石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
25 巻, 2 号
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  • 乾 智行, 末広 雅利, 武上 善信
    1982 年 25 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールのスチームリホーミングによる水素製造の課題は, メタノールの有効利用の観点から今後重要性を増すものと考えられる。この反応は, おもに銅系触媒2)やVIII族金属触媒4)で研究されてはいるもののいまだくわしい研究はほとんどなく, 性能改善の余地が大きく残されている。本報告では, 銅系触媒を用いて, 反応の特性と銅の粒子径の影響を調べることを目的とした。
    この反応のみかけの活性化エネルギーは18kcal/mol であり, 反応次数はメタノール, 水分圧に対し, それぞれ0.02~0.30atmの範囲で0.90, 0.50次であった (Fig. 3)。おもな生成物はEq. (1) に従ってH2とCO2であり, ほかに, 少量
    CH3OH+H2O→3H2+CO2 (1)
    のジメチルエーテルとCO, およびこん跡程度のメタンとフォルムアルデヒドが認められた (Fig. 2)。メタノールと水分圧の比を変えて反応を行ったところ, 低分圧比ではEq. (1) の反応が定量的に進行したが, 高分圧比ではメタノールの脱水反応Eq. (2) によるジメチルエーテルの生成が著しく起こり, これ
    2CH3OH→CH3OCH3+H2O (2)
    は担体であるAl2O3の酸性によるものと考えられた (Fig. 4)。
    さらに, 触媒性能を支配する一因子と考えられる銅粒子径の影響について反応中の銅の酸化状態との関連性を検討したところ, 粒子径が小さいほど反応中のy(CuOy として定義) は大きく, 逆に銅表面積あたりのH2の収量は低下した (Table 2)。すなわち, 銅表面がより酸化的でない状態を保持するほど, 本反応に対して高成績が示されることが明らかとなった。また, この結論は, Rhを銅表面上に担持した場合にも明確に示された (Fig. 6)。つぎに, 銅が酸素酸化される速度とメタノールリホーミング活性との関連を調べた。同一担体 (γ-Al2O3) に銅の担持濃度を変えて粒子径を調整した触媒について, 銅表面積あたりのH2収量は, 銅粒子径が4nm以下では極めて小さく, 10nm以上で一定する傾向が得られ, 粒子径の小さい範囲でO2による酸化初速度と負の相関が認められ (Fig. 8), 上記の, 反応中のyが小さいほど活性が高いという関係が支持された。
  • 菊地 英一, 畑中 重人, 浜名 良三, 森田 義郎
    1982 年 25 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ZSM-5型ゼオライト触媒上へのピリジン, 4-メチルキノリンの吸着測定を行い, ゼオライトの細孔内, 細孔外酸点の分布を測定した。その結果, 触媒のSiO2/Al2O3比の増加にともない, 細孔外酸点の割合が減少することがわかった。触媒をピリジン, または4-メチルキノリンで被毒し, メタノールの転化反応を行った。ピリジンで被毒した場合は転化率が著しく低下したが, 被毒をしない場合と比較して生成物分布に変化はなかった。4-メチルキノリンで被毒した場合には転化率はほとんど変化せず, 芳香族炭化水素のアルキル化反応が抑えられ低級オレフィンへの選択率が増加した。
  • 今村 成一郎, 酒井 敏行, 生山 智英
    1982 年 25 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    硝酸銅(II), 硫酸銅(II) および塩化銅(II) を触媒として酢酸の湿式酸素酸化を行った。反応条件下で溶液内の銅(II)イオンの安定性は, 対アニオンの影響を著しく受けることが認められた。これら銅塩の触媒活性は高く, 硝酸銅(II)の場合について-d[AcOH]/dt=k[Cu(II)]0.62[AcOH]1.2という速度式が得られた。硝酸銅(II)は窒素雰囲気下での酢酸の分解に対しても活性があることが認められ, このことより, 硝酸イオンは酸素非存在下では銅(II)イオンにより活性化され, その酸素原子を放出し, 酸化剤として働くものと推定した。
