石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
28 巻, 3 号
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  • 石井 宏治
    1985 年 28 巻 3 号 p. 191-201
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    PS式低温貯槽は, 万一内槽に事故が起こった場合でも, PC防液堤 (外槽) が完全な二次バリアとして機能し, 貯蔵する液化ガスを槽外に漏らさないことを主眼とした二重安全思考に基づいて開発された貯槽である。
    このため, (1) 耐低温熱衝撃性, (2) 耐震性, (3) 隣接タンク火災時における耐輻射熱強度について安全性確認実験および数値解析を行った。
    (1) 耐低温熱衝撃実験: プレストレストコンクリート構造の外槽に, LPG, LNGなどの低温•極低温の液化ガスを急激に浴びせた場合, 外槽構造物として, どのような影響を受けるか低温熱衝撃の基礎実験とモデルタンクによる外槽構造物の安全性に対する実験を実施した。
    その結果, (1) 低温熱衝撃により発生する内部応力は外槽構造物の各部位, 例えば周壁部あるいは周壁部と底版部の結合部において相違し, (2) とくにその内部応力は構造上拘束力の大きい周壁部と底版部の結合部すなわち隅角部において最大であることを確認した。
    低温熱衝撃に対するPC外槽の安全性を保持するには隅角部の構造形状を鋭角をさけたふくらみのある変形断面構造とし応力緩和の形状構造とすることが好ましいことが判明した。
    本PC外槽においては周壁下端と底版との連結部をPC鋼棒と鉄筋で連結するとともにコンクリートで継目なしに固定し, しかも当部の断面形状をバランスのよいふくらみをもった変形断面構造とし, その安全性を保証している。
    (2) 耐震実験: プレストレストコンクリート構造のモデルタンクを加振台に設置し, 貯蔵液量0%, 50%, 100%において正弦波, エルセントロ波, 他数種の地震モードによる加振実験を実施し各部における応力測定に基づく数値解析を行った。
    その結果 (1) 地震時に発生する応力としてはタンク周壁下部の曲げモーメントと周壁頂部円周方向の引張りまたは曲げモーメントにより生じる応力が最も大きく, 構造上の強度に支配的な影響力をもつこと, (2) 周壁に導入した緊張力は過酷な加振に対しても変動することなく極めて安全強固であることを確認した。
    (3) 隣接火災時における耐輻射熱強度の解析: (1)PS式低温貯槽とPS式低温貯槽, (2)PS式低温貯槽と金属二重殻式低温貯槽がそれぞれ隣接した位置にあって, いずれか一方が火災を発生した場合, 他方槽へ輻射熱は, どのような影響を及ぼすか高圧ガス保安協会, コンビナート保安防災技術指針に基づき解析した。
    その結果, 火災による熱輻射強度はPS式低温貯槽が金属二重殻式低温貯槽よりも小さくしたがって隣接貯槽に与える影響も金属二重殻式低温貯槽より低く, 安全であることを確認した。
    以上の諸実験, 解析の結果, PS式低温貯槽は, 受液槽としての機能と防液堤としての機能とを完備し, また万一火災が発生した場合における輻射熱の近隣構造物への影響力も小さく二重安全指向にマッチした低温貯槽であることを確認した。
    さらにPS式低温貯槽は, 従来の金属二重殻低温貯槽に比較し, 外槽板厚が数十倍も厚く, 外部からの衝撃にも強いため保安上きわめて適切な構造である。
    現在, 国内においては, 既に3,000tのエチレン貯槽,40,000tのLPG貯槽 (2基) が建設され安全な低温液化ガス貯蔵設備として高い評価を受けている。
  • 大場 茂夫, 鈴木 信一, 田中 裕之, 長浜 邦雄, 平田 光穂
    1985 年 28 巻 3 号 p. 202-209
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油の3次回収における二酸化炭素攻法の開発には, ほとんど常に油層中にメタンが存在することから, 二酸化炭素, メタンを含む多成分系の高圧気液平衡の情報が必要となる。
