スチーム•オキサイドプロセスとは
Fig. 1に示したように, メディアと呼ぶ金属酸化物 (M
nO
m, M
nO
m-1) の酸化還元サイクルを利用して低品位還元性ガスと水蒸気から高濃度水素を得る方法である。すなわち, まず低品位還元性ガスでメディア (M
nO
m) を還元し, 還元メディア (M
nO
m-1) を得る。ついで, これにH
2Oを導入して高濃度水素と酸化メディア(M
nO
m)を得る。M=Feの場合には, 本プロセスはスチーム•アイアン法として古くから知られ, IGTにおいて工業化に向けての研究がなされているが1)~4), 基礎的な研究はほとんど報告されていない。本研究の目的はスチーム•アイアン法に用いられている酸化鉄メディアの酸化還元サイクルにおける基礎的挙動を明らかにすることである。
実験は
Fig. 2に示した周期的パルス反応装置により行った。ただし, 低品位還元性ガスとしてはArで希釈した水素を用いた。つまり,
Fig. 3に示したように, 希薄水素パルス(パルス幅,
TH) とH
2Oパルス (パルス幅,
TW) を交互に酸化鉄メディアに導入し, H
2Oパルスの時に生成する高濃度水素量 (
VH
2) を測定する。なお, 高濃度水素の収率 (
YH
2) は希薄水素のうち高濃度水素に転換された割合を表す。さらに, 酸化過程, 還元過程の速度測定のため高速ガスクロマトグラフを活用した。つまり, 反応器から出てくるガス中の水素濃度 (
CH
2) を高速ガスクロマトグラフにより連続的に測定した。H
2の反応速度 (
RH
2), H
2の転化率 (
XH
2), H
2Oの転化率(
XH
2O) はCH
2をもとにEqs. (1)~(3) で計算した。なお, 入口水蒸気濃度 (
C0H2O) はEq. (4) で与えられる。負符号の
RH2OはH
2の消費速度を, 正符号の
RH2はH
2の生成速度を表す。
Fig. 4に示したように,
VH2は酸化還元回数により変化しないので, 酸化鉄はメディアとして機能し, しかも劣化はほとんどない。
Fig. 5(a) は
VH2と
THの関係を示す。
VH2は
THとともにほぼ比例的に増加するが,
YH2は
Fig. 5(b) に示したように
THによらずほぼ一定である。
Fig. 6に示したように,
VH2あるいは
YH2は
TWにほとんど依存しない。希薄水素ガス中の水素濃度 (
C0H2) とともに,
VH2はほぼ比例的に増加するが〔
Fig. 7(a)〕,
YH2は
C0H2によらずほぼ一定である。
Fig. 8は
VH2,
YH2と反応温度の関係である。反応温度の低下とともに
VH2,
YH2は著しく低下し, 400°Cでは高濃度水素はほとんど得られない。X線回折の結果, H
2Oにより酸化された後のメディアはFe
3O
4の状態にあり, 希薄水素により還元されたメディアはFeOとFeの混合物である。
Fig. 9はFe
3O
4の状態にある前酸化メディアと希薄水素の反応についての
XH2, -
RH2の結果である。700°Cでの反応については反応の初期において
XH2は約60%であるが, 時間とともに20分まで徐々に減少し, その後は一定値に達する。500°Cでの
XH2, -
RH2の値は700°Cでの値に比べて著しく小さい。300°Cではメディアはほとんど還元されない。
Fig. 10はC
0H2=20%と10%の場合の結果を比較したものであるが, 両者の
XH2はほとんど変わらない。
Fig. 11はあらかじめ希薄水素で還元した酸化鉄メディアとH
2Oとの反応における
XH2Oと
RH2の結果を示す。
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