石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
37 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 上松 敬禧, 島津 省吾
    1994 年 37 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    合成粘土の層空間を修飾し金属錯体を活性種として導入して, 分子認識触媒機能を設計するための要素的方法の開発を行った我々の試みを中心にまとめた。膨潤性粘土の層状構造は金属錯体を導入して固定するのに好適な材料であり, 化学固定, イオン交換, 分子間力などによって活性種の層間への導入が可能である。さらに, 層間の反応場の修飾は"チューニングゲスト"の導入によっても可能であり, 層空間の幾何学的大きさ, 疎水/親水性や不斉反応場などの制御によって, 分子認識的触媒反応場が形成される。
    ここでは層間の反応場を利用する分子認識の要素的機能を個別に検討した結果, 層間錯体による脂肪族アルキンや脂肪族アルデヒドの鎖長選択水素化, 共役ジエン類に対する高選択的水素化, 芳香族アルデヒドの異性体の選択的水素化を見い出したほか, 多重修飾層間によるゲラニオールの位置選択水素化, 環状カルボニルのシスートランス選択水素化などに成功した実例を示す。
    また, われわれはホスト空間の修飾に際して, 触媒活性以外の機能を分担させる目的で導入するチューニングゲストの概念を確立して来たが, この第三のゲスト分子に不斉認識機能を分担させる方法を開拓し, さらに高度な分子認識である不斉認識反応場の開発を試みた。その結果, R-またはS-体のアルキルアンモニウムで不斉修飾した層間が, それぞれS-およびR-体のヘテロ対を形成する不斉認識を見い出した。さらに, 触媒配位子とチューニングゲストのキラリティーのヘテロな組合せ (R-S; S-R) が (-) ネオメントンの水素化により優れた不斉認識機能の発現を認めた。以上の結果から多重認識による高度分子認識触媒への道を提唱した。
  • 杉本 道雄
    1994 年 37 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    白金担持KLゼオライト触媒の改良を目的として種々の検討を行った。KLゼオライトを500°C, 2時間フロン処理した後, 白金を含浸担持した触媒 (Pt/FKL) が未処理触媒 (Pt/KL) と比べ, C6留分に対する高い芳香族化活性を示すことを見い出した。また, Pt/FKLは低い水素/C6炭化水素モル比 (0.5) の反応条件下においても, コーク生成速度は低く, 長い触媒寿命を持つことがわかった。CO吸着IR, XPS, XANES, EXAFS測定結果は, いずれもPt/FKL上の白金粒子がPt/KLよりも, 電子リッチな状態で存在していることを示した。これは白金粒子とKLゼオライトの酸素原子との相互作用が少ないことに起因する。またキセノン吸着NMR測定から, 含浸担持したPt/FKL, Pt/KLの白金はイオン交換にて担持したPt-KLとは異なり, ゼオライトの外表面に主に存在していることがわかった。そのためコークが細孔を閉そくすることによる失活は少ないと考えられる。以上の結果から, 本研究に用いたKLゼオライト触媒の細孔は, 反応の選択性にはそれほど寄与せず, 白金の電子状態が大きく寄与しているものと考えた。
  • 増田 昭夫, 石田 一弘, 柴田 潤一, 松村 泰男, 石川 倶通
    1994 年 37 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    1-アリール-1-フェニルエタンヒドロペルオキシド(APE-HPO) の硫酸存在下での分解を行ったところ, フェノール, 置換フェノール, アセトフェノンそして置換アセトフェノンが生成した。種々の置換基のこれら4種の化合物の生成比率への影響を検討した結果, 電子供与基を有するAPE-HPOの酸分解においては, フェノール, 置換アセトフェノンの生成に比較して, 置換フェノール, アセトフェノンが相当多量に生成し, また種々の置換基を持ったAPE-HPOの反応性はハメット式を満足し, ρ値は-1.23であった。その結果, 生成物組成および分解速度は置換基の電子供与性の大きさに支配されることが明らかになった。
  • 小西 誠一, 西 真悟, 中島 俊明, 横森 慶信
