石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
23 巻, 5 号
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  • 異性化および開環反応の選択性
    三木 康朗, 山田谷 正子, 大場 昌明
    1980 年 23 巻 5 号 p. 291-294
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    H2S-H2混合ガスで硫化したコバルト-モリブデナ-アルミナおよびニッケル-タングステン-アルミナ触媒上でパーヒドロインデンの水素化分解を100atm, 275~450°Cで行い, 異性化および開環反応の選択性を調べた。これらの触媒上では低温下では主として異性化が進行し, endo-2-メチルビシクロ[3,3,0]オクタンが選択的に生成した。温度が高くなるにつれてその生成率が減少して他のビシクロオクタン類の生成率が増大し, また開環反応が進んでC9単環ナフテン類の生成率が増大した。この他, 分解反応によるC8以下の炭化水素もわずかに生成した。開環生成物のC9単環ナフテン類はn-ブチルシクロペンタンが最も多かった。
  • 主として舗装用混合物の力学性状と舗装体の力学挙動の関係について
    間山 正一
    1980 年 23 巻 5 号 p. 295-302
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本稿は各種の舗装用混合物の力学性状と舗装構造の力学挙動との関連性について論じたものである。
    舗装材料の応力緩和性状, 熱的性質, 破壊包絡線を用いて舗装体に熱き裂が発生する温度を算出し, アスファルト混合物は-35~-40°Cで熱き裂が発生することを明らかにし, これに対してエポキシ樹脂混合物は常温以下で熱疲労が懸念されることを見いだした。
    通常の舗装体のたわみ解析および鋼床版舗装のひずみ解析によって, 変形係数の大きいエポキシ樹脂系混合物はそれ自らのたわみおよびひずみがきわめて小さいと同時に, 荷重分散性能によって下層のたわみをも軽減することを明らかにした。
  • 基油クロマト画分の酸化特性
    吉田 俊男, 渡辺 治道
    1980 年 23 巻 5 号 p. 303-309
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール (DBPC) の酸化防止能と基油組成の関係を明らかにするため, 3種の基油とその芳香族画分について酸化試験を行った。芳香族画分は, シリカゲル-アルミナゲルの2段クロマトグラフィーで単環芳香族, 二環芳香族および樹脂分に分けた。DBPCの添加効果は, 単環芳香族および二環芳香族で認められ, 樹脂分に対しては認められなかった。このことは, 前者による酸化劣化に対しては, DBPCが有効に作用しているのに対し, 樹脂分による劣化は防止できないことを意味している。また, DBPC添加油の酸化安定性は, 単環芳香族および樹脂分の絶対量で決まり, 多くなるほど酸化安定性は低下することがわかった。
  • 児玉 省二, 新田 治彦, 高塚 透, 横山 徹
    1980 年 23 巻 5 号 p. 310-320
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    残油の水素化脱硫触媒の寿命は, 触媒上への炭素質のたい積と金属のたい積により制限を受ける13)。本研究では, これらによる触媒劣化と反応速度の組み合わせにより残油の水素化脱硫反応の実験結果を統一的に説明することを目的としたシミュレータを作成した。
    触媒の劣化には, 活性表面の減少と反応物の有効拡散係数の減少によるモデルを適用した。高度に劣化した触媒の分析結果(Table 1) を考慮して, 炭素質の生成反応と脱金属反応が相互に影響をおよぼし合うモデルを設定した。
    シミュレータの定数を決定するために, 3種の残油 (Table 2) および5種の触媒 (Table 3) を用いて脱硫反応のテストを行った。反応は通常の高圧流通系固定床式反応装置を上昇流で使用して行い, 各ランは一定の反応条件に保った。実験データから得られたシミュレータの定数をイラニアンヘビー減圧残油/触媒Dについて Table 4に示し, この定数を用いた計算結果と実験結果を Figs. 2~4に示した。
    イラニアンヘビー減圧残油から, 硫黄濃度0.8wt%の生成油を得るベンチプラントの実験データを, 固定床式および模擬移動床式についてそれぞれ Fig. 8および Fig. 9に示し, シミュレーション結果と実験結果が一致することを確認した。
    種々の実験により得られたシミュレータの定数は, 触媒と原料油の物性に大きく依存している (Figs. 5, 6)。
