植物学雑誌
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74 巻, 873 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • イクビゴケおよびハリミズゴケ
    西田 雄行, 斉藤 真太郎
    1961 年 74 巻 873 号 p. 91-97
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    イクビゴケの完成した原糸体は, 糸状原糸体とろうと状原糸体から成り立つが, 現在までの観察では第17図のごとく, それらの発生位置関係の異なる6つの型を見ることができた. このろうと状原糸体は向日性を示しながら培養基から立ちあがった. 多くの場合, その基部周縁部に数本の長い仮根を生じ, この付近の細胞から茎葉体の芽が生じたが, 基部のみならずろうと状原糸体のろうと上縁部の表皮細胞からも生ずることがあった. しかし糸状原糸体の細胞や, こん棒状の枝の先端から直接に茎葉体の芽が生ずることはなかった. また第14図に見られるように, 第1, 第2, 第3のろうと状原糸体が連続的に生じた場合もあった. このような例では第1の原糸体の上縁部の表皮細胞から茎葉体の芽が生じたが, 第2, 第3の原糸体からは培養期間中には芽を生じなかった. 次にハリミズゴケの原糸体は紀焼板, 寒天培養基, または〓紙上の培養では2~3個の細胞から成り立っていた. 液状培養では非常に長い原糸体が生じる. この原糸体の頂端の細胞が大きくなり, かつ一定の分裂を行なって一層の細胞からなる葉状原糸体が生じる. この葉状原糸体は向日性が著しく, 成長するにつれて, その先端部は培養基面から立ちあがった. 液状培養, 寒天培養, または〓紙上の培養のごとく湿気の多い場合には葉状原糸体は掌状になるが, 素焼板上の培養ではリボン状になる. 仮根は胞子, 糸状原糸体および葉状原糸体の基部縁辺部のいずれからも生じるのは特徴的である. この培養では胞子をまいてから, 約2ヵ月目に葉状原糸体の縁辺細胞に突起を生じ, この突起が細胞分裂を続けて茎葉体になる. 1個の葉状原糸体には1~2個の茎葉体が生育した.
  • 井沢 三生
    1961 年 74 巻 873 号 p. 98-103
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ミトリササゲ胚培養でたん白質やリボ核酸の増加する培養条件を見つけ, その条件下で吸水とたん白質およびリボ核酸の増加におよぼすインドール酢酸(1μg./ml.) の添加の影響をしらべた. インドール酢酸添加は培養の最初の2日間の吸水とたん白質の増加をほとんどとめるが, リボ核酸の増加には何ら影響を与えない. ただし, この最初の2日間, リボ核酸はマイクロゾームおよび可溶性細胞質分画のみで増加する. そして全組織からとれたリボ核酸の塩基組成は対照のそれとちがいがない. 対照培養では全期間を通じ, インドール酢酸添加培養では3日目以後, 低速遠心 (10,000×gまで) で沈でんされる部分で顕著なたん白質およびリボ核酸の増加が見られた. この現象は胚の吸水と関係があるように思われる.
  • 中村 和郎
    1961 年 74 巻 873 号 p. 104-109
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) アカパンカビの子嚢胞子色に影響をおよぼす突然変異遺伝子が見いだされ, tsと名づけられた。
    2) 連鎖群検定交配の結果, tsは第5連鎖群の右腕にあることがわかった.
    3) 動原体-ts間の遺伝学的距離は4種類の保存株との交配で変動を示し, それぞれ13.1, 14.1, 23.7および30.4であった.
  • 橋本 徹
    1961 年 74 巻 873 号 p. 110-117
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    茎の伸長生長がオーキシンによって促進されることは周知の事実である. また形成層の活動による茎の二次肥大生長もオーキシンにより調節されていることがわかっている. しかし形成層による細胞の増殖を伴わない1次肥大生長を促進する物質はこれまで知られていなかった. 私は野外で育てたアラスカエンドゥの茎や葉柄の切片を用い, その1次肥大生長が, IAAとカイネチンとの協同的作用によっていちじるしく促進されることを見出した. カイネチンはIAAによる茎および葉柄の伸長生長を抑制するが, 肥大生長は, 逆にいちじるしく促進する. この促進は, 顕微鏡観察によれば, 茎の表皮, 皮層, および髄の細胞の容積の増加によるものであって, 細胞の数の増加によるものではない. 茎では光照射によって, 伸長生長は抑制され, 肥大生長は促進されることが, これまで知られていたが, カイネチンは茎の生長において光とよく似た作用を有することが見出された.
  • 河野 清, 辻井 理貴雄, 畠山 伊佐男
    1961 年 74 巻 873 号 p. 118-121
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    クワの芽の連続凍結実験において, その氷点を熱電対を用いて測定した結果, 生組織の氷点の季節的変化は生体膠質結合水と死組織氷点との季節的変化によることを前報2)で明らかにした. 死組織氷点から計算された浸透価の季節的変化は, 5月から9月までは, 含水量と溶質比との両方の変化によるものと考えられる. しかし, 9月から翌春の4月までは含水量が殆んど一定であるから, 浸透価の季節的変化は溶質比の変化にのみ依存し, 一方4月から5月の芽の展開までは溶質比が一定であるから, 含水量の変化にのみ依存する. 5月から9, 月までの溶質の変化には電解質が, 10月から3月までのそれには非電解質が多く関与しているらしく, 9~10月と4月は, 含水量一定期間の前後ということからも, クワの芽の生理的転向点と考えられる.
