石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
30 巻, 5 号
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  • 横野 哲朗
    1987 年 30 巻 5 号 p. 277-290
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    磁気共鳴法を用いた重質油のキャラクタリゼーションに関する最近の進歩について解説した。特に高温, 高温-高圧NMR, ESRの開発, 実用化はそれらを重質油の熱分解, 炭素化反応に応用することによって, 高温または高温-高圧下での時々刻々の化学変化を in-situ でとらえることを可能にした。研究より得られた結果を分子の運動や化学結合の切断, 再結合の観点から考察することにより, これらの手法が反応機構の解明に大きく貢献することを述べた。またこれらの研究が重質油類のアップグレーディング, ピッチ類の調整, 分解重質油の安定化やコークス化などに関しても大きく寄与することも述べた。
  • 松村 雄次
    1987 年 30 巻 5 号 p. 291-300
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    コールタール, 重質油等の高芳香族化合物は, 適度の熱処理を受けると液晶挙動を示す液晶ピッチを生成することが知られている。この液晶ピッチは, 高芳香族化合物が黒鉛化に至る過程での中間体 (メソフェース) であり, 種々の高分子物性制御技術, 高温高粘度流体の化学工学プロセス制御技術を活用すれば, 液晶ピッチの物性はもちろんのこと, その生成機構そのものを制御することができる。大阪ガスでは, これら制御技術を駆使して, コールタールを出発原料とする各種機能性炭素材を製造する技術開発に取組んでおり, その研究成果ならびにこれら炭素材の応用について解説する。
  • 中田 真一, 相馬 幹雄, 長岡 孝二, 浅岡 佐知夫
    1987 年 30 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    CO2吸着カロリメトリーにより, 固体塩基触媒として代表的な酸化マグネシウム (MgO) 触媒の表面塩基特性の定量的検討を行った。MgOへのCO2の可逆的化学吸着能を確認するとともに, 物理吸着レベルを検討し化学吸着に要する熱量を90kJ/mol以上とした。脱気前処理温度によって塩基特性が大きく変わること, および800°C脱気前処理で強い塩基点が多く出現することがわかった。また, 400°C以下 (弱い塩基点) と600°C以上 (強い塩基点) でCO2が脱離することから, 不連続に吸着CO2が脱離することがわかった。さらにMgOに対するCOやNH3の吸着能についても検討した。
  • 森下 晋一
    1987 年 30 巻 5 号 p. 307-311
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    使用潤滑油から酸化生成物を分離するために, 現場で行えるペーパークロマトグラフィーについて検討した。分析は試料を付したろ紙をそれぞれに異なる溶媒を入れたビンで順次展開する。その結果, 油は炭化水素化合物および樹脂分, スラッジに分けられ, それぞれのスポットがろ紙上に現れる。溶媒には, 炭化水素化合物の分離にn-ヘプタンが, 樹脂分にベンゼン•エタノール混合液が適していた。各スポットの成分はカラム吸着クロマトグラフィーで分離した各成分と一致することを確認した。また, JIS法で酸化させた潤滑油を本法で分析した結果, 性状の変化をスポットの大きさと色の濃さで推定できることがわかった。
  • 亀山 紘, 辻 卓子
    1987 年 30 巻 5 号 p. 312-317
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    金属ポルフィリンを有機合成化学的な触媒反応に利用するための基礎研究としてテトラリンとアントラセンとの間の水素移行反応に対する触媒作用を検討した。Scを除く9種の第一遷移金属テトラフェニルポルフィリン錯体 (M-TPP) を用いて343°Cで活性試験を行った。反応の主生成物は9,10-ジヒドロアントラセン (9,10-DHA) で副生成物は1,2-または1,4-ジヒドロアントラセンおよびテトラヒドロアントラセンである。Znを除く全ての錯体が活性を示し, 9,10-DHAを高選択率で生成した。特にCo, Fe, Cr-TPPと, 空のdz2軌道を有する錯体の活性が高く, 相対速度は対数表示でそれぞれ3.09, 1.11, 0.81と求められた。Co-TPPは溶存酸素で酸化され失活する現象が認められた。
