石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
23 巻, 6 号
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  • 石油中の窒素分析への応用
    野村 明, 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1980 年 23 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    さきに, FeCl3-Al2O3を触媒とする水蒸気熱分解法による窒素分の新簡易定量法を確立したが6), 本報ではこれを石油中の全窒素分析に応用した。
    触媒は塩化鉄 (III) 水溶液とカラムクロマトグラフィー用α活性アルミナを混合し, それを乾燥して調製した。分析条件の検討は石油学会認定の重油窒素分標準試料 (0.303wt%N) を用いて行った。
    分析手順を以下のごとく行うと, 短時間 (10分以内) に全窒素分をアンモニアとして定量的に回収出来た (Figs. 4, 5)。すなわち, 4%-Fe/Al2O3のFeCl3を含有するFeCl3-Al2O3 (Fig. 1)を1.5gとり, 5mm i.d.×100mmのガラスカラムに充てんし, これに標準試料2ml (0.5mgN) を通して窒素化合物を含む極性成分を吸着濃縮する。さらにヘキサンを通してカラム中に残存する非極性の炭化水素を除去した後に触媒をカラムから燃焼ボートに移しとり, 乾燥してヘキサンを除去した後に, その上部にさらに同濃度のFeCl3を含有するFeCl3-Al2O3触媒を4g均一に積層する (Figs. 2, 3)。このボートを900°Cに加熱した石英製熱分解管にそう入し, 2.5g/minの流速で水蒸気を送り込む。この反応により石油中の窒素化合物はアンモニアに変換され, 水蒸気に伴われ冷却器を通り, 希硫酸中に捕そくされる。これを常法により水蒸気蒸留後, 留出したアンモニアを滴定法により求め, 窒素量を算出する。
    本法は非常に正確かつ再現性が良く (Table 1), 種々の留分の石油製品に応用できた (Table 2)。
  • 広い温度領域に適用される粘度式について
    牛尾 俊介
    1980 年 23 巻 6 号 p. 376-384
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アスファルトのクリープ挙動の支配要因として粘度は非常に重要である。また, 施工時, 供用期間中を通じてのアスファルトの品質•性状のうち, 粘度が供用性能評価に関係がある場合が多い。アスファルトの粘度測定は, 高温では比較的簡単であるが, 常温•低温では技術と設備の両面において困難が伴う場合が多い。筆者はアスファルトの物理性状から, 任意の温度における粘度を簡単に求めることが出来る粘度表示式を提案し, その信頼性を確認した。各種アスファルトの針入度, 軟化点とその両者より得られるPIが既知であれば, アスファルトの各種応用技術のなかで粘度の指標を必要に応じて有効に利用することが出来る。
  • 広中 清一郎, 桜井 俊男
    1980 年 23 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    前報までに, リチウム石けんグリースの相挙動および石けんミセルの形状やL/D値が基油の酸化安定性によって大きく左右されることを明らかにした。本研究では, 酸化安定性があり, 極性基をもつジ-2-エチルヘキシルセバケート (DOS) やペンタエリスリトール•テトラオクタノエート (PTO) (Table 1) の合成潤滑油をベースとしたリチウム石けんグリースの相転移と炭化水素基油グリースの相転移を比較検討し, さらに基油の溶解パラメーターと相転移温度の関係を検討した。
    スクワラン基油グリースの相挙動 (Fig. 1) においては, 窒素中および空気中で調製されたグリースの第1相転移温度は基油の酸化により著しく異なるのに対し, DOSやPTO基油グリースの第1, 第2, 第3相転移温度のいずれもふん囲気の影響は認められなかった (Figs. 2, 3)。
