石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
43 巻, 4 号
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  • 鈴木 雅裕, 泉 和博, 広中 清一郎, 佐々木 雅美
    2000 年 43 巻 4 号 p. 249-256
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    複合酸化物, Sr0.14Ca0.86CuO2, SrCuO2およびCaCuO2をSrCO3, CaCO3およびCuOから焼結法によって作製した。試料粉末は粘度の異なるパラフィン系鉱油に添加し, 油境界潤滑下におけるこれらの潤滑特性を Falex 型試験機で評価した。
    その結果, これら複合酸化物粉末を鉱油に添加することで, 低粘度油でもその潤滑性が改善された。また, その時の添加量は2~5mass%の低濃度で効果を示し, 耐焼付き性および低摩擦係数が得られた。これらの潤滑特性は油性剤および分散剤としてのオレイン酸をともに用いることでさらに向上する。特に, 無限層構造をもつSr0.14Ca0.86CuO2は, 低粘度基油でさえもオレイン酸を併用することで, よりよい摩擦摩耗特性を示した。
  • 乾 貫一郎, 本田 一規, 菖蒲 明己
    2000 年 43 巻 4 号 p. 257-264
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Si, Ti, FeおよびNaをη-アルミナに添加したときの高温塩素処理アルミナの酸性質, 構造, ベンゼンのイソプロピル化反応活性に与える影響について検討した。また, 添加元素の化学状態と表面濃度については光電子分光法 (XPS) で測定した。Ti, Naは高温塩素処理中にバルクから表面への拡散移動によって表面濃縮を起こし, η-アルミナのθ-相を経由するα-アルミナへの相転移を促進した。Siはバルク内拡散移動を全く起こさず, この相転移を抑制した。Feは激しい表面濃縮を起こし塩化物として昇華するが, α-アルミナへの相転移は抑制された。2.4wt%以下 のSi, または6.0wt%以下のTiの添加はルイス酸点の発現を促進し, FeとNaは逆にこれを抑制した。室温近傍でのベンゼンのプロペンによるイソプロピル化反応においても, 1.5wt%以下のSiと6.0wt%以下のTiの添加によって反応活性は増大し, 一方, FeとNaの添加は反応活性を低下させた。
  • 菊池 孝浩, 熊谷 幹郎
    2000 年 43 巻 4 号 p. 265-273
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    炭化水素を還元剤とした実際のディーゼルエンジン排ガス中のNOx還元反応に対する軽油や各種炭化水素の反応性をCo-アルミナおよびCo-モルデナイト触媒を使用し調べた。分子量のほぼ等しい炭化水素の反応性の序列は, 両触媒上で同じであり, n-パラフィン>イソパラフィン>芳香族の順となった。Co-アルミナ触媒上でのn-パラフィン使用時の500°C以上における脱硝率は, メタンとエタンを除き, n-パラフィンの分子数ではなく炭素数に依存した。また, 炭化水素の脱硝反応に対する反応性は炭化水素の燃焼性と相関があることが分かった。
    n-ドデカンを還元剤としているところに芳香族を添加すると, 還元剤量が増加するにもか かわらず脱硝率は低下した。ゆえに, 芳香族の添加によりNOx還元反応が阻害されることが分かった。Co-アルミナ上での阻害は芳香族の添加モル数の増加に伴い増大した。トルエンの添加による脱硝率低下の割合は, 1-メチルナフタレンを添加した場合と等しかった。一方, Co-モルデナイト上でのトルエンによる阻害効果は添加モル数に依存したが, 1-メチルナフタレンでは添加モル数によらず一定であった。還元剤として使用する軽油から芳香族を抽出除去すると, いずれの触媒上においても脱硝率は向上した。
  • 藤原 和弘, 田中 信治, 大塚 牧子, 中谷 一記, 前角 繁之, 矢澤 仁徳, 洪 承燮, 千田 佶, 榎本 兵治
    2000 年 43 巻 4 号 p. 274-285
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    MEORにおいて圧入する微生物の油層内での増殖を抑制する可能性のある細菌群を明らかにすることを目的として, 油層にモラセス水溶液を圧入し, 油層内で活性化される細菌群をPCR-RFLP法により調査した。その結果, モラセスの希釈水として使用した地下水中に棲息(せいそく)する細菌群の中で, 特定の腸内細菌かそれに近縁な種が油層内で優勢に増殖することがわかった。このことから, MEORのために圧入する微生物の油層内での動態を把握するには, 地下水中に元々棲息するこれらの細菌群の動態も併せて考慮すべきであることが明らかになった。