    一方, 状態方程式はこの様な気液平衡の計算に有効であると考えられ, ここでは特に臨界点付近まで良好に計算できるといわれている Peng-Robinson 式 (P-R) を用いることとした。ところでP-R式を用いた臨界点近傍を含む高圧領域での気液平衡計算の結果は, P-R式の混合則中に現れる2成分相互作用パラメーターkijの値に対し, 非常に敏感であることが知られている。Peng, Robinson17)により, P-R式のkijは炭化水素だけで構成される2成分系に対し, kij=0が与えられ, 広く用いられている。
    前報10)で著者らは二酸化炭素とn-パラフィン2成分系について, 新しく関数化されたkijを発表した。そこで本研究では, メタン, 重質炭化水素を含む多成分系の高圧気液平衡の推算精度を高めるため, 前報と同様の手法を用いて, メタンと炭化水素2成分系について, 2成分相互作用パラメーターの一般化を試みた。ここで用いたP-R式を示す。
    P=RT/v-b-a/v(v+b)+b(v-b) (1)
    a=0.45724(R2•Tc2/Pc)α (2)
    b=0.07780(R•Tc/Pc) (3)
    ただし,
    α1/2=1+m(1-Tr1/2) (4)
    m=0.37464+1.54226ω-0.26992ω2 (5)
    混合系に対して, 以下の混合則を用いる。
    a=∑i∑jxixj(1-kij)(aiaj)1/2 (6)
    b=∑ixibi (7)
    ここで, Eq.(6) 中のkijが2成分相互作用パラメーターである。なお, 本研究で用いた純物質臨界値および, 偏心因子は, Table 1に示した。16),24)
    Table 2 には, ここで用いたメタンを含む28の気液平衡データを示したが, ペンタンより高沸点の炭化水素のデータは非常に数が少ないことがわかる。
    各データ点 (P-x) に対し, kijを回帰し得られた値は, Fig. 1に示すように次式により温度T[K] で相関された。
    kij=d(T-e)2+f (8)
    Figs. 2から4は, 各系について求まった係数d, e, fをそれぞれ炭化水素の偏心因子ωjに対してプロットした図である。ただし, n-C7およびn-C8より決定されたパラメーターは, もとの気液平衡データが少ないという理由で除外した。エタンによるパラメーターも温度領域が偏っているという理由から除外した。
    さらに, 各2成分系について最適化されたパラメーターを, 炭化水素の偏心因子で相関することで, 一般化した。得られた一般化式を下に示す。
    d'=4.30497×10-6-6.31320×10-6×ωj (9)
    e'=148.035+446.26×ωj (10)
    f'=-0.00841+0.103905×ωj (11)
    ここで, ωjn-C2からn-C10までの炭化水素の偏心因子である。最終的に得られた一般化2成分相互作用パラメーターkij*は, 下式により定義される。
    kij*=d'(T-e')2+f' (12)
    この様にして決定された一般化2成分相互作用パラメーターkij*の妥当性を検証するため, 各定温2成分系データの相関を行い, 各定温データに対して最適化されたkijを用いた場合と, さらにkij=0とした時の相関結果の比較を行った。
    Table 3にそれらの結果を示した。Table 3より, 一般化kij*を用いた相関における偏差は, 最適化されたkijを用いた際と同等に小さく, 一方kij=0とした場合と比べ特に液相組成の偏差がはるかに小さいことがわかった。
    さらに一般化されたkij*を用い, メタンを含む3成分系の高圧気液平衡の推算を行った。気液平衡データは, メタン-n-ペンタン-n-デカン系が, Wiese ら36), メタン-プロパン-n-ブタン系が, Wiese ら35), メタン-n-ブタン-n-デカン系が, Reamer ら21)により報告されている値を用いた。ここで用いたkij*Table 4に示した。推算結果を Figs. 5, 6および7に示した。