  • 渡辺 竹春, 長谷川 祐蔵, 松本 薫
    1982 年 25 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    管溶接継手の疲労強さの評価に際し, これまで広く行われている平板や小型試験片による試験結果をそのまま適用するのは問題があるものと考え, 実際の溶接継手を用いて曲げ疲労試験を行った。
    供試材は, 3Bの炭素鋼鋼管 (JIS STPT38) であり, 欠陥を含まない健全な溶接継手と, 全周に溶込み不足を有する溶接継手を作成し, 試験を行った。溶接条件や機械的性質等を, Table 1およびTable 2に示した。また, Fig. 1に試作した疲労試験機の外観を示した。
    疲労き裂は, すべての試験材について内表面側から発生した。これは, X線応力測定結果 (Fig. 3) より, 内表面側の溶接残留応力が外表面よりかなり高いことが主因と考えられた。
    S-N曲線をFig. 4に示すが, 健全材と欠陥材の疲労強さをくり返し数2×106回付近で比較すると, 約2倍の差がみられた。また, 欠陥材では健全材にくらべ, 疲労き裂の円周方向への広がりが大きいことがみられた (Fig. 5)。
    疲労き裂の進展状況を, Fig. 6Fig. 7に示した。今回のような管の曲げ疲労試験におけるき裂進展状況は, 平板の引張疲労試験の場合のそれとよく似ていることがわかった。これは, 曲げ応力成分が引張応力成分にくらべ非常に小さく, き裂進展に寄与するのは大部分, 引張応力成分であるためと考えられた。
    次に, 疲労き裂進展速度と応力拡大係数範囲との関係を求めた (Fig. 8)。パリス則における係数Cと指数mの関係は, これまでに報告されているものとほぼ同様であった。
    また, 疲労き裂が貫通するまでのくり返し数は, 溶込み不足の深さを初期き裂とみなした応力拡大係数範囲により, 評価できることがわかった (Fig. 9)。
  • 荒木 道郎, 高谷 晴生, 小川 清, 鈴木 邦夫, 細矢 忠資, 藤堂 尚之
    1982 年 25 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    最近, 高い耐熱性を有するメタン合成用触媒の重要性が認識されつつある2)~10)。石炭からの代替天然ガス製造プロセス7)~11)およびメタンを媒体とする原子力エネルギーの利用方法の一つであるケミカルヒートパイプ4)~6)にこの種の触媒を応用する際, 通常の触媒とは異なり650°C以上の高温領域で使用可能なため, システムの総合熱効率の大幅な向上が期待されるためである。
    メタン合成反応にはニッケル触媒が活性, 選択性の双方において優れていることが知られているが1), 高温反応時には, 活性金属種であるニッケルの焼結や触媒上への炭素析出による活性劣化が起こりやすいという問題があった2),3)。このため, われわれは上記の目的にかなう耐熱性の高い触媒の開発を行ってきた7)~10)。その結果, ニッケル触媒にモリブデンを添加して合金とすることにより耐熱性が飛躍的に増大すること9),10), さらに耐熱性の向上には担体の影響9),10)が大きいことを見い出した。ここでは, 調製法の異なる2種のマグネシウムアルミネート, 3種のマグネシアおよび3種のアルミナに担持させた触媒について比較検討した。
    触媒の耐熱性の評価は650°C, 80kg/cm2, GHSV=15,000hr-1の過酷な反応条件下で実際に数日間 (最長12日間) メタン合成反応を行わせ, その間, 定期的に触媒層温度を下げて, 400°Cにおける活性の経時変化を観測することにより行った。
