石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
40 巻, 4 号
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  • 乾 智行
    1997 年 40 巻 4 号 p. 243-251
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    天然ガスから液体燃料を効率よく合成するための新触媒とその適切な使用法の開発研究を行った。まず, メタンを合成ガスに高速で改質するための触媒として, セラミックス繊維不織布の上に担持したNi-Ce2O3-Pt-Rh触媒を開発した。反応ガス中にエタンやプロパンを適量添加して, 触媒燃焼を優先的に起こらせ, その発熱で改質反応の吸熱をオンサイトで補償させながら, 400~500°C付近の低い炉温でも触媒層の温度を700°C程度に上昇させて, 合成ガスを空時収量にして25,000mol/l•hに達する値で得た。ついで, Cu-Zn-Cr-Al混合酸化物をGaとアルミナ担持Pdで同時修飾した触媒によって, 合成ガスを80気圧, 290°C, ガス空間速度37,600h-1の条件で通じて, メタノールを空時収量6620g/l•hで得た。CO2•H2混合気からも1410g/l•hという極めて高い空時収量に達した。さらに, これらの生成物と未反応の原料とを分離することなく全量を直列に連結した反応器に導き, メタノールのガソリンへの変換を行った。この反応器には, MFI型のGa-シリケート触媒を充てんして, 15気圧, 320°Cで反応させ, メタノール転化率100%にて非芳香族性のガソリン留分の選択率63%, 空時収量1860g/l•hという前例のない高収率を, 一回通過の反応操作で実現させた。
  • 火山性貯留岩中の軽質炭化水素の起源に関する基礎的研究
    坂田 将
    1997 年 40 巻 4 号 p. 252-262
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    国内産天然ガスの主要な生産量を占めるグリーンタフ地域の天然ガスについて軽質炭化水素の起源に関する地球化学的検討を行った。非生物起源の可能性が指摘されている火山性貯留岩 (VRR) のガスは, 同じ地域のたい積性貯留岩 (SRR) のガスに比べて, ヘリウムの同位体比が顕著に高く, マントル起源の特徴を保有している。しかしながら, メタンをすべて生物起源と仮定しても, マントル起源 (ヘリウムのみ) と生物起源 (メタンと地殻起源のヘリウムを含む) の2成分混合を想定することにより, VRRのガスのヘリウムデータ (同位体比と濃度) を合理的に説明することができる。炭化水素成分に関しては, すべての天然ガスについてメタンの炭素同位体比が-30‰より低く, これまで知られている非生物起源のメタン (>-20‰) とは明瞭に区別される。また, メタン~プロパンの分子組成とメタンの炭素同位体比の関係, メタンの炭素同位体比と水素同位体比の関係, メタン~ブタンの成分間の炭素同位体比の関係のいずれからも, 天然ガスの軽質炭化水素は貯留岩の種類に関係なく生物起源であり, 石油やケロジェンの熱分解で生じた軽質炭化水素と, バクテリアによる二酸化炭素の還元で生じたメタンが, 様々な割合で混合したものと推定された。VRRのガスに含まれる軽質炭化水素は貯留岩周辺の泥質たい積岩から移動してきたものであり, 共存するVRRの石油からバイオマーカーが検出されたことも, このような炭化水素の移動を裏付ける証拠と考えられる。
  • 町田 基, 小野 重好, 服部 英
    1997 年 40 巻 4 号 p. 263-271
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Ni-Mo/Al2O3系触媒にて石炭液化油中に含まれる代表的含窒素化合物であるアニリンとピリジンの水素化脱窒素 (HDN) を連続流通式反応装置にて調べた。HDN反応はピリジンとアニリンをそれぞれ別々の系で反応させた場合と実際の石炭液化油のように同一の系で反応させた場合の2通りについて調べた。ピリジンとアニリンの水素化脱窒素 (HDN) を比較すると, 別々の系での反応ではアニリンの脱窒素の方が速く進むが, 同一の系ではむしろアニリンの脱窒素はピリジンによって阻害され, ピリジンの脱窒素が相対的に速く進む。このようなピリジンとアニリンの反応特性はラングミュアー型の競争吸着機構で説明できる。本検討ではラングミュアー型の競争吸着式 (反応速度式) を作成し, アニリンとピリジンの触媒活性点への吸着平衡定数と反応速度定数を反応動力学的に求めた。得られた一組の吸着定数と速度定数を用いることにより, アニリンとピリジンのHDN反応は別々の系で反応させた場合も同一の系で反応させた場合も定量的に予測できる。
