ミゾシダ (
Leptogramma totta J. Smith) を主な材料とした外, 2種のシダを材料として,それらの前葉体上に発育した退精器の壁細胞, すなわち帽細胞, 環細胞, 底部環細胞の吸水力を Ursprung and Blum などの “平衡法” を適用してしらべた結果は次のように要約できる。
1. 造精器の壁細胞の吸水力は大きく, ミゾシダでは庶糖の0.98モル水溶液の浸透価, すなわち33.6気圧に相当する。
2. この値は高い浸透価を有する海岸植物の浸透価より高い。そして退精器の壁細胞の浸透価は前葉体細胞のそれよりも高く, この事実は開閉能ある気孔孔辺細胞の浸透価が表皮細胞のそれよりも高いという事実に似ている。
3. 精細胞の吸水力も比較的大きく, ミゾシダでは庶糖の0.74モル水溶液 (23.1気圧) に相当する吸水力がある。この値は海岸植物の浸透価とほとんど同じであるといえる。
4. 造精器の壁細胞や精細胞の吸水力の大きいことは, それら細胞の activity の高いことを示すものであり, 造精器裂開や, 精細胞からの精子の脱出の主要な一因子であると考える。
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