環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
9 巻
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
巻頭エッセイ
特集 農と暮らしのディスクール
  • 松村 和則
    2003 年 9 巻 p. 4
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー
  • 古沢 広祐
    2003 年 9 巻 p. 5-21
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    グローバリゼーションが進行するなかで,私たちの暮らしは大きな変貌をとげつつある。なかでも食・農・環境をめぐる動きについて,循環型社会の形成という視点から考察する。たとえば有機農業における産直・提携運動では,食べ物の安全性にとどまらない自然生態系の大切さ,農業生産の問題点,反自然化してきた都市生活(消費者)のライフスタイルの変革が展開した。こうした動きは,近年のエコロジー運動や生活の見直し,循環の再構築を目指すさまざまな活動にもみられる。食と農に関わる生産と消費の適正化および循環型社会の形成の動きは,ひろく大量生産・消費社会からの脱却の道を示唆するものである。大地・自然と人間との関係をどのように結び直すのか,私たちは大きな時代的転換期に位置している。

  • 藤村 美穂
    2003 年 9 巻 p. 22-36
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    食の問題については,残留農薬や食品添加物の問題から,産地や流通経路の不透明さまで含めて,さまざまな問題が続出している。このような状況のなかで,人びとは,自分たちの食べ物について,漠然とした不安を抱いている。その一方で,食べ物を共有する側,すなわち農を営む人びともまた,農業のあり方や自分たちの暮らし方について不安や怒りを感じている。

    本稿では,この漠然とした不安や怒りに焦点をあて,「食と農」がいかなる意味で環境問題であるのかについて,農山村の暮らしのなかから描き出す試みである。その際,注目したのは,農業が,自然と直接的にかかわる営みであるという点である。自然とのかかわりについては,資源管理や農地保全など,さまざまな文脈で語られているが,本稿では時間という変数によってそれを表現する試みである。

  • 大塚 善樹
    2003 年 9 巻 p. 37-53
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    「食と農の分離」という問題意識を「文化的アプローチ」と「市場的アプローチ」として整理した上で,補足的なアプローチとして「科学技術」を社会的な構築物として問題化する視点を導入したい。フードシステムの諸主体が埋め込まれている文化的・認知的構造は,専門家の言説と実践のネットワークによってつくられているが,素人は疎外されている。このような対比を行う意味を,専門家によるイネゲノム計画と,素人市民を主役としたコンセンサス会議を事例に検討した。イネゲノム計画は,主に特許を「制御の概念」とする国家と企業の闘争として記述できる。しかし,それは素人市民の日常的な経験とは隔たっており,コンセンサス会議の参加者は,関連性の薄い出来事や言説を多様な形で動員していた。専門家の言説は,共通の価値をめぐる闘争の場に「埋め込まれて」いるのに対して,素人のそれは問題となる事象の周辺での「埋め込み」が希薄で紐帯も弱いことが示唆された。コンセンサス会議のような装置は,素人市民を専門家-素人境界を自覚し疑う主体へ変容させる可能性をもつであろう。

小特集 農と暮らしの現場から
特別寄稿
論文
  • 大門 信也
    2003 年 9 巻 p. 92-106
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    本稿では市街地で流されるBGMやマナー放送,あるいは防災無線放送などにより生じる拡声器騒音被害について考察する。拡声器騒音は主観的な被害現象であることから従来の工学的騒音研究とは異なる視点からの分析が必要となる。そこで,拡声器騒音問題を人々の拡声器音に対する意味づけの対立と捉え以下の分析を行った。まず拡声器騒音をめぐる言説を概観したところ,この問題が受容者=多数派/被害者=少数派という図式で認識されていることが確認された。次に防災無線に関する意識調査結果と街路に流されるBGMに関する意識調査結果を分析したところ,拡声器騒音被害についての人々の認識は音を肯定する人と音を聞いていない人を同一視し,音をうるさいと感じる人をマイノリティ化させることにより立ち現れていることが明らかになった。こうした分析をつうじて受容者=多数派/被害者=少数派という認識自体が被害を生みだしていること,そしてそうした認識を現出させてしまう不特定多数の人々に音を聞かせる行為自体の加害性を指摘する。

