石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
24 巻, 3 号
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  • 武上 善信
    1981 年 24 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は20年に渡り, 石油化学の幅広い分野において, 有機金属錯体およびその触媒反応について検討したものであり, その主な成果は次のとおりである。
    金属カルボニル錯体の触媒反応については, まずヒドリドテトラカルボニルコバルトとオレフィンとの反応の検討にはじまり, アシルコバルトカルボニルの骨格異性化が容易に起こること, これがオキソ生成物組成を支配する重要な因子であることを見い出し, 直鎖アルデヒドが選択的に生成する条件を明らかにし, また, オレフィンオキシドとヒドリドカルボニルコバルトとが反応することを見い出し, そのヒドロホルミル化の条件を明らかにした。
    キラルホスフィン-ロジウム触媒により不斉オキソ反応が起こること, さらにこの触媒系をケトン, シリルエノルエーテルの不斉還元に適用しうることを見い出した。
    次に, カルボニル鉄酸塩がカルボニル化および還元試薬として選択的合成試薬であることを明らかにし, カルボン酸誘導体からのアルデヒド合成, アミンの還元的アルキル化反応によるアミン類, N-複素環化合物の合成, ニトロ化合物の選択的還元によるアミン, アミド, 尿素誘導体の合成など, 新しい合成反応を数多く見い出した。
    また, カルボニル鉄酸塩とアセチレンとの反応により全く新しい型のビニルカルベン錯体を合成し, その特異な構造を明らかにし, さらに, この錯体とホスフィンおよびイソニトリルとの反応によりビニルケテン, ビニルケテンイミンなどを配位した新しい錯体を合成した。
    ロジウム錯体による水性ガス移動反応系をケトンのα-アルキル化, アルデヒドの縮合還元, アルデヒドの還元アミノ化などの有機合成反応に広く適用しうることを示し, さらにロジウム錯体は置換キノリンの接触合成に有効であることを見い出した。
    チーグラー•ナッタ型触媒の作用を金属-アルキル結合へのオレフィンそう入反応を検討して明らかにし, アイソタクチック重合とシンジオタクチック重合の相違点を示し, さらにアルキルアルミニウムの付加反応と立体化学について検討し, 重合物のミクロ構造を解明した。
  • 鈴木 俊光, 伊藤 真樹, 渡部 良久, 光藤 武明, 武上 善信
    1981 年 24 巻 3 号 p. 151-159
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アラビアンライト原油の分子量の異なる二種の潤滑油留分(分子量350と450)-常圧残油の減圧蒸留留出油-およびそれらを溶剤抽出処理したラフィネート, 抽出油; ラフィネートの水素化精製油; さらに脱ろう処理した脱ろう油, ろうについて13C NMRスペクトルを用いて構造解析を行った。Figs. 1, 2に低沸点留分の各油および流動パラフィンの13CNMRスペクトルを示した。留出油, ラフィネートでは芳香族炭素の吸収は弱い幅広の吸収として現れ, 脂肪族領域には特徴的な鋭い吸収が多数現れた。Fig. 3に示したように, 29.7ppmの吸収は長鎖中のメチレン基, 14.1ppmの吸収は長鎖末端のメチル基, などと帰属でき, 長い直鎖メチレンの存在が示唆される。抽出油では芳香族領域, 脂肪族領域ともに幅広の吸収が強く現れ, 芳香族炭素が多く脂肪族炭素はナフテン系炭素や短かいアルキル置換基として存在すると考えられる。脱ろう油では14.1ppmの吸収に対する29.7ppmの吸収強度が留出油, ラフィネートより弱く, ろう分が除かれたことが示唆され, ろうではほとんど直鎖メチレン基に属する吸収のみである。これらの油に対し流動パラフィンでは, 枝分かれ付近の炭素の吸収が強く現れ, 石油留分にくらべ, より平均的な構造を有している。5本の特微的な吸収に属する平均一分子中の炭素数をTable 4に示した。
