石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
42 巻, 4 号
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  • 佐藤 光三
    1999 年 42 巻 4 号 p. 181-191
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    境界要素法の高い計算精度と計算効率は支配方程式に対する基本解の存在に依っているが, 不均質性問題に対しては基本解の導出が困難であるため, 通常の境界要素法を適用することはできない。この欠点を克服し, その適用範囲を広げるために特殊な境界要素法の開発がいくつか報告されており, 本論文ではその中から加速摂動境界要素法ならびに複素変数境界要素法を紹介する。
    加速摂動境界要素法は連続的不均質問題に対して開発されたものである。支配方程式は基本解の得られている多次の摂動式に分解され, それぞれに境界要素法を適用し摂動解を導く。元の方程式に対する解は, 摂動解を足し合わせることによって得られるが, その際, Padé 近似を適用することによって, 解の収束性を改善することができる。一方, 複素変数境界要素法は天然き裂のように離散した不均質問題に対して開発されたものである。き裂の両端に見られる特異な流動挙動を実空間でモデル化することは困難であるが, 等角写像によりこの問題を簡便かつ正確に処理することができる。写像空間で得られた特異解と現実の物理空間で得られる非特異解とを結び付ける上で, 複素変数を用いた計算手順が適している。
    これらの特殊境界要素法の実用性を示すために, 坑井テストデータのタイプカーブ解析による不均質性の検知, 坑井間流体置換の予測, ならびにフラクチャー油層での水平坑井生産性の評価等に対する適用例を取り上げる。厳密な数学的定式化がなされているため, 境界要素法が不均質問題に対しても高い解精度を保つことを示す。
  • 張 岩, 村田 聡, 野村 正勝, 山口 千春
    1999 年 42 巻 4 号 p. 192-200
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    異なるコールタールピッチから調製された2種のメソカーボンマイクロビーズ (MCMB-AとB) およびブチル化と超音波照射下の溶媒抽出により得られた誘導体と抽出物を対象に, 赤外分光法 (IR), 走査型電子顕微鏡 (SEM) およびラマン分光法を適用してそれぞれの試料の分析を行った。IR分光法により, MCMB-Bとその関連物質は対応するMCMB-Aとその関連物質に比べて, 近赤外領域の電子遷移による吸収強度が高く, 芳香族性が高いことを示した。SEM観察から, MCMB-BはMCMB-Aと比べて, フリーカーボンが多く見られた。これらの結果より, 両MCMBの構造特性の差が明確にされた。つまり, MCMB-BはMCMB-Aより芳香環の縮合度と黒鉛化性が高いことが示唆される。前報 (Zhang et al., Energy Fuels, 11, 433 (1997)) で報告したように, MCMB-Bはブチル化反応において反応性および有機溶媒への溶解性がMCMB-Aより劣っている事実がこれらの結果から説明できる。また, MCMB小球体の横断面のSEM像から, MCMBには1~1.5μmの表面層が観測され, さらに超音波による溶媒抽出を行った前後のMCMBのラマンスペクトルの変化から, MCMBの表面層は内部炭素より黒鉛化性が高いことが推測された。
  • 範 立, 劉 家林, 藤元 薫
    1999 年 42 巻 4 号 p. 201-205
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンとアンモニアのみを原料とするシクロヘキサノンオキシムの合成を検討した結果, Na-ZSM-5が高い活性を示すことを見い出した。この触媒の活性サイトは触媒上の塩基点であると考えられる。主な副生成物は, アルドール脱水縮合反応を経由して生成するピリジンの誘導体であった。反応温度, 反応時間, 原料組成比などを最適化することにより, 高いシクロヘキサノンオキシム選択率を得ることができた。
  • アルトック レベント, 蘇 燕, 弘瀬 敬久, 村田 聡, 野村 正勝
    1999 年 42 巻 4 号 p. 206-214
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アラビア原油 (ライトおよびミディアムの混合油) の減圧蒸留残さから得られたn-C5アスファルテン (n-ペンタンに不溶なフラクション) の構造解析を, 熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計 (Py-GC/MS), 1H/13C NMR, ゲル浸透クロマトグラフ (GPC) およびレーザー脱着/飛行時間型 (MALDI/TOF) 質量分析計の手法を用いて行った。NMRの帰属に関しては, 従来法を参照し, DEPT測定も行って検討を加えた。アスファルテンの平均芳香環構造は4~5環と推定した。熱分解分析法から, アスファルテンは比較的大きな縮合環が強い結合で結ばれた構造をもつことが推測された。また, アスファルテンが種々の分子サイズを持つ複雑な分子集合体であるというこれまでの考えを強く支持する結果が得られた。
  • 石川 洋, 森吉 昭博, 高橋 茂樹, J. G. CABRERA
