本稿は,生成AIの登場により情報収集が容易になった時代における図書館と司書の役割について論じたものである。情報収集の変遷から図書館と司書の役割を振り返り,AI時代の図書館と司書の役割を考察する。AI時代の図書館は,情報提供の「機能的価値」とコミュニティ形成の「情緒的価値」という2つの方向性が考えられ,司書は「情報へのナビゲーター」と「コミュニティのファシリテーター」という役割が期待される。AI時代の図書館の方向性を考察・決定するには,組織内で生成AIへの理解を深めることから始める。自分一人で行うには困難であるため,自ら発信し,同じ目的を持った人々とのつながりを作ることが重要である。
2024年6月28日(金)に5年ぶりに会場で学術情報ソリューションセミナーを開催した。本稿では,当日録画にてご発表いただいたマンチェスター大学John Hynes氏のプレゼンテーション「Excited about scite」の前置き/補足として,AI(人工知能)による引用内容分析サービス「scite(サイト)」の概要を紹介する。
日本においても生成AIの業務上の利用についての関心は引き続き高く,2024年には各官庁も相次いで法的な考え方や利用上の注意点を示したガイドラインを公表した。他方で,生成AIを業務上利用するにあたりどのような法的リスクがあるかについては,必ずしも個々の利用者において十分に理解されているとはいえないように思われ,それが,各利用者において漠然とした不安につながっていると推測される。この分野においては未解決の論点も少なからず残っているが,本稿では,現時点での行政の考え方をベースに,生成AIの業務上の利用に関するリスクや問題点について,主に著作権法の観点から概説する。
マヤ語解読者クノロゾフの故事から大学図書館の責務について考察し,文豪ボルヘスの作品「バベルの図書館」から今後さらに重要性が増す選書の意義について考察した。書籍の電子化が思いのほか進まない理由は,著作権法制上の障害である以上に,現状のタブレット型電子書籍が書籍として未完成であることを論じた。さらにナノテクノロジーを用いたマイクロフィッシュの復活の可能性,アナログ電子書籍とその超縮小保存の可能性について思いを巡らせた。
2024年7月13日および14日に名古屋市立大学桜山キャンパスで開催された,第39回医学情報サービス研究大会(MIS39)の実施と運営の詳細について報告する。本大会はMISが開催されて40年を迎えた節目の大会であり,新型コロナウイルス感染症の発生以降,初の対面形式のみで実施され,167名の参加者を集めた。本稿では開催概要に加えて準備段階での工夫,プログラム内容,デジタルツールの活用など,実施にあたっての取組みについても詳述する。
本稿ではセレクトクラウドレビューに関して,当初のアイデアからパイロット運用を経てSynlettやSynOpen等の著名なジャーナルの査読で広く使用されるまでに至った現在までを詳しく説明しています。また,セレクトクラウドレビューの査読ワークフローを詳しく解説します。