    1H NMRより得られた水素分布, Table 2に示した帰属により得た炭素分布 (Table 3) と, 分子量, 元素分析値からTable 5に示したような平均構造パラメーターを求め, Table 6に示した。Han (芳香族水素の数) とCun (水素のついている芳香族炭素の数) はこれらの油ではよく一致し, Table 2に示した13C NMRスペクトルの区分が適切であるということができる。水素分布より, Brown-Ladner の式 (Eq.(1)) を用い, x=y=2.0として求めた芳香族性faHは, 炭素分布より直接求めた(Eq.(4))芳香族性faCよりも低い値を示した。これは, これらの油の分子量が400程度と低いため, アルキル鎖末端のメチル基の存在を無視し得なくなり脂肪族炭化水素を平均的にCH2とすることによる誤差が大きくなったためと考えられる。(Eq.(1)の右辺)=faCとおき, x=yとしてxの値を逆算すると2.06~2.22となった。
    芳香核のα位の水素数, Hαnをxで割り, アルキル置換基の数, Cαnを求め, 芳香族炭素数よりCαnとHanを引き縮合点炭素の数(Ccn)を求めた(Eq.(9))。これらの値より, 低沸点留分のラフィネート, 脱ろう油では平均一分子中にベンゼン環が1/2個, 抽出油ではナフタレン環が一個程度存在することが明らかとなった。さらにTable 4により得られた脂肪族炭素に関する情報を加え, 平均一分子の構造モデルを描き, Fig. 4に示した。油の分子量が低いため一個のモデルで代表させることはでぎず, A, B二個のモデルの特徴を合わせもったものとして表した。ラフィネートではかなり長い直鎖メチレン基が存在し, 脱ろう油ではこれがやや短かく, 抽出油では脂肪族炭素はナフテンもしくは短かいアルキル置換基となり, ろうでは芳香族炭素はほとんどなく, しかも直鎖メチレンが大部分を占めている。これらの構造モデルは, 潤滑油精製工程における各油の特徴をよく表しているものと考えられる。
  • キシレン異性化用モルデナイト触媒の改良
    井上 武久, 佐藤 真佐樹
    1981 年 24 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    キシレン異性化触媒としての選択性の改善法を, モルデナイトを中心に検討した。反応は水素加圧, 固定床流通式反応装置を用いて行った。
    モルデナイトは酸強度が強いので高い異性化活性を有し, かつトンネル状細孔により不均化活性が抑制されており, 活性, 選択性の両面で最も好ましい素材である。このモルデナイトの結晶性, あるいはアルカリ交換率を下げると, 不均化活性を大幅に低下でき, 選択性が改善される。これらの結果は不均化反応に必要な酸点の数は異性化反応より多いという考え方で説明される。
  • 田村 良平, 姉帯 仁, 吉留 昭男, 石井 敏次
    1981 年 24 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    絶縁油の腐食性評価方法を確立するため, 絶縁油の腐食性調査, 長期間の腐食試験および腐食性に影響を及ぼす要因の検討を行い, 次のことが明らかになった。
    (1)絶縁油への太陽光線の照射および酸素ガスの存在は腐食性に影響を及ぼす。(2)金属の種類によって硫化腐食の程度は大きく異なる。(3)JISの銅板腐食試験の結果とDINの銀板腐食試験の結果との間に相関性はみとめられない。(4)油中における金属の硫化腐食は一次反応として表すことができる。(5)絶縁油の長期間にわたる腐食性を評価するには, 腐食に影響を及ぼす要因を考慮して長期間の腐食試験を行い, 油中の腐食に関与する腐食性硫黄の濃度を求めることが肝要である。
  • 吉田 英人, 山根 博, 頼実 正弘
    1981 年 24 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    蒸留塔内部での微量成分のピーク位置の予測および抜き出し手法を緩和法を用いて数値計算により検討した。抜き出し手法に関しては, 従来は単一段の液相をサイドカットした場合について論じられていたが, 複数段からサイドカットした場合, および気相をサイドカットした場合の特性を新しく検討した。
    さらに気相側および液相側をサイドカットした場合の分離効率および熱力学的効率を検討し, 気相をサイドカットした方が分離効率および熱力学的効率が向上する領域が存在すること, およびサイドカット段を下げると熱力学的効率は良くなるという新しい知見を得た。
  • 反応中における沈殿鉄触媒上への炭素の蓄積
    井野 隆, 渡辺 久夫, 森田 義郎
    1981 年 24 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    沈殿鉄触媒を用いて Fischer-Tropsch (F-T) 合成を行い, 触媒上への炭素の蓄積とそれによる触媒の活性および選択性の変化について検討した。反応は固定床流通反応装置を用いて350°C, 10atmにて行った。炭化水素合成反応中に触媒上に析出した炭素と水素との反応速度を過渡応答法および昇温反応法(TPR) により測定した。
