Wagner. R.P., Haddox, C.H., Fuerst, R. and Stone, W.S.1950. The effect of irradiated medium, cyanide and peroxide on the mutation rate in
Neurospora. (アカパンカビの突然變異率に對する照射培養基, シアン化物および過酸化物の影響)。Genetics 35: 237-248Stone, Wyss and Haas (1947) や Stone, Haas, Clark および Wyss (1948) は, 紫外線で照射した培養基で培養した
Staphylococcus aureus は突然變異をおこすということを報告した。また, 紫外線で細菌を間接處理することによって
S. aureus のペニシリンやストレプトマイシンに對する抵抗やmannitol を醗酵しえないことに對する突然變異め割合が増加しうることも示された。このような方法は, 突然變異の誘導や, 突然變異それ自身の問題に新しい道を開いた。これらの問題を研究するために著者らは材料として,
Neurospora をえらんだというのは, 有性的の生活史をたやすくコントロールできること, バクテリアの細胞と同じように, 配偶子核声たやすく化學物質處理にさらされうることなどのためである。照射した培養基 のほかに,過酸化水素やシアン化カリをも用いた。それは, Wyss, Clark, Haas および Stone (1948) の報告したように, 過酸化水素は照射培養基の突然變異率に對する影響において重要な役わりをもっているからである。このことを正しいとすれば, シアン化物は過酸化水素をこわす酵素であるカタラーゼの阻害 者であるから, 突然變異誘起におけるその有効性が考えられる。理論的にも, カタラーゼは細胞中の過酸化水素の濃度を突然變異を却こす水準までもっていくものと考えられる。
この實驗には交雜によつてえた
Neurospora crassa の野性型を用いた。紫外線で豫め照射した培養基で分生子を處理した場合にも, 直接, 分生子を過酸化水素シアン化カリで處理した場合にも, かなり高い生化學的突然變異 (biochemical mutation) をえた。この變異は有性生殖を通じて維持された。出現の率は 直接紫外線で照射したものよりは低いが, それと變つてはいない。
Neurospora におけるこの結果は, Stone 等(1947, 1948)およびWyss 等(1918)のバクテリアにおける結果をたしかめるものであり, 間接の照射によつても突然變異ができ, 照射の結果つくられる突然變異物質の一つと考えられた過酸化水素によつても同様に突然變異のできることを確めるものである。
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