石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
26 巻, 4 号
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  • 鉄および硫化水素共存下における活性炭上でのベンゼンの熱分解
    江頭 誠, 勝木 宏昭, 林 隆介, 川角 正八
    1983 年 26 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    活性炭表面上での炭素繊維の密生を目的として, 鉄および硫黄の触媒作用の相乗効果を検討した。300~1,100Åの鉄粒子を0.82wt%含む活性炭を基板として, 硫化水素を2.5%含むベンゼンと水素の混合ガスを1,100°Cで30分以上熱分解すると, 直径0.1~2μm長さ20~100μmの炭素繊維が活性炭表面に放射状に密生した。その生成密度は5~10×104本/mm2であり, 鉄または硫化水素を単独で用いたときの約1,000倍であった。密生した炭素繊維の先端には, 繊維直径と同程度の大きさのFeS粒子が存在することから, この粒子が炭素繊維の成長点となると推察した。繊維の構造•結晶性は, 従来の気相成長炭素繊維と類似していた。
  • 大勝 靖一, 林 秀樹, 馬場 和広, 長 哲郎
    1983 年 26 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    酢酸マンガン(III)を触媒として, トルエン誘導体の酸化反応を行った。特にp-メトキシトルエンの酸化に関して動力学的に詳しい検討を行った。この酸化反応は非常に再現性のないものであったが, 系内に少量のH2Oを添加することによって再現性のあるデータが得られるようになることがわかった。得られた速度式は従来報告されているものと異なり, Mn (III), p-メトキシトルエンの各濃度に1次に依存し, Mn(II)の濃度には依存しないことを見い出した。p-メトキシトルエンの代わりに他のトルエン誘導体を用い, 種々のカルボン酸溶媒中で反応を行うことにより, 開始反応はトルエン誘導体のMn(III)への配位を含むことを推定した。
  • シリカゲル担持コバルト触媒の一酸化炭素水素化特性
    藤元 薫, 斎間 等, 冨永 博夫
    1983 年 26 巻 4 号 p. 258-263
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シリカゲルを担体とするコバルト触媒を用いて一酸化炭素の水素化反応を行った。担体•担持率および反応条件について検討を行った。反応の主生成物はメタンであり, 直鎖のパラフィンも比較的多く生成した。
  • ベンチスケール流動層による石油ピッチから微粉コークの製造
    鈴木 昭, 店網 和雄
    1983 年 26 巻 4 号 p. 264-271
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    噴流層で容易にガス化しうる外表面積の大きなコークを製造する目的で, 流動層実験を実施した。溶融した石油ピッチを, 無機粒子を用いた流動層反応器で熱分解し, 付着したコークを無機粒子から, はく離させて, 連続的に微粉コークを得た。反応器は流動層, 移動層と希薄層から成り, 無機粒子は3層間を循環する。コークの付着した粒子は, 移動層で加熱され熱処理される。アルミナ粒子とジルコン粒子を用いた実験により以下の知見を得た。(1)コークの付着した無機粒子を熱処理するとコークは無機粒子からはく離する。(2)微粉コークの形状は偏平で, 厚みは数μmである。(3)表面粗さの小さな無機粒子は, コークのはく離を促進させる。
  • 大勝 靖一, 吉野 健司, 鶴田 禎二
    1983 年 26 巻 4 号 p. 272-279
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ヒトラゾンの自動酸化は, 窒素の酸化された生成物が生成しないという非常に興味ある反応の一つである。今までの研究では, アゾ-ハイドロパーオキサイド化合物が生成するという報告1)~3)があり, また一方でこのアゾ-ハイドロパーオキサイドの分解に由来する生成物も得られている4)。しかし, これらの反応に対する詳細は明らかにされていない。著者らは, 前報においてアセトフェノン(α-メチルベンジル) ヒドラゾンの自動酸化を行い, その反応機構をある程度まで明らかにした。本論文では3種類のヒドラゾンを合成し, その酸化反応の全容を明らかにし, 触媒として用いた金属錯体の作用様式について議論した。