    触媒活性は反応時間とともに著しく減少し, それと同時にメタン生成への選択性が増加し, 生成炭化水素中のオレフィン/パラフィン比が減少した (Fig. 1)。
    所定時間合成反応を行った後, 合成ガスをH2に切り換えたところメタンが生成した。このH2ブラッシングによるメタンの生成速度は合成反応を長く行うほど増加した (Fig. 3)。X線回折測定により, H2フラッシング中生成するメタンはカーバイド炭素の水素化によるものであることが示された。
    触媒中の炭素と水素との反応速度をさらにTPRにより測定した。昇温速度を10°C/minとし, 室温から550°Cまで昇温した。Fig. 4は合成反応を1, 4あるいは19時間行った後に測定したTPRクロマトグラムである。いずれのTPRクロマトグラムも二つのピークよりなっており, 低温側のピーク(Tm, 1と表示した) は合成反応時間の増加につれ410から340°Cヘシフトした。しかし高温側のピーク (Tm, 2) はほとんど変化しなかった。X線回折測定によりTm, 1はカーバイド炭素の水素化によるものであり, Tm, 2 は遊離炭素によるものであることが示された。
    最近の報告によると, F-T合成により生成した炭化水素の分布は次に示す Schulz-Flory 式に従う。
    log(MP/P)=log(ln2α)+Plogα (3)
    ここでMPおよびαはそれぞれ炭素数Pの炭化水素の重量分率および連鎖成長の確率である。Pに対してlog(MP/P) をプロットすると直線が得られ, その傾きおよび切片よりα値を求めることができる。合成反応を1.5, 7, および19時間行った時の炭化水素分布をEq. (3) に従ってFig. 8に示した。合成反応1.5時間後の炭化水素分布の切片および傾きから求めたα値はよく一致し, 反応初期に得られる炭化水素の分布はSchulz-Flory の式に従うことが示された。しかし, 合成反応時間の経過とともに生成炭化水素中のメタンの割合が増加し, 炭化水素分布は Schulz-Flory 式からはずれた。
    これより, メタンの生成には少なくとも二つの経路があるように思われる。一つはC2+炭化水素の生成と同じ経路であり, 他はカーバイドの水素化によるものである。カーバイドの水素化によるメタン生成速度は合成反応時間が長くなるにつれて増加し, 定常状態において生成するメタンはほとんどこの経路によるものと思われる。
    Fig. 2に示すように, 活性劣化した触媒を350°CでH2フラッシングすることにより, 触媒の活性と選択性は回復した。350°CでのH2フラッシングによりはがされるのはカーバイド炭素だけであり, 触媒の活性劣化はFe活性点のカーバイド化と関係しているものと考えられる。
    一方, 鉄触媒は水蒸気により容易に酸化されることが知られている。著者らは合成反応初期において触媒表面は水蒸気により酸化されており, その酸化被膜の存在によりカーバイドの水素化が妨げられるものと推測した。水蒸気の効果を検討するため, 合成ガスに0.32atmの水蒸気を添加してF-T合成を行った。水蒸気を添加しての合成反応を19時間行った後TPRクロマトグラムを測定したところ, Tm, 1は水蒸気無添加の時と比べより高温にシフトした(Fig. 9)。またこの時のTm, 1の値は水蒸気を添加せずに合成反応を1時間行った触媒のTPRクロマトグラムにみられるTm, 1とよく一致した。水蒸気を添加しての合成反応では, 水蒸気無添加の時とは対照的に触媒の活性劣化およびそれにともなう炭化水素分布の変化は著しく抑制された (Fig. 10)。これらの結果は著者らの推測を支持するものである。
    Fig. 11は水蒸気無添加でF-T合成を1時間行い, 引き続き300°CでH2フラッシングした後のTPRクロマトグラムを示したものである。Tm, 1はH2フラッシングを長く行うほど低温側ヘシフトし, 触媒表面の酸化被膜はH2フラッシングにより取り除かれカーバイド炭素本来の反応性が回復したことを示している。
  • 山田 宗慶, 小野 重信, 亀山 紘, 天野 杲
    1981 年 24 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    目的: 炭素質のガス化のための触媒の調製法および触媒の作用について基礎的知見を得る。
