石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
43 巻, 3 号
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  • 佐藤 時幸
    2000 年 43 巻 3 号 p. 173-181
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    近年, 時代対比精度が飛躍的に向上した石灰質ナンノ化石と, その生態学的特徴から古環境解析に重要な有孔虫化石に基づいて, 石油鉱床が形成されるまでの構造発達史を検討した。日本海の成立は, 門前階最上部の砂れき層より発見された石灰質ナンノ化石群集から前期中新世末のNN4帯であり, 最も古く見積もって1820万年前までさかのぼる。近年, 積極的に探鉱が行われている新潟地域のグリーンタフ火山岩貯留岩は, この日本海形成前後に形成されたが, 同様に油ガス田の貯留岩となっている秋田地域の玄武岩類は, 含まれる石灰質ナンノ化石に基づくと新潟地域の火山岩貯留岩より若く, 日本列島の中国大陸からの分離と関連した火山活動と結論される。秋田地域の油田構造の完成は海岸線沿いに位置する北由利衝上断層の形成によるもので, その時期は石灰質ナンノ化石から172万年前頃で, それと同時に石油根源岩が熟成レベルへ到達, 油田構造へ石油が移動した。一方, 石油根源岩は一般に女川階, または寺泊階でその能力が高いことが知られていたが, 有孔虫化石から当時の古海洋を復元した結果, 当時の新潟たい積盆地は強い還元環境を示すことが明らかになったほか, 復元された古海洋からすると, 石油根源岩となりうる有機物のたい積は長岡市西方の南北に位置する地域にたい積したと推定される。
  • 横山 千昭, 渋谷 賢壱, 河瀬 泰穂, 蛯名 武雄
    2000 年 43 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    CO2の海洋隔離プロセスは地球温暖化対策技術の一つとして注目されている。低温高圧状態の深海底域にCO2を放出した場合には, CO2ハイドレートが生成する場合がある。そのため, CO2海洋隔離プロセスの設計においてはCO2ハイドレートの生成速度に関する知見が必要になる。そこで, 本研究では深海底の土壌中に含まれている粘土鉱物がハイドレート生成に及ぼす影響を実験的に調べることを目的とした。すなわち, 粘土鉱物として深海底土壌の主要成分であるモンモリロナイトを用いてハイドレートを生成させた。モンモリロナイトとしては親水性のNa-モンモリロナイトと疎水性のCa-モンモリロナイトの2種類を使用した。ハイドレート生成速度はCO2ガスの吸収速度より求めた。ハイドレートの生成にともない, 反応容器内の温度, 圧力が初期の設定値から変動するため, ハイドレート生成開始直後の測定値より求められるハイドレート生成の初期速度とモンモリロナイトの含有率の関係を調べた。その結果, 親水性のNa-モンモリロナイトが水中に存在した場合, モンモリロナイトの含有量が多くなるほどハイドレート生成の初期速度は遅くなった。また, 疎水性のCa-モンモリロナイトの場合には, その影響はNa-モンモリロナイトに比べて小さいことが分かった。
  • 耐摩耗性シリカ担持V2O5系触媒の製造法と反応特性
    浅見 幸雄, 岩崎 守, 青野 利直, 廣岡 昇, 信澤 達也, 藤井 進
    2000 年 43 巻 3 号 p. 189-197
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Badger 社 (現 Raytheon Engineers & Constructors) から技術導入されたナフタレン流動層気相酸化法無水フタル酸製造触媒 (米国 Davison 社#906: 組成V2O5-K2SO4-SO3/SiO2) は触媒の耐摩耗性, 流動性および触媒寿命などに問題があった。本報ではこの導入触媒の活性劣化原因を性状面から究明し, 含浸法触媒に特有の現象 (粒子内および粒子間での活性成分の偏在) であることを明らかにした。この結果をもとに, 耐摩耗性の優れた球形の高活性, 高寿命型触媒の開発のため, 平均粒子径が5~12nmの範囲の特殊性状のシリカゾルをシリカ源とする新たな流動層触媒の製法を開発し, 活性成分組成比および物性の適正化を検討した。得られた適正組成触媒を実機プラントに適用し, 従来の導入触媒に比べ大幅な無水フタル酸収率の向上を達成した。