    1994 年 37 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    3種類の合成油, ポリαオレフィン (PAO), ジアルキルアジペート (DA), トリメチロールプロパンエステル(TMP) を基油とした場合のリン酸エステルおよびジチオリン酸亜鉛 (ZDP) の摩耗防止効果を四球試験により検討した。また, これら添加剤の合成油溶液から鉄粉への吸着性, および合成油中における加水分解性または熱分解性を検討した。
    これらの添加剤の合成油を基油とした場合の摩耗減少効果はPAO>DA≫TMPの順であった。TMPを基油とした場合はリン酸エステルは効果を示さず, ZDPは高い濃度において効果を示した。これらの添加剤の摩耗防止効果は摩擦面における添加剤と合成油の間の吸着性の相互関係に大きく左右された。また, 摩耗の減少には摩擦面へのリンの生成が寄与していると考えられた。
    リン酸エステルの加水分解性およびZDPの熱分解性は合成油に影響されたが, 摩耗減少効果の序列には影響していなかった。しかし, ZDPでは異常摩耗に関係していると考えられた。
  • 横山 千昭, 仁志 和彦, 大竹 勝人, 高橋 信次
    1994 年 37 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    超臨界メタノール中におけるジベンジルエーテル (DBE) の熱分解反応を行った。反応温度は643, 693K, 反応圧力は10, 15, 20MPaであり, DBEのモル分率が0.02と0.20の2種類の組成の反応原液を用いた。反応の主生成物はトルエンであり, 副生成物としてベンズアルデヒド, ベンジルアルコール, ベンジルメチルエーテルが得られた。超臨界メタノール中におけるDBEの熱分解反応はラジカル熱分解反応と, メタノールとの加溶媒分解反応が第一段階の反応として並発して起こり, さらに第一段階の反応生成物の第二段階目の反応も起きていることがわかった。推定される反応経路に基づいて導出された速度式を Runge-Kutta 法で解き, 最適の速度定数の値を Simplex 法により決定した。ラジカル熱分解反応および加溶媒分解反応の速度定数の値は圧力の増加にともない減少した。ラジカル熱分解速度が高圧になるほど減少するのは溶媒であるメタノールによるかご効果によるものと思われる。DBEの初期モル分率が0.20の場合の方が0.02の場合よりラジカル熱分解反応の速度定数の値が大きいことから, DBEの濃度が高くなるほど, ラジカルとDBEの分解生成物との間での反応の影響が大きいことがわかった。また, ラジカル熱分解反応と加溶媒分解反応により消失するDBEの割合を調べたところ, 高圧になるほど加溶媒分解反応によって消失する割合が大きくなることがわかった。
  • ジメチルシリコーンオイルの粘度増加の問題とその解決
    矢野 法生, 増田 定司, 寺岡 正夫
    1994 年 37 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ビスカスカップリングの普及に必要不可欠である安定性に優れたオイルの開発を目的に検討した。高粘度のジメチルシリコーンオイルの安定性をビスカスカップリングを用いた台上試験で調べた結果, 比較的低温においても粘度増加さらにはゲル化を起こすことがわかった。このジメチルシリコーンオイルのゲル化は, プレートの摩擦や摩耗粉(窒化鉄) が関係するビスカスカップリング特有の挙動であり, ゲル化防止には従来の耐熱向上剤では効果がほとんどなく, 特定の極圧剤が有効であることを見い出した。これらの知見に基づいて, 実用上, 極めて安定性に優れるビスカスカップリングオイルを開発した。
  • 神谷 佳男, 岡林 直也, 神山 統光
    1994 年 37 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    側鎖メチル基をもつ縮合多環芳香族およびp-クレゾールの塩基触媒自動酸化について研究した。t-BuOKを触媒としてHMPAなど塩基性溶媒を用いると, 縮合多環芳香族側鎖メチル基は, 9-メチルアントラセンを除き, 選択的に酸化されて対応するカルボン酸を生成した。酸化速度は塩基濃度に比例し, 基質の反応性の順序は次のようになった。9-MA>2-MA>9-MP>1-MN>2-MN。NaOHを塩基とすると, 芳香族炭化水素側鎖の酸化は遅いが, p-クレゾールの酸化は進行した。NaOH/CH3OH系でp-クレゾールを酸化すると, p-ヒドロキシベンズアルデヒドを選択的に生成した。Co粉末, Co(OH)2の触媒効果は顕著で, 収率は約75%に達した。