    これらの相関 (Table 4) と, 初期活性データを利用したシミュレーション結果は, 温度, 圧力, 液空間速度などの反応条件が異なる残油の水素化脱硫反応に適用できた(Figs. 10, 11)。
  • 触媒の寿命に影響を及ぼす諸因子の検討
    野村 宏次, 関戸 容夫, 大口 豊
    1980 年 23 巻 5 号 p. 321-327
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    重油の水素化脱硫反応において触媒寿命に与える諸因子の影響を検討するために, マイクロリアクターによるCoO-MoO3-SiO2-Al2O3系触媒の寿命試験を実施し, これに基づいた定量的な解析を行った。その結果, 触媒の物理的性状のうちの多孔度とりわけ細孔径が, また原料油性状のうち金属含有量が触媒寿命と密接な関係にあることなどが判明し, それぞれについての相関式を求めることができた。さらに反応条件や反応率の変化は, 触媒上にたい積する金属量が同一の時点で比較すれば, 触媒寿命にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。
  • メタノールの接触部分燃焼および分解
    菊地 英一, 国友 康利, 森田 義郎
    1980 年 23 巻 5 号 p. 328-333
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールをH2やCOに転化して, ガソリンと共に火花点火エンジンに供給すると, ガソリンだけでは不可能な超希薄燃焼が可能となる。この方法はオンボードリフォーミングと呼ばれ, 石油代替燃料として注目されているメタノールの有効利用法の一つである1)~4)。メタノールの転化反応としては分解が最も好ましいが, この反応は吸熱であるため外熱する必要がある。この反応熱が排気ガスの廃熱で十分補える場合には分解反応で改質し, 始動時のように排気ガスが低温の場合には部分燃焼で改質するオンボードリフォーミングを達成するため, 低温におけるメタノールの部分燃焼と分解に活性な触媒の探索を行った。部分燃焼に銅が触媒活性を有しているが5), その活性はニッケルを添加することにより著しく増大した (Table 1, Fig. 1)。銅触媒と銅-ニッケル触媒のX線回折 (Figs. 2, 3)の結果, 銅-ニッケル触媒中の金属は反応中酸化•還元が容易で, これにより金属あるいはその酸化物の結晶粒子が微細になっていることがわかった。また銅にニッケルを添加することにより反応機構が変化することが反応生成物から示唆された(Table 2)。銅触媒ではホルムアルデヒド, ギ酸メチルの有機含酸素化合物がかなり生成し, COよりもCO2の生成が大であった。それに対して銅-ニッケル触媒では有機含酸素化合物は生成せず, 主生成物はCO, H2およびH2Oであった。銅-ニッケル触媒上でのメタノールの転化は酸素により促進された (Fig. 4)。酸素はメタノールと選択的に反応し, ホルムアルデヒドが生成し, これが分解してH2とCOとなると考えられる。これにCOシフト反応を考慮して反応(1)~(3)により部分燃焼によるメタノールの転化率と生成物分布が決定できることを示した (Table 3)。この触媒上でのメタノールの分解反応は200°C以上の反応温度を必要とし, これより高温では反応(1)~(3)とともに分解反応が併発することが示された(Figs. 5, 6)。これらの結果から, エンジン始動時のように排気ガスが低温のときには部分燃焼によりメタノールを改質し, 排気ガスが十分高温になったときには分解反応に切換えてオンボードリフォーミングできる可能性が示された。
  • ハイドロキノンおよびその関連物質
    酒井 朝也, 服部 昌幸, 山根 則夫
    1980 年 23 巻 5 号 p. 334-340
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    9,10-フェナントレンジオール(PHDO), 1,4-ナフタレンジオール(NPDO), カテコール1)(CTC), ハイドロキノン(HYQ)およびレゾルシノール(RSC)の各物質もキノン類と同様に水素存在下500~600°Cで脱カルボニルする。副反応として脱水も一部進行する。1-ナフトール (NPTO) やフェノール(PHN) も極く一部脱カルボニルするけれども, この場合は脱水が主反応である。
    実験装置や方法は既報の通りである2)。PHDOは文献の方法3)で合成し, 精製した。
    PHDOの実験条件と結果を比較のためフェナントレンキノン (PHQ) の結果と合わせて Table 1に掲げた。Table 1Fig. 1に示したようにPHDOもPHQと同様にCO, フルオレノン (FLR), ビフェニル (BPH) およびベンゼンを生成した。しかし, PHDOの場合はPHQより原料消耗速度は大きいにもかかわらず, CO生成速度は小さく, glcで検出できる全生成物の収率が悪かった。脱水によるフェナントレン(PHT), フルオレンの量も多かった。実験3の物質収支が悪い訳はEq.1で生成するフェノキシル型ラジカルによるものと考えられる。