  • n-ペンタンの分解に対する各種ゼオライトの活性
    菊地 英一, 中野 博, 下村 啓, 森田 義郎
    1985 年 28 巻 3 号 p. 210-213
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    各種ゼオライト触媒を用いてn-ペンタンの接触分解を行い, ゼオライトの結晶および細孔構造による活性と活性劣化への影響について検討を行った。触媒活性はSiO2/Al2O3比が23のとき最大となり, SiO2/Al2O3比が23以下およびそれ以上では活性は低下したが, 酸点あたりの活性はゼオライトの細孔構造に関係なく, SiO2/Al2O3比とともに増加した。SiO2/Al2O3比は生成物分布にも影響をあたえ, ZSM-5ではSiO2/Al2O3比の低いもの, モルデナイトではSiO2/Al2O3比の高いもので高分子量炭化水素が増加した。また活性劣化は一次元構造のゼオライトおよび細孔径は小さく空洞をもつゼオライトで大きくなった。
  • n-ペンタンの分解におけるゼオライト構造と生成物分布の関係
    菊地 英一, 中野 博, 下村 啓, 森田 義郎
    1985 年 28 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    各種ゼオライトを用いてn-ペンタンの接触分解を行い, ゼオライトの細孔構造の生成物分布への影響について検討した。細孔径の小さいゼオライトでは, 低分子量炭化水素が多く生成し, 分枝炭化水素の生成は抑制された。オレフィンへの選択率は細孔径の小さいゼオライト, 特にフェリエライトで高いことがわかった。芳香族炭化水素の生成に関しては, ZSM-5およびフェリエライトが転化率の増加とともに高い選択性を示した。このようにn-ペンタン接触分解生成物は細孔径だけでなく細孔構造にも大きく影響を受けることがわかった。
  • 大勝 靖一, 大野 雅司, 井上 祥平
    1985 年 28 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    光学活性なアルキルコバロキシムの酸化反応において, Gaudemer らは当初1)反応が立体特異的に進行すると報告したが, 最近4)酸化生成物が光学不活性となると述べている。また他のグループはアルキルコバロキシムの酸化が完全なラセミ化を伴って進行すると結論している。2),3)このようにこの種の酸化反応の立体化学は未だに不明確な点が多い。本研究では光学活性なα-フェニルエチル (ピリジン) コバロキシムが暗所および低温において一部立体特異的に酸化されることを報告する。また比較の目的で, 不斉なシッフ塩基錯体, R-シクロヘキサンジアミナトサリシリデンCo(II) 錯体 [Co(II) (sal)2-(R-CHXDA)] とラセミ体α-フェニルエチルブロマイドとから合成したアルキルコバルト錯体の酸化反応の立体化学についても言及する。
    光学活性なα-フェニルエチル (ピリジン) コバロキシムはコバロキシムと (R)-α-フェニルエチルブロマイドから窒素下で合成した。このCDスペクトルを Fig. 1に示す。アルキルコバルト錯体の酸化反応は, 暗所中または散光下に10°C以下の温度で錯体のベンゼン溶液に酸素をバブリングすることによって3時間行った。また臭素化は錯体のベンゼン溶液に臭素を滴下し, 約5°Cの温度で3時間行った。反応生成物はカラムクロマトグラフィーによって精製し, ガスクロマトグラフィーによって定量分析した。
    光学活性コバロキシムの酸化 (Eq.(1)) では, α-フェニルエチルアルコールと, 副生物のスチレンおよびエチルベンゼンとが生成した。α-フェニルエチルアルコールの収率と比旋光度を Table 1に示す。収率は反応条件や処理条件のわずかな違いによって変動したが, α-フェニルエチルアルコールはR配置がより優先的に生成することがわかった。また暗所中でのアルコールは散光下でのそれよりも大きい比旋光度を示した。α-フェニルエチル (ピリジン) Co(sal)2(R-CHXDA) の酸化の結果を Table 2に示す。また酸化の過程におけるこの錯体のCDスペクトルを Fig. 2に示す。曲線1は原料のCo錯体スペクトルである。この錯体をラセミ体フェニルエチルブロマイドと反応させると曲線2となり, フェニルエチルCo錯体の生成を示唆する。これを暗所下に酸化すると曲線2に似た曲線3が観察されるが, 散光下に放置 (曲線4) また散光下で酸化 (曲線5) すると, 得られるCD曲線は曲線1と同様の形に変化した。このことは, フェニルエチルCo錯体は散光下にまたはその状態での酸化により分解することを示している。