  • 液化油からの燃料および化学原料の製造
    佐藤 芳樹, 山本 佳孝, 加茂 徹, 三木 啓司
    1994 年 37 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    大型連続石炭液化プロセスで製造された豪州産•ワンドアン炭からの灯油および常圧軽油留分を取り上げ, 水素化処理および流動接触分解反応を実験的に検討し, 液化プロセスからの主な製品としてガソリンを考えた時の総ガソリン収率を試算した。液化油の水素化処理は通常の固定床流通式反応装置を用いて330~370°C, 水素圧100kg/cm2•GおよびLHSV 1h-1の条件で行った。また, 得られた水素化処理油についてASTMに準じて設計された小型試験装置を用いて, スチーミング処理済みのFCC触媒を使用して482°CおよびWHSV 16wt/wt/hの条件で接触分解反応を行った。予備水素化処理によって灯油および軽油中の窒素濃度を100~200ppmに低下させた場合には, 接触分解によるガソリン収率が各々54および45wt%に向上した。NEDOLプロセスでの製品収率分布によれば灯油, 軽油留分に接触分解を適用した場合, 総ガソリン収率は約37wt%に達した。さらに, 分解残油の性状を解析したところ, 各種二環芳香族炭化水素の混合物であることから, 脱アルキル反応によってナフタレンおよびメチルナフタレンに濃縮し, 化学原料として利用することを提案した。
  • 五十嵐 哲, 太田 道貴
    1994 年 37 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    内管にパラジウム-銀合金膜をもつ二重管型メンブレン反応器を用いて, イソブタン, n-ブタンおよびプロパンの低温脱水素のための触媒についての研究を行った。反応側で生成した水素は分離膜を透過し, 分離側で空気中の酸素と反応する。試験した触媒のなかで, Pt(0.5wt%)/ZnO触媒がイソブタンのイソブチレンへの脱水素のために最も高活性であった。この触媒の活性は通常の反応器を用いて得られる熱力学的平衡転化率に比較して高く, 450°Cで45%以上のイソブタン転化率とおよそ99%のイソブチレンへの選択率を示した。さらに, Pt(0.5wt%)/ZnO触媒はプロパンとn-ブタンの脱水素にも有効であった。しかしながら, Pt原料の塩化白金酸中に含まれる塩素によると考えられるPt/ZnO触媒の被毒と, 酸化によると考えられるパラジウム-銀合金膜の劣化が観測された。
  • 杉 義弘, 竹内 和彦, 花岡 隆昌, 松崎 武彦, 高木 悟, 土井 禎昭
    1994 年 37 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高機能性高分子中間体として期待されるビフェニル骨格を有するカルボン酸エステルの合成を行うために, 塩基およびエタノールの存在下, パラジウム-ホスフィン錯体を触媒として4,4'-ジブロモビフェニル(Ia), 2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナンスレン (Ib), 2,7-ジブロモフルオレン (Ic), 2,7-ジブロモフルオレノン (Id) および4,4'-ジヨードビフェニル (IV) 等の4,4'-ジハロビフェニルのエトキシカルボニル化を検討した。
    トリフェニルホスフィン (Ph3P) を配位子とするIaにおいてはPh3P/Pd(L/Pd) 比を調整することにより, 生成するビフェニル-4,4'-ジカルボン酸ジエチル (IIa) および4'-ブロモビフェニル-4-カルボン酸エチル (IIIa) 誘導体の比が変化した。すなわち, L/Pd=1近辺でIIIaの選択率が80%に達したが, L/Pd比が高くなるにつれ, 触媒活性およびIIaの選択率が増加し, 5以上ではほぼ一定になった。L/Pd比, 反応圧, 塩基量等の反応条件を最適化することによりIIaおよびIIIaをそれぞれ選択的に合成できることが分かった。一方, IVの場合は, L/Pd比を高くすると活性が低くなるが, 4'-ヨードビフェニル-4-カルボン酸エチル(V)の選択性は逆に向上した。
