塩化物の気相還元法により調製されたFe, Co, Ni系超微粒子 (UFP) を触媒として, 液相法による一酸化炭素の水素化反応 (F-T合成) を行い, UFPの触媒特性およびカリウムの添加効果について検討した。
反応は試作したスラリー床式高圧流通循環反応装置7)を用いて行い, 循環ガスで触媒 (1g) を分散媒 (セタン, 80m
l) に懸濁した。UFP触媒の分散には超音波破壊機を用い, カリウムの添加は
Fig. 1に示したように, 金属カリウムの懸濁液の所定量を触媒のスラリーに添加することにより行った。また, 通常の反応条件は温度220°C, 圧力30atm, 供給H
2/CO比1とした。
使用した触媒は塩化物の気相還元法により調製し, 徐酸化処理したFe, Co Ni系複合金属UFP (
Fig. 2) であり, その組成および平均粒子径, 比表面積はそれぞれ
Tables 1, 2に示した。また, 比較のために使用した共沈法による沈殿触媒は各金属硝酸塩の混合水溶液を用い, KOH水溶液を沈殿剤として調製した。得られた沈殿は焼成後粉砕し, H
2気流中300°C, 6hr活性化処理した。
各UFP触媒を用いて6hrの反応を行ったときの平均の活性および生成物分布を
Fig. 3に示した。Feの割合が高い触媒A, Dは高い活性および含酸素化合物 (主としてアルコール) 選択性を示した。特に触媒Dは最も高活性であり, 含酸素化合物選択性も高かった。CO転化率の経時変化を
Fig. 4に示した。触媒CおよびEは図中の触媒B, Dと同様に劣化したが, 触媒Aは反応開始後3hr活性が上昇した。この差異は反応条件下での触媒表面の還元の難易さによるものと考えられる。
特に触媒Dの活性が高いことから, 以下触媒Dについて検討した。
Fig. 5aには活性および含酸素化合物選択性の経時変化を示した。反応時間とともに活性, 含酸素化合物の選択性とも低下した。反応後の触媒には粒子の凝集がみられたが, 超音波照射により再分散された。このとき活性, 含酸素化合物選択性はともに回復し, 新触媒の場合と同様な経時変化を示した (
Fig. 5b)。
Fig. 6には触媒Dを用いて反応を行ったときの初期と劣化後の活性および生成物分布を触媒Dと同一組成の沈殿触媒と比較して示した。劣化後のUFP触媒上の生成物分布は沈殿触媒のものによく類似していたが, 超音波照射により活性が回復するとともに生成物分布も新触媒のものに近づいた。
さらに, UFP触媒のカリウムによる修飾について検討した。カリウムを添加したUFP触媒で生成する炭化水素の分布は無添加のものに比べ高分子量側に移行しており (
Fig. 7), 本方法で添加したカリウムの懸濁液がUFP触媒上の活性点を有効に修飾していることが明らかになった。
Fig. 8にはカリウム添加の有無による活性の経時変化の差を示した。カリウムを添加することにより, 反応初期の活性は低くなったが, 活性劣化は抑制された。このとき, 6hrの反応に使用した後の触媒に超音波照射しても活性の変化はみられなかった (
Fig. 9)。また, 新触媒および反応後の触媒のX線回折図 (
Fig. 10) を比較すると, カリウム無添加の場合徐酸化処理で生成した酸化物は6hrの反応後の触媒中にも存在するが, カリウムを添加した場合酸化物は反応中に消失した。さらに反応の各段階でX線回折測定を行うと, カリウムを添加した場合反応の初期 (<1hr) において酸化物が炭化物に変化していることが明らかになった。これらの結果から, UFP触媒の組成がその凝集挙動に大きく影響していると考えられる。
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