    1999 年 42 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    最近, アスファルト系排水性舗装のクラック, わだち掘れ, あるいはアスファルト混合物の輸送中に生じるアスファルトのだれを防止するため, アスファルト系排水性舗装用の高粘度アスファルトにSBSや各種繊維を添加する場合がある。しかし, 繊維を添加した高粘度アスファルトの力学性状および耐久性が高温から低温領域において適切かどうかはまだ不明である。よって本研究は, これらのアスファルトの力学性状を検討するために, 新たに開発した改造フラースぜい化点 (IFBP) 試験, 森吉ぜい化点 (MBP) 試験, 高温長時間耐久性 (HTLTD) 試験および曲げ試験を適用し, 評価を行った。また, 高温領域における粘度はレオメーターにより測定した。
    本研究では, SBSおよび各種繊維を添加した高粘度アスファルトのぜい化点および力学性状が以下のとおり明らかになった。
    (1) 3種類の繊維を添加したアスファルトは無添加のアスファルトと比較して低温領域において同一温度で破壊時のひずみが著しく小さくなる。
    (2) 3種類の繊維を添加したアスファルトは無添加のアスファルトと比較して耐久性が劣ると考えられる。
  • 加藤 啓応, 上村 知弘, 関根 泰, 藤元 薫
    1999 年 42 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    廃棄プラスチックのケミカルリサイクルについて, ポリプロピレン (PP) の水添接触分解油化を回分式で行った。触媒には5wt%鉄担持活性炭を用い, 反応温度673~693K, 初期H2圧4.0MPaにおいて1時間反応を行ったところ, 固体生成物が著しく減少し, 液収率の向上が見られた。同時に, 重質留分の接触水素化分解によって生成油は熱分解の場合より軽質化した。また, 683Kにおいて反応ガスをH2とArで比較したところ, 反応時間0.5~1.0hにおいてH2による分解の促進が確認された。さらに, 683Kでの反応において初期H2圧を変化させたところ, ~3.0MPaにおいてはH2圧の増加とともに分解が進行したが, 4.0MPa~では分解が抑制されたことから, PPの接触分解においてH2が大きく関与していることが確かめられた。
  • 菊池 孝浩, 熊谷 幹郎
    1999 年 42 巻 4 号 p. 228-234
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    軽油を還元剤に使用したディーゼルエンジン排ガス中のNOx還元反応に対する, コバルトまたは銅を担持した天然モルデナイトおよびアルミナの触媒としての活性を調べた。
    天然モルデナイトは硝酸で処理した後にコバルトまたは銅を担持した。Co-モルデナイトの活性はCu-モルデナイトやH-モルデナイトの活性より高かった。
    アルミナ触媒上での最大脱硝率の序列は, Co-アルミナ, γ-アルミナ, Cu-アルミナの順になった。軽油を還元剤に使用した場合, Co-アルミナは試験した触媒の中で最も高い脱硝率が得られた。還元剤として添加した軽油の燃焼率が約80%の時, 脱硝率は最大となった。燃焼率が約90%の場合には脱硝率の減少が観察された。
    Co-モルデナイトとCo-アルミナでは活性劣化の挙動が異なり, Co-モルデナイトは高温でより劣化が進行した。これに対し, Co-アルミナは低温でより劣化が進行した。Cu-アルミナは, Co-アルミナに比較し劣化の程度は低かったが, 耐久試験後の脱硝率の最大値を比較するとCo-アルミナに及ばなかった。
  • 副反応生成物の生成機構解明
    白木 安司, 河野 伸一
    1999 年 42 巻 4 号 p. 235-245
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エチレンのオリゴメリゼーションによりα-オレフィンを合成する際, 主生成物の直鎖状α-オレフィンのほかに種々の副生成物が生成する。副生成物は分岐型オレフィン, ビニリデン型オレフィン, 内部オレフィン, およびパラフィンである。これら副生成物は主に主生成物の直鎖状α-オレフィンが触媒の金属-アルキル結合間に挿入し生成したものである。本研究では, α-オレフィン合成用触媒としてZr錯体触媒を使用し, それぞれのα-オレフィン中に含まれる微量副生成物の同定を行うとともに, α-オレフィンの挿入反応等を検討することにより, これら副生成物の生成機構を解明した。分岐型オレフィンとビニリデン型オレフィンは触媒のエチレン生長鎖にα-オレフィンが1回Markovnikov 型付加で挿入したものである。この挿入するα-オレフィンは分子量が小さいほどその反応性は高い。炭素数Nのα-オレフィン中には炭素数4から (N-2) のα-オレフィンがそれぞれ挿入反応した副生成物が含まれ, このためにα-オレフィンの炭素数増とともに副生成物の種類が増え, 直鎖状α-オレフィンの割合 (純度) が低下する。また, 内部オレフィンは全て直鎖状であり, α-オレフィンの異性化反応で生成する可能性は低く, 主に1-ブテンが1回 anti-Markovnikov 型付加で挿入したものである。さらに, パラフィンは触媒失活時に金属-アルキル基が水で加水分解され生成する。
  • 宮谷 康洋, 安田 貞勲, 蘇 燕, 兼田 一快, 村田 聡, 野村 正勝
    1999 年 42 巻 4 号 p. 246-251