    また, 圧入微生物に要求される競合増殖性を明らかにするため, 油層内で活性化された細菌群のモラセスを利用した増殖性を評価した結果, 前述の地下水中に棲息する細菌群は, モラセスを利用して108CFU/ml以上にまで増殖する能力を有していることが明らかになった。これらのことから, MEORフィールドテストにおいて油層に圧入する微生物は, まず地下水中に棲息する細菌群に対して優勢に増殖することが必要であることが示唆された。次に, モラセスの圧入によって引き起こされる油層内の細菌活動の変化およびそれに伴う岩石浸透率ならびに圧入流体の流路の変化の観点から, 高浸透性領域に介在する油層水に棲息している細菌群や油層岩常在細菌等に対して優勢に増殖することも必要であることが推察された。
    さらに, モラセスの圧入によって油層内で活性化された細菌群のMEOR機能の評価結果より, 確実な原油増進回収効果を得るには, MEOR実施対象油層の特徴や微生物が有するMEOR機能に応じて微生物の機能とその効果を発揮させる場所を制御し, 微生物を効果的に利用することが極めて重要であることを指摘した。
  • 涌井 顕一, 佐藤 浩一, 澤田 悟郎, 塩沢 光治, 又野 孝一, 鈴木 邦夫, 早川 孝, 村田 和久, 葭村 雄二, 水上 富士夫
    2000 年 43 巻 4 号 p. 286-295
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    触媒を用いた酸化分解反応との比較のため, n-ブタンの無触媒酸化分解反応における各種シリカの充てん効果を600~700°Cで検討した。反応は種々のシリカを充てんした固定床流通式反応器にn-ブタン, 酸素および窒素を流通させることによって行った。空の石英反応管では気相での均一ラジカル分解反応が顕著に起こり, 最も高い転化率が得られた。石英管に石英砂などのシリカを充てんした場合では, いずれも空の管よりも転化率は低下したが, 石英砂またはシリカライト等の結晶性シリカを充てんした場合と, 無定形シリカを充てんした場合とで転化率に大きな差がみられた。石英砂またはシリカライトでは転化率が非常に低下したのに対し, 無定形シリカでは空の反応管に近い転化率が得られた。無定形シリカ上の水酸基が酸化分解反応におけるラジカル連鎖に関与している可能性が考えられた。シリカ種充てんの酸化分解における主生成物はエチレン, プロピレンおよびブテン等の軽質オレフィンであり, オレフィン選択率は他の酸化物を充てんした場合よりも高い値が得られた (反応温度700°C, 転化率45%で選択率約75%)。
  • 丹羽 勇介, 秦野 正治, 徳島 君博, 木下 裕雄
    2000 年 43 巻 4 号 p. 296-302
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Rh酸化物系触媒 (RhGaZrAlOx)のSOx被毒解析を行った。触媒表面上には硫黄化合物としてSO2(またはSO32-) およびSO42-が存在することがXPSの解析から明らかとなった。そこで, NOx浄化率を低下させている硫黄化合物を調べるため, 被毒処理雰囲気を変えることにより各々の硫黄化合物の濃度を変化させてNOx浄化率への影響を検討した。その結果, SO2処理とSO2+O2処理において, SO2, SO32-濃度には変化は見られなかったがSO42-濃度は酸素共存により著しく増加した。一方, SO2処理に比べSO2+O2処理ではNOx浄化率は著しく低下した。したがって, 硫黄化合物の濃度変化とNOx浄化率の低下の関係から, SOx被毒の主な原因はSO42-であることが明らかになった。
    SO42-によるNOx浄化率低下の原因をNO酸化反応およびC3H6酸化反応から検討した。その結果, SO42-はNO酸化活性に影響を与えなかったが, C3H6酸化活性を著しく低下させていることがわかった。さらに, 反応温度に対するC3H6酸化活性の低下とNOx浄化率の低下との相関関係から, SO42-によりC3H6の酸化活性が抑制されるためにNOx浄化率が低下することが示唆された。
    各触媒成分上 (Rh, Ga, Zr) のSO42-がNOx浄化率に与える影響についても検討を行った。Rh上のSO42-はHe流通下750°Cで2時間処理することにより除去できたが, NOx浄化率は回復しなかった。この結果から, Rh上のSO42-はNOx浄化率の低下に影響していないことが示唆された。一方, GaおよびZr上に存在するSO42-はともにNOx浄化率の低下に影響を与えていることがわかった。Ga/Al比の増加によりRhGaAlOx上のSO42-濃度が減少し, NOx浄化率はほとんど低下しなかった。また, Zr/Al比を増加させても高温域でのNOx浄化率が向上した。このようなGa, Zrの添加効果を考慮して調製したRhGaZrAlOxでは, 被毒処理によるNOx浄化率の低下を大幅に抑制できた。