    ヒドラゾン, たとえばアセトフェノン (α-メチルベンジル) ヒドラゾン (以下, ヒドラゾンI)は, 触媒の有無にかかわらず, 自動酸化の機構で容易に酸化された。その速度は非常に速いために, 通常のラジカル捕捉剤を添加しても, 反応が完全に禁止されるわけではなかった (Fig. 1)。ヒドラゾンの酸化速度の順序は, ヒドラゾンI>プロピオフェノン (α-メチルベンジル) ヒドラゾン (以下, ヒドラゾンII)≫エチルメチルケトン (α-メチルベンジル) ヒドラゾンの順であり (Fig. 2), 触媒としてはCo(II)>Ni(II), また配位子TPP>シッフ塩基の結果を得た (Fig. 3)。
    Table 1およびTable 2は, それぞれヒドラゾンIおよびヒドラゾンIIの酸化生成物の分布を示す。この結果から, ヒドラゾンのα-アルキルベンジリデン残基からは酸化生成物としてケトンだけが生成し, α-メチルベンジル残基からはエチルベンゼン, スチレン, アセトフェノン, α-メチルベンジルアルコール, 2,3-ジフェニルブタンの生成することがわかった。
    アセトフェノンとα-メチルベンジルアルコールとの生成比はFig. 5の通りであり, ヒドラゾンの転化率が50mol%を境にして急激に増大した。これは, Table 3の水素供与体の存在下における反応結果からも理解できるように, 一度生成したα-メチルベンジルアルコールが水素供与体として働くようになるための現象と考えられる。
    Table 4には, 不斉の配位子を有する錯体を触媒として用いた場合に得られる酸化生成物, α-メチルベンジルアルコールの比旋光度と光学収率とを示してある。ヒドラゾンIIからも, ヒドラゾンIの場合と同様に5), 不斉の誘導されることが見い出された。
    上述の結果, およびESRで観察されるCo(II) 錯体で活性化された酸素種, O2- (Fig. 6) の, ヒドラゾンの添加による消失とそれに続く酸化の開始という事実に基づいて, 酸化反応の機構をEqs. (1)~(9) のように推定した。
  • 吉岡 進, 宮本 知彦, 平戸 瑞穂, 里見 義仁, 尾崎 博己
    1983 年 26 巻 4 号 p. 280-285
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    残油分解生成物トランスファーラインにおけるコーク析出防止条件の確立を目的に, コーク析出量と管壁温度および原料軽質化の効果を検討した。実験装置は二塔循環流動層を用いた。トランスファーラインの一部を析出コークの測定管とし, 管壁を430~560°Cの範囲のある一定温度に保持した。原料油は減圧残油および減圧と常圧残油の混合油を用い, 505°Cで15時間分解した。その結果, コーク析出量は管壁とガスの温度差によって整理することができ, 管壁温度がガス温度より低い条件では温度差が大きくなるほど増加した。また, 原料の軽質化によってガス中の高沸点留分量が減少し, コーク析出量は減少した。
  • トリチウムトレーサー法による太平洋炭の液化反応機構
    加部 利明, 仁藤 修, 永井 正敏, 伊東 担
    1983 年 26 巻 4 号 p. 286-292
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    トリチウムでラベルしたテトラリン溶媒による太平洋炭の液化反応に対する, 気相水素圧, Ni-Mo-Al2O3触媒の存在, 反応温度, 反応時間の影響を検討した。触媒不在の場合には反応は主にテトラリンからナフタリンへの脱水素に伴う水素移行によって進行しており, 触媒存在下では触媒が気相水素によるナフタリンの水素化を促進して液化反応の速度をあげていると見られる。液化生成物は反応時間とともに軽質成分が増加しており, 400°C, 120分の反応でピリジン不溶分はほとんど消失していた。これに伴って軽質留分中へのトリチウム移行量も増加していたが, 気相水素とテトラリンとの間の水素交換反応速度は小さいことが見い出された。
  • 横野 哲朗, 野村 安夫, 小沢 広, 真田 雄三
    1983 年 26 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    重質油単味あるいは重質油どうしの混合物の炭化により生成するセミコークスの評価をプロトンのスピン-格子緩和時間(T1), スピン-スピン緩和時間 (T2) およびラジカル濃度で検討した。試料A/B系, A/C系およびA/F系では特定の混合比から生成したそれぞれのセミコークスでT1に最大値が, 一方ラジカル濃度に最小値が観測された。しかしA/E系では最大, 最小値は認められなかった。一方重質油単味から生成する炭化物の光学異方性組織ならびにプロトンのスピン-スピン緩和時間 (T2) の長い成分の間に良い相関がみられた。すなわち大きい異方性組織を示すセミコークスのT2は長く, 小さい異方性組織のそれは短いことが判明した。