    δ=4.1(γ/V1/3)0.43から計算された基油の溶解パラメーター (Table 2) と窒素中で調製されたグリースの第2, 第3相転移温度とはよい直線関係にあった (Figs. 4, 5)。またこの直線はリチウム石けんの炭化水素鎖が長いものほど低温側にシフトしており, グリースの相挙動が石けん分子と基油分子との相互作用にも左右されることがわかった。空気中で調製されたグリースに対しては直線関係は得られなかったが, これは炭化水素油の酸化生成物が影響していると考えられる。
  • 吉川 彰一, 野村 正勝, 向原 文典
    1980 年 23 巻 6 号 p. 390-396
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    溶融塩化亜鉛触媒を用いた石炭1)や重質残油2)の水素化分解は著者を含めて多くの人々により検討されてきた3)~7)。本研究はこれらの重質炭化水素に含まれる硫黄化合物のモデルとしてベンゾチオフェンを選び溶融塩化亜鉛存在下での分解挙動を調べた。生成物の詳細な分析 (Fig. 1) からベンゾチオフェンではまず硫黄を含む環の水素化よりジヒドロベンゾチオフェンが生成し, 次にこの飽和のC-S結合が切断して, o-エチルチオフェノールやo-メチルチオフェノールが生成し, これらが脱H2S反応によりエチルベンゼン, トルエンやベンゼンに開裂していく遂次分解反応が主要な反応過程と推測される。
    ZnCl2が反応温度で溶融状態をとることからオートクレーブでは縦型のものを使用し, パイレックスガラス管でオートクレーブの壁面と原料と等モル使用した塩との接触をさけるようにし, まず3点の反応温度 (320°C, 350°C, 400°C) で水素化分解を3時間行い, 反応条件を検討した (Table 1)。この結果,適度なガス生成率と比較的高い分解率から判断して350°Cが最適反応温度と判断した。本反応ではH2Sは一部塩と反応してZnSとして固定されるが, ガス中の残存H2Sとの総和をH2S生成率とし, 脱硫率の目安とした。Runs 1-5で生成するコークはTable 2に示すコークの元素分析等からベンゾチオフェン骨格を有すると推定される。Runs 1-5の反応でコークの収率が著しく高いが, この抑制対策として次の4点を検討した。1. 塩とベンゾチオフェン, 水素の混合をよくするためオートクレーブを横置して反応させる。2. 水素量を増加させる。3. ZnCl2にKCl等を添加し溶融塩表面の (ZnCl2)n濃度11)~13)を低下させる。4. 水素供与性溶媒存在下で反応させる (Table 3)。この結果, オートクレーブの横置によりコーク生成が1.5%と激減した (ただし未反応原料49.9%)。一方, H2/原料モル比を25.0にすると縦型のオートクレーブでもコーク生成は3.1%に減少し, 未反応原料も9.6%とよく分解している。KClをZnCl2に等モル加えた溶融塩を用いるとコークはほとんど生成しないが, 水素化分解能も著しく低下した。テトラリンの共存もコークの生成を著しく低下させる (Table 4) ことから, 本反応では溶融塩とベンゾチオフェン界面における水素濃度が分解率やコーク生成に大きな影響をもつことがわかった。本実験内では, ZnCl2-NiCl2-LiCl 等の溶融塩が最も高いH2S生成率を示した。なおジベンゾチオフェンの水素化分解にも触れた。
  • 山添 〓, 河村 恵生, 冨田 忠義, 清山 哲郎
    1980 年 23 巻 6 号 p. 397-402
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    炭化水素の水蒸気改質触媒であるCaO-Al2O3系触媒の塩基性およびガス吸着特性を調べた。指示薬法による塩基強度はpKBH 9.3~15.0の範囲にあり, 塩基量も実用触媒組成では比較的小さい。CO2, H2O, O2, H2のうち, 昇温脱離実験において改質反応条件である700°C以上に脱離ピークを持つのは, H2OおよびO2だけであった。この強く吸着したH2Oは, 12CaO•7Al2O3の結晶水と帰属され, 改質反応において重要な役割を果たすと考えられる。CO, CH4, C3H8の場合一部あるいはほとんどが不可逆的に吸着し, 高温部において改質反応生成物として脱離する。これは, 触媒に残存する上記結晶水と反応するためと考えられる。