  • 金 革, 劉 桂芬, 菫 求実
    1987 年 30 巻 5 号 p. 318-323
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    褐炭から無煙炭まで炭化度が異なる19種類の石炭チャーを用いて水蒸気による無触媒および接触ガス化反応を微分型反応管で行い, 炭種依存性について定量的検討を試みた。石炭のガス化速度に及ぼす細孔表面積の変化や触媒添加量の効果をしらべ, 接触ガス化速度式を定式化した。またガス化速度, 細孔表面積と石炭の炭化度との相関を確かめた。K担持炭の炭種依存性についても検討を行った。
  • 鉄, コバルト, ニッケル系超微粒子の触媒特性
    伊藤 宏行, 菊地 英一, 森田 義郎
    1987 年 30 巻 5 号 p. 324-330
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    塩化物の気相還元法により調製されたFe, Co, Ni系超微粒子 (UFP) を触媒として, 液相法による一酸化炭素の水素化反応 (F-T合成) を行い, UFPの触媒特性およびカリウムの添加効果について検討した。
    反応は試作したスラリー床式高圧流通循環反応装置7)を用いて行い, 循環ガスで触媒 (1g) を分散媒 (セタン, 80ml) に懸濁した。UFP触媒の分散には超音波破壊機を用い, カリウムの添加は Fig. 1に示したように, 金属カリウムの懸濁液の所定量を触媒のスラリーに添加することにより行った。また, 通常の反応条件は温度220°C, 圧力30atm, 供給H2/CO比1とした。
    使用した触媒は塩化物の気相還元法により調製し, 徐酸化処理したFe, Co Ni系複合金属UFP (Fig. 2) であり, その組成および平均粒子径, 比表面積はそれぞれ Tables 1, 2に示した。また, 比較のために使用した共沈法による沈殿触媒は各金属硝酸塩の混合水溶液を用い, KOH水溶液を沈殿剤として調製した。得られた沈殿は焼成後粉砕し, H2気流中300°C, 6hr活性化処理した。
    各UFP触媒を用いて6hrの反応を行ったときの平均の活性および生成物分布を Fig. 3に示した。Feの割合が高い触媒A, Dは高い活性および含酸素化合物 (主としてアルコール) 選択性を示した。特に触媒Dは最も高活性であり, 含酸素化合物選択性も高かった。CO転化率の経時変化を Fig. 4に示した。触媒CおよびEは図中の触媒B, Dと同様に劣化したが, 触媒Aは反応開始後3hr活性が上昇した。この差異は反応条件下での触媒表面の還元の難易さによるものと考えられる。
    特に触媒Dの活性が高いことから, 以下触媒Dについて検討した。Fig. 5aには活性および含酸素化合物選択性の経時変化を示した。反応時間とともに活性, 含酸素化合物の選択性とも低下した。反応後の触媒には粒子の凝集がみられたが, 超音波照射により再分散された。このとき活性, 含酸素化合物選択性はともに回復し, 新触媒の場合と同様な経時変化を示した (Fig. 5b)。Fig. 6には触媒Dを用いて反応を行ったときの初期と劣化後の活性および生成物分布を触媒Dと同一組成の沈殿触媒と比較して示した。劣化後のUFP触媒上の生成物分布は沈殿触媒のものによく類似していたが, 超音波照射により活性が回復するとともに生成物分布も新触媒のものに近づいた。
    さらに, UFP触媒のカリウムによる修飾について検討した。カリウムを添加したUFP触媒で生成する炭化水素の分布は無添加のものに比べ高分子量側に移行しており (Fig. 7), 本方法で添加したカリウムの懸濁液がUFP触媒上の活性点を有効に修飾していることが明らかになった。Fig. 8にはカリウム添加の有無による活性の経時変化の差を示した。カリウムを添加することにより, 反応初期の活性は低くなったが, 活性劣化は抑制された。このとき, 6hrの反応に使用した後の触媒に超音波照射しても活性の変化はみられなかった (Fig. 9)。また, 新触媒および反応後の触媒のX線回折図 (Fig. 10) を比較すると, カリウム無添加の場合徐酸化処理で生成した酸化物は6hrの反応後の触媒中にも存在するが, カリウムを添加した場合酸化物は反応中に消失した。さらに反応の各段階でX線回折測定を行うと, カリウムを添加した場合反応の初期 (<1hr) において酸化物が炭化物に変化していることが明らかになった。これらの結果から, UFP触媒の組成がその凝集挙動に大きく影響していると考えられる。
  • 各種担体に担持したニッケル触媒を用いるクウェート常圧残油の水素共存下における熱分解
    中村 育世, 藤元 薫, 冨永 博夫