    その結果, 2種のマグネシウムアルミネート担持Ni-Mo合金触媒では, Figs. 1および2に示すように, 反応開始後5日目以降, 高く安定な活性を示し, その耐熱性が高いことがわかった。また使用済み触媒の分析の結果, 触媒上への炭素質析出が少ないこと, 反応中にNi-Mo合金を形成しており, そのMo濃度は, 耐熱試験期間中10%と一定であること, Ni-Mo合金の焼結は遅いことなどが明らかになった。一方, 3種のマグネシア担持Ni-Mo触媒ではFig. 3に示すように, 反応初期に低かった活性は, 耐熱試験の進行につれ急激に増加したが, 数日後には低下し耐熱性が低いこと, 触媒中のNi-Mo合金はしだいに消失してNi金属および複合酸化物であるMgO•MoO2に変化すること, Fig. 5に示すように炭素質析出が異常に大きく, そのために触媒層が閉そくしてしまうことなどが明らかとなった。また, 3種のアルミナ担持触媒では, Fig. 4に示すように, アルミナの焼成温度によって耐熱性は大幅に異なるが, いずれも, 程度の違いはあるが, 活性劣化が認められ耐熱性は低いこと, 触媒上への炭素析出量は小さいが, Ni-Mo合金の焼結がより速やかに進行していることなどが明らかになった。
    以上の結果をまとめると調製方法の異なるマグネシウムアルミネート, マグネシアおよびアルミナ担体の中では, マグネシウムアルミネートが最もよい耐熱触媒用担体であり, その理由としては, この触媒では炭素質生成が少ないことに加えて, 合金の焼結が進行しにくいことがあげられよう。この事実は次のように説明できる。すなわち, ニッケルアルミネートと金属ニッケルとの間には強い結合力が働いており12), この力が高温においてニッケルの焼結の進行を妨げている7)。ここで, このニッケルアルミネートをスピネルと同じ結晶構造を持ち, かつNi2+とイオン半径のほぼ等しいMg2+を含むマグネシウムアルミネートに置きかえ, さらに活性金属種のニッケルを少量(10%)のモリブデンを含むNi-Mo合金に置きかえると, ニッケルアルミネート-ニッケル系はマグネシウムアルミネート担持Ni-Mo合金触媒と見なすことができるが, このマグネシウムアルミネートとNi-Mo合金間に働いていると考えられる強い結合力がNi-Mo合金の焼結を抑制している。
  • 玉井 康勝, 京谷 隆
    1982 年 25 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油において, その粘度が重要な物性であることは周知の事実である。そして, 潤滑油の分子構造とその粘度との関係を研究することは, 将来, 潤滑油を分子設計するうえで非常に役立つ。前報までは, 鉱油系潤滑油の粘度を Eyring の粘性理論を用いて解析し, その分子構造との関係を議論した。本報では, エステル系潤滑油であるトリメチロールプロパンエステルを用い, 粘性流動下における分子の挙動を考察した。
    試料として, 一種類の脂肪酸をトリメチロールプロパンとエステル化したものと, 数種類の脂肪酸を混合しエステル化したものとを用いた (Table 1)。それぞれ, 便宜上シングルエステル, 化学的混合物と名付けた。高圧粘度測定のため転落球式粘度計を試作し, 313.2K, 常圧から100MPaの圧力範囲で測定した (Fig. 1)。
    さて, Eyring の粘性理論より, 活性化体積ΔV, 活性化エンタルピーΔH, 活性化エントロピーΔSの三種類のパラメーターが導出できる (Eqs. 2~4)。これらのパラメーターはその分子構造と密接に関係している。ΔVは分子が流動する際に必要な空孔の大きさを示す量である。したがって, 大きな分子になるほど, ΔVも大きくなると考えられる。しかし, 直鎖状のシングルエステルにおいて, その鎖長とともにΔVはやや増加するが, 鎖がじゅうぶん長くなればΔVは鎖長に独立な一定の量になる (Fig. 2)。また, 鎖が枝分かれしたエステルは直鎖状のものよりΔVが大きい。これらの実験事実は, エステル分子の直鎖がいくつかの節片に分かれて流動していることを示している。次に, 化学的混合物と, それと同じ分子量で平均的には同じ分子構造になるようにシングルエステルを混合した物理的混合物とを比較した。それぞれ対応する混合物ではΔVの値はよく一致した。また, ΔVとエステルの鎖長との関係において, 化学的混合物, 物理的混合物は直鎖のシングルエステルを結ぶ曲線上に乗ることがわかった (Fig. 2)。これより, 粘性流動下においてこれらの鎖はそれぞれ他の二つの鎖に対して独立であり, ΔVに対するこれらの鎖の寄与はそれぞれ独立で加成的なものであると考えられる。このことは, この種のエステルのΔVを推定するにあたり, 非常に有効な知見となりえる。
