石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
40 巻, 6 号
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  • 加藤 邦夫, 高 士秋
    1997 年 40 巻 6 号 p. 443-453
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    粉粒流動層を用いて乾式排煙脱硫とNH3触媒還元脱硝法を組み合わせた, 新しい乾式同時排煙脱硫脱硝プロセスの開発を行った。このプロセスでは, 粉粒流動層反応器を用いて, 微粒子脱硫剤によりSOxを除去し, 粗粒子脱硝触媒を用い, NH3還元法によりNOxをN2に還元した。粉粒流動層は内径0.053m, 分散板からの高さ1.0mのステンレス管である。本研究では, 脱硫剤として酸化鉄ダスト (製鉄の副生成品), ナトリウムベースの脱硫剤 (炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウム), 銅ベースの脱硫剤 (CuOとCuO•V2O5/Al2O3とCuO•V2O5•K2SO4/Al2O3) を用いて, 三種類の微粒子脱硫剤を評価した。粗粒子媒体粒子として不活性のシリカサンドと脱硝触媒 (WO3/TiO2とV2O5•WO3/TiO2) を使用した。脱硫率と脱硝率に及ぼす操作条件および脱硫剤と脱硝触媒の影響を調べた。酸化鉄ダストは安価な脱硫剤と脱硝触媒として利用できる可能性を示した。ナトリウムベースの脱硫剤と銅ベースの脱硫剤はかなり高い脱硫活性を持っていた。粉粒流動層反応器を用いて, 高効率に乾式同時排煙脱硫脱硝が行えることが分かった。本プロセスでは, 適当な微粒子脱硫剤と粗粒子脱硝触媒を組み合わせて90%以上の脱硫率と脱硝率が得られた。
  • 河瀬 元明, 橋本 健治
    1997 年 40 巻 6 号 p. 454-464
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    擬似移動層型クロマト分離装置は, 連続クロマト分離装置の一種であり, すでに工業的規模の2成分分離に用いられている。本装置を反応分離装置として使用することにより, クロマトグラフィックリアクターの連続化が可能であった。2種類の生成物を生じる平衡反応に擬似移動層型反応器を適用する例として, 酢酸β-フェネチルの製造を行った。プロトン型イオン交換樹脂を触媒兼吸着剤として用いたところ, 平衡反応率の63%を超える99%の総括反応率でエステルを得ることができた。また, 異性化反応への適用例として, 異性化糖からの高果糖液糖の製造を行った。吸着剤としてY型ゼオライトを使用し, 装置の一部に固定化酵素反応器を組み込んだ擬似移動層型反応分離装置で実験を行ったところ, 単純な分離プロセスよりも高い果糖分率をもつ液糖を製造できた。このように, 擬似移動層は工業的反応分離装置として有効であることが示された。また, 間欠移動層モデルと連続移動層モデルの2種類の数値モデルを提案し, それぞれの系について数値シミュレーションを行ったところ, 実験値との良好な一致が得られた。
  • 横山 千昭, 仁志 和彦, 高橋 信次
    1997 年 40 巻 6 号 p. 465-473
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    超臨界流体中におけるエーテル化合物の熱分解反応に対する溶媒効果を調べるために亜臨界水および超臨界水, ならびに超臨界メタノールの溶媒中におけるベンジルフェニルエーテル (BPE) の熱分解実験を行った。実験温度範囲は593~648K, 溶媒密度範囲は2.2~21.7mol/dm3であり, 反応時間は180~2400秒である。水を溶媒とする反応では反応温度593Kの場合, 亜臨界状態であり, その他の実験条件下では溶媒は超臨界状態である。生成物の選択性は生成物の収率とBPEの転化率のプロットから決定した。生成物の収率の挙動より, 亜臨界水, 超臨界水中の反応では熱分解と加水分解が並発しているが, 超臨界メタノールの反応では熱分解のみが進行していることが分かった。Wuらが超臨界メタノール中における反応解析のために提案した素反応モデルに, 新たに加水分解反応を追加したモデルを用いて亜臨界水および超臨界水中での反応の解析を行った。実験データに基づいて, 素反応モデルに用いているC-O結合の解裂反応, 水素引き抜き反応, ラジカル再結合反応, 加水分解反応の4種の素反応の速度定数の値を決定した。各素反応の速度定数の密度依存性について考察した。