    α-フェニルエチルコバルト錯体の酸化の立体化学を検討するために, この錯体の臭素化 (Eq.(2)) を試みた。結果をTables 1および2に示す。得られたα-フェニルエチルブロマイドの立体化学は, 触媒の種類によらず (R)-配置, 即ちα-フェニルエチル (ピリジン) コバロキシムを合成する時に用いたα-フェニルエチルブロマイドと同じ立体配置であった。過去にアルキルコバルト錯体の臭素化はSN2で進行することが知られている6)から, 臭素化はEq.(3) のようにかけ, 結果としてα-フェニルエチル (ピリジン) コバロキシムの立体配置は〔A〕となる。この〔A〕の酸化によって (R)-(+)アルコールが生成するから, 酸素は臭素と同じようにコバルトと反対側からアルキルコバルトと反応する (SH2機構) と考えられる (Eq.(4))。
    この機構はα-フェニルエチルCo(II) (sal)2(R-CHXDA) に対しても当てはまる。この錯体は〔B〕の方が〔B'〕より安定に存在することが知られており8), この酸化によって (R)-(+) アルコールが得られる。このことは酸化反応の時点で反転があったとして解釈することができる。
    以上の結果から, α-フェニルエチルコバルト錯体の立体配置は光があたるとラセミ化しやすく, また酸素がこれを改撃する場合には普通に言われる挿入反応でなく, SH2機構で進行すると結論できる。
  • 乾 智行, 萩原 隆, 山瀬 修, 北川 賀津一, 山口 裕樹, 武上 善信
    1985 年 28 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    形状選択性ゼオライトZSM-5とメタノール合成触媒との複合触媒を用いて合成ガスから直接液状炭化水素を選択的に合成する反応は, 通常三百数十°C以上の比較的高温と高圧の条件域で検討されてきた。しかし, このような温度域の場合, メタノール合成収量には限界があり, したがって液状炭化水素の収量もあまり高くできない。そこで本研究では, メタノール合成に有利な300°C以下の低温域で選択的に高収率で液状炭化水素を合成することを目的として, Pdで修飾したCu-Cr-Zn複合酸化物からなる低温型メタノール合成触媒と低温でもメタノール変換能をもつ高活性H-ZSM-5とを組合わせた触媒について, 20atm下での流通法によって合成ガスの転化反応を検討した。
    まず, メタノール合成触媒のTPR挙動に対する触媒成分の影響を調べた。市販のZnOに硝酸パラジウムを含浸させた場合はPdの添加により還元開始温度は低くなったが, 還元速度が最大となる温度はむしろ高く (200~220°C) なった。Zn(NO3)2とPd(NO3)2の混合溶液からNa2CO3で沈殿させて得たZn(OH)2-Pd(OH)2を用いた場合には, 150°Cの低温から急激に還元が起こり, 還元量も最大となった (Figs. 1, 2)。これらの触媒のメタノール合成活性はPd添加量が小さい場合 (Pd/Cu原子比=0.006) に最大となった (Table 2, Fig. 4)。メタノール合成触媒とH-ZSM-5との複合触媒による合成ガスからの炭化水素合成活性は, 上記のようにして得たZn(OH)2-Pd(OH)2を用いたものが最も高かった(Fig. 6)。さらにこの触媒を酸化-還元すると生成物の選択率は変化し, 400°Cで酸化, 600°Cで水素還元した場合に, 液状炭化水素の選択率は最大 (61.4%) となった (Table 3)。酸化-還元処理条件に対応してCuCr2O4の粒子径が変化し, 液状炭化水素の選択率とよく対応した (Fig. 9)。酸化-還元処理によりとくにプロパンが著しく減少して炭素数分布は高炭素数側 (C5C9) に移動した。この傾向はH2/CO比を2から1に下げたときさらに明りょうに認められた (Fig. 10)。