  • 広中 清一郎, 森内 勉, 桜井 俊男
    1983 年 26 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    リチウム石けん/炭化水素 (Table 1) 系のグリース (Table 2)の相挙動に対する固体潤滑剤の添加効果が示差熱分析によって検討され, グリース中の石けん分子のミセル形成に及ぼす固体潤滑剤の影響が電子顕微鏡観察によって調べられた。
    窒素中で調製時に二硫化モリブデンを添加したグリースでは, 無添加グリースで現れる第1'相転移温度は観測されず (Table 3), グリース中の石けんミセルは無添加の場合の小さい繊維状ミセルと比較して, 大きく棒状であった (Fig. 1). また空気中調製の市販グリースにおいても, 固体潤滑剤の存在により相挙動 (Table 4) もミセル形成 (Fig. 2) もかなり影響を受けることがわかった。すなわちグリース調製後に固体潤滑剤を混和した場合でも, 一度等方性溶液状態になると, その後の相挙動およびミセル形成は無添加の場合と異なる。
    グリース調製時の石けんミセル形成に対する冷却効果については, 冷却速度に関係なく, 二硫化モリブデン添加グリースのミセルは無添加の場合に比べて大きかった (Fig. 3)。したがってグリースが等方性溶液状態になるような潤滑条件では, 固体潤滑剤添加グリースの性状や特性が変化することが十分考えられる。
  • 野村 正勝, 一角 泰彦, 中辻 洋司, 吉川 彰一
    1983 年 26 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    夕張炭の可溶化反応をテトラリン存在下400°C, 水素初期圧80kg/cm2, 反応時間30分および3時間で行った。抽出物の調製方法はFig. 1に示し, Table 1にはおのおの抽出物の元素分析値, 構造パラメーター, H/C比, 平均分子量値を掲げた。反応時間を30分から3時間に延長した場合の効果をみると平均分子量値にほとんど変化がなく, 酸素含量の低下とH/C比の増大がみられた。このことから水素化分解と脱酸素反応が進行していると考えられる。溶剤分別の結果 (Table 2) から時間が経つとBSやPSが増加することがわかる。電算機を利用した各抽出物の平均構造 (Fig. 2) をみると, 構造a (3時間) とb (30分) の比較から脂環部分の開裂によるアルキル基の増加が推測される。長時間反応の石炭可溶化への影響を, a'とb'の比較から脂環部分が水素化分解をうけ, イソプロピル基等で置き変わるというイメージでとらえられる様に思われる。反応時間30分の抽出物を対象にZnCl2およびZnCl2-CuCl溶融塩を触媒に水素化分解を行った結果を Table 3に示した。結果は以下の様にまとめられる。1) 多量の塩の使用はガス状生成物とPSLを増加させる。2) 10wt%の塩の使用はPS分を増加させる。3) ZnCl2-CuClはZnCl2に比べフェナンスレンの水素化分解に著しく高い活性を示したにもかかわらず, 石炭抽出物では両者に活性の差が余りみられない。抽出物に存在するフェノール性OHが芳香族環の水素化分解に対する活性を高めたためと考えられる。
    PSHとBSの分析結果 (Table 4) から10wt%の塩は窒素%を著しく低下させ, 等量の塩を使用すると窒素は完全に除去される。PSHとBSをカラムクロマトグラフで分別した結果 (Table 5) からZnCl2-CuCl塩はZnCl2塩に比べ, ヘテロ原子の除去に極めて優れていることがわかる。Nを含むモデル化合物としてキノリンおよびγ-ピコリンとZnCl2のコンプレックス (2:1) を合成, 前者の水素化分解を行った (Table 6)。液体生成物にはGC-MSから窒素を含む化合物が認められず, コンプレックスの水素化分解による生成物分布は等量のZnCl2存在下での結果とよく類似しており, 特に Run 8の生成物分布はRun 6とほぼ一致することから窒素化合物はZnCl2とコンプレックスをつくり分解してゆくと考えられる。抽出物の塩基成分をZnCl2で処理したものの遠赤外スペクトル (Fig. 3) からZn-N伸縮が強度は弱いが180-220cm-1にみられ, 上記の推論を裏づける結果をえることができた。
  • 金属表面における吸着挙動のエリプソメトリー法による検討