    方法: 白金の担持状態を変えた活性炭を試料とし, これを高速昇降温可能な流通式反応装置で水素によってガス化し, ガス化に対する触媒の担持状態, 反応温度および水素分圧の影響を調べた。また, ある程度ガス化した試料に対する水素吸着速度を静置式定容装置で測定した。
    成果: 生成物はメタンのみであったが, このことはモデル化合物の熱化学的考察によって説明された。また, 測定された水素および残存炭素量に関する反応次数に基づいて, 水素によるガス化はスピル•オーバー水素と担体活性炭との反応によって進行するものと結論された。
  • 星野 大輔, 長浜 邦雄, 平田 光穂
    1981 年 24 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    蒸発潜熱は, 熱を伴う多くの機器の設計における, 最も基礎的かつ重要な物性値の一つである。特に, 標準沸点下の蒸発潜熱は, 臨界特性6), 蒸気圧の計算7), さらに任意の温度の蒸発潜熱の計算8)において基準値として用いられる等, その利用度は高い。
    標準沸点における蒸発潜熱の推算方法としては, 臨界温度および臨界圧力3),9)あるいはパラコールおよび極性数1)を用いる方法, そして筆者らの脂肪族炭化水素に対する原子団寄与の方法4)がある。
    本研究において提案した方法は, いままでにその報告例のほとんどない屈折率を用いるものである。屈折率に対しては, 新たに提案したTable 1を用いる原子団寄与による推算方法を示した。その精度は, 601の物質 (377の炭化水素および224の非炭化水素) に対して Table 2に示されたごとく平均誤差は0.4%で最大誤差は, 臭化ベンゼンに対する2.7%であった。
    本研究で提案したパラメーターαを実測データを用いて決定し, その値をTable 3に示した。標準沸点における蒸発潜熱を, 実測値の20°Cの屈折率を用いる方法 (Method I) および原子団寄与の方法で推算した屈折率を用いる方法 (Method II) により計算し, その結果の概略をTable 4に示した。その精度は, 479の物質 (373の炭化水素および106の非炭化水素) に対して, Method Iおよび Method IIの平均誤差は1.4%および1.5%であり, 最大誤差はそれぞれメチルアセテートとn-プロピル-イソーブチレートに対する6.5%, および四塩化炭素に対する11.3%であった。
  • 若林 孟茂, 小口 勝也, 中山 哲男, 中村 悦郎
    1981 年 24 巻 3 号 p. 202-204
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    カナダアサバスカ地区, コールドレーク地区およびベネズエラオリノコ川北岸のオイルサンド重質油の水素化処理を水素圧力140kg/cm2, 温度405°Cで1時間行い, 分解生成油の性状を調べた。分解率, 脱硫率および脱金属率が高く最も高品質化が容易であるのがアサバスカ産であり, 触媒を被毒する重金属の含有量が多くかつ脱金属およびアスファルテンの分解が難しいのがベネズエラ産であった。分解生成油の常圧残油の平均構造を Speight の方法によって計算した結果, 油種による相違は認められず, 環数4の芳香族環系に炭素数5~6の側鎖が4~5個結合していることが推定された。
  • 若林 孟茂, 小口 勝也, 中山 哲男, 中村 悦郎
    1981 年 24 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 1981/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    カナダ国コールドレーク産のオイルサンド重質油の水素化処理を水素および窒素流通式オートクレーブを用いて窒素共存下で行い, (水素: 35~200, 窒素: 0~165kg/cm2), 窒素添加による全圧力の反応に対する影響を検討した。Co-Mo-Al2O3触媒 (油に対し3~10wt%) を用い, 反応温度は405および435°Cで行った。常圧残油の分解は水素圧力よりも水素および窒素による全圧力の影響を受け, 全圧力が高いほど分解率は低下した。脱硫, 脱金属および脱アスファルテンは水素圧力と全圧力の影響を受け, 全圧力が一定の場合は水素分圧が高いほど, また, 水素圧力が同一の場合は窒素を添加することによって促進された。
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