すでに報告した
16-18)ササ群落の生産構造と生理機能の解析結果を基礎にして, 北海道ワイスホルン山のよく発達したおなじチシマザサ群落の物質生産をもとめ, さらに生産された物質の各器官への分配を量的に解析した.
月平均の最高の日総生産量, 生育期間を通じての平均の日総生産量, および年総生産量は, 乾物あたりそれぞれ36g./m.
2, 28g./m.
2, 4.76kg./m.
2 に達した. この高い総生産量はおもに, 約6か月の生育期間中, 葉の高い光合成能力とその生産構造が一定の活動的な状態に維持されているためである. 一方,1あたりの呼吸消費量は乾物で夏季に最高の18.6g./m.
2 冬に最低の4.0g./m.
2, 年呼吸消費量は3.03kg./m.
2であった. この高い値はおもに非同化器官の量が大きいこと, およびその高い呼吸能
18)のためである. 年総生産量と年呼吸消費量の差から得られた年純生産量は 1.73kg./m.
2 となり, すでに報告した
17)各器官の年間の増分から直接に得た年純生産量 1.6kg./m.
2とほぼ同じである。
年総生産量のうち年呼吸消費量の割合は 65%, また新しい葉の生産と, 葉の呼吸に使われる割合は22%であった. また年呼吸消費量のうち葉の呼吸消費量の占める割合は 24%, 年純生産量に対する新生葉の割合は 19% であった. 年総生産量のうち 25% は地下部と古い桿に貯蔵物質として貯蔵され, これら貯蔵物質のうち翌年新しい器官の形成に使われる量は年純生産量の約 35% にあたる.
チシマザサ群落の示す高い現存量は, おもに高い純生産量と, 純生産量の非同化器官への分配の割合の大きいこと, および非同化器官の寿命が約10年であることによっていることが明らかになった.
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