    原料の合成ガスに少量のCO2またはC2H4を添加したところ, どちらの場合も280°C以下でのジメチルエーテルの生成が大きく抑制された。CO2添加の場合は単に反応抑制的な作用であったが, C2H4添加の場合は炭化水素生成に対する促進的効果が認められた (Fig. 11, Table 4)。
  • スラッジ中の多元素同時定量
    松崎 昭, 斉藤 一郎, 増子 昭義, 浜川 諭
    1985 年 28 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油や燃料油などの使用過程で生成する種々のスラッジ中の主要元素をエネルギー分散型蛍光X線分析法を用いて迅速に分析する方法について検討した。スラッジ中には必ず鉄が混入していることに着目し, この鉄を内標準物質として通常スラッジ中によく見出される12種の元素について概略の存在量を求める方法を確立した。また, 吸収効果の大きい鉛の共存する試料については簡単な補正を行った。実際のスラッジ試料20種について本方法による値と他の分析法による値を比較した結果, スラッジの概略元素組成を求める方法としては十分満足できる一致を示した。
  • 圧力, 温度, 滞留時間および木/触媒/水比の油状生成物収率に及ぼす影響
    小木 知子, 横山 伸也, 小口 勝也
    1985 年 28 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    近年石油などの化石資源の枯渇化が叫ばれるにつれ, 唯一の再生可能資源であるバイオマスが注目をあび, その燃料や化学原料への有効な利用が望まれるようになってきた。木材は三つの異なる構成要素, すなわちセルロース, ヘミセルロース, リグニンより成るが, そのいずれもが高い酸素含有率を示し, 石油代替燃料として実用化するにあたり, 酸素の効率的な除去が必要となる。
    前報で, コナラ木粉を水素や一酸化炭素などの還元性ガスを用いずに, NiCO3あるいはK2CO3存在下で水に懸濁させて直接液化し, 重質油状の油を得たことを報告した。本報では, この液化反応におよぼす圧力, 温度, 滞留時間, 木粉/触媒/水の比の影響を系統的に調べた。実験に用いたコナラの分析値をTable 1に示す。得られた油の収率とCHR (炭素と水素の回収率) はおのおの以下のように定義した。
    回収率(%)=生成油の重量/木粉の重量×100
    CHR(%)=生成油中のCとHの重量/木粉中のCとHの重量×100
    また油の発熱量Qhは Dulong の式より求めた。
    Qh=338.3C+1442(H-O/8)
    (C, H, Oはおのおの重量%, Qhの単位はJ/g)
    Table 2に圧力の収率などにおよぼす影響を示す。収率は圧力に依存し, 4.0MPa付近で最高となる。しかし4.0MPa以上の圧力で得られた油は空気中に放置すると固化し, 一度固化した残さの一部はアセトンに不溶となり, 以後の処理が大変困難となる。元素分析からは圧力が高くなると酸素含有率も高くなり, それにつれ発熱量も下がってくることがわかる。平均分子量の246~342という値は, ホロセルロースとリグニンが効率よく分解したことを示す。2.0MPaで得られた油の平均分子組成はC19H22O3であり酸素が効率よく除去されている。得られた油をPERCないしLBLプロセスで得られた油と比較すると収率的には少し劣るものの他の性状はほとんどかわらず, H2, COの還元性ガスなしで, はるかに温和な条件で性状の似た油が得られることがわかる。したがって初圧は2.0~4.0MPaで十分である。
    Table 3に温度変化の影響を示す。収率は15.0%から28.4%にわたり300°Cで最高を示す。300°C以上では375°Cの場合を例外として, 温度の上昇とともに収率は減少し酸素含有率も低下する。375°Cで得られた油は他の温度で得られた油とはきわだって異なる特徴を示す。すなわち他が空気中で徐々に固化していくのに対し,この油は流動性に富み時間がたっても固化しない。これは水の臨界温度が374°Cであり, 反応が超臨界条件下で進行していることと関係があると考えられる。
