本稿では,資源利用のために必要な空間を外的資産,資源利用のために必要な諸個人の個人的な技能を内的資産として整理した。そのうえで,外的資産を管理する地域社会の社会的制度と,各個人ごとに大きく異なる内的資産とがどのような関係性にあるかに注目した。
この視点によって,高い内的資産をどの程度社会化することが可能であるのかという問題意識を,フィールドデータに立脚した研究のなかに導入することができる。
そこで本稿では,瀬戸内海A村落におけるタコツボ漁に注目した。このA村落のタコツボ漁には,社会的制度によって管理された漁場と,そのなかで個人的技能を成長させていく個人という双方の姿がみてとれる。そこからは,地域社会のなかの個人と社会的制度の関係が象徴的にあらわれてくる。
この関係性に注目し,そこから,①個人の技能がどのように地域社会に還元されるのか,②地域社会の仕組みはどのように個人の動きを規定するのか,③個人はどのように社会の仕組みを超えた活動を行うのか,という点について考察した。
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