  • 永井 正敏, 小泉 賢治, 尾見 信三
    1997 年 40 巻 4 号 p. 272-281
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    チオフェンの水素化脱硫反応に対するRu/Al2O3触媒の脱硫活性を常圧下で, 流通式微分反応管を用いて研究した。触媒の表面特性はNH3-TPD, XPSおよびIR分光法を用いて検討した。Ru/Al2O3触媒は3種類の前処理を施した。すなわち, 空気酸化とそれに続く水素還元 (Ru-OR触媒), 水素還元(Ru-R触媒), および10%H2S/H2硫化 (Ru-S触媒) である。いずれの触媒についても300°Cの前処理温度で最高活性となった。10%H2S/H2流通下, 300°Cで硫化処理した。Ru/Al2O3触媒はチオフェンの水素化脱硫反応に対して高活性を示したが, 400°Cで硫化処理すると活性は著しく低下した。NH3-TPD実験においてNH3脱離ガス (低, 中温度域) の2本のピークとN2とH2の1本のピーク (高温度域) が観察された。XPS分析から, この低, 中, 高温度ピークはRuO2, アルミナ上の酸点およびRu金属サイトからの脱離ガスに帰属された。質量分析により, NH3-TPDの高温ピークはRu金属サイト上に吸着したNH3の分解によって生成したN2とH2であることが判明した。また, FTIR研究から, NH3-TPDの低温度ピークは Lewis 酸点と関係があった。さらに, Ru/Al2O3触媒のチオフェンに対する活性はNH3-TPDで測定した表面酸性度よりも触媒表面のRu金属に依存した。
  • 笠原 彰彦, 天野 隆明, 徳光 克也, 森吉 昭博
    1997 年 40 巻 4 号 p. 282-290
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, 舗設したアスファルト混合物の品質で極めて重要となる転圧作業において, 転圧機種やその転圧方法に関わる要因が転圧後のアスファルト混合物の空げき率および力学特性に対して与える影響について検討を行ったものである。また, その結果を基にこれらの影響によりアスファルト混合物がどのような過程で締め固められるのかについても検討を加えた。
    その結果, アスファルトフィニッシャーの敷きならし方向に対するローラーの転圧方向はアスファルト混合物の空げき率に著しい影響を与えていること, アスファルト混合物の圧裂強度 (破壊強度) は空げき率の減少により増加するが, 転圧方向はその増加割合に対しても影響を及ぼすことなどを明らかにした。また, これらを基に通常の施工におけるアスファルト混合物の締め固めの推移を推定した結果, 転圧過程においてアスファルト混合物が締め固めとゆるみの作用を繰り返し受けながら締め固まることを明らかにした。
  • 阿尻 雅文, 柴田 隆次, 新井 邦夫
    1997 年 40 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールA (以下, BPA) タールを超臨界水中で加水分解し, フェノールを回収するプロセスの可能性を検討した。まず, BPAの超臨界水中での分解実験を673K, 20~38MPaで行った。超臨界水中ではBPAは加水分解し, 2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロパノール(HPP)とフェノールを生成する。HPPは, さらに加水分解してフェノールを生成するか, あるいは脱水して安定な4-イソプロピルフェノール(IPP)を生成する。超臨界水中で水密度を増大させるにしたがい, HPPの加水分解が支配的に生じ, その結果, 高いフェノール収率が得られた。これは, 水密度の増大とともに誘電率が増大すると, 反応物質と比較して極性の高い反応中間体がより安定化され, それにより加水分解反応が促進されるためと考える。
    実際のBPAタールの超臨界水処理についても実験を行い, フェノール回収の可能性を検討した。アルゴン中で熱分解すると重合物が生成したが, 超臨界水中では見られなかった。超臨界水中では, 圧力を増大させ水の密度を高くするほど, 高速でしかも高いフェノール収率が得られた。最大フェノール収率は原料タールの40wt%以上であり, これはタールのフェノール骨格のおよそ60wt%程度に相当する。超臨界水処理によるBPAタールからのフェノールの回収プロセスの経済性が現れると推定される30wt%以上の高濃度BPAタール処理においても, 同様に高いフェノール収率と重合物の生成抑制が確認できた。
  • 範 立, 宮内 理治, 藤元 薫
    1997 年 40 巻 4 号 p. 298-308