  • 張 岩, 村田 聡, 貴傳名 甲, 野村 正勝, 水取 重司
    2000 年 43 巻 3 号 p. 198-206
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    真空蒸留およびエアーブロンにより調製した5種類の光学等方性コールタールピッチをベンゼンまたは二硫化炭素を用いて溶媒抽出し, 得られた溶媒可溶分の水素分布を赤外分光法 (IR) および溶液法1H-NMRを用いて分析した。著者らの新規IRスペクトル解析方法に基づいて求めた水素芳香族性指数は, 1H-NMRから得られた水素芳香族性との間に良い相関を示すことが見い出された。この手法はコールタールピッチ間の芳香族性のわずかな差を区別するための優れた方法であり, 13C-NMRでは区別がつきにくい構造上の微妙な違いを明確にすることができる。エアーブロンにより調製した3種類のピッチはほとんど同じ軟化点, H/C比および溶解性を示すが, これらの試料から抽出したCS2可溶分には平均分子量, 芳香環の縮合度, 水素芳香族性等で違いがみられる。エアーブロンピッチ全体のX線回折測定を行うと, 光学的には等方性であるにもかかわらず, 室温で積層構造が存在することが明らかとなった。IRにより求めた水素芳香族性指数とX線回折により求めた結晶性パラメーターを比較すると, 3種類のエアーブロンピッチの間には水素芳香族性および結晶性において差がみられ, この違いがピッチの不融化性の差異につながるものと思われる。
  • 小川 俊夫, 平尾 一也, 大澤 敏
    2000 年 43 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    3種類の市販C重油の水面上における重油の広がり状態について観察した。具体的には, 水面上における油膜面積の経時変化と温度, 流動点, 動粘度との関係を調べた。その結果, 油膜の広がりは重油の種類に依存し, ある温度以上で急激に広がることが見い出された。またこの温度は, 重油の動粘度と密接な関係があり, 本実験で用いた重油の場合, 動粘度が6000mm2/sになる温度と油膜が急激に広がる温度とが一致した。
  • 河村 徹志, 高橋 武重, 甲斐 敬美
    2000 年 43 巻 3 号 p. 213-217
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    流通式反応器を使用して, 微量の有機硫黄化合物あるいは金属塩を添加した常圧残さ油の熱分解反応を480°Cで行い, 軽質化およびコーク生成に及ぼす添加物の影響について検討した。ここで有機硫黄化合物としては, 末端に4個のチオール基を有する3-pentaerithritol tetrakis-3-mercaptopropionate (PTMP) を用いた。また, 金属塩としては鉄, ニッケル, バナジウムのナフテン酸塩を使用した。PTMPを添加すると, わずかに軽質化が促進されたが, その濃度を変化させても軽質化の程度には差が見られなかった。一方, 鉄を添加すると, 軽質化は促進されたが, 同時にコーク生成が著しく促進され, 反応管の閉そくが起こった。そこで, PTMP (1000ppm) とナフテン酸鉄 (100ppm) を同時に添加すると, コークによる反応管の閉そくなしに大幅な軽質化が観察された。これは, 熱分解で生成した炭化水素ラジカルをチオール基が捕そくして, 再結合を妨げていることによると考えられる。
    このように, PTMPとナフテン酸鉄の同時添加は, 現在の精製装置に変更を加えることなく, 常圧残さ油の軽質化を促進するすぐれた方法である。
  • 涌井 顕一, 佐藤 浩一, 澤田 悟郎, 塩沢 光治, 又野 孝一, 鈴木 邦夫, 早川 孝, 村田 和久, 葭村 雄二, 水上 富士夫
    2000 年 43 巻 3 号 p. 218-224
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    HZSM-5触媒上でのn-ブタン分解反応に対して, 希土類修飾HZSM-5触媒では未修飾のHZSM-5と比較して, 芳香族の生成が抑制され, エチレン•プロピレンの生成量が増大する。この要因として, 希土類を担持した場合の触媒表面でのパラフィンやオレフィンの吸着特性の変化が関与していることが考えられた。このため, これらの炭化水素の吸着脱離挙動をパルス吸着脱離法 (パルスインジェクション法) によって調べた。プロピレンのパルスインジェクションでは, HZSM-5では不可逆吸着が多く起こり, 脱離パルス量は非常に少なくなった。これに対し, 希土類修飾HZSM-5では不可逆吸着が起こりにくくなっており, 623Kでは導入パルス量の約65%が脱離した。また, エチレンおよびエタンの場合, 未修飾のHZSM-5ではエタンよりエチレンの方が吸着しやすいのに対し, 希土類修飾HZSM-5ではエチレンの方が吸着しにくくなる現象がみられた。これらのことから, 希土類修飾HZSM-5では, オレフィンの吸着が選択的に抑制される傾向があり, この特性がクラッキングの際に芳香族が生成しにくいことに関与しているものと推定した。