  • 渕野 哲郎, 村木 正昭
    1997 年 40 巻 6 号 p. 474-481
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    コンビナートの初期計画段階では, コンビナートを構成するプラントの組み合わせと各プラントの生産能力(プラント構成) を決定するが, 従来あるプラントの製品, 副製品が別のプラントの原料となるといった連産品の特徴から, プラント間の物質収支に基づき最適化されてきた。一方, プロセスプラントには, 加熱を必要とする流体と冷却を必要とする流体が多数存在し, 流体の温度帯がプラントによって異なることから, 十分な省エネルギーを達成するためには, 熱量的にバランスする生産能力を有し, 熱力学的に相性の良いプラント間の熱回収が有効である。したがって, プラント構成の決定には, 本来プラント間の物質収支と熱収支を同時に考慮して最適化する必要があり, 本研究はその基礎として, 省エネルギーを考慮したプラント構成の決定法の開発を目的とした。計画段階では, 候補となるプラントが列挙され, 各プラント内の流体に関する情報が与えられる。さらに, コンビナートの中心となる必須プラントが存在し, このことからプラント構成の決定問題は, この必須プラントに対し各候補の相対生産能力を決定変数とする最適化問題となり, 必要となる熱収支式を決定変数の線形和で表現することにより, 分数計画モデルとして定式化し, その有効性を例題を用いて示した。
  • すすの動弁系摩耗への影響
    加賀谷 峰夫
    1997 年 40 巻 6 号 p. 482-487
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    排出ガス対策としてEGRなどのNOx低減対策が採用された場合, エンジン油中のすすが増加し, このすすによる動弁系摩耗増加が懸念される。OHC (オーバーヘッドカムシャフト) 型乗用車の動弁系摩耗に関してその現象を詳細に検討した。ロッカーアーム摩耗量はすす濃度に比例して増大するが, その大部分はピボットとの当たりによる摩耗であり, カムシャフトと当たるパッド面は時間とともに平滑化することを明らかにした。その摩擦面の表面観察から, 動弁系の摩耗機構としてすすに付着した酸などによる腐食摩耗を考慮する必要があることを提案した。
  • すすの動弁系摩耗機構に対する考察
    加賀谷 峰夫
    1997 年 40 巻 6 号 p. 488-493
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    第1報では, OHCエンジンのロッカーアームパッドの表面観察から, 動弁系の摩耗機構としてすすに付着した酸などによる腐食摩耗を考慮する必要があることを提案した。本稿ではディーゼルエンジン試験使用油の分析から, すすが酸性物質の吸着能が極めて高い物質であることを確認し, すすが酸性物質のキャリヤーとしての作用を有することを裏付けた。また, 既に発表されている『すすによる添加剤吸着説』および『すすによる極圧被膜研削説』に対して意見を述べ, ディーゼルエンジンの動弁系摩耗がエンジンの種類や材質によって異なることから, 動弁系の異常摩耗を支配するのは一義的には添加剤組成であり, すすは二義的に関与することを提案した。
  • すすの摩耗促進機構への新たな提案
    加賀谷 峰夫, 香川 朋彦, 高橋 裕一
    1997 年 40 巻 6 号 p. 494-499
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    排出ガス対策として, EGRや燃焼噴射時期遅延などNOx低減対策を採用した場合に油中すすが増加し, すすによるエンジンへの悪影響 (特に動弁系摩耗) が懸念された。このため前報ではOHC (オーバーヘッドカムシャフト) 型乗用車の動弁系摩耗に関してその現象を詳細に分析し, すすとの関連を明らかにした。本報では, 油中すすの摩耗促進機構についてさらに検討するため, カーボンブラックを用いた実験室摩耗試験 (四球試験) を行った。その結果, すすがZDTPの分解を早めることを確認し, 動弁系摩耗機構の一つとして, すすによる油劣化促進説を提案した。