    田村 邦光, James T. TSE, Arthur W. ADAMSON
    1983 年 26 巻 4 号 p. 309-317
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油添加剤の作用は金属表面への吸着現象に基づくことが多い。従来, 潤滑油添加剤の吸着研究は粉体を用いて行われることが多いが, 現実の系では金属面が対象となる。そこで本研究ではエリプソメトリー法を適用し金属平面への添加剤の吸着挙動を検討した。特に, これまで添加剤の吸着膜厚さについての研究例は少ないのでこれを中心に検討を行った。
    その結果, 以下の事柄がわかった。エリプソメトリー法はだ円偏光を反射表面にあて, 吸着膜による光の位相変化をとらえて膜厚さを測定する方法であるが, 吸着膜厚さdは位相変化δΔと関連付けられ, 膜厚さが小さい範囲ではFig. 5のようにdはδΔに比例する。この直線のこう配は金属表面の屈折率により異なる。Table 4にエリプソメトリー金属表面の屈折率を示した。
    金/n-ヘキサン界面におけるBaDNNSの吸着はFig. 6からわかるように速やかに行われ, 短時間で平衡に達する。これはヘキサンが低粘度でありBaDNNSの拡散が速やかに行われるためと思われる。また吸着は表面の清浄度に極めて敏感に影響をうけ, Figs. 6および7の曲線(2)にみられるように若干でも汚損されると添加剤の吸着量は減る。
    Fig. 8はBaDNNSの金/n-ヘキサン界面における吸着の濃度依存性を示すが, 低濃度から立ち上がり一定値に達する。これは Brunauer のTYPE Iの等温線に相当する。このラングミュアプロットはFig. 9のように直線を示すことから, BaDNNSは金表面に単分子吸着をしているものと考えられる。
    Table 5は各種金属 (金, クローム, 銅, ステンレス, 鋳鉄) に対するBaDNNSの吸着膜厚さを示すが, 金属間で大差はなく8~11Åと推定された。
    Table 6はその他の潤滑油添加剤についての吸着膜厚さを示す。CaDNNSはBaDNNSと同程度の膜厚さを示し, 1分子当たりの占有面積はいずれも140~150Å2と推定された。またZnDiDPについてはDNNS塩より少ない膜厚さを示した。
    他方, 粘度指数向上剤については16~25Åと分子量のわりには小さい膜厚さを与えたが, これは表面で吸着分子が水平配向をとっていることによるものと考えられる。
    また, 金表面で吸着が行われていることはFig. 10に示すようにオージェ電子分光法により確認された。
  • 高岡 創, 木村 欣司, 堂上 忠, 斉野 良一, 横矢 一郎, 八十島 義行, 田中 俊秀, 花崎 稔
    1983 年 26 巻 4 号 p. 318-320
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油代替エネルギーの主役であるLNGの電気特性に着目し, LNG•液化メタン•LPG等について絶縁破壊電圧•体積抵抗率•誘電率•誘電正接を測定し, 種々の検討を行った。実験はステンレス製の保冷容器を試料液で十分クールダウンしたあと行い, 絶縁破壊電圧測定用に12.5φ球-球電極を, 体積抵抗率測定用に平板電極を使用した。測定についてはJISの電気絶縁油試験方法を参考にした。絶縁破壊電圧は密度と比例関係にあることが確認され, また, 値は絶縁油の規格値を上回っておりLNGの絶縁耐力は十分に高い。一方, 体積抵抗率からLNGは静電気を発生しにくい物質と判断される。
  • 森川 豊, 劉 業成, 諸岡 良彦, 伊香輪 恒男
    1983 年 26 巻 4 号 p. 321-324
    発行日: 1983/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    フッ素四ケイ素雲母 (TSM) の層間NaイオンをCuイオンに置換したCu-TSMは, メタノールからギ酸メチルを得る脱水素反応の触媒として高活性•高選択性を有することを見い出したので, さらに反応の接触時間, メタノール分圧, 温度依存性を調べた。反応温度240°C以下では転化率約50% (平衡転化率に対して90%) に達するまで選択率は100%であった。より接触時間を長くすると生成ギ酸メチルのCO, H2への分解が起こる。260°C以上ではホルムアルデヒド等の生成により選択率は低下する。反応速度はメタノール分圧に1次, 見かけの活性化エネルギーは20.3kcal/molであった。
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