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    遷移金属を担持したゼオライトを触媒とする石油系重質油の水素化分解反応に関する検討を行った。アラビア原油から得られた脱れき油 (プロパン可溶分, DAO) を4.9MPaの水素加圧下, 350°CでPdとNiを共担持したY型ゼオライトを用いて1時間処理すると水素化分解反応が効率よく進行し, 70%の収率でガソリン留分が得られることがわかった。この温度で各生成物収率の経時変化を追跡したところ, 反応はDAO→軽油→ガソリン→炭化水素ガスの順に進み, 軽油→ガソリンの反応速度はかなり速いことを示唆する結果を得た。一方, 同触媒を用いてより重質なマルテン (プロパン不溶-ペンタン可溶分)の水素化分解についても検討を行ったところ, やや厳しい条件(400°C, 水素6.9MPa, 3時間) が必要であったものの, 転化率90%以上で反応が進行し, 30%以上のLPGと50%以上のガソリン留分が得られることが明らかとなった。
  • 姫野 嘉之, 冨重 圭一, 藤元 薫
    1999 年 42 巻 4 号 p. 252-257
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    常圧条件下でのメタンの炭酸ガスリフォーミング反応において, 炭素析出することなく, 長時間安定した触媒活性を示すNiO-MgO (Ni0.03Mg0.97O) 固溶体触媒上の高圧 (~2.0MPa) 条件下での反応特性と炭素析出挙動について検討した。参照触媒として市販のスチームリフォーミング用触媒についても研究を行った。市販の触媒では大量に炭素析出が起こり, 主に反応器入口で進行したことから, その炭素は主にメタンに由来することが示唆された。Ni0.03Mg0.97O固溶体触媒では, 炭素析出量はそれに比較して非常に少なく, 炭素析出量は入口に比べて出口に多く析出した。メタンに由来する炭素析出が大きく抑制され, COに由来するものが主になったと考えられる。
  • 香川 勝, 木村 秀治, 西口 宏泰, 石原 達己, 滝田 祐作
    1999 年 42 巻 4 号 p. 258-265
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    種々の金属リン酸についてC3H6を用いたNOの選択還元反応を検討したところ, Co3(PO4)2およびGaPO4において高いNO還元活性が得られることを見い出した。検討した金属リン酸塩の中ではCo3(PO4)2はNOの選択還元に最も高い活性を示し, その結晶構造の安定性から排ガス浄化に高い活性を長時間にわたって維持すると期待された。また, 金属リン酸塩は還元剤のC3H6の単純酸化反応が進行しにくく, 炭化水素が選択還元に有効に利用されることがわかった。一方, 還元剤にCH4を用いたところCo3(PO4)2ではNOの還元反応はほとんど進行しなかったが, Ptなどの貴金属を添加することによりCH4の燃焼活性を向上させると, CH4を用いてもO2共存下でNOの選択還元が進行できることがわかった。昇温脱離法による吸着種の反応性を検討したところ, Co3(PO4)2上ではNOが解離的に吸着し, まず直接分解でN2を生成すると推定された。一方, O2は触媒上に強く吸着し, 脱離しにくい。Co3(PO4)2によるNOの直接分解を検討したところ, NOの直接分解反応が比較的高い転化率で進行し, N2が生成したが, O2は生成しなかった。以上より, Co3(PO4)2によるNOの選択還元は, まずCo3(PO4)2上へのNOの解離的吸着によるN2生成で開始され, C3H6またはCH4は共存する気相酸素との反応で活性化され, 触媒上に残った酸素を除去する機構で反応は進行する推定された。
  • 朝見 賢二, 竹西 英也, 林 良平, 仙波 晴成, 矢野 元威, 米澤 義朗
    1999 年 42 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    各種アルカリ土類金属とプラセオジムを複合させた酸化物を共沈法により調製し, これらの酸化物を触媒に用いて, メタンと二酸化炭素からのC2炭化水素合成反応を行った。Ca, Sr, BaとPrを複合化させると, Pr単独の触媒に比べC2選択率が向上し, Pr量基準ではC2収率も増加した。最も効果的であったのはSrであり, 1173KでのC2収率, 選択率はそれぞれ2.5%, 43%であった。Sr-Pr複合系では, 酸化物前駆体の水酸化物沈殿の生成条件により触媒の活性や選択性が変化した。
  • Takashi Fujikawa, Kazuo Idei, Kazushi Usui
    1999 年 42 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 1999/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    The potential of B2O3-Al2O3-supported bimetallic Pt-Pd catalysts for aromatic hydrogenation of distillate was investigated. The activity measurements were carried out with hydrotreated light cycle oil (LCO)/straight-run light gas oil (SRLGO) feed containing 33vol% aromatics and 320 ppm sulfur under practical conditions. As a result, it appeared that Pt-Pd/B2O3-Al2O3 catalysts have much higher activity for aromatic hydrogenation as compared to Pt-Pd/Al2O3 catalysts.
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