
Table 5)。このような処理条件下ではPd触媒上にPd(OCOCH
3)
2が生成すること21)から, この場合のPd結晶粒子の成長機構は真空下の場合と異なり, Pd (OCOCH
3)
2を経由しておこるもの21)と推定された。上記と同様の処理条件 (ただし, 135°C) でPd/SiO
2とPd/Al
2O
3の熱安定性を比較したが, SiO
2担体上ではAl
2O
3担体の場合にみられるようなPd結晶粒子の成長はおこらなかった (
Table 5)。この相異は現在明らかでないが, おそらくは, SiO
2担体上ではPd
2+が生成し難いことによるものであろう。
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