    Table 4に滞留時間と収率などとの関係を示す。滞留時間0の時に収率は最大に達し, それ以後収率は減少していく。時間の経過とともに油中の酸素含有率は低下する。また酸素含有率の変化から, 液化の初期の段階で酸素の除去がよりすみやかに起こっていることがわかる。Table 5に温度変化による生成油の物質収支の変化を示す。時間の経過にともない油の収率が低下していくことは, COやCO2ガスの生成のみでは説明ができず, 液相から固体残さの形成によるものと考えられる。
    Table 6に木粉/触媒/水の比の収率などにおよぼす影響を示す。液化反応は触媒の存在しない場合には非常に収率が悪いが, 触媒の対木粉重量比が2~20wt%の範囲では重量変化による収率の大きな変化はみられない。PERCプロセスと同様に4~5wt%の触媒で反応は収率よく進行する。Table 6の下段に, より高い収率を得るために Tables 2~5の結果を参考に, 温度, 圧力, 滞留時間, 木粉/触媒/水の比をかえて行った実験の結果を示す。三つの実験で収率は45%をこえ, CHRは60%以上にも達している。2.0MPa, 300°C, 0分で得られた油は収率的には最高であるが, 酸素含有率が比較的高く, したがって発熱量も低い。それに対し375°Cで得られた油は収率としては中位であるが, 低い粘性と高い発熱量を示した。
  • 江頭 誠, 勝木 宏昭, 江崎 保行, 一山 克彦, 神谷 孝, 川角 正八
    1985 年 28 巻 3 号 p. 246-251
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    黒鉛の気相合成を目的として, 鉄粉を触媒とし, メタン, アセチレン, エチレン, プロピレンおよびベンゼンの熱分解を水素中400-1,150°Cで行った。いずれの原料でも, 750°C以下では曲がりくねった微細なフィラメント状炭素が生成したが, 高温になると良結晶性の薄片状黒鉛が生成し, その収率は1,100°Cで70-85%に達した。黒鉛生成の最適原料ガス組成は, いずれの原料の場合も水素中約10%であった。反応時間に対する黒鉛生成量の直線的増加, 反応後の触媒のX線回折結果, 反応結果と鉄-炭素系状態図との対比などから, 黒鉛結晶はγ-Fe粒子が触媒となって炭化水素の熱分解-炭素の溶解-拡散-析出により成長するものと推察した。
  • ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸の共重合樹脂
    土屋 昇三
    1985 年 28 巻 3 号 p. 252-256
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸を熱重合させると酸無水物基を多量に含む樹脂が得られる。この樹脂はその構成成分として無水マレイン酸単位1個を含む分子, 2個を含む分子およびシクロペンタジエンのみのオリゴマーの3種類のタイプの分子から構成されている。この反応系に水を共存させると脱炭酸反応およびエステル化反応が起こっていることが認められた。これらの樹脂をグリコールインキのビヒクルとして用いることを試みたが, そのままでは印刷物の耐水性に欠点がある。樹脂中にアクリロイル基を導入して反応性のインキ用ビヒクルとし, 印刷物を加熱することにより耐水性が著しく改良された。
  • 古宮 行淳, 光藤 武明, 朴 秀樹, 渡部 良久
