環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
1 巻
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創刊のことば
特集 環境社会学のパースペクティブ
  • 舩橋 晴俊
    1995 年 1 巻 p. 5-20
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    今日、多数の主体が関与し巻き込まれているようなタイプの環境問題が頻発している。そのようなタイプの環境問題の発生メカニズムの分析には、「集合財としての環境をめぐる合理性の背理」と社会の自己破壊性に注目する社会的ジレンマ論が有効性を持つ。原型としての共有地のジレンマから出発して、自己回帰型、格差自損型、加害型ジレンマという分類軸、市場メカニズムによる加速、環境高負荷随伴型の構造化された選択肢への通常の主体の巻き込みという視点の追加によって、社会的ジレンマの7類型を提示できる。社会的ジレンマ論は解決論についても、公共性論や経済的手段について、いくつかのオリジナルな論拠を提供する。行政組織と社会運動の相互作用としての社会制御システムを通して、社会的規範を形成することが社会的ジレンマ克服の鍵である。社会制御システムによる問題解決過程の把握にあたっては、経営システムと支配システムの両義性、環境制御システムと経済制御システムとの交錯の深まりという視点が重要である。

  • 池田 寛二
    1995 年 1 巻 p. 21-37
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    今日、環境問題を研究するうえでもっとも重要な課題のひとつは、地球環境問題を地域環境問題と相互に関連づけて解明できる枠組みを構築することである。そのためにはまず、世界の諸地域において人々はどのように環境に働きかけているのか、という基本問題に立ちかえる必要がある。この問題にアプローチするために有効な枠組みとなるのが所有の概念である。

    所有とは環境をめぐる社会関係を意味している。従来の環境問題のとらえ方は、「コモンズの悲劇」論のように、所有を社会関係として理解する視点を欠いていたため、私的所有対共同所有という二項対立を絶対視し、環境と人間社会とを結びつけている所有の多様性と複合性を捨象する傾向があった。本稿は、所有の地域的・歴史的多様性を幅広く把握し得る類型論を試み、それが地球環境問題と地域環境問題とを関連づけて理解するために有効であることを例証することによって、環境問題研究における所有論の欠落を補おうとするものである。

    類型論では、環境問題を所有の視点から理解するには、自然人所有と法人所有の対立を軸にして得られる共同占有・共同所有・私的占有・私的所有・専有・個体的所有・私的法人所有・公的法人所有・管理の9つの所有類型が有効な分析枠組みになることを明らかする。

    そして、現代の地球環境問題は「グローバル・コモンズの悲劇」ではなく、世界の諸地域において、国家や企業を主体とする法人所有がグローバルな市場システムと結びついて自然人の多様な所有の可能性を排除することによって連動的にひき起こされている社会問題にほかならないことを、主にインドネシアの森林問題を取り上げて例証する。

  • 桝潟 俊子
    1995 年 1 巻 p. 38-52
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    1970年代に各地で自然発生的に実践が始まった有機農業運動は、異端視、白眼視された困難な状況から、「提携」という独創的運動形態をうみだし、食べものの生産―流通―消費にわたる社会・経済システムの変革を進めてきた。

    ところが、1980年代後半になると、農政レベルでの環境保全型農業の施策化、有機農産物を市場流通にのせるための表示の制度化など、「制度化、政策化の段階」を迎え、有機農業が「運動」から産業社会における「ビジネス」として成立する条件がでてきた。有機農産物の広域流通や外国からの輸入が拡大していくと、有機農業が本来内包していた「物質循環と生命循環の原理」が崩されていく懸念がある。

    このような状況のもとで、健全な有機農業の定着・拡大に向けて、地域の多様性と循環性を保障するどのような関係性(社会関係や社会システム)を構想しうるのかが、問われているのである。

    本稿では、日本の有機農業運動がこれまで「地域」をどのようにとらえ、どのように「地域」とかかわり、「地域」をどのように変えてきたか、といった地域的展開の諸相を、(1)自給農場づくり、(2)消費者集団との提携、(3)有機農業による地域の再建運動に分けて考察し、有機農業をめぐる環境社会学の問題視角や枠組み、および今後の課題の提示を試みた。