  • I. 接木による果形の変異と第1および第2の自家受精世代におよぼす影響
    柳下 登
    1961 年 74 巻 873 号 p. 122-130
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    トウガラシ(Capsicum annuum L.) の2品種間の接木試験を1954年におこなった. 接木植物の果形に, 接木の影響とみられる変異があらわれた. この変異は第1および第2の自家受精世代にも伝えられた. 3代にわたる対照植物には, 接木植物とその子孫にみられたような変異は, 観察されなかった. 接木実験に用いたものと同じ材料について, それぞれ有性交配がおこなわれた. そのF1植物での果形の変異の状態は, 接木植物およびその子孫にみられた変異とは全くちがっていた.
  • 花粉および柱頭の熟度と発芽との関係
    渡辺 光太郎
    1961 年 74 巻 873 号 p. 131-137
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. イネ科の花粉は一般に柱頭上で60~80%の発芽率を示す. その柱頭接着直後, 粒面から一種の液を滲出し, 柱頭細胞との間に液の存在が明らかな花粉粒のみが発芽できる.
    2. 発達の過程において花粉粒内には, いったんでんぷん粒が充満するが, 葯裂開前に発芽孔と反対側の端部でその消失が起こる. でんぷん粒を充満する花粉粒は発芽能力が低く, それ以前の発育過程にあるものは発芽しない. 裂開葯からの花粉が成熟柱頭上ですべて発芽しないのは, 同一葯中でんぷん含量の異なる花粉粒の混在に原因するところが大きい.
    3. 未熟柱頭上では成熟柱頭上よりも花粉発芽率は低い (トウモロコシは例外). かつその程度は柱頭の未熟なほど著しい. 未熟柱頭上では, 1) 花粉粒の多くが液を出さず, そのままシワが寄り, 2) 液を出す粒も滲出程度が弱く, 花粉粒一柱頭細胞間に現われる液が少量であるにもかかわらず, 花粉管の生ずる前後にしばしば破裂する. 3) また管生長も異常なことが多い.
    4. 受粉直後に起こる受粉部柱頭細胞の顕著な透過性増大 (柱頭反応) の事実とあわせ, 発芽前に花粉-柱頭間に現われる液はこの両者, すなわち花粉粒と柱頭細胞の両者から由来したものであり, かつその中に花粉の発芽を促進または可能にする要素をふくむことを考察した.
  • 鈴木 静夫
    1961 年 74 巻 873 号 p. 138-141
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    水深の浅い占春池において, 水生菌類の遊走子の日周的な垂直移動について観察を行なった. 春季と秋季には, 遊走子の分布は溶存酸素量の垂直分布の日変化と相関を示し, 酸素の多い層に遊走子が集まる傾向が見られた. 晴天には時刻によって分布が異なり, 曇天には1日を通じて常に表層に多く, 雨天には遊走子は1日中全層ほとんど均一に分
    布している. 夏季と冬季には, 遊走子の分布は天候に無関係で, 常に表層に最も多く, 中層にも少数は見られるが, 底層にはほとんど分布せず, 溶存酸素量の垂直分布と相関性が認められない.
  • 主として発芽におよぼす微量元素の影響
    高見 亘
    1961 年 74 巻 873 号 p. 142-153
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    (1) The addition of adequate amount of trace elements such as B, Fe, Mn, Zn, Cu and Mo to the culture medium showed a remarkable promoting effect on germination of pollen grains of many kinds of plants and a definite suppressing effect on bursting of pollen grains in a hypotonic medium. Promoting effect of all trace elements together was greater than that of boron alone in case of Tradescantia reflexa, Hypericum chinense and Lilium longiflorum. Concentration of trace elements optimal to the germination was about 10 times greater than that in the case of water culture and it lay in the range of 0.5-1.5% basal trace element solution.
    (2) Effect of absence of particular trace element and comparative effect of boron compounds were examined. Sodium metaborate was more effective than boric acid inTradescantia reflexa andHypericum chinense.
    (3) Effect of the addition of asparagine to a solution of trace elements was observed with Tradescantia reflexa and Rhododendron lateritium.
    (4) Optimum concentration of trace elements in the culture media containing various kinds of sugars were determined with Tradescantia reflexa, Hypericum chinense, Lilium longiflorum and Lilium Maximowiczii.
    (5) Activity of peroxidase and of water uptake became greater by the addition of adequate amount of trace elements to the culture medium.
  • 広本 一由
    1961 年 74 巻 873 号 p. 154-159
    発行日: 1961年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) 19種の帽菌類子実体の各部から菌の分離実験を行なった結果, 菌の分離に最適の部位は子実層部であることが明らかになった. この部位を用いて菌の分離を行なう方法を子実層分離法と名づける.
    2) 林地に発生する帽菌類に子実層分離法を適用するさいに適当な培養基は, 多くの場合松葉煎汁寒天培養基である.
    3) 菌柄内部や傘肉は, 虫害が多いかまたは子実体が小形であるために, 移植片を無菌的に切取りにくいことがある. この場合に子実層分離法は最も重要であり, そして一般に好結果が得られる.
    4) 傘肉および菌柄からは菌糸が発生しないか, たとえ発生してもそれが少数のため菌の分離が困難な場合が少なくないが, 子実層からは多くの場合, 多数の菌糸が密に発生する.
    5) 子実層分離法はひだの場合に最もよい結果が得られる. 針や管口の場合には, 細菌の発生により菌の分離に困難をともなうことが多いが, この場合でも菌柄や傘肉に比して菌糸の発生が良好である.
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