    1987 年 30 巻 5 号 p. 331-336
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    熱的な炭化水素の分解と触媒による中間体ラジカルの水素化安定化を基本反応とする熱-水素化ハイブリッド型重質油分解法において担体が反応特性に与える影響を検討するため, β"-Al2O3, SiO2-Al2O3等の各種担体にNiを担持した触媒を用い, 反応温度435°C, 水素圧75kg/cm2の条件でクウェート常圧残油の分解を行った。反応特性は, 担体の酸-塩基性により支配され, 塩基性の強い担体ほどコーキングの抑制に効果的であったが, 分解率, 脱硫率は低下し, ガス, 留出油中のオレフィンの含有率は増加する傾向がみられた。水素消費量は水素化分解法の約1/3に相当する80~120Nm3/klで担体間に大きな違いはみられなかった。
  • ファンダメンタルパラメーター法による油中多元素同時定量
    増子 昭義, 斉藤 一郎, 浜川 諭, 松崎 昭
    1987 年 30 巻 5 号 p. 337-342
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エネルギー分散型蛍光X線による定量分析の自動化の一環として, ファンダメンタルパラメーター法を応用した潤滑油中のP, S, Cl, Ca, Ba, Fe, CuおよびZnの同時定量法を確立させた。1ないし8成分系の各種潤滑油 (新油および使用油) についての本法による定量値は従来法 (原子吸光法, 化学分析法など) による定量値と良好な一致を示した。
  • 触媒の還元性状とCo, Feの助触媒効果
    越後谷 悦郎, 野沢 勲, 藤谷 忠博
    1987 年 30 巻 5 号 p. 343-347
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アルミナ担持モリブデン触媒上でプロピレンの不均化反応を行い, 前処理の還元温度と活性との関係を明らかにし活性点について考察した。また有効な触媒の探索を目的として第三成分の添加により還元性状, 活性におよぼす影響を検討した。原子比の異なるMoO3-Al2O3触媒の不均化反応活性は前処理の還元温度が550°C, 原子比組成Mo/Al=5/95において最高値を示した。さらに還元温度を上昇すると活性は低下し, 還元温度と活性点の生成の間に密接な関係があることが推察された。この触媒に第三成分としてCoO, Fe2O3などを添加すると触媒の還元性状, 不均化活性に大きな影響が現れ活性点の生成に重要な働きをすることが認められた。
  • 伊保内 賢, 大勝 靖一, 倉持 智宏, 川井 忠智
    1987 年 30 巻 5 号 p. 348-352
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高分子化合物の自動酸化に関する研究は, 大きく二つに分けることができる。その一つは材料の酸化からの保護1)~4)であり, 他方は高機能化の一つの方法5)~8)である。しかし, いずれの場合も, 酸化と立体化学に関する研究は多くはなされていない。そこで本研究では, ポリスチレン, ポリ (m-イソプロピルスチレン), ポリ (p-イソプロピルスチレン) の酸化を行い立体構造の違いによる被酸化性を調べた。
    スチレン, p-イソプロピルスチレンは市販品を用い, m-イソプロピルスチレンは文献9)に従い合成した。これらモノマーを重合し, そのポリマーの酸化反応を行った。生成したヒドロペルオキシド基の定量はヨードメトリー法によった。10)~12)m-イソプロピルスチレンとp-イソプロピルスチレンでは, その重合性はm-イソプロピルスチレンの方がやや低いことがわかった (Table 1)。ポリ (m-イソプロピルスチレン), ポリ (p-イソプロピルスチレン) の酸化反応によるヒドロペルオキシド生成量を Fig. 1に示す。ヒドロペルオキシド量は時間とともに増加し, ポリ (m-イソプロピルスチレン) の方がその含有量は多かった。なおこのとき吸収された酸素の40~90%がヒドロペルオキシド生成に消費され, 分子量は酸化の結果低下した。ポリスチレン, ポリ (m-イソプロピルスチレン), ポリ (p-イソプロピルスチレン) の酸化反応は酸素の溶解律速ではなく, Eq. (2)~(7)に示した連鎖機構に従うことがわかった (Table 2)。三種のポリマーの被酸化性は次のようになる。
    ポリ (m-イソプロピルスチレン)>ポリ (p-イソプロピルスチレン)≫ポリスチレン
