ガス中蒸発法で調製したCo超微粒子(UFP)触媒を用いて, 液相フィッシャー•トロプシュ(FT)合成を行った。
UFP触媒と沈殿Co触媒でCo重量当たりの炭化水素の空時収率(STY)を比較すると, UFP触媒は沈殿Co触媒の1.4~2.4倍高い値を示した。また, みかけの活性化エネルギーはUFP触媒で16kcal/mol, 沈殿Co触媒では10kcal/molとUFP触媒の方が高い値を示した。このことは沈殿Co触媒では細孔内拡散が遅い過程になっていることを示唆している。
細孔内拡散の影響を検討するために, 細孔径の異なるSiO
2を用いて沈殿Co触媒を調製し活性試験を行った。その結果, Co重量当たりのSTY, 見かけの活性化エネルギーはSiO
2の細孔径の大きい触媒ほど大きくなっており, SiO
2の細孔径とSTY, 見かけの活性化エネルギーの間には相関があることが示された。このことより, UFP触媒は非細孔性のために沈殿Co触媒よりも高い活性を示すと考察した。
UFP触媒ではメタン生成の選択性が低く, 高沸点炭化水素が高い選択率で生成した。沈殿Co触媒では, 細孔径の大きなSiO
2を用いた触媒ほど高沸点炭化水素の選択性が高くなった。これは細孔径の大きいSiO
2を用いた触媒ほど, 生成物の拡散速度が大きく細孔内に滞留している時間が短くなり, 水素化や水素化分解などの二次的反応の影響を受けにくくなるためと考えられる。
以上のことより, Co UFP触媒は非細孔性のために液相FT合成に高い活性を示し, 高沸点炭化水素の生成に高い選択性を示すと結論した。
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