    NPDOの実験結果を1,4-ナフトキノン (NPQ) のそれと合わせて Table 2Fig. 2に示した。NPDO, NPQともに脱カルボニルが進行してCO, C2H4, スチレンを, また脱水によりナフタレンを生成した。NPDOでは脱水が顕著で, また物質収支も悪かった。これはフェノキシル型ラジカルの生成に起因するものと考えている。ナフトール (NPTO) では脱水が主として進行する事実 (Table 3) がそれを支持している。
    Table 4にCTCの, Table 5にHYQ, RSCおよびp-ベンゾキノン (p-BNQ) の実験結果を示した。CTC, HYQ, RSCについてはH2希釈とHe希釈でCO生成速度に差はなかった。CTCについて両希釈ガスの実験結果をFigs. 34に示した。Figs. 56にはHe希釈下でのHYQとRSCの実験結果を示した。CTCの熱反応での主生成物はCOとブタジェンを主とする炭化水素およびPHNであった。反応後期にベンゼンが生成するのはPHNの脱水とブタジエンとオレフィンの環化的付加, 脱水素によるものと考えられる4),5)
    HYQやRSCでも同様に脱カルボニルと脱水によるPHNの生成がみられた。脱カルボニルの速度比はCTC:HYQ:RSCについておよそ15:2:1であり, 脱水の速度比は4:2:1であった。CTCとHYQは脱水素してキノン構造をとりうるので脱カルボニル速度が大きいと考えられる2)p-BNQの脱カルボニル速度はHYQのそれより3倍大きく, またp-BNQの反応生成物中にHYQが存在するのに対してHYQの脱カルボニル反応の生成物中にp-BNQが存在しない事実も認めている。反応生成物中に存在するCO2については, その生成機構が明らかではない6),7)。最も顕著にCO2を生成するRSCについてその生成機構を考えてみることは興味深い。
    本研究の重要な結論はキノン類の脱カルボニル反応はヒドロキシ構造を通って進むのではないこと, ヒドロキシ構造は副反応である脱水反応の中間体であろうということである。
  • アントラキノンまたはフェナントレンキノンの反応の速度解析
    酒井 朝也, 服部 昌幸, 山根 則夫
    1980 年 23 巻 5 号 p. 341-347
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    多還芳香族の酸化的開環反応は石炭液化に関する基本反応の一つであろう。このモデル反応としてアントラセン (ANT) やフェナントレン (PHT) の酸化的開環を探究した結果, 工業的にも意味のある方法として, 水素存在下におけるアントラキノン (ANQ) やフェナントレンキノン (PHQ) の熱的脱カルボニル反応を見い出した1)~5)
    ANQやPHQの脱カルボニルは水素存在下500~600°Cで Reaction (1) に従って進行する。この反応には副反応としてキノンのオリゴメリゼーションおよび脱水反応が伴い, ANQでそれぞれ約10%および2~5%, PHQでそれぞれ15~20%および約2%に達する。そこでANQやPHQのほかに, Reaction (1) の中間生成物であるフルオレノン (FLR) やビフェニル (BPH) を出発原料とした実験も合わせ実施し, これらの結果を総合して副反応をも含めた複合反応経路を設定した6)。この複合反応経路について, 各段階の1次反応速度定数および速度パラメーターを求めた。各段階の活性化エネルギーの比較から, ANQやPHQの脱カルボニル反応は高温ほどオリゴメリゼーションや脱水反応より優勢になることがわかった。
    実験方法は既報の通りである1)
    ANQ, PHQ7), FLRおよびBPHについて行った代表的な実験の条件と結果をそれぞれ Tables 1, 2, 3および4に示した。この結果から Reaction (1) に示した逐次反応が起こっていることは明らかであろう。ANT, PHTおよびフルオレンの生成は副反応である脱水にもとづくものと思われる。
    表中の物質収支 (MB)%は, 原料の質量に対する反応後glcで測定できた物質の質量の比である。酸素収支 (OB)%は, 原料中に含まれる酸素量に対する反応後のglcで測定できた物質中の酸素量の比である。H2Oはglcのピークとして測定されなかった。そこでこの報文では, ANT, PHTおよびフルオレンが1モル生成すると, 当然それぞれ2, 2および1モルのH2Oを生成するとの考えの下にMB%およびOB%を算出した8)
