石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
33 巻, 4 号
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  • 久保 洋一郎
    1990 年 33 巻 4 号 p. 189-197
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    自動車産業を中心に重要な各種部品の材料として使用されている耐油性ゴムの使用環境は年々厳しくなって来た。その結果, 耐油性ゴムに対する要求性能も高度になり, さらに従来に無い新しい性能も要求されるようになった。我々は「この要求性能の変化は従来の延長上に無い新しい耐油性ゴムを必要とする」と判断し, 開発に着手した。
    性能を満足するポリマー骨格を高飽和型ニトリルゴム構造と設計し, この構造を選択水素化反応により製造する技術を確立し, 工業化に成功した。本稿ではその開発過程及び新しい耐油性ゴムの特徴について述べる.
  • 乾 智行
    1990 年 33 巻 4 号 p. 198-207
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    天然ガスや石油随伴ガスを石油に替えて石油化学工業の出発原料にすることが重要となってきているが, 従来技術では, 低級オレフィン類は得られてても, 基幹原料として重要なベンゼン, トルエン, キシレンなどを効率よく得ることはできなかった。したがって, 低級パラフィン類から直接芳香族を生成する研究が最近, 活発に行われるようになった。また, ナフサ留分を芳香族などのより有用な炭化水素に変換する課題も石油の有効利用の見地から重視されている。
    当初, H-ZSM-5のHの一部をZnやGaでイオン交換した触媒が低級パラフィンの芳香族化に有効であることが報じられたが, これらの触媒は, 600°C付近の反応条件の環境では, 還元され揮発してしまい, 永久劣化することが問題とされていた。本研究では, こうした難点を回避して, 芳香族を高選択的に生成しながら触媒劣化の少ない触媒系の開発を目的とした。
    まず, ゼオライト触媒の細孔構造とコーク析出による劣化の程度を, 広狭型のモルデナイト (M) とYゼオライト, ならびに中孔型のペンタシル型ゼオライトについて, セタンの変換反応によって比較した。MやYの劣化は極めて速やかであったが, ペンタシル型ゼオライトの劣化はほとんど認められなかった (Fig. 1)。MやYでは, 生成物中に芳香族はわずかしか認められない (Fig. 2) のに劣化が著しいのは, 細孔内に多量のコークを析出したためであることが確かめられた (Fig. 3)。これは, 細孔口径だけではなく, 細孔の連結次元数や内部に存在する大きなキャビティに関係し, コークの前駆体である縮合芳香族が生成する空間の存在の有無に密接に関連することを示している。
    ペンタシル型ゼオライトZSM-5をプロトン型としたものについて, 種々の遷移金属でイオン交換した後, プロパン転化性能を比較し, ZnやGa種が芳香族化能に効果のあることを確かめるとともに, Ptには著しい活性増大効果のあることを見い出した (Table 2)。Ptの効果は0.5wt%程度が効果的で (Fig. 5), それ以上では水素化分解能が優勢となった。Ptは転化活性を増大させるだけでなく, 芳香族化能も幾分増大させたが, 生成物は芳香族のほかは主としてエタンになるという特徴的な結果を与えた (Fig. 6)。
    一方, 芳香族化能を増す金属種の安定化を図るため, ZSM-5中のAlの替わりにGaやZnを結晶内に取り込むことを行った。固有の迅速結晶化法により, これらの成分を高濃度にまで取り込むことができた (Fig. 7)。これらの触媒は, イオン交換法で取り込んだものよりも, 活性, 芳香族選択性とも良好となった (Table 3)。原料飽和炭化水素の炭素数を1から20までに変えた結果, 芳香族選択率はC4, C5付近で極小値をとり, C6以上で回復してほぼ60(wt%) を与えた(Fig. 8)。C6以上では, C6留分から直接転化するルートが加わるためと見られる。