  • 二木 鋭雄, 神谷 佳男
    1980 年 23 巻 6 号 p. 403-407
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ブチルェーテルの液相酸素酸化反応について検討した。ブチルエーテルは容易に酸化され, 温和な条件下では, 初期生成物としてヒドロペルオキシドがほぼ定量的に得られた。分子間連鎖成長反応に加えて, 分子内連鎖成長反応もかなり寄与していることが認められ, 両者の反応の速度定数の比として, kp(分子内)/kp(分子間)=18.1M (90°C)という値を得た。高温での反応, および金属塩触媒存在下では, ヒドロペルオキシドの収率が低下し, ギ酸ブチル, 酪酸ブチル, ブチルアルデヒド, ブチルアルコール, 酪酸の生成が多く認められた。これらの実験結果をもとに, 反応機構を考察した。
  • 還元した塩化第二鉄•グラファイト層間化合物の組成および活性におよぼす前処理の影響
    井野 隆, 伊藤 直之, 菊地 英一, 森田 義郎
    1980 年 23 巻 6 号 p. 408-411
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    FeCl3-グラファイト層間化合物 (LCG) を種々の条件で処理した後, Fischer-Tropsch (F-T) 合成の触媒として用い, その触媒活性におよぼす層間内のFe量およびFeCl2量の影響について検討した。反応は固定床流通反応装置を用いて400°C, 20atmにて行った。生成物はC1-C7炭化水素, 二酸化炭素および水であった。触媒活性は原料COの炭化水素への転化率XHC (%) で示した。FeCl3-LCGをAr中400-700°Cで処理した後これを触媒として反応に用いたところFig. 1に示すように活性は経時変化した。700°Cで処理した触媒を除いていずれも経時時間とともに活性上昇を示した。これはAr処理によって生じた層間内のFeCl2が合成ガス気流中で除々に金属鉄に還元されたためと考えられる。Fig. 2はH2中400-600°Cで処理した時の触媒活性の経時変化を示したものである。Ar処理の場合と同様に活性は, 経時時間とともに増加したが, 処理温度が高い程活性の経時変化は少なかった。
    これら種々の前処理を施したLCG触媒の定常状態における触媒活性, 炭化水素分布および層間内の組成を, Table 1に示した。層間内のFeCl2量および金属鉄量は処理温度の上昇とともに減少した。H2中400°C, 8時間処理し, その後Ar中800°Cで処理した触媒では, 金属鉄量が比較的多いにもかかわらず低活性であった。これらのLCG触媒のX線回折測定を行ったところ, いずれの触媒の場合もα-Feに帰属する回折ピークは認められなかった。このことはLCG触媒中の金属鉄は層間内で高分散状態に保たれていることを示している。H2中500°C以上で処理した触媒の活性は金属鉄量よりむしろFeCl2量と良い相関関係を示した。LCG触媒の活性点は層間内の金属鉄であることを前報1)で示したが, これらの結果からLCG触媒中のFeCl2は金属鉄と同様, LCG触媒の活性に対して重要な役割を果しているものと思われる。
    しかしながら, FeCl2の市販品試薬を触媒として用いても炭化水素の生成はみられず, 一方層間内のFeCl2とグラファイトの間には相互作用がないことが知られていることからLCG触媒中のFeCl2もF-T合成に対して不活性であると考えられる。Vor'pin ら3),5)によるとFeCl2-LCGの層間距離(9.51Å) はFe-LCGのそれ (5.9Å) よりも広く, LCG触媒中のFeCl2は層間距離を広げるスペーサーの作用をしているものと思われる。
  • 木村 誓, 村井 幸一, 柏谷 景昌, 大高 力
    1980 年 23 巻 6 号 p. 412-415
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究はネオ酸10),11)として知られる高度分枝脂肪酸と相当するアルコールを合成し, それらを航空機エンジンに適するジエステル型潤滑油製造の原料とする目的で行われた。