    これらのポリマーにおいて主鎖の被酸化性がポリスチレンと等しいとみなすと, 酸化速度定数は主鎖第三級炭素位置で5.4×10-4(M-1s-1), m-位側鎖イソプロピル基第三級炭素が11.8×10-4(M-1s-1), p-位が8.9×10-4(M-1s-1) と計算できた。ここで側鎖イソプロピル基の被酸化性のm-位とp-位における相違が置換基の電子的な効果によるものかあるいはポリマーの立体的な因子によるものかを明らかにするために, 三種の低分子量モデル化合物 (クメン, m-ジイソプロピルベンゼン, p-ジイソプロピルベンゼン) の酸化を行った (Table 3)。モデル化合物の速度定数は置換基の位置に関係なくほぼ等しい値を示した。この結果は三種のポリマーの被酸化性の違いはその立体構造の違いによるものであることを示唆している。
    以上の結果より, ポリマーの溶液内における構造は, 主鎖を内側, 側鎖を外側に配したランダムなコイル状で, 主鎖は側鎖により酸化から守られ, その被酸化性は低分子量モデル化合物に比べ, 1/10~1/25程酸化されにくい。そして, ポリ (m-イソプロピルスチレン) はポリ (p-イソプロピルスチレン) よりも酸化されやすいことから, より堅く, イソプロピル基をより多く外側に配した構造であると推定した。
  • 京谷 隆, 山田 保治, 手塚 岳志, 山本 博之, 玉井 康勝
    1987 年 30 巻 5 号 p. 353-358
    発行日: 1987/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    トラクションドライブとは動力の伝達を流体のけん引力により行う機構で, 高効率, 低騒音, 高回転での伝達が可能, 無段変速が可能などの長所を持つ。トラクションドライブで用いられる流体をトラクション流体と言い, 高いトラクション係数を示し, かつ接触面どうしの直接接触を防ぐことが要求される。トラクション流体としては現在のところ脂環式化合物のような合成油がよく使用されている。しかしながら脂環式化合物においても現在得られているトラクション係数をさらに高めるのは困難で, かつ一般の鉱油に比べてかなり高価である。そこでわれわれはポリマーのような添加剤を流体に加えることでそのトラクション係数を増加させようと試みた。さらに添加したポリマーの分子構造とその添加油のトラクション係数との関係を調べた。
    試料として用いたポリマーを Tables 2, 3に示す。ポリイソブテンは市販品を用い, その他のポリマーは合成した。またコポリマーの組成を元素分析とIRにより調べた。これらのポリマーの溶媒として Table 1に示す3種類の基油を用いた。トラクション係数の測定は Fig. 1に示す二円筒式摩擦試験機にて行った。円筒表面に約5ccの試料を塗布し, 荷重100kg, 定速側の円筒の回転速度を45cm/sとして, 可変速側の円筒の回転速度44から52cm/sまで変化させ, その時のトラクション係数の変化を測定した。全ての試料につきトラクション係数の変化は次のようになった。可変速側円筒の回転速度が増加するにつれてトラクション係数は急激に増加する。さらに回転数を増加させるとトラクション係数の増加は頭打ちとなり最大値を通って減少していく。そこでトラクション特性を表す1つの指標としてこの最大トラクション係数μmaxの値を採用した。μmaxは実用上においても重要な値である。
    Table 4に各種ポリマーのBCH溶液のμmaxを示す。このように溶液の粘度が同程度であっても, ポリマーの種類によってμmaxが異なる。さらにポリマーの側鎖にシクロヘキサン環があるものの方がμmaxが高い。PCAのBCH溶液のμmaxはその濃度に依存せず (Table 5), またPCA, PCMのBCH溶液ともそのμmaxはポリマーの分子量に依存しない (Table 6)。C/Aコポリマー溶液のμmaxとコポリマー組成との関係をFig. 2に示す。C/Aコポリマー中のシクロヘキシルアクリレートの割合が増加するにつれてμmaxは増加する。さらにPCAとPAAのBCH溶液を各C/AコポリマーのBCH溶液と同じモノマー組成になるように混合し, それらのμmaxも測定した。混合溶液のμmaxは対応するC/Aコポリマー溶液のそれとほぼ同じである (Fig. 2)。このことはポリマー全体の構造よりむしろ側鎖の分子構造がμmaxに対して重要であることを示している。われわれはすでに基油においてシクロヘキサン環などの導入によりその分子構造を剛直なものにすればそのμmaxが増加することを示している。5)本研究によりポリマー添加剤においてもPCAの場合には同様の効果があることがわかった。しかしながらPCAの側鎖のシクロヘキサン環をより剛直な種々の脂環式化合物にかえても, μmax増加に対して効果はなかった (Table 7)。
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