  • 西城戸 誠
    2003 年 9 巻 p. 107-123
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    戦後日本の抗議イベントデータを用いて,戦後日本の環境問題に対する抗議活動(抗議型の環境運動)の動態とそれを規定する構造的な要因を計量的に分析した。その結果,環境問題に対する抗議活動は,1970年代半ばに穏健化し,1980年代にオルタナティブな要求をする活動が増加し,1990年代には「停滞」の様相を示したことなどが明らかになった。また,環境問題に対する抗議活動全体が興隆した時期(1964~73年)と沈静化した時期(1974~94年)において構造的要因の影響について分析した結果,1964~73年では地方における政治的機会の閉鎖性と革新勢力との同盟といった要因が抗議活動の生起と関連していたが,1974年~94年は政治的な要因との関連がほとんどなくなった。むしろ,1974年〜94年では,経済的な豊かさが抗議を生起させる条件になっていることが見いだせた。さらに1970年代半ば以降,日本の抗議型の環境運動は,欧米の抗議活動と異なり「運動社会」の様相は示していないことが明らかになった。

  • 睦好 絵美子
    2003 年 9 巻 p. 124-139
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    東南アジア各国で導入されている参加型森林管理制度により,地域住民に付与される資源の利用権は,住民が森林資源を継続的に管理し利用するための基盤であると考えられている。しかし現実には,限りある森林資源や土地をめぐって住民同士の紛争あるいは地域住民と企業や政府との紛争が起こり,権利は絶えず脅かされている。

    本稿では,フィリピン国ボホール州の沿岸森林資源であるニッパヤシについての現地調査を通し,資源紛争が住民の資源管理に対する意識と権利確保の行動に与える影響を分析することとした。

    資源をめぐる地域内部での紛争を避け自分の利用権を確保するため,住民は法的権利の維持のほか様々な対策を講じてきた。また,養殖池開発企業との紛争を契機としてコミュニティとしての沿岸資源に対する保全意識が高まった結果,地域住民は抗議行動をとって企業を退け,最終的には政府から共同管理権を取得した。

    紛争を予防し資源を持続的に利用するためには法的権利を付与するのみでは十分とは言えない。行政による適切な管理とともに地域社会での規範の形成等が重要と考えられる。さらに,内外との紛争を回避するためには,共同管理権と個別管理権の重層化,すなわち共同管理権の対象地域内に個別管理権を設定して個人の権利を明確化するほうが適切な場合があることが示唆された。

  • 浜本 光紹
    2003 年 9 巻 p. 140-152
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    消費者へのアンケートを通じて環境資源に対する支払意思額を直接的に聞き出す仮想市場法(CVM)は,開発行為が招く環境破壊に伴なう損害費用や環境改善事業がもたらす社会的便益を定量的に把握するための手法として認知されているだけでなく,住民が環境やアメニティに対する選好の強度を表明するという形で環境行政や地域計画への公共的関与を促進する手段としての利用可能性が期待されている。NOAAパネルが示したCVM調査に関するガイドラインは,米国では日常的に住民投票が行なわれていることなどを理由に,価値評価の質問形式として住民投票方式を採用することを推奨している。住民投票の経験をもたない有権者が殆どである日本の場合,政策の賛否に対する投票行動のひとつとして,判断に迷った有権者が現状維持を支持して反対票を投じる可能性がある。このことから,住民投票方式を採用したCVM調査において,提示金額を受諾しない回答者が多くなり,結果として支払意思額平均値が低く表れることが予想される。本稿の分析では,これを支持する結果が得られた。以上の考察より,CVM調査での質問形式の選択において調査対象地域の社会経済的条件を考慮する必要性が示唆される。

  • 菊地 直樹
    2003 年 9 巻 p. 153-170
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    兵庫県北部の豊岡市では,1971年に野生下で絶滅したコウノトリの野生復帰に向けた取り組みが行われている。人とコウノトリの共生という理念は広範に受け入れられている一方で,稲を踏み荒らす害鳥という声も聞かれ,共生への協力や啓蒙の必要性が主張されている。野生復帰のように自然との共生という枠組みで地域社会のあり方を模索する場合,自然とどうかかわるかが重要な問題となるが,コウノトリと接しながら生活してきた人たちはどのようにかかわってきたのだろうか。

    コウノトリを聞き取る調査の場で,多くの人が2つの呼び方でコウノトリを語った。ツルとコウノトリである。語りを検証する中で,生活に埋め込まれた存在として語られるコウノトリを「ツル」,学術的な価値を持った保護すべき対象として語られるコウノトリを「コウノトリ」と規定し,語りから人とコウノトリのかかわりのあり方を考察した。「ツル」では,人とコウノトリの間には自然への働きかけの濃淡に基づいた可変的なかかわりがあった。「コウノトリ」ではコウノトリとのかかわりは希少性といった保護概念を軸にしたものに特化した。保護という価値へ関与しない人はコウノトリとのかかわり自体がなくなり,遠い対象と認識されるようになった。