    Ptの担持は, コークの析出による劣化の進行を著しく緩和する (Fig. 9) とともに, コークの焼却による再生時にも顕著に燃焼速度を速くした (Fig. 10)。コンピューター制御による寿命試験では, Pt/H-Ga-シリケート触媒によるプロパンの転化の場合, 同温度における短い再生時間を含んで1,000時間の計測期間中, 触媒の永久劣化は認められなかった (Fig. 11)。Pt/H-Zn-シリケートでは, 約600時間使用以降, 永久劣化の傾向が認められたが, 少量のGaとAlをZn-シリケート結晶に取り込ませた結果, 1,500時間の試験でも変化を認めなかった (Fig. 12)。
    触媒表面上のPtは約30Åの粒子となって安定化しており, その状態をコンピューターグラフィックスによって描写した(Fig. 13)。Ptはシリケートの結晶外表面にあって, シリケート結晶内の固有の活性を妨げることなく, Ptの触媒特性が発揮されることを示唆する。
    反応ガスにあらかじめO2やH2を添加したが, いずれも転化率, 選択率を下げる結果となった (Fig. 14)。これは, Ptが関与する脱水素反応と水素化反応の特性のバランスが重要であることを示している。
    以上の結果を総合して, Ptの脱水素, 水素化能 (パラフィン転化時) と酸化能 (コーク焼却時), Ga, Znの水素吸引能, 固体酸点の炭化水素変換能, ペンタシル細孔の形状選択性, からなる多元触媒機能が明らかとなり, その作動状態における機構を図示した (Fig. 15)。
    こうした多元触媒機能は, 広範な飾和炭化水素の効果的変換反応プロセスに適用できるものと期待できる。
  • 日秋 俊彦, 穴澤 一郎, 小島 和夫
    1990 年 33 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    臨界温度, 臨界圧力は化学プロセスの解析や設計に必須の物性である。したがって, 臨界温度, 臨界圧力については各種の推算法1)~4),6),8),9),15)が提案されているが, i-アルカンを含め広く炭化水素の推算を行うためには異性体を区別する必要があり, このため標準沸点が多くの場合用いられている。本研究は物質の分子量と化学構造のみに基づいてアルカンおよびアルケンの臨界温度, 臨界圧力および標準沸点の推算法を示し, 既往の方法による推算結果と比較検討したものである。
    まずn-アルカン, 1-アルケンの臨界温度, 臨界圧力および標準沸点の基本推算式として分子量Mのみを含むEq. (1) を採用した。またi-アルカンならびに1-アルケン以外のアルケン (cis-アルケンを除く) の基本推算式は, 化学構造式に基づいて計算する Platt 数pおよび Wiener 数wを含むEq. (2) を採用し, cis-アルケンに対しては分子量のみを含む式を用いた。本研究で用いたアルカンおよびアルケンの臨界温度, 臨界圧力ならびに標準沸点の実測値はすべて Reid, Prausnitz および Poling の成書13)のデータベースを使用した。
    20種のn-アルカン (C1~C20) および44種のi-アルカン(C4~C10) の臨界温度データを用いて Eq. (1) およびEq. (2) のパラメーターを決定した。n-アルカンおよびi-アルカンの臨界温度の推算式をEqs. (3), (4) に示す。推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.7K, 1.4K, 最大偏差は2.1K, 4.2Kであった。また16種の1-アルケン (C2~C18, C16を除く) および20種の1-アルケン以外のアルケン(C4~C8) の臨界温度データに基づいてEq. (1) およびEq. (2)のパラメーターを決定した。1-アルケンおよび1-アルケン以外のアルケンの臨界温度の推算式をEqs. (5)~(7) に示す。推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.7K, 3.5K, また最大偏差2.1K, 10.7Kであった。同様にしてEqs. (1), (2) を用いて臨界圧力の推算を行った。n-アルカンおよびi-アルカンの臨界圧力の推算式をEqs. (8), (9) に, 1-アルケンおよび1-アルケン以外のアルケンの推算式を Eqs. (10)~(12) に示す。