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アルミナに担持したルテニウム触媒の空気焼成温度が変わると, 金属分散度など触媒物性が変化したので, 担持ルテニウム触媒を用いた Fischer-Tropsch 合成の反応挙動も大きく変化した。この反応挙動は低温焼成触媒と高温焼成触媒の二つのパターンに分けられる。アルミナに担持したルテニウム触媒上の Fischer-Tropsch 合成反応は構造敏感反応であった。超臨界流体を用いて反応後の触媒層に残された高分子量炭化水素を抽出して分析したが, 炭素連鎖成長確率とオレフィン/パラフィン比は金属分散度に大きく依存することが分かった。合成ガスに水を添加すると, 炭素連鎖成長確率とオレフィンの割合は増加した。一方, 合成ガスにエチレンを添加すると, 低温焼成の触媒ではアルコール, アルデヒドなど含酸素化合物の生成が見られ, 高温焼成の触媒ではこのような含酸素化合物の生成はできなかった。吸着COとルテニウム表面の結合の強さがルテニウム粒子のサイズに制御され, 反応成績に影響した。
  • ジメチルシリコーンオイルのゲル化と分解による劣化挙動
    矢野 法生, 白倉 幹夫, 福原 郁男
    1997 年 40 巻 4 号 p. 309-317
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ビスカスカップリングの中で, ジメチルシリコーンオイルがトライボケミカル反応によりゲル化し粘度増加することを前報までで明らかにしてきた。本報では, ゲルの形態を調べ, 劣化挙動を総合的に概括することを目的に研究した。ビスカスカップリングを用いた実機台上試験を行い, 試験後オイルを詳細に分析したところ, 生成したゲルはサブミクロン程度の微小であり, さらにゲルを除いたオイル部分は粘度が低下していることが観察された。すなわち, ジメチルシリコーンオイルはゲル化と並行して低分子化を起こし, 劣化オイルは低粘度化したオイルと, その中でくっつきあって存在する微小ゲルとからなることがわかった。粘度への影響はゲルの方が支配的で, 無添加のジメチルシリコーンオイルは増粘傾向を示す。特定の硫黄系極圧剤を添加したオイルではゲル化が防止され, 分解による粘度低下のみが観察された。また, ゲル化により粘度増加したものは, 100s-1までの比較的低せん断速度領域での見かけ粘度の低下が著しいことを示した。
  • ジメチルシリコーンオイルの粘度低下の問題とその解決
    矢野 法生, 白倉 幹夫, 福原 郁男
    1997 年 40 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ジメチルシリコーンオイルの高温での分解に対する温度や添加剤などの影響を明らかにし, その防止対策について検討した。高温での分解による粘度低下は密閉加熱試験により調べた。無添加のジメチルシリコーンオイルにおいて, 約170°C以上になると分解による粘度低下が顕著に認められた。硫黄系の極圧剤は分解による粘度低下を促進し, この極圧剤を添加したオイルでは150°Cでもかなりの粘度低下を示した。そして, 過塩基性清浄分散剤が分解による粘度低下を抑制し, さらに分解に対する極圧剤の作用さえ打ち消した。一方, ビスカスカップリングのプレートの表面に存在し, ゲル化を促進する窒化鉄は, 分解に対してはむしろ抑制効果を示した。ビスカスカップリングを用いた実機台上試験でも分解が起こっており, 極圧剤と過塩基性清浄分散剤を添加したオイルは, 極圧剤のみの添加の場合と比べて, 粘度低下が小さいことを確認した。
  • 山本 洋司, 橘 武史
    1997 年 40 巻 4 号 p. 325-328
    発行日: 1997/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    内燃機関の代替燃料として, メタンを主成分とする天然ガスが注目され, 我が国でも既に千台程度の天然ガスエンジン自動車が導入されている。しかし, メタンは炭化水素系燃料で最も燃焼速度が遅く, これが今後の改良の障害の一因となることがしばしば指摘されている。他方, 現在の火花点火機関の燃料の主流であるガソリンの燃焼速度の詳細にわたる報告はほとんど見当たらない。そこで, 高温•高圧下での燃焼速度も得られる球形容器法を用いて両者の燃焼特性の比較を行った。また, 燃焼特性改善のため, メタンに容積割合で20%水素を添加したものの燃焼速度も測定した。その結果, (1)常温, 常圧での燃焼速度はガソリンの方がメタンより若干速く, 過濃側での差が大きい, (2) 温度上昇に伴い燃焼速度が上昇する傾向は類似している, (3)圧力が上昇するに従い燃焼速度は低下するが, ガソリンの方がその傾向が強い, (4)定容燃焼終了時圧力はガソリンの方が10%程度高い, (5)メタンに水素を20%添加することで燃焼速度が約25~35%上昇するが, 傾向はメタンと基本的に同じ, であることが示された。
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