植物学雑誌
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74 巻, 871 号
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  • 超遠心したスギモク卵における皮部細胞質の差次破壊
    中沢 信午
    1961 年 74 巻 871 号 p. 1-5
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    スギモク (Coccophora Langsdor fii) の卵を受精直後に重力の25,000 倍で 5 分間超遠心した結果, つぎのことが知られた.
    (1) 卵内容は求心端から油滴, 水, プラスチドと核, 透明質, および細粒子の順に層にわかれる.
    (2) 遠心した卵を蒸留水または 30% 海水以下の低張液にいれると, 遠心端の細粒子は暗色になる. この暗色化は遠心端にはじまり, しだいに求心側にむかってひろがり, やがて遠心側で皮部細胞質層が破れ, 原形質吐出がおこる. これは遠心端で水の透過性がもっとも高いことを示している.
    (3) 遠心した卵をヒトデ Asterias amurensis から抽出した毒素 10-4 以上をふくむ海水にいれると求心端からやや遠ざかったところから原形質膜が破壊する. これは原形質膜または皮部細胞質層がこの部域で特に感受性が高く分化していることを示す. つまり皮部細胞質層は遠心力でうでかされ得る. しかしうごかされた結果, それが極性軸を決定することはできない.
  • 市村 俊英
    1961 年 74 巻 871 号 p. 6-13
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    同一の湖沼内において, 植物プランクトンの場所による基礎生産のちがいを調べた. 円形の単純な湖盆形態をもつ湖沼では, 著しい相違は見られず, 全水域にわたってほぼ均一であった. 長形の湖沼では流れとともに現存量, 生産力ともに減少する規則的な変化がみられた. 複雑な湖盆形態と湖流をもつ湖沼では場所によるちがいは全く不規則であった. 本論文ではこのような変化様式が湖盆形態によって規定される環境条件と, これにともなう物質生産の相違によって定まることを明らかにした.
  • 石川 茂雄, 藤伊 正, 横浜 康継
    1961 年 74 巻 871 号 p. 14-18
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) 種子の発芽において, 発芽過程を促進する暗期の積極的効果は, いまだ見出されていないが, カゼクサの種子の発芽は短日植物における花芽形成と同様に暗期が存在することによって促進される. しかもこの暗期は播種と同時に始まる. したがって, 短日植物におけるような high-intensity-light process は観察されなかった.
    2) この暗期の発芽促進効果は, red, blue, および far-red の各波長の光の短時間照射によって抑制され, しかし red と blue の光はともに暗期の9時間目のところでもっとも強い抑制を示す. 一方 far-red の抑制効果は, 暗期の後半において初めて現われてくる.
    3) 暗期の前半における red と blue の抑制効果は far-red の光によってとりのぞかれ, この抑制と促進とは何回もくりかえすことができる. しかし暗期の後半における far-red の抑制効果は, red またはblue によってとりのぞかれることはなかった.
  • 杉浦 昌弘
    1961 年 74 巻 871 号 p. 19-27
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. あらかじめ吸水させたミトリササゲ種子から分離した軸組織と, 子葉のいろいろの部分の切片とのガス交換 (M/30, pH 6,0 の燐酸塩緩衝液中) を測定した. 乾燥量あたりの Qo2RQ は軸組織で 7.8と 1.0, intact 子葉で 0.52 と 0.81 である. 子葉の外部組織のQo2は (1.30) は内部組織のそれ (0.44) より高いが, RQ は外部 (0.82) の方が内部 (0.96) より低い.
    2. Sodium fluoride, monoiodoacetate は軸組織のガス交換を強く阻害するが, 子葉内部組織のそれはほとんど阻害しない.
    3. Cyanide, azide は軸組織と子葉内部組織とのどちらの酸素吸収もいちじるしく阻害する. 一酸化炭素は軸組織の酸素吸収よりも子葉内部組織のそれを強く阻害する. CO 阻害は前者では完全に, 後者ではその大部分が光によって除去される. Dieca, salicylaldoxime, α, α'-dipyridyl, o-phenthroline も両組織の酸素吸収を多少阻害する.
    4. 2,4-Dinitrophenol は軸組織の酸素吸収をほとんど促進しないが, 炭酸ガス放出をいちじるしく促進する. 子葉内部組織では酸素吸収, 炭酸ガス放出ともにこの uncoupler によって強く促進される. 本質的に同じ結果が azide によっても得られた.5. これらの結果ならびにさきにわれわれの研究室で得られた結果にもとついて, 軸組織と子葉組織とのガス交換機作について簡単に考察した.