n-アルカンおよびi-アルカンの推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.017MPa, 0.027MPa, 最大偏差は0.045MPa, 0.066MPaであった。1-アルケンおよび1-アルケン以外のアルケンは絶対算術平均偏差はそれぞれ0.016MPa, 0.048MPaであった。また標準沸点の推算も同様にして行った。n-アルカンおよびi-アルカンの標準沸点の推算式Eqs. (13), (14), 1-アルケンおよび1-アルケン以外のアルケンの推算式をEqs. (15)~(17) に示す。n-アルカンおよびi-アルカンの推算値と実測値との絶対算術平均偏差が0.3K, 0.6K, 最大偏差は0.9K, 2.5K, 1-アルケンおよび1-アルケン以外のアルケンでは絶対算術平均偏差はそれぞれ0.2K, 4.0K, 最大偏差が0.4K, 11.3Kであった。
  • 松田 剛, 余語 克則, 永浦 利康, 菊地 英一
    1990 年 33 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    HZSM-5, モルデナイト (HM), Y型 (HY) の3種類のゼオライトを用いてメチルナフタレン (MN) の不均化反応を行った。Table 1に2-MNを原料に用いたときの反応結果を示した。HYが2-MNの転化反応に最も高い活性を示し, ついでHM, HZSM-5の順となった。HYは異性化だけでなく不均化にも高い活性を示し, トリメチルナフタレンもかなりの割合で生成した。これはHYは0.74nmと大きな細孔径を持ち, しかも細孔内に1.3nm程度のケージを有しているため, 細孔内で2-MNの不均化やトランスアルキル化反応が容易に進行するためと考察した。HMやHZSM-5では不均化活性は低く, 2-MNはほとんど1-MNに異性化した。しかし, Fig. 2に示したようにHZSM-5は経時的に安定な不均化活性を示した。これに対して, 異性化活性は経時的に劣化した (Fig. 3)。
    Table 2に不均化生成物であるジメチルナフタレン(DMN) 異性体の組成を示した。DMN生成の選択性を比較するため, DMN異性体をメチル基の位置によりα-α異性体(1,4-, 1,5-, 1,8-DMN), α-β異性体 (1,2-, 1,3-, 1,7-, 1,6-DMN), β-β異性体 (2,3-, 2,7-, 2,6-DMN) の三つのグループに分類した。DMN異性体中で最小の分子径を有するβ-β異性体生成の選択性はHZSM-5>HM>HY=シリカアルミナの順となった。また, シリカアルミナでも熱力学平衡値以上のβ-β異性体選択性が得られた。これはDMNではβ-β間やα-α間のメチル基の移動が起こらず12), DMNの異性化が抑制されるためと推測した。
    Fig. 4に示したように, HZSM-5ではβ-β異性体の選択性が経時的に増加し, 反応開始3時間後には85%と高い選択性を示した。これはβ-β異性体である2,6-DMNと2,7-DMNの選択性が増加し, α-β異性体である1,6-DMNと1,7-DMNの選択性が経時的に減少したためである。Figs. 2, 3に示したように, HZSM-5は2-MNの不均化反応に安定な活性を示すが, 2-MNから1-MNへの異性化反応では活性劣化する。このことはDMNの異性化に対する活性も経時的に減少していることを示唆している。このことより, 2,6-と2,7-DMNの選択性の増加は異性化の寄与が小さくなったためと考察した。HZSM-5の細孔内では炭素析出が抑制されるが, 外表面では容易に炭素析出が起こる13),14)。このことより, HZSM-5の細孔内では2-MNの不均化により選択的に2,6-および2,7-DMNが生成するが, これらDMNは外表面の酸点上で容易に1,6-DMNや1,7-DMNに異性化すると考察した。
    Table 3に示したように, 1-MNを原料に用いても不均化活性は2-MNを用いたときと同一で, 生成DMNの組成にも差はみられなかった。これに対して, 異性化活性は1-MNを原料に用いたときの方が2-MNを用いた場合よりも大となった。300°Cでのメチルナフタレンの平衡組成は1-MN:2-MN=31:69であることから, この高い異性化転化率は熱力学平衡組成の影響と考察した。