  • 満田 久義
    1995 年 1 巻 p. 53-71
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    いかなる社会学もその時代的、社会的背景とは無関係でありえない。人間社会と自然環境との複雑な相互関連を含め、環境問題の社会的次元を解明するために新たに定立した環境社会学も、環境事象をめぐる社会的状況に強く影響されている(Dunlap and Catton, 1979)。環境社会学をより深く理解するためには、(1)なぜ環境社会学が1970年代後半の先進工業国で生まれたのか、(2)とくに米国で成立したことが、環境社会学の内容や性格をどのように規定しているのか、(3)さらに環境社会学が、環境主義の高揚と地球環境問題の出現とによって、いかに変容し、展開しているかを明らかにすることが重要である。

    本稿では、環境社会学とはなにかを明らかにするために、(1)まず、米国の環境主義をめぐる社会的状況と関連させて、環境社会学の学問的定義と環境問題への立場について論述する。(2)次に、環境社会学におけるパラダイム論争を、とくに環境問題の社会学(Sociology of Environmental Issues)と環境社会学(Environmental Sociology)とを対比しながら考察する。(3)最後に、環境社会学が環境問題の社会学を超えて、めざすべきラディカル環境社会学について述べる。

小特集 環境社会学へのまなざし
論文
  • 阿部 晃士, 村瀬 洋一, 中野 康人, 海野 道郎
    1995 年 1 巻 p. 117-129
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    ごみの減量化や資源化を促進する経済的手法の一つとして、家庭から排出されるごみ処理の有料化が期待されている。しかし、不法投棄の増加可能性に代表されるような問題点も指摘されており、有料化にあたっては、その効率と公平さに関する人びとの合意を形成しながら、制度を確立することが重要である。

    本稿では、社会調査データを分析することにより、有料化への合意条件を探る。有料化についての意識に関連する要因としては、費用負担の公平さに関する意識と有料化から生じる事態の予測をとりあげた。さらに、それらを規定する要因として、人びとの状況認知やごみ問題への対処行動についての意識を考えた。分析に用いたデータは、1993年11月に仙台市の1,500世帯を対象におこなった調査によって得たものである。

    有料化を許容する回答者は、家庭ごみで4割、粗大ごみで8割弱を占めていた。分析の結果、ごみ問題に対する対処行動への協力可能性の高さや、他の人びとが対処行動を実行していないとの認知が、従量制を公平と考えることや有料化への賛成に結びついていることが明らかになった。また、対処行動への協力可能性に対しては、対処行動の手間や有効性に関する意識が規定因となっていることを確認した。

  • 脇田 健一
    1995 年 1 巻 p. 130-144
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    本稿では、1980年に施行された「滋賀県琵琶湖の富栄養化防止に関する条例」とたいへん深く関わった、「石けん運動」を事例に、環境政策への住民参加の問題を検討した。この石けん運動では、合成洗剤による健康障害や琵琶湖の富栄養化が問題にされた。そこで、条例制定前後の時期に注目し、個々の運動団体と滋賀県行政が、合成洗剤の問題をめぐってくりひろげた相互作用過程のダイナミズムを、各々の主体が行う状況の定義のズレ、そしてそれらの共有・妥協・対立、またストラテジーにも注目しながら分析した。そして、そのような相互作用過程において形成された論理とともに、石けん運動が結果として抱えてしまった問題を指摘し、今後の方向性を提示した。

  • 青柳 みどり
    1995 年 1 巻 p. 145-160
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    全国5000世帯の主婦を対象に、「環境保全活動」に関するグループへの本人および家族の協力・参加についてのインタビュー調査を行った。本報告はその結果をもとに、主にごみ問題に関するグループへの参加について、どんな属性の人々が活動を担っているのかについて、多項ロジット回帰を用いた分析を行った。その結果、一般的に社会的活動への参加の要因として指摘されている、比較的世帯年収、夫婦の学歴が高く、子どもが学齢期後半に達した世帯がもっとも参加の確率が高いという結果を得た。

研究ノート
資料調査報告
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