樹脂は鉄鋼と並ぶ基礎素材の一つで, その利用分野が自動車, 電気製品等広範にわたっているので, ライフサイクルアセスメント (LCA) の対象として欠かせない素材の一つである。また, リサイクルの妥当性を評価するためにもLCA手法は有効である。そこで, 本研究では, 塩化ビニル樹脂 (PVC) 製造に伴うCO
2排出量をLCA手法を用いて評価した。
PVC製造工程にかかわる各産業の自家発電などのエネルギー構造を分析し, PVC製造にかかわる工程の出荷実績に基づくシナリオの下でライフサイクルインベントリ (LCI) 分析を実施した。その結果, 以下のことが判明した。
(1) 各産業の電力誘発CO
2排出原単位などの差を反映し, PVC製造に伴うCO
2排出量は, シナリオにより1.5~2.0kg-CO
2/kg-PVCの相違が生ずる。
(2) PVC製造の累計電力消費量は1.30kWh/kg-PVCと大きく, 電力誘発のCO
2排出量は全体の63~72%を占める。特に, 塩素製造時の電力消費量は0.73kWM/kg-PVCと大きい。
(3) したがって, 我が国におけるPVC製造までの平均的なCO
2排出を評価するためには, PVC製造に関連する産業のエネルギー構造を踏まえることが必要である。
また, 塩の電気分解工程のアロケーション手法により, PVC製造に伴うCO
2排出量は大きく影響を受ける。省エネルギーのためのガス拡散電極によるCO
2排出削減効果についても定量的なLCI分析を実施した。
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