    Figs. 6, 7に示したように, HZSM-5では原料や反応の種類により活性劣化が異なった。2-MNを用いた場合にはHZSM-5は安定な不均化活性を示したが, 1-MNを用いた場合には経時的に減少した。これに対して, 異性化活性は原料によらず経時的に減少した。1-MNおよび2-MNの有効分子径はそれぞれ0.62, 0.58nmである。これらのことから, 2-MNはHZSM-5の細孔内に拡散できるが, 1-MNの細孔内への拡散や細孔内での生成は抑制されると考察した。
    以上のことより, HZSM-5では1-MNやα位にメチル基を有するDMNの細孔内への拡散および細孔内での生成は抑制され, MNの異性化やα位にメチル基を有するDMNの生成は外表面上で進行するが, 2-MNは細孔内で選択的に2,6-DMNおよび2,7-DMNに不均化すると結論した。
  • 種々の硫化触媒上に吸着した一酸化窒素のFT-IR/拡散反射法による研究
    山田 宗慶, 小原 寿幸
    1990 年 33 巻 4 号 p. 221-226
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, in-situ 拡散反射型セルを用いて, 硫化と還元を組み合わせた種々の前処理 (400°C) をCoMo/Al2O3触媒に施し, その時の表面状態の変化をその後吸着させた一酸化窒素(NO) 分子のIRスペクトル測定により調べ, 以前報告した触媒活性との関係について検討した.
    硫化処理を施した市販および自製のCoMo/Al2O3触媒上に吸着したNOのIRスペクトルを Fig. 1a), b) に示す。いずれの場合にも3本の吸収が観測されたが, これらのピークを同定するためにいくつかのブランク試験を行った。担体アルミナおよびこれに硫化処理を施したもの, 未処理触媒, 純MoS2およびCo9S8のいずれの場合においても吸着NOによる吸収は観測されなかった。硫化処理したMo/Al2O3, Co/Al2O3各単味触媒上には, 各々2本の吸着NOによる吸収が見られた (Fig. 1c), d))。触媒上のMo, Co種は, 硫化処理されることによってはじめてNO吸着に活性となる。各触媒上で見い出されたピークの波数を Table 1に示す。各単味触媒の結果との比較から, CoMo/Al2O3触媒における最も高波数側のピークはCo位に吸着したNOによるものであり, 低波数側はMoに吸着したものと帰属した。NOはダイマーあるいはジニトロシル種としてこれらに吸着する。吸着NOのピーク強度は前処理の種類およびその時間に強く依存している。Fig. 2は, 最初に硫化処理したCoMo/Al2O3触媒に吸着したNOのスペクトルを示したものである。硫化処理のみ (Fig. 3a)) では, Mo側のピークとCo側のピークが同程度に顕著である。硫化後の還元 (水素) 処理の時間が2時間から10時間と延長されても, Mo側が若干減少したようであるが, スペクトルの外観に大きな変化は見られなかった (Fig. 2b),c))。これに対して, 硫化処理の前に還元処理を施した触媒では, 最初に硫化処理を施したものに比べてCo側のピーク強度が著しく弱く, その後長時間硫化してもその強度は回復しない (Fig. 3b),c))。最初に水素に触れることによって触媒の表面構造が決定的に変化している (特にCoに対して顕著) と言える。実際, 還元処理のみでは, Co位のピーク強度が著しく弱かった (Fig. 3a))。
    このCo側およびMo側のNOのピーク強度値を, 以前報告した活性試験の結果と併せて Table 2に示した。Mo側のピーク強度と触媒活性との間には明瞭な関係は見あたらない。Fig. 4はCo側のピーク強度と各種活性データとをプロットしたものである。石炭液化油に対する水素化脱硫活性(HDS) とCoとの関係はそれほど強くないように見えるが, これはHDS転化率が100%に近く, 活性変化が小さいためである。液化油に対する水素化脱窒素 (HDN) および水素化活性(H8Ph), キノリンに対するHDN活性 (QnHDN) の何れもNOを吸着するCoと正の相関関係にあることがわかる。すなわち, これらの反応は表面Coの変化に敏感であると言える。最初に還元処理を施すことによって表面に存在するCoの位置あるいはその状態が変わり, このことが水素化, HDN活性の低下につながるものと考えられる。しかしながら, これらのことは表面Coのみが水素化, HDN活性に寄与していることを示しているのではなく, むしろ主触媒Moの活性を高めるためには適度な量のCoが表面に存在することが必要と考えられる。このようなCoが硫化処理時にMoとある種の対を形成し, それが触媒活性の促進と結びつくのであろう。
  • ベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に及ぼす触媒前処理と硫化水素の影響
    山田 宗慶, 石 玉林, 小原 寿幸, 阪口 浩司
    1990 年 33 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は種々の前処理を施したCoMo/Al2O3触媒を用いてベンゾチオフェン (BT) の反応を行い, 反応に対する触媒前処理の影響および反応中に硫化水素 (H2S) を添加した場合の影響を検討し, それらに基づいて活性点の性質を推定することを目的としている。
    市販のCoMo/Al2O3触媒に硫化 (400°C, H2S(5%)/H2), 還元 (400°C, H2) あるいは, これらを組み合わせた前処理を施してから反応に供した。反応条件は200°C, 10MPa, LHSV15~220h-1, H2 (あるいはH2S/H2) 流量300ml/min, H2/feed 1,000vol/volとした。
    反応生成物はエチルベンゼン (EB) と2,3-ジヒドロベンゾチオフェン (DHBT) であった。これら生成物の生成量の液空間速度依存性 (Fig. 1) から, BTの反応では水素化脱硫反応(HDS) と水素化反応 (HGN) が進行しており, HDSの経路は直接のものと間接のものとが並発しているとする従来のDaly らによって提案されている反応機構9)と矛盾しないことがわかった (Fig. 2)。EBおよびDHBT, 特にEBの生成量は触媒前処理に依存することが見い出された (Fig. 3)。Fig. 1から硫化触媒, 還元触媒上でのEB生成への選択率を計算してBTの転化率に対してプロットした (Fig. 4)。各触媒の水素化脱硫活性および水素化活性を比較するため, Figs. 3, 4の両者に基づいて同程度の転化率でのEBとDHBTの生成量を比較した。HDS活性は硫化触媒で最も高く, 以下硫化後還元>還元後硫化>還元≫未処理の順であった。この序列は触媒の硫化度と必ずしも単純な相関はなく, 触媒を最初に硫化したものと最初に還元したものとの二つのグループに分けると, それぞれのグループ内では硫化度と良い相関にあることが見い出された。著者らはすでに, 同じように処理した触媒に一酸化窒素 (NO) を吸着させFTIR法で観察した結果を報告しているが5), その結果から推測するとこれらのグループの差はCoの状態の違いを反映していると考えられる。HGN活性は前処理に鈍感であった。反応系内にH2Sを添加すると全転化率は変化しないがHDS活性は極度に低下し, それに対してHGN活性は増加した (Fig. 5)。このことからBTの水素化脱硫は主としてDHBTを経由する逐次反応であること, HDS活性点はHGN活性点と異なることなどが推定された。また, 以前報告している水素化脱窒素 (HDN) 活性に対する前処理および硫化水素の影響7)を今回のHDS活性に対するそれらの影響と比較すると, 水素気流中でのHDS活性の序列は硫化水素/水素気流中でのHDN活性の序列と良い平行関係にあることが見い出された。この関係に基づいて, CoとMoのペアが水素気流中ではHDS活性に, 硫化水素/水素気流中ではHDN活性にそれぞれ寄与しているものと推定された。
  • 西野 宏, 桑原 章史, 阿部 正彦, 荻野 圭三
    1990 年 33 巻 4 号 p. 234-240
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    非イオン界面活性剤を用いたミドル相マイクロエマルションの生成温度, 粒子径, 含水率に及ぼす各種アルコール並びに無機電解質の影響を検討した。