    1985 年 28 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    M(2,4-ペンタンジオナート)n錯体(M=Co, Ru)-HYゼオライト系をM'AlH4(M'=アルカリ金属) により還元して調製した触媒を用い, 一酸化炭素の水素化による低級オレフィンの選択的合成を検討した。還元剤を用いない系と比較して還元剤を用いた場合C2-C4の選択性が著しく向上しメタンの生成が抑制された。特にRu-HY-KAlH4系ではC2-C4の選択率は59%でC3中のプロピレンの選択率は97%であった。活性化に必要なM'AlH4の量はRuの2~3倍モルであった。Ru-Fe, Ru-Mn, Ru-Rh, Ru-CoならびにRu-Mo系をLiAlH4で還元した系も低級オレフィン生成の活性と選択性に相乗効果を示した。Ru-Mn系ではC2-C4は65%でC2, C3中のC2=, C3=の選択率はそれぞれ78,95%であった。Ru-Ti, Ru-V系ではメタンの生成が抑えられた。多くの場合生成物分布はシュルツ-フローリー分布に従わなかった。Co-HZSM5-LiAlH4系ではC10+は生成しなかった。
  • 山本 洋次郎
    1985 年 28 巻 3 号 p. 264-269
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水素化分解反応によるアスファルテン (As) の構造変化を調べるとともに, 各種の1Hおよび13C核のスピン-格子緩和時間 (T1) を測定し, 常磁性金属であるNiやVが各1Hと13C核に及ぼす常磁性緩和効果の違いからNiおよびVの存在状態を間接的に調べた。その結果, 反応によってAsは縮合度が増したコンパクトな構造に変化し, V含有量は減少するが, Niは増加することがわかった。また, As中のNiやVの含有量と芳香環内部および脂肪族炭素が置換した置換芳香族炭素 (CA2) のT1との間には良い相関関係が認められ, Ni, Vともに含有量が多いほどCA2のT1は短いことがわかった。すなわち, NiやVがCA2の近傍に, より多く存在していることが示唆された。
  • 杉岡 正敏, 木村 富士巳
    1985 年 28 巻 3 号 p. 270-273
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    硫化処理したモリブデナ-アルミナ触媒上でのエチレン•プロピレンおよび1,3-ブタジエンと硫化水素との反応を閉鎖循環系反応装置を用いて検討した。この結果, エチレンと硫化水素との反応 (400°C) ではエチレンの水素化と水素化分解が進行し, エタンとメタンがほぼ同量生成した (Fig. 1)。プロピレンと硫化水素との反応 (400°C) ではプロピレンの水素化が主として進行しプロパンが生成したが, プロピレンの水素化分解もわずかに起こり, メタン, エタンが少量生成した (Fig. 2)。1,3-ブタジエンと硫化水素との反応 (200°C) ではブテンのみが生成する水素化が起こり, ブタンは生成しなかった (Fig. 3)。また1,3-ブタジエンの水素化とともに, 生成したブテン類の異性化も進行した (Fig. 4)。
    これらの結果より, 硫化水素はこれらのオレフィンの水素化および水素化分解に対して水素供与体として作用することが明らかになった。さらに硫化水素によるオレフィンの水素化に対して, 触媒中の硫化モリブデンの配位不飽和サイトが関与した反応機構を提案した。
  • 服部 慶子, 釣島 修二, 石橋 孝男, 荒井 康彦
    1985 年 28 巻 3 号 p. 274-277
    発行日: 1985/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    経験的摂動型状態方程式に簡便な混合則, すなわちamiΣjΣkxixjxkaijk, bmixibi, cmixiciを用いることにより, 非対称混合物である二酸化炭素-メタノール系の高圧気液平衡について, 良好な相関結果が得られた。従来の2次型混合則, amiΣjxixjaij を用いた前報での結果に比べ, 沸点曲線の計算がかなり改善された。本研究では, 実験結果を良好に表現するため, aijk=(1-kijk)(aiajak)1/3として相互作用パラメーターkijkが導入された。この混合則の特徴はam-(x1a1+x2a2)がx1に対し非対称となることであり, 混合則として flexibility があるため複雑な系への適用性が向上するものと思われる。
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