植物学雑誌
Online ISSN : 2185-3835
Print ISSN : 0006-808X
ISSN-L : 0006-808X
73 巻, 868 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 高尾 昭夫
    1960 年 73 巻 868 号 p. 379-388
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    クロマツの胚発生の様式をしらべ, 6時期にわけて記述した. 更に組織化学的方法を用いてでんぷん, その他の多糖類およびたんぱく質の消長を胚発生のいろいろな時期についてしらべた.
    胚柄がのびだしていく時, その前面にある前葉体細胞は, 受精前はほとんどどんな物質も検出されないが, 前胚形成が始まるとでんぷん粒とたんぱく質が現われ, それらの量は急激に増加する. たんぱく質は胚柄が完成時の半分の長さにのびた頃, でんぷん粒は少し遅れて胚が2部分に分化する頃に最大量に達する. これらの物質を含む細胞は崩れて前葉体内に腔所をつくり, この腔所内で胚発生がすすむ. その後たんぱく質は急激に消失し胚原基ができると完全になくなる. でんぷん粒の大部分は胚の基部が2部分に分化する時までに徐々に消失し, 少量のでんぷん粒と無定形の多糖類が腔所の囲りに残る. これらの物質は胚発生の初期に水溶性の物質に変えられて胚の生長と分化に使われるものと考えられる.
    胚柄がのびだす頃から前葉体周辺部の基部の方の細胞にたんぱく粒が現われ, 胚発生がすすむにつれて前葉体の中心部および先端部の細胞にも現われその量も増加する. この増加は種子の成熟まで続き, 成熟時には胚をとり囲む残余の前葉体細胞に多量のたんぱく粒が貯えられる.
  • 戸塚 績, 大島 哲夫, 門司 正三
    1960 年 73 巻 868 号 p. 389-397
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    水耕したタバコを実験材料として前報3,4)で論じた水分経済の式を用いて, 野外条件下で栽培したヒマワリの生長を解析した. 播種後39日目に茎を中心にして半径5cmの円周で側根を切断し, 側根の61%を除去した. 処理後3週間目の処理区 (B) の乾物生長量は対照区 (A) の63.1%に低下し, 伸長生長にも差がみられた (第1図). しかし, 葉の窒素含量は処理2週間後までは両区の間にいちじるしい差は認められなかった (第2表). 葉の含水量の日変化は切断2日後では (A) より (B) の方が常に低いが, 6日
    後は恢復する (第2図). これは根の恢復による結果であって, 根と葉面積との割合 (active root/leaf area ratio) が葉の含水量変化に関係していることを示す (第3図). 含水量測定と平行して改良葉半法で測定した同化量は葉の水分欠乏が進行するにつれてほぼ直線的に減少した (第4図). 同時に測定した気孔の開度は強光下でもほとんど変化しなかった (第5図).
    以上の諸事実にもとずいて, 生育期間中の気象条件を加味して葉の水分欠差を式 (1), (2) より算出し,さらにこの値と物質生産とを結びつけて生長量を算出したが, それは実測値とほぼ一致した. このことは根の一部切除による生長減退は, おもに葉の一時的しおれによる同化能率の低下した結果であることを裏書きする
  • 豊田 清修
    1960 年 73 巻 868 号 p. 398-403
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. ペーパークロマトグラフィーはクロロフィルの定量にある程度利用できる.
    2.ハスの幼芽におけるクロロフィルabとの量比を, 663mμと645mμとにおける光学濃度の値から, 連立方程式によって計算した.
    3. メタノール溶液によるクロロフィルの吸収スペクトルにおいては645mμにおけるクロロフィルbの肩は現われなかった. しかしハスの幼芽のスペクトルにおけるE470に対するE440の比率を計算すると, これらの比率は成熟につれて漸進的に小さくなることを見出した. それらの比率はクロロフィルbに対するaの量比と密接な関連をもつものと考えられる.
    4. ハスの幼芽においては, クロロフィルbに対するaの量比は, ふつうの葉にくらべてかなり小さい, そして成熟につれて徐々に小さくなる. しかし果実から発芽した幼葉ではその比率は幼芽より大きい.