    ミドル相マイクロエマルションの生成温度は, メタノールやエタノールを添加すると高温側にシフトしたが, ブタノールやペンタノールを添加すると低温側にシフトした。また, 無添加系の最適生成温度におけるミドル相マイクロエマルションの含水率および粒子径は, メタノール, エタノール, プロパノール等の3種類のアルコールを添加すると増加した。一方, ブタノールやペンタノールの添加はミドル相マイクロエマルションの粒子径を増加させたが, 含水率を減少させた。
    一方, NaCl, Na2CO3, NaNO3, Na2SO4, MgSO4, CaCl2の添加はミドル相マイクロエマルションの最適生成温度を低下させ, 粒子径の増加および含水率の減少をもたらした。また, NaSCNやNaIの添加は, ミドル相マイクロエマルションの生成温度を上昇させ, 粒子径および含水率を増加させた。
    以上のことより, 最適ミドル相マイクロエマルションの生成条件およびその物性はアルコールの炭化水素鎖長あるいは無機電解質のアニオン種により著しく変化することが分かった。
  • 山崎 忠男, 仲前 昌人, 阿部 正彦, 荻野 圭三
    1990 年 33 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ドデシル硫酸ナトリウム/芳香族炭化水素/コーサーファクタント/塩水系の相挙動が, 塩濃度をパラメーターとして研究された。ミドル相マイクロエマルション生成の最適塩濃度は, 油相として用いた芳香族炭化水素の置換基の炭化水素鎖長 (ACN) および置換基数 (MSN) の増加に伴い増加した。さらに, ミドル相マイクロエマルションの最適生成塩濃度における可溶化パラメーター (σ) および見かけの流体力学的粒子半径 (r) は, 構造異性体には依存しなかったが, ACNおよびMSNの減少に伴い増加した。また, ミドル相マイクロエマルションと過剰相との界面張力 (γmin) はACNおよびMSNの減少に伴い減少した。
    これらのことから, 油/水界面における疎水性相互作用と親水性相互作用が共に強い系ほど, 界面張力が低下するため, 油と水の相互可溶化量 (可溶化パラメーター) は増大し, 見かけの流体力学的粒子半径 (r) も増大することが分かった。
  • 仲前 昌人, 阿部 正彦, 荻野 圭三
    1990 年 33 巻 4 号 p. 247-249
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ミドル相マイクロエマルションの相平衡速度に及ぼす硫酸アルキル塩並びにアルカンの炭化水素鎖長の影響が検討された。
    ミドル相マイクロエマルションの最適生成塩濃度における相平衡到達速度は, 硫酸アルキル塩の炭化水素鎖長 (SCN) の減少, あるいはアルカンの炭化水素鎖長 (ACN) の増加に伴い増加した。これは, 相平衡到達速度がミドル相中に過剰に可溶化されている水または油の放出速度と密接に関係しており, その放出速度が油/水界面における親水性相互作用と親油性相互作用の強度の減少に伴い増加するために起こるものと考えられる。
  • 抽出条件と抽出率, 選択率の関係
    請川 孝治, 松村 明光, 小寺 洋一, 近藤 輝男, 中山 哲男, 田邊 晴正, 吉田 紳吾, 美藤 裕
    1990 年 33 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 1990/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノール-水系溶媒を用いて常温常圧下でコールタール吸収油留分 (原料油) からの窒素化合物の抽出分離実験を行った。原料油とメタノールの混合油に水を添加すると, メタノールはそのほぼ全量がすみやかに水層へ抽出された。このとき, 原料油中に含まれる窒素化合物はメタノールに随伴されてメタノール-水層へ抽出された。メタノール/原料油比が高いほど窒素化合物の抽出率は高くなるが, 選択率は低下した。原料油/メタノール/水比が2/2/2(容積比) の場合, 抽出物 (メタノール-水層可溶分) のほぼ全量が窒素化合物であり, キノリン, イソキノリン, インドールの3成分の合計でも55%に達した。
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