    ΔVと同様に, 物理的混合物とそれと対応する化学的混合物のΔHも一致し, ΔHと鎖長との関係において, 両混合物は直鎖のシングルエステルを結ぶ曲線上に乗る (Fig. 4)。このように, ΔHに対するこれらの鎖の寄与も加成的な性質を持っている。ΔHは空孔生成に必要なエンタルピーΔHhとその空孔へ移動するのに必要なエンタルピーΔHjとの和として考えられている。そして, ΔHhがΔVに比例しているとすると, ΔHとΔVとは密接に関係していることがわかる (Eq. 5)。直鎖のエステルではΔHとΔVとの間に直線関係があった(Fig. 5)。また, ΔHとΔSとの間には化学反応における直線自由エネルギー関係と類似の関係が直鎖のエステルについてみられた (Fig. 6)。
  • Ni3S2相の形成とそれによるシクロプロパンの反応
    羽田野 祐治, 山田 宗慶, 岡上 明雄, 天野 杲
    1982 年 25 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    目的: H2S-H2混合気体と気固平衡下にある担持ニッケル硫化物の硫化度と触媒性能を検討する。
    方法: 水素化用のケイソウ土担持Niを循環式装置中H2S-H2の混合気流によって平衡に達するまで硫化する。平衡下にあるニッケル硫化物上に微量のシクロプロパンを導入して反応させる。
    成果: 担体上にNi3S2に近い状態の硫化物相が安定に存在する条件を見い出した。この硫化物相を触媒とするとき, シクロプロパンはまずプロピレンに異性化され, ついで逐次的にプロパンに水素化されることを見い出した。このような反応経路は, 金属Niおよび固体酸のいずれを触媒とする場合とも異なるものである。
  • 井上 清, 渡辺 治道
    1982 年 25 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エンジン油添加剤間相互作用の水の可溶化および鉄粉への吸着への影響について検討した。Caジノニルナフタレンスルホネート (CaDNNS) による水の可溶化量は, Zn•ジ-n-ヘキシルジチオフォスフェート (HZDP) の存在とは無関係であるが, ポリイソブテニルコハク酸イミド (BPB•TEPA) の添加量の増加とともに減少した (Figs. 1, 2)。BPB•TEPAによる水の可溶化量も, HZDPの添加量の増加とともに減少した (Fig. 3)。
    これらの結果は油中における添加剤間の相互作用3)と関係があることがわかった。すなわち, CaDNNSとHZDPは油中で相互作用しないので, 水の可溶化においても, それぞれ独立に作用するのに対し, CaDNNS-BPB•TEPA系およびBPB•TEPA-HZDP系では油中で相互作用しているために水の可溶化量が減少するものと思われる。
    CaDNNS-HZDP系の鉄粉への吸着は競争的であった (Fig. 5)。これはCaDNNSとHZDPが相互作用していないので, 吸着点に対し, それぞれ独立に (競争的に) 吸着するためと考えられる。一方, CaDNNS-ドデセニルコハク酸イミド (BDD•TETA) 系およびBDD•TETA-HZDP系では吸着は協力的であった (Figs. 6, 7)。これは, これらの添加剤は油中で相互作用しているために, 複合体として鉄表面に吸着するためと思われる。
  • 山田 宗慶, 山本 恵津子, 天野 杲
    1982 年 25 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    目的: 白金触媒の表面構造に敏感であることが知られている反応によって, 作用状態にある白金-レニウムバイメタル触媒の特徴を検討する。
    方法: 常圧流通式反応装置により, γ-アルミナを担体としレニウム濃度を広範囲に変えたバイメタル触媒を用いてメチルシクロペンタンを水素化分解し, この反応に対する還元温度, レニウム濃度の影響を検討した。
    成果: 触媒性能に対するレニウムの添加効果は触媒を高温で還元した場合に顕著に認められた。この場合, 活性はレニウムの添加量にほぼ比例し, 選択性は白金単味, レニウム単味のいずれとも明らかに相違しており, 高温還元による白金とレニウムの合金形成が示唆された。
  • 亀山 紘, 天野 杲