    MB%の不足分はglcカラム内にたまったキノンオリゴマーの量に対応する。実際, 数種のオリゴマーが高速液体クロマトグラフで求められており, その一例を Table 5に示した。これら高分子量物質の中には, キノンオリゴマーのほかにそれが脱カルボニルや脱水したものも含まれていると考えられる。OB%の不足分は脱水したオリゴマーの量に対応する。そこで(100-MB)-(100-OB)=(OB-MB)%はオリゴマーから脱カルボニルして生成したCOの量に対応する。
    表中COobsはglcで測定できたCO量を原料100モル基準で示したものであり, COcalcは表中のFLR, BPHおよびベンゼンの生成量から Reaction(1) の量論を考えて算出したCO量である。そこで (COobs-COcalc) はオリゴマーから生成したCO量に対応する。そに故, 本実験の誤差が小さければ, ANQと PHQの反応では, (OB-MB)%の数字は1/2(COobs-COcalc) と等しく, FLRの実験では, (OB-MB) %の数字は (COobs-COcalc) と等しくなければならない。この関係から実験の精度が検定でき, オリゴマーの量的取扱いの根拠とそれに含まれる誤差が示される。
    以上の考察のほかに, ANQやPHQの反応におけるANTやPHTの生成がキノンが無くなってから起こること, 一方, ANQ, PHQおよびFLRの反応におけるフルオレンの生成はほぼアンプル中のFLRの量に比例していること, なども本反応の特長としてあげられる。すべての事実を総合して, 本反応の経路として Reaction (2) を提出した。k1A, k5A, k6A, k7AはANQの, k1P, k5P, k6P, k7PはPHQの, またk2, k3, k4は両者に共通する各反応段階の1次速度定数である。1次速度式の仮定はk1A, k1P, k2, k3, k4以外の反応には無理があるけれども, 反応全体をまず把握する意味で単純化した。
    Figs. 12は, 600°CにおけるANQと570°CにおけるFLRの反応について, RUNGE-KUTTAの方法で計算した結果と実測したプロットとを対比したものである。反応開始の時間が不明確なのはアンプルを用いたバッチ式実験操作のためである。図で不一致の部分を較正しなかった訳はk値の最適化をANQ, PHQ, FLR, およびBPHの各温度の実験結果すべてについて同時に行ったためである。
  • 城子 克夫, 梅田 富雄
    1980 年 23 巻 5 号 p. 348-354
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    プロセスシステムの省エネルギー化に対するガイドラインを確立する目的で, 熱力学第1法則に基づくエネルギー収支を中心とした解析を行った。これによって, 対象システムにおけるエネルギーの使用と損失に関する量的特性ばかりでなく, 潜在的省エネルギーの可能性をも明らかにすることができる。例として, 代表的石油精製プロセスを取上げ, またこれらのプロセスを含むトータルシステムとして製油所生産システムを取上げ検討した。
  • 流動層における触媒の初期活性変化
    吉岡 進, 宮本 知彦, 平戸 瑞穂, 里見 義仁, 鈴鹿 輝男, 尾崎 博己
    1980 年 23 巻 5 号 p. 355-361
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ニッケル鉱石を触媒として, 二塔循環流動層によりガッチサラン減圧残油を498~518°Cで連続148時間分解し, 触媒活性の変化について検討した。検討にあたり, ニッケル鉱石の脱水素活性を水素, メタン生成比で表すことを提案した。
    提案した水素, メタン生成比は脱水素活性の変化を的確に表し, 活性指標として妥当なものであった。ニッケル鉱石の持つ脱水素活性は運転初期において低下し, 約50時間で安定化した。脱水素活性の低下は触媒のシンタリングの進行によるものであった。一方, 脱水素活性の低下にかかわらず, ニッケル鉱石の分解活性は一定であるとみられた。
  • 石油学会製品部会ガソリン分科会オクタン価要求値専門
    1980 年 23 巻 5 号 p. 362-369
    発行日: 1980/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本調査は1979年型国産乗用車のオクタン価要求値分布を把握することを目的とし, 石油連盟の委託により実施された。試験はJPI-6R-6-77に準拠し, 低速および高速法でのオクタン価要求値分布を正標準燃料および全沸点型標準燃料2種の計3種類の標準燃料で実施した。試験車は53年度排気ガス規制適合車を対象に15車種111台を選定した。その結果, 正標準燃料における低速法オクタン価要求値分布は50および90%充足率でそれぞれ90.1および93.6オクタンであった。また高速法オクタン価要求値分布は50および90%充足率でそれぞれ86.7および89.9オクタンであった。
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