    5. いろいろの成熟段階のハスの果実で光の透過率を測定した. その結果, 初めの成熟段階では, わずかの光が果皮と種皮とを透過するが, 終りの階段では幼芽はまったく光から遮断されていることがわかった.
  • 藤伊 正, 石川 茂雄, 中川 篤
    1960 年 73 巻 868 号 p. 404-411
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    キリンソウ種子は光発芽種子であって, じゆうぶんな発芽を与えるためには, 24時間以上の連続照射を必要とする. しかし従来タバコ, レタスなどの種子で報告されているように, この種子もジベレリンを与えることにより, 暗黒でも発芽が誘起される. しかし発芽過程の進行にともない, ジベレリンに対する反応も変化することが考えられ, 発芽の全過程にわたって種子をジベレリン溶液中に置いた場合, ジベレリンが発芽のある段階を促進すると同時に他の段階を抑制し, その効果において, 両者が相殺するという懸念が生ずる. それ故ジベレリンの真の発芽誘起を知るべく, ジベレリンの短時間処理を試みた, 連続的処理においては最適濃度が25ppmであり, 100ppmではまったく発芽を誘起しないにもかかわらず, 短時間処理においては, 1000ppmの高濃度においてさえもいちじるしく発芽を誘起することを見出し, 更に発芽の後段階ではジベレリンがかなりの低濃度においても阻害的に作用することを明らかにした.
  • (I) 主葉枕上半部における興奮性の有無について
    相見 霊三
    1960 年 73 巻 868 号 p. 412-416
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    オジギソウの葉が刺戟を受けて屈曲運動を起す際, 従来広く行なわれている考え方は, 葉枕 (主葉枕) の下半部が興奮収縮し, 上半部組織の張力と相まって, 下方に向う屈曲運動が起るもので, この際,刺戟に対し興奮性 (被刺戟性) を有するのは下半部のみであるとされているようである. しかし, 葉枕の上半部と下半部を構成する柔細胞の原形質をくらべてみると, 下半部は興奮性を有するのに, 上半部にはないと考えられるほど本質的な差違は見出し難い. そこで葉枕上半部の興奮性の有無を, 光のてこを用いた運動描写装置によって追試してみた. その結果, 上半部も下半部と同様, 刺戟によって収縮する興奮運動を起し, 興奮性が存在することを確めることができた.
  • 山田 義男
    1960 年 73 巻 868 号 p. 417-421
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    テッポウユリ (Lilium longiflorum) の花の各組織に存在するコバルトの分布を予測するために, 蕾の発育過程における各組織によるCo60のとりこみをしらべた. 蕾が分化するにつれ, 花柱によるCo60のとりこみの程度は急激に増加した. 特に開葯した花の花柱は他の組織にくらべ, いちじるしく高濃度のCo60をとりこむ. 花柱におけるこのようなCo60の特異的とりこみは組織内の生理的機能に関し, おそらくコバルトが重要な役割をはたすものと推定される.
  • 大橋 裕, 市川 郁雄
    1960 年 73 巻 868 号 p. 422-426
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ハッカの地下茎を約20°, 13°, 6°, 0°の4段階の温度で, それぞれ15日間処理した. 対照としては, この間土中に埋めておいたものをもちいた.
    1. 20°処理, 13°処理の発芽は他の処理, 対照よりはやまった. しかし, 春化をおこなった処理の発芽率は低下し, とくに20°処理ではいちじるしかった.
    2. 20°および13°処理の開花は対照よりはやまった. よって, ハッカは13°~20°ないしそれ以上の高温で温度発育段階を通過し, 春まき型の植物であると考えられる.
    3. 20°処理は, 発芽のみならず, その後の生長も不良で, 収穫時の草丈, 地上部重, 葉収量も低下した. 他の処理, 対照間にはあきらかな差はみとめられない.
    4. 葉中の精油含量は処理温度が高くなるにともなって増加した. 対照の含量はほぼ13°処理にひとしい. 精油中のメントール含量はほとんど変化しない. これらの変化は, 主として処理温度の直接効果にもとずくと考えられる.
