高機能性高分子中間体として期待されるビフェニル骨格を有するカルボン酸エステルの合成を行うために, 塩基およびエタノールの存在下, パラジウム-ホスフィン錯体を触媒として4,4'-ジブロモビフェニル(
Ia), 2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナンスレン (
Ib), 2,7-ジブロモフルオレン (
Ic), 2,7-ジブロモフルオレノン (
Id) および4,4'-ジヨードビフェニル (
IV) 等の4,4'-ジハロビフェニルのエトキシカルボニル化を検討した。
トリフェニルホスフィン (Ph
3P) を配位子とする
IaにおいてはPh
3P/Pd(
L/Pd) 比を調整することにより, 生成するビフェニル-4,4'-ジカルボン酸ジエチル (
IIa) および4'-ブロモビフェニル-4-カルボン酸エチル (
IIIa) 誘導体の比が変化した。すなわち,
L/Pd=1近辺で
IIIaの選択率が80%に達したが,
L/Pd比が高くなるにつれ, 触媒活性および
IIaの選択率が増加し, 5以上ではほぼ一定になった。
L/Pd比, 反応圧, 塩基量等の反応条件を最適化することにより
IIaおよび
IIIaをそれぞれ選択的に合成できることが分かった。一方,
IVの場合は,
L/Pd比を高くすると活性が低くなるが, 4'-ヨードビフェニル-4-カルボン酸エチル(
V)の選択性は逆に向上した。
キレート性ホスフィンであるα,ω-ビス(ジフェニルホスフィノ) アルカンPh
2P(CH
2)
nPPh
2(n=2~5) のうち, 特に1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン (dppp) および1,4-ビス (ジフェニルホスフィノ)ブタン (dppb) を配位子とするPd錯体は, Ph
3Pを配位子とする錯体に比較して非常に高い活性を有し, 比較的低いCO圧下でも
Iaから
IIaを高収率で生成した。本反応を
Ib,
Icおよび
Idに適用し, それぞれのジエステルを高収率で合成できることを見い出した。
これらの事実より本反応の反応機構を考察した。
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