本来, 医療において薬剤師の果たす責任は, 個々の患者の医療上の問題, 例えば, 薬剤選択や効果判定, 副作用発現などの問題を的確に識別し, 介入すべき問題を判断し, 介入し, 最善最良の医療を提供することである。つまり, 医薬品情報学教育の目的は, 薬学の各教科で得た知識を統合し, 机上の知識を実際の医療に適用できる能力に高め, 実際に医療を変革できる能力を育成することであると考える。これらの目的を達成するためには, 高い問題の識別能力と問題解決能力 (プロブレムソルビング), 具体的には, 患者情報を評価する能力, 的確な情報源を選択し, 迅速に情報を収集し, 的確に評価し, 他の専門学問の知識を総動員し, 対象に適用できる能力の育成が求められる。名城大学薬学部では, このプロブレムソルビング能力育成を目標として, 10年前から医薬品情報学の実習を行ってきた。現在, 3年生に対して2週間(8日)の実習を行っている。学生に処方せんと問診票を与え, 含まれる問題点(ノンコンプライアンスや副作用など)を識別させ, 評価し, 問題の解決を図らせる。さらに地域薬剤師会から患者役として現役薬剤師を招き, 医療面接, 患者の問題識別, 服薬説明をロールプレイ形式で訓練し, 実際の医療への応用を目指している。6年制では, 本実習の考え方を基に発展させ, 3年次および事前実習においてより実践的な教育を行う予定である。
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