    キレート性ホスフィンであるα,ω-ビス(ジフェニルホスフィノ) アルカンPh2P(CH2)nPPh2(n=2~5) のうち, 特に1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン (dppp) および1,4-ビス (ジフェニルホスフィノ)ブタン (dppb) を配位子とするPd錯体は, Ph3Pを配位子とする錯体に比較して非常に高い活性を有し, 比較的低いCO圧下でもIaからIIaを高収率で生成した。本反応をIb, IcおよびIdに適用し, それぞれのジエステルを高収率で合成できることを見い出した。
    これらの事実より本反応の反応機構を考察した。
  • 加藤 恒一, 深瀬 聡
    1994 年 37 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ゼオライト系触媒を用いたライトナフサの芳香族化反応について研究した。MFI構造を有する亜鉛アルミノシリケートはコーク生成速度が最も遅く, 劣化が起こりにくかった。反応圧力を変化させた実験において, 低圧の方がコーク生成が少なく, 触媒の劣化も少なかった。これは, 同じく芳香族を作る反応としてよく知られている, 通常の接触改質反応とは異なる現象であった。この触媒は再生後の劣化がほとんど見られず, 安定であることが判明した。このような触媒の安定性をもとに, 通常の固定層反応器を使う新しいライトナフサ芳香族化プロセスの設計を行った。触媒の安定性を保つ上で非常に重要である再生時の層内温度分布が断熱式の大型装置ではどのくらいであるかを見極めるため, 伝熱計算を行った。商業規模の大型装置においても, 半径方向の温度分布は最大でも45°C以下であり, 触媒の安定性を損なうことなく再生可能と判断された。これらの検討結果をもとに, ライトナフサより芳香族を作る新しいプロセスを提案した。
  • A. A. H. EL-SAYED, M. S. AL-BLEHED, M. H. SAYYOUH
    1994 年 37 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    この研究の主な目的は, 二次元方向に均一な多孔質媒体を用いて, 水平坑井からアリカリ溶液を注入して, 油を回収する方法を調べることである。用いた油はサウジアラムコから得られたサファニヤ原油である。
    アルカリ攻法による三次回収においてアルカリ濃度が0.5%から1%までは回収量が増加したが, 1.5%では回収量は逆に低下した。水平坑井と垂直坑井を比較すると, 水平坑井の方がより多く油が回収された。ポリマーを使うと三次回収量はさらに増加した。
  • 古屋 武, 岩井 芳夫, 荒井 康彦, 三島 健司, 森井 正視, 長谷 昌紀
    1994 年 37 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ポリマー製造プロセスにおける分離, 後処理工程の設計にはポリマー系の相平衡データが重要となる。しかしながら, 低分子系に比べてポリマー系の相平衡データは少なく, 相平衡データの相関法や推算法が必要とされている。特に, ポリマーは分子量分布を有するため, 相平衡計算を行う際にはこれを考慮する必要がある。
    そこで本研究では, 低分子-ポリマー系の気液平衡をよく表現する Schotte の状態方程式を用いて, エチレン-ポリエチレン系の高圧気液平衡計算を行った。その際, ポリエチレンの分子量分布をガンマ分布関数を用いて近似することを試みた。また, ラゲール-ガウスの求積法を用いて擬成分組成を導いた。求積点数を変えて計算を行い, 文献値と比較したところ, ほぼ良好な計算結果が得られた。
  • 石油学会製品部会ガソリン分科会オクタン価要求値専門
    1994 年 37 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本調査は1992年型国産乗用車のオクタン価要求値分布を把握することを目的とし, (株)石油産業技術研究所の依頼により実施された。試験はJPI-6S-6-84に準拠し, 低速法でのオクタン価要求値分布を正標準燃料および全沸点型標準燃料 (混合系) の計2種で, 試験車13車種59台を対象に実施した。統計処理は'91年度の調査結果のうち仕様変更なく引き続き販売されている13車種49台の結果を加えて行った。その結果, 正標準燃料における低速法オクタン価要求値分布は50および90%充足率でそれぞれ91.2および95.3オクタンであった。これは前年度の50および90%充足率の値より1.9および1.1オクタン高い。
feedback
Top