    ネオ酸は1-ヘキセンや1-オクテンなどのα-オレフィンからギ酸法を用いる Koch 反応4)~9)によって合成した。25°Cにおいて, オレフィン1molと, 反応系中で硫酸10molとギ酸2molから内部生成した一酸化炭素とを反応させたとき, 最高収率が得られた。
    ネオ酸は1-オクテンから90%の収率 (Table 1) で, また1-ヘキセンから74%の収率で得られた。ネオ酸のLiAlH4による還元で, 相当するアルコールが90%の収率で容易に得られた。
    ネオ酸とネオアルコールを, それぞれ, グリコールまたは二塩基酸でエステル化することによりジエステルを合成した。Tables 2, 3の実験結果から, これらのエステルは潤滑油としてよい性質をもつことが明らかにされ, なかでも, C7-ネオ酸と1,8-オクタンジオールおよび1,10-デカンジオールからのジエステルと, C7-ネオアルコールとスベリン酸からのジエステルは航空機用潤滑油として使用できる優れた性質を有することがわかった。
  • パラジウム金属触媒による酢酸の燃焼反応におけるアルカリ金属酢酸塩の添加効果
    中村 征四郎, 安井 昭夫
    1980 年 23 巻 6 号 p. 416-419
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    パラジウム金属触媒上での酢酸の燃焼反応にたいするアルカリ金属酢酸塩の促進作用を明らかにする目的で, パラジウム黒ならびにパラジウム黒-KOAc上に酢酸と酸素の混合ガスを低温下 (〓150°C) で接触させ, それらの形態変化をX線回折法により調べた。その結果, KOAcが添加されたパラジウム上では, Pd(OAc)2の生成ならびにその分解が促進されることがわかり, これより, パラジウム金属触媒上での酢酸の燃焼反応におけるアルカリ金属酢酸塩の促進効果が説明された。また, 上記反応にたいするアルカリ金属の他の塩の添加効果についても検討した結果, 酢酸とアルカリ金属酢酸塩との複合体 (たとえばKH(OAc)2)がPd(OAc)2の生成と分解にたいし重要な役割を果すことが推定された。
  • 中辻 洋司, 重田 邦男, 野村 正勝, 吉川 彰一
    1980 年 23 巻 6 号 p. 420-422
    発行日: 1980/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    著者らはすでに多環芳香族化合物の水素化分解において, ZnCl2-CuClの2元系溶融塩がZnCl2単独の溶融塩触媒に比べ著しく高い活性を示すことを見い出し報告した2),4)。上記2元系溶融塩の触媒活性上昇の要因をさぐる一つの手段として, 本論文ではシクロヘキセンの異性化反応を検討した。反応はシクロヘキセンをアルゴンガスと共に気相で400°Cに加熱した溶融塩中にふき込んで行う流通法によった。生成物は1-メチルシクロペンテン, 3-メチルシクロペンテン, メチルシクロペンタンおよび1-クロロ-1-メチルシクロペンタンで1-メチルシクロペンテンが主要生成物であることやこれまでの結果から, 本反応はカルボニウムイオン機構で進むと考えられる。ここではこれらの4つの生成物の総和を転化率としたが, これは溶融塩媒体の本反応に対する活性の尺度ともなる。生成物中にHClの付加物と考えられる1-クロロ-1-メチルシクロペンタンを認めたので, ZnCl2中でHCl共存下に反応を行ったところ, 上記化合物の他に多量のクロロシクロヘキサンが生成した。Table 1から明らかなように, ZnCl2-CuClの組成を変化させると転化率は著るしく変動し, ZnCl2-CuClが7:3のモル比の時最も高い転化率43.7%を示した。このことはZnCl2にCuClを添加することにより本反応を促進する活性種が新たに生成していることを強く示唆する。しかし固体状態のZnCl2およびZnCl2-CuCl塩のハメット指示薬7)やキサントンを用いるIR法等8)による酸強度の測定を行ったが両者の間に何ら差異がみられなかった。
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