  • 豊田 清修
    1961 年 74 巻 871 号 p. 28-29
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    成熟中のハスの果実の幼芽におけるアスコルビン酸の含有量をインドフェノール法で測定した. 還元型では幼芽形成の初期 (第2段階前期) において最高で, のち漸減する. 総アスコルビン酸 (還元型と酸化型)では第2段階後期において高く, のち漸減, 完熟 (第7段階) の果実では急増する. 幼芽1個あたりの総アスコルビン酸は第4段階で最高に達する. 初期における還元型と総アスコルビン酸の含有量はハスの葉におけるそれらに近い.
  • 鈴木 静夫
    1961 年 74 巻 871 号 p. 30-33
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. 中沼において 1957 年 10 月から 1958 年 9月までの1年間, 湖底泥の水生菌類の季節的消長を観察した.
    2. 水生菌類の出現頻度は季節によって異なり, 1月から4月にかけて最大に, 底層水の酸素が消失する5月から 11 月にかけて最小となる. 湖底泥の水生菌類の消長と底層水の溶存酸素量との間に著しい相関が見られた.
    3. 中沼の湖底泥の水生菌類は, Pythium sp. とAphanomyces sp. を主とする6種で, 各種類とも著しい季節的消長を示す. 1年を通じて見られるの
    は. Pythium sp. だけで, Achlya flagellata, Achlya racemosa, Dictyuchus sp., Aphanomyces sp., Saprolegnia sp. は循環期および冬季停滞期にだけ見られる.
    4. 湖底泥での歯類の消長を理解するために, 最も重要な要因と考えられる溶存酸素について2, 3の実験を行なった. その結果, 菌類の繁殖や遊走子の形成には水の酸素含有量が関係することが明らかとなり, 野外での観察結果が裏づけられた.
  • トマト•イヌホオズキのキメラ形成について
    増淵 法之
    1961 年 74 巻 871 号 p. 34-41
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    The study on the chimeras has been carried out in several species of Solanaceae. The plants used as the scion are of 3 species, i.e. S. nigrum, S. villosum and L. pimpinellifolium, and L. esculentum was alone taken as the stock. Of these combinations, the case of
    S. nigrum is exclusively reported in this paper. It was indicated from the results obtained that 1) the chimera plants showed intermediate characters in several structures, the cell size of leaf epidermis, hair styles on leaf surface, flower size, number of petals and sepals, fruit weight etc., 2) the pollen sterility of the chimeras was considerably high and the seeds in the ripe fruits from the chimera were almost defective, resembling the facts previously reported by Winkler. It was clearly that, from the chromosome analysis, these chimeras belonged to S. Gaertnerianum and S. Koelreuterianum named by Winkler. Especially in one case, the 4x tomato-stem was surrounded by one layer of S. nigrum. From these phenomena it was considered that a chimera was one of the graft hybrids. It seems to the author that these results surely support the opinion of Glushchenko.
  • 菊池 正彦
    1961 年 74 巻 871 号 p. 42-47
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    Based on the observations concerning the occurrence of a group of anthraquinones in the mycelia of Penicillium islandicum Sopp., NRRL 1036 during cultivation, the biosynthetic relationship among individual components was discussed. The present experiments have shown that the Shibata's hypothetical biosynthetic sequence (Fig. 1) holds good only with some modifications as follows:
    Iridoskyrin was always formed in the mycelia prior to the appearance of luteoskyrin (cf. Tab. 3). Iridoskyrin seems, therefore, to be derived neither from rubroskyrin nor luteoskyrin, but presumably from islandicin (Fig. 1) because of the fact that almost simultaneous appearance and disappearance could be observed between iridoskyrin and islandicin even after successive inoculation on the minimal media, whereas such a parallelism was not observed in the case of iridoskyrin and rubroskyrin.
    Finally, it may be noted that the Spot-i (designated by Shibata et al., 1955) was identified as oxyskyrin by paper chromatographic method (Tab. 2).
  • 浦山 隆司
    1961 年 74 巻 871 号 p. 48-49
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    シイタケ木駒を多く作るためには特別な装置を必要とし, また木駒種菌は常温で長期保存が困難である. これらの点を除くには竹材を用いると目的を達することがでぎる. すなわち, 輪切にして作った竹の短桿をその管束にそつて縦断すれば駒の製作は容易であり, シイタケ菌糸は駒の表面と, 表面近くの組織にのみ侵入生育し, さらに内部にはほとんど侵入しないので, 駒種菌の長期保存が可能である.
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