  • 第5報 アミノ酸および糖
    遠藤 庄三, 丹治 一義
    1960 年 73 巻 868 号 p. 427-430
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    In this study, amino acids and sugars contained in the rhizome of Acorus gramineus Soland were investigated by the ion exchange method and cellulose column chromatography.
    1. Asparagine, isoleucine, valine, γ-aminobutyric acid and D-glucose were isolated in crystalline state from aqueous extracts.
    In addition, the presence of mannose and glucose was confirmed by their derivatives.
    2. Proline, histidine, alanine, glycine, aspartic acid and fructose were detected by paper chromatography.
    3. An unidentified substance which had been reported in a preceding paper2) was determined as mannitol, and it was found that the mannitol in this plant is a reserve substance during winter.
  • 高山植物と海岸植物の雑種および二, 三の問題
    西岡 泰三
    1960 年 73 巻 868 号 p. 431-437
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    Some miscellaneous observations in the phylogenetic study of the Ixeris dentata group are preliminarily reported.
    The Ixeris dentata group implies I. dentata and its subspecies or varieties, and the members of this group have the basic chromosome number seven. It has been reported that the sexual diploid plants are only found at the alpine and the seashore regions, the apomictic tetraploids are alpine in habitat, while the apomictic triploids are widely distributed from low lands up to low mountains in Japan.
    1) I. dentata var. albiflora f. amplifolia, one of the triploid members, has different karyotypes according to different localities. This seems to apply also to the other triploid members.
    2) A new type of diploid alpine plant was first found at Mt. Tanigawa. This plant is temporarily named “Tanigawa-nigana” in this paper.
    A triploid plant which resembles the usual tetraploid alpine plant, was found in the South Alps of Japan.
    3) The crossing between the alpine plant and the seashore one which are geographically isolated each other, was undertaken.
    As the alpine parent, I. dentata subsp. alpicola and the above mentioned “ Tanigawa-nigana “, and as the seashore parent, I. dentata subsp. nipponica were used. The F1-hybrid of “ Tanigawa-nigana” ×I. dentata subsp. nipponica was easily obtained. It was fertile and its external morphology showed the intermediate characters between those of parents.
    But F1-hydrid of I. dentata subsp. alpicola×subsp. nipponica was hardly produced, and
    when obtained, all of the F1-individuals were sterile and their external morphology was rather similar to that of the alpine parent. In two of five survivals of the latter hybrids, some chromosome aberrations occurred.
  • 小山 鐵夫
    1960 年 73 巻 868 号 p. 438
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
  • 宮脇 昭
    1960 年 73 巻 868 号 p. 439-444
    発行日: 1960年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    Vom 4.-7. Mai 1960 fand in Stuttgart-Hohenheim (Deutschland) emn Internationales Öko-logisches Symposion über die Stoffproduktion der Pflanzendecke statt.
    Mehr als 40 Fachleute der Pflanzenökologie, Pflanzensoziologie, Landwirtschaft und Forstwirtschaft kamen aus 10 verschiedenen Ländern hier zusammen.
    Während der Tagung wurden 14 Referate aus den verschiedenen Fachgebieten, sowie an 2 Abenden 3 öffentliche Vorträge gehalten.
    Wenn auch jeder nur aus den Kenntnissen seines engen Spezialgebietes urteilen konnte, kamen bei diesem ersten Versuch, das Problem der großräumlichen Stoffproduktion der Pflanzendecke näher zu erfassen, doch wichtige Ergebnisse and so viele Anregungen zusammen, daB sich für die Zukunft daraus eine ganzheitlichere Betrachtungsweise ergeben könnte, die für eine wirkliche Zusammenarbeit an diesem umfassenden Komplex von größtem Nutzen
    wäre.
    Störend machten sich besonders neben dem Mangel an zuverlässigem and exaktem Zahlenmaterial die verschiedenartigen Bezugsgrundlagen bemerkbar. Verfasser schlägt darum vor, bei kiünftigen Untersuchungen eindeutig definierte Pflanzengesellschaften zugrunde zu legen, die einen genauen and wiederholbaren Vergleich gewährleisten.
feedback
Top