1. 凍結乾燥法により,
Spirogyra ellipsospora および
Lilium longiflorum の子房を処理した, 前者については形態学的研究を, 後者については 組織化学的研究を行なった.
2. 本研究では, 上記の材料を-150゜以下で凍 結した後, -50゜附近で, 減圧乾燥した.
3. 凍結乾燥法により処理し, 真空中でグリセ リンに包埋した
Spirogyra ellipsospora では, 細胞容積の増大がみられたが, 細胞壁の破壊は少 なく, 葉緑体の鋸歯状突起はよく保存され, その 切断もみられない. しかし, 細胞を包埋している グリセリンを水で除いた後に, 染色•脱水•バル サム封入などをほどこしたものでは, しばしば葉 緑体の切断がみられる.
4.
Lilium longiflorum の組織化学的研究に おいて, 凍結乾燥法で処理した材料では, 10%ホ ルマリンで固定した材料で検出できなかった反応 が検出でき場合, また10%ホルマリンで固定 された材料で検出できるものとくらべても, 凍結 乾燥法で処理した材料の方が反応が強くあらわれ る場合, なお新鮮材料や凍結乾燥法で処理した材 料とくらべて, 10%ホルマリン固定した材料で は, 染色される範囲が狭くなつている場合などが ある.
5. (3)•(4) の結果から考えると, 本方法は藻 類の形態固定にすぐれていると考えられる. Specia chromo-acetic-osmic solution や, 組織 化学的研究の際によく用いられるホルマリン固定 液のいずれよりも, 形態学的•組織化学的にすぐ れた植物細胞の処理方法である.
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