  • 橋本 公太郎, 田村 昌三
    2000 年 43 巻 4 号 p. 303-309
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    飽和炭化水素のオクタン価推定を目的とし, オクタン価が既知である44種類の飽和炭化水素の化学構造について酸化反応のパターンを考慮して, 水素が付加している炭素のうち, 二つの炭素の位と炭素-炭素の距離を記号化し, 全ての炭素のペアについての記号を数え上げることによって, パラメーター化した。そして, PLS (Partial Least Squares) 法によりRON (リサーチ法オクタン価) およびMON (モーター法オクタン価) に対する化学構造パラメーターの数値を算出し, 推定精度を検討した。その結果, 化学構造パラメーターの数値化により, 飽和炭化水素のRON, MONとも精度よく推定することができた。PLS法による化学構造パラメーターの数値化では, 直鎖の炭水素が多く有する二つのs位炭素のペアに関するパラメーターにオクタン価を大きく下げる働きが有することがわかった。一方, 枝分かれの多い炭化水素が多く有するp位のパラメーターは, オクタン価を下げる働きがほとんどなかった。以上のことから, 飽和炭化水素の化学構造とオクタン価の関係が化学構造パラメーターの数値によって表現できていると考えられる。
  • Shedid A. SHEDID, Al-Abbas A. ABBAS
    2000 年 43 巻 4 号 p. 310-316
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    これまでの研究, 現場への適用事例から, スチーム攻法は重質油, 中質油の回収において有効な手法であることは結論付けられている。この実験研究では, 水攻法後の油層に対してスチーム攻法に低濃度のアルカリもしくはサーファクタントを添加することによる適用性が評価された。また, 低濃度のアルカリ-サーファクタント混合物を添加したスチーム攻法によりさらに増油を目指すスチーム攻法のプロセス最適化の検討も行い, このプロセスを「サーファクタント•アルカリ•スチーム攻法」としてデザインした。これらの検討を行うために, (1) 通常型スチーム攻法(SF), (2)サーファクタント•スチーム攻法(SSF), (3)アルカリ•スチーム攻法(ASF), (4)サーファクタント•アルカリ•スチーム攻法(SASF)の4種類の実験を実施した。
    この研究の結果として, スチーム攻法による原油回収の大幅な向上が確認された。スチームへの低濃度のアルカリの添加により通常型スチーム攻法以上の原油が回収された。また, サーファクタントを添加したスチーム攻法の場合には, 通常型スチーム攻法ならびにアルカリ•スチーム攻法以上の原油回収の向上があり, ここに提言するサーファクタント•アルカリ•スチーム攻法(SASF)ではさらに原油回収を増大させた。
    実施した4種類の実験結果の比較から, (1)スチーム中への3wt%のサーファクタントもしくはアルカリの添加により効果は増進され, その結果, 通常型スチーム攻法以上の原油が回収された。(2)低濃度(1.5wt%)のサーファクタント•アルカリをスチーム中に添加することで原油回収は最大となった。以上の二つの主要な結論が導かれた。
    この結果からサーファクタント•アルカリ•スチーム攻法の有効性が確認され, さらには現在実施中の通常型スチーム攻法または水攻法後の油層に適用すれば, 原油回収の効果に大きな影響があると期待される。
  • メタノール合成用Cu-Mn触媒組成の最適化
    小俣 光司, 石黒 群司, 山田 宗慶
    2000 年 43 巻 4 号 p. 317-319
    発行日: 2000/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    触媒探索において活性試験の効率を向上させるために, 12個の触媒容器を備えた反応器を試作し, 1MPaの加圧条件下にて合成ガスからのメタノール合成反応を実施した。各触媒容器にCu/Mn比の異なる銅-マンガン触媒を充てんし523Kにて組成の最適化を試みたところ, 通常の共沈法で調製した触媒を用いて通常の固定床流通式反応装置により行った結果と一致した。これは, 触媒容器の設置場所による温度, 原料ガス空間速度の差異がなく, 試験管スケールの触媒調製および本反応容器による反応が, 再現性などの点で通常の場合と変わりなく, 代替可能であることを示している。また, 活性試験の効率が大幅に向上することが期待できる。
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