    「コウノトリ」に限らない人とコウノトリの関係性の再構築に向けて,コウノトリを近くしていた自然への働きかけの意義を現代社会の生活様式の中で問い直すことが野生復帰の課題になる。

  • 茅野 恒秀
    2003 年 9 巻 p. 171-184
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    林野庁による1980年代後半の国有林野の保護林制度の変革は,森林生態系保護地域という森林保護区の導入によって,拡大造林政策に基づいた無秩序な自然林の伐採に一定の歯止めをかけるとともに,その後の環境保全を重視した国有林野行政への改革の転換点となった。この政策過程には,自然保護運動が積極的に関与し,自らが開催した「ブナ・シンポジウム」,行政が設置した林業と自然保護に関する検討委員会,各地域の森林生態系保護地域設定委員会において,行政に対して継続的に解決圧力を与え続けた。本稿は,制度変革への課題設定に大きな役割を果たした東北地方の事例を中心に,個別問題の解決と制度変革の両立を果たしたこの政策過程の担い手となった国有林野行政と自然保護運動との相互作用を検討するものである。分析にあたって,政策過程の各段階において形成された,問題をめぐって複数の主体が関与する取り組みの場としての「アリーナ」を取りあげ,政策過程に登場した複数のアリーナを「課題設定アリーナ」,「制度変革アリーナ」,「個別問題解決アリーナ」の3つに機能分類を試みた。これらのアリーナが連動して形成され,問題解決に寄与したが,それを可能にしたのは各アリーナで複数の水準の運動体が林野行政との勢力関係を均衡させるネットワークを結んでいたことが大きい。

  • 山本 早苗
    2003 年 9 巻 p. 185-201
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    本稿では,水利システムの組織的工夫の実態分析を通じて,地域社会が,社会経済的な外部的変化に柔軟に対応するために,どのような共的資源管理の社会的仕組みを持っており,またそれを変容させてきたのかを明らかにする。具体的には,滋賀県大津市仰木地区での土地改良事業による水利組織の変化を事例として,水利組織の機構・構成員・管理内容・費用負担を調査した。従来の水利研究では,「古田優位」の原則と「上流優位」の傾向が明らかにされてきた。しかし,この仰木地区の水利慣行である井堰親制度においては,「下流」の末端部に位置する水田所有者を「井堰親」と呼び,水利管理責任者としてきた。これは一種の「逆転の管理」であり,これにより下流まで平等な水の分配を可能にしてきたと考えられる。

    土地改良事業の結果,「平常」時においては,水管理機能は土地改良区,井堰組織,配水ブロックの3者に分化した。しかし,渇水が生じた「非常」時においては,土地改良区と井堰組織間や成員間の関係が相互に組み変わる「ダイナミックな重層性」が生成される。つまり,水が本来的に持っている「変動性」に応じて,私的所有地(個々の水田)としての管理を越えて,共同性が生成されるのである。コモンズとして水利システムを捉えることで,それは単に水の共同利用・管理だけでなく,土地を「つなぐ」社会的仕組み(「コモンズ複合」)として理解することができるのである。

    近代的な土地改良事業が,共的資源管理を破壊するだけでなく,そこに新たなコモンズともいえる共同性を生成する本稿の事例は,共的資源管理研究としてのコモンズ論に新たな視点を加えることにもなろう。

研究ノー卜
  • 甦 叶
    2003 年 9 巻 p. 202-210
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2019/01/30
    ジャーナル フリー

    本稿では,中国内モンゴル自治区での住民の生活環境に及ぼす草原破壊の影響を紹介し,社会的被害・加害構造の解明ならびに草原生態系の回復,改善に資する社会的アプローチについて検討した。始めに,草原破壊の影響を紹介し,第1被害者である現地住民の生活被害と精神的被害および伝統文化の崩壊などが十分認識されていないことを明らかにした。次に内モンゴルの草原破壊の因果関係を分析し,農耕開墾と人口増加が直接原因であることを指摘した。内モンゴルの草原破壊の背景にある社会的被害・加害構造を分析した結果,誤った農耕政策,遊牧文化に対する無理解,現地住民の社会的弱者としての立場などの3つの背景が人為的破壊をもたらした直接原因に結びついていると考えられた。そうした視点に立って,草原保護と草原生態系の回復のための社会的アプローチを検討した。草原破壊の社会的被害・加害構造を打破するには内モンゴルにおける農業政策の見直し,全社会の理解と協力,現地住民の草原保護運動への参加などが不可欠であり,今後の社会的なアプローチとしては,①内モンゴルでの農耕業と牧畜業の環境効果と経済効果の見直し,②異文化間の理解の増進,相互の尊重,③住民の人権・環境権の尊重,草原保護運動への住民参加が重要である。

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