I. タバコの種子の光感性が浸水時間の経過と共にどのように変化して行くか浸水処理時間30日間の変化を追究して次のことが分った。
(1)ダルマ, 大ダルマ, ハタノ, スイフ, コクブの各品種では浸水時間の経過と共に, その光感度は2~4回の波状変化をくりかえす。光感度の高まる時期と低下する時期 (浸水時間を指す) とは品種並に後熟程度によつて夫々少しの相違があるが, 大体のところ敏感な時は新種子では3~4, 8, 15日目であり, 完熟種子では3,5,10日目である。
(2) 黄色種のみはその光感性は波状変化をせす, 従来他の研究者によつて他の種子で報告されておると同様, 浸水時間の経過と共に光感性は高まりやがて低下を示す, 所謂ゆるやかな一つの山型を呈する。この光感性の最も敏感な時期は新種子では8日目, 完熟種子では4~5日目のようである。
(3) 波状変化の高低差は品種によつて夫々特徴がある。ダルマ種が最も著しい急激な波状を示し, スイフ種がこれに次ぎ, ハタノ, コクブ種になるにつれて凹凸の差が少くなり, 遂に黄色種に至つて殆んど凹凸のない頂上の平坦な山型を呈するに至る。
(4) 大きな光量 (10000MK•3min.) で照射した際は各品種共簡単な〓型変化を示し,波状変化は見られない。
II. 瞬間照射による光感度の敏感な点は従来の如何なる報告にも見られない極めて瞬間的な値であり,黄色品種で実験した値である。
(1) 完熟子種子 (最高発芽率80~85%) では浸水時間72時間の際に1500MK•1/90秒で75%, 150MK•1/90秒照射で54%の発芽率を得ている。
(2) 新種子 (最高発芽率70%) では光感度の最も敏感な時期である浸水時間8日目に1500MK•1/90秒照射してこの品種最高発芽率を (71.5%), 200MK•1/100秒で62.5%, 200MK•1/300秒で35.5%の発芽率を夫々得た。本研究は三輪知雄教授の指導の賜である。尚服部静夫教授, 山口清三郎博士,長谷川正男氏に教示されたところが多い。実験に協力された大房氏の努力に対し並に貴重な実験材料を提供された專売公社各地試験所の各位の厚意に対し感謝の意を表する。
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