    1982 年 25 巻 2 号 p. 118-120
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水素化脱硫にたいするバナジルポルフィリンの促進効果を明らかにする目的で, 硫化処理したV2O5/γ-Al2O3触媒によるベンゾチオフェンの水素化脱硫をバナジルテトラフェニルポルフィリン共存下で行った。なお, 硫化処理したCoO•MoO3/γ-Al2O3を比較のための参照触媒として用いた。その結果, 両触媒はともに水素化脱硫をいちじるしく促進した。また, 本実験の反応時間内では, 両触媒とも顕著な活性劣化は認められなかった。CoO•MoO3/γ-Al2O3触媒の水素化脱バナジウム活性は反応初期にはかなり高いが, 脱バナジウム率が約12%に達すると活性を失った。これに対して, V2O5/γ-Al2O3触媒の水素化脱バナジウム活性は初期には低いが, 徐々に増大して高い活性を推持した。
  • 乾 智行, 末広 雅利, 山本 茂樹, 大村 浩三, 武上 善信
    1982 年 25 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールの分解による合成ガス生成について, 炭素酸化物のメタン化3),4)および炭素の直接水素化5)に顕著な活性を示したNiを主成分とする複合触媒 (Ni, Ni-Rh, Ni-La2O3, Ni-La2O3-Ru), および2種の白金族金属触媒 (Ru, Rh), さらに比較のためのメタノール合成用工業触媒 (ZnO-Cr2O3) を用いて検討した。その結果, Niを主成分とする触媒は高い活性を示したが, Ru, Rh, およびメタノール合成用触媒はかなり低活性であることが示された (Table 1)。
    メタノール分圧依存性は, 分圧が0.4~0.5atmに達するまでは温度によらず約0.7次となったが, それ以上の分圧では強い反応抑制に転じ, 低温ほどこの抑制は強く (250°Cで-1.5次), 高温側で次第に緩和する (350°Cで-0.7次) のが認められた (Fig. 1)。
    つぎに, 触媒活性の経時変化を比較した (Fig. 2)結果, Ni単元触媒は350°Cにおける初期活性はもっとも高かったが, 時間とともに活性の低下が起こった。一方, 三元触媒は350°Cでも安定に作動し, 450°CではNiを上まわる定常活性となった。このことは, 三元触媒の方がNi単元触媒よりもメタノールを強く吸着し, 使用の初期からすぐに抑制飽和の状態に達するが, 高温ではこの抑制が次第に解除されて安定に作動するためであると考えられた。メタノール合成用触媒は反応温度を350°Cから450°Cにあげても活性の増加はほとんどなく, 他の触媒といちじるしく異なる結果を示した。これはこの触媒ではギ酸メチル, 酢酸メチル, およびCO2などの含酸素化合物が認められた (Table 2) ことから, これらの含酸素化合物が触媒表面に強く吸着することによるものと考えられた。
    以上の結果から, Niを主成分とした複合触媒, とくにNi-La2O3-Ruのような三元触媒がメタノール分解による合成ガス生成反応のための触媒としてもっとも適していることが結論された。
  • 岩井 芳夫, 御屋敷 智憲, 荒井 康彦
    1982 年 25 巻 2 号 p. 125-126
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    溶融高分子に対する炭化水素気体や蒸気の溶解度は, 高分子の製造•加工のプロセスにおいて, 重要な基礎データである。その溶解度の相関式や推算式を開発する際, 溶融高分子の比容が重要なパラメーターとなる。通常は比容を実測値より与えているが, より適用性の広い溶解度推算式を提出するには, 比容の推算式が必要となる。本研究では, 2種類の市販ポリスチレンの比容をシリコーン油を用いたピクノメーター法にて測定した。測定温度範囲は25~160°Cであり, tg=85°Cと推定された。得られたデータより Bondi 式および McGowan 式の検討を試みたが, 両式とも溶融ポリスチレンの比容推算に有用であることが示された。
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