  • 永井 正敏, 宮田 陽, 宮尾 敏広, 尾見 信三
    1997 年 40 巻 6 号 p. 500-509
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    12.5%MoO3/Al2O3の窒化触媒におけるカルバゾールの水素化脱窒素に対する活性を反応温度280~360°C, 全圧5~15MPaで研究した。NH3気流中で12.5%MoO3/Al2O3を昇温窒化後, 500, 700および900°Cの窒化温度, 0.1および0.5MPaのNH3圧, さらに4および15l/h-1のNH3流量で窒化処理した。室温までNH3気流中で冷却し, 1%O2/Heで12時間不動態化処理した。700°Cおよび900°Cで窒化処理した触媒から窒素を除去するのは困難で, 700°Cで排気しても触媒中には窒素が残存した。900°C窒化処理触媒が最大活性で, 700°C窒化処理触媒は第2番目の活性を示した。500°Cで窒化した触媒および水素で還元した触媒の活性は同程度であった。MoO3/Al2O3の窒化処理はH2還元処理よりもC-N水素化分解の選択性を向上させた。水素化脱窒素反応において, 外部物質移動は無視できた。脱窒素反応速度は3~9MPaの水素圧および0.02~0.35wt%のカルバゾール初期濃度に関してそれぞれ0.9および0.7次であった。硫黄化合物はプロトン親和力にしたがってカルバゾールの水素化脱窒素反応を阻害した。XPS研究から, モリブデン種はMo4+からMo6+まで広く分布し, また窒素種は多くの窒化物, 吸着窒素およびNHxなどを含んでいた。
  • 藤本 尚則, 佐藤 一仁, 吉成 知博, 金田一 嘉昭, 稲葉 仁, 羽田 政明, 浜田 秀昭
    1997 年 40 巻 6 号 p. 510-515
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    イオン交換サポナイトのプロペンによる酸素共存下のNO2選択還元活性を調べたところ, 水蒸気共存下でプロトン型サポナイトが極めて高い還元活性を示した。NO2還元活性は水蒸気の共存により大幅な活性向上を示したので, この時の水蒸気の効果について検討を行った結果, 水蒸気は触媒表面を被覆する炭素種を除去する効果を有することがわかった。プロトン型サポナイトは, 酸化マンガンを物理混合することによりNO選択還元に対しても高活性な触媒となることがわかった。この物理混合触媒においては, 他の数種の炭化水素も有効な還元剤となった。
  • アルミナ担持ルテニウムカルボニル-アルカリ土類金属水酸化物系より調製した水素化脱硫触媒
    石原 篤, 浜口 浩一, 加部 利明
    1997 年 40 巻 6 号 p. 516-523
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アルミナ-担持ルテニウムカルボニル系触媒を用いたジベンゾチオフェン (DBT) の水素化脱硫反応において, アルカリ土類金属水酸化物 (Ca(OH)2, Sr(OH)2およびBa(OH)2) の触媒活性および生成物選択性に及ぼす影響を検討した。触媒活性およびビフェニルへの選択性は, アルカリ土類金属水酸化物の添加量の増加に伴い向上した。Ba(OH)2を用いた場合, DBTの転化率はBa/Ru=1で最大値を示した。これに対して, Ca(OH)2を用いた場合には, Ca/Ru=0~2の範囲で明確な最大値を示さなかった。M/Ru=1(M=Ca, SrおよびBa) において, DBTの転化率はCa(OH)2<Sr(OH)2<Ba(OH)2の順に向上した。Ba(OH)2を用いた場合の結果をCsOHの場合と比較した時, 添加した水酸イオンとルテニウムの比 (OH-/Ru)が2の時, いずれの場合もその金属を用いた場合の最大活性が得られた。XPスペクトルを測定した結果, 適当な量のアルカリ土類金属あるいはセシウムの添加によって, 水素加圧下でさえルテニウムの硫化物が担体上に安定化されることを示した。
