高等植物の乾燥抵抗を乾燥死するまでの時間として表現し, いろいろ考察をくわえた. 乾燥抵抗とは,植物が人工的な処理をうけたのち, 水の消失に対する抵抗能力として定義した. クワを中心とする乾燥抵抗を論議するまえに, その乾燥抵抗算出に必要な諸量を決定する実験についてのべる.
1. クワの比較蒸散量 (T
r) は, 気孔が日中はひらいているので, 昼間はつねにおおきい. T
rの最高値は100%以上にもなり, 水生植物に相当する. 片面のクチクラ蒸散量は10%以下であり, 気孔のとじたばあいのT
rはその約1.4倍である.
2. 摘葉後水の消失にともなう気孔の水能動閉鎖運動については, その閉鎖が不活発ないわゆる「鈍葉」(dull leaf) がみられた. この現象は葉令に関係があり,「春ぎりクワ」と「夏ぎりクワ」では様相をことにする.
3. 夏時葉位にともなう対乾物含水量変化の普通な型はつぎのとおりである. 含水量は先端のいちばんわかい葉で最大であり, 400%以上にもなり, そのしたの数葉で急に減少し, 枝の中部の葉ではほぼ250%である. 成熟した葉の面積重および面積あたりの含水量は,「春ぎりクワ」では1cm
2あたり5mgおよび12mgであり,「夏ぎりクワ」では4.5mgおよび11mgであった.
4.夏時幼葉, 成熟葉および老葉の致死含水量はそれぞれ190, 120および120%であり, 最初の含水量を250%とすれば, 致死飽差 (最初の含水量と致死含水量の差) はそれぞれ60, 130および130%になる.
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