  • 成田 暢彦, 稲葉 敦
    2000 年 43 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    樹脂は鉄鋼と並ぶ基礎素材の一つで, その利用分野が自動車, 電気製品等広範にわたっているので, ライフサイクルアセスメント (LCA) の対象として欠かせない素材の一つである。また, リサイクルの妥当性を評価するためにもLCA手法は有効である。そこで, 本研究では, 塩化ビニル樹脂 (PVC) 製造に伴うCO2排出量をLCA手法を用いて評価した。
    PVC製造工程にかかわる各産業の自家発電などのエネルギー構造を分析し, PVC製造にかかわる工程の出荷実績に基づくシナリオの下でライフサイクルインベントリ (LCI) 分析を実施した。その結果, 以下のことが判明した。
    (1) 各産業の電力誘発CO2排出原単位などの差を反映し, PVC製造に伴うCO2排出量は, シナリオにより1.5~2.0kg-CO2/kg-PVCの相違が生ずる。
    (2) PVC製造の累計電力消費量は1.30kWh/kg-PVCと大きく, 電力誘発のCO2排出量は全体の63~72%を占める。特に, 塩素製造時の電力消費量は0.73kWM/kg-PVCと大きい。
    (3) したがって, 我が国におけるPVC製造までの平均的なCO2排出を評価するためには, PVC製造に関連する産業のエネルギー構造を踏まえることが必要である。
    また, 塩の電気分解工程のアロケーション手法により, PVC製造に伴うCO2排出量は大きく影響を受ける。省エネルギーのためのガス拡散電極によるCO2排出削減効果についても定量的なLCI分析を実施した。
  • 野村 淳子, 堂免 一成, 若林 文高
    2000 年 43 巻 3 号 p. 234-240
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シリカアルミナ (SA) 上での1-ブテンの吸着と反応について, FT-IRを用いて室温以下の温度で調べた。吸着1-ブテンのC=C伸縮振動波数から, 二種類の吸着サイトを観測した。1633cm-1のピークはブレンステッド酸点に, 1607cm-1のピークはルイス酸点に対応している。表面水酸基で被われ, ルイス酸点の存在しないSAでは, 1-ブテンのシス体とトランス体の混合2-ブテンへの反応は246Kで気相分子の存在下でのみ観測された。一方, ルイス酸点が存在すると, 同反応は221Kで真空排気下でも進行した。ルイス酸点はまず炭化水素種に被われ, それが活性点として触媒的に働いていることが確認された。ここで観測された結果は, 以前提唱されたSA上での1-ブテンの反応機構を支持し, ゼオライト上のものと区別された。
  • 叢 培紅, 猪狩 隆, 七尾 英孝, 森 誠之
    2000 年 43 巻 3 号 p. 241-247
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水面上におけるフッ化カルボン酸エチルエステル単分子膜の構造について表面圧-分子面積曲線 (π-A曲線) から検討した。これら単分子膜の構造はアルキル鎖におけるフッ素化率に大きく依存した。アルキル鎖の55%以上がフッ素化された分子は水面上で固体膜を形成し, 他の場合は液体状の単分子膜を形成した。水面上に形成された単分子膜を固体基板上に移し取り, ball-on-plate型 摩擦試験機にて摩擦実験を行った。固体膜は低い表面自由エネルギーを示し, 摩擦係数も低い値を示した。膜の持つエネルギーと二次元弾性率をπ-A曲線から求め, 単分子膜の強度のパラメーターとして用いた。単分子膜の強度が大きいほど低い摩擦係数を示した。このことは, 超薄膜の潤滑において膜強度が摩擦特性に与える重要性を示唆している。
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