  • 橋本 公太郎, 山田 洋大, 大野 芳生, 新井 充, 田村 昌三
    1997 年 40 巻 6 号 p. 524-528
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, 2,2-ジニトロプロパンのセタン価向上機構およびニトロアルカンの中で2,2-ジニトロプロパンのみがセタン価向上効果を示す理由について解明することを目的としている。本研究では, ニトロアルカン類のセタン価向上効果についてCFRエンジンにより測定し, 2,2-ジニトロプロパンのみがセタン価向上効果を有することを確認した。次に, 2,2-ジニトロプロパンの高速熱分解実験による熱分解生成物をFT-IRにより同定し, 2,2-ジニトロプロパンの初期熱分解機構はC-NO2結合開裂により2-ニトロ-2-プロピルラジカルおよびNO2ラジカルの生成であることを示した。また, 分子軌道計算によるニトロアルカン類のC-NO2結合解離エネルギー計算の結果, 2,2-ジニトロプロパンが他のニトロアルカンより小さい結合解離エネルギーを有することを確認した。以上の結果から, 2,2-ジニトロプロパンの熱分解で生成する2-ニトロ-2-プロピルラジカルがディーゼル燃料の前着火段階のラジカル連鎖反応を促進することによりセタン価向上に寄与すると考えられる。また, ニトロアルカン類で2,2-ジニトロプロパンのみがセタン価向上効果を有するのは小さいC-NO2結合解離エネルギーを有するため, 熱分解によるアルキルラジカル生成速度が大きいことに起因するものと考えられる。
  • デモンストレーションプラントによる実証化
    加藤 恒一, 深瀬 聡, 石橋 泰, 山本 学
    1997 年 40 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    固定床による新しいライトナフサ芳香族化 (LNA) プロセスを開発するため, 2250 BPD規模のデモンストレーションプラントによる実証化研究を行った。
    ペンタンを主成分とするライトナフサの芳香族化反応は, 従前は触媒の劣化が激しいため連続再生型か, またはスウィング再生型の反応器を用いるものであった。
    新規に開発されたゼオライト触媒を充てんした固定床反応器を中心とする実証化プラントにより転化率95wt%以上, 芳香族収率50wt%以上を与える1000h以上の長期連続運転が達成された。実証化プラントは, 通常タイプの重質ナフサ改質用の固定床プロセスの反応セクションを転用して建設され三個の断熱反応器および生成物の分離セクションを備えている。触媒再生は反応を中断して行う半再生式である。
    再生後の触媒を抜き出して, 物性, 活性を測定し, 本触媒の安定性を確認した。
  • 佐野 守宏
    1997 年 40 巻 6 号 p. 534-538
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油•天然ガス井の掘削に使用されている掘削泥水には, 掘削に必要な特性を調整するために種々の添加剤が使用されている。その添加剤の一つとして, ある特定の分子量範囲のポリプロピレングリコールは, 掘削泥水の水和抑制機能と潤滑機能を高めると同時に, 泥水の流動特性や脱水特性などを改善することも実験的に明らかになり, 多機能を備えた汎用性のある泥水添加剤として実用化の見通しを得た。潤滑機能については, 既存の泥水潤滑剤と併用することにより大きな相乗効果が得られることも分かった。
    以上の実験結果に基づき, ポリプロピレングリコールを水平坑井と大偏距井の実掘削に使用した。水平坑井と大偏距井の掘削に使用される泥水には, 高い潤滑機能と掘削裸坑部の安定維持機能が強く要求されているが, ポリプロピレングリコールの添加後は泥水の潤滑係数と泥壁の抑留係数が大幅に低減するなど, これらの要求はほぼ満たされた。掘削中, ドリルストリングに掛かるトルクやドラグの異常や, 掘削後の坑径拡大もほとんどなく, 実坑井の掘削にもポリプロピレングリコールの有効性が実証された。
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