ササ群落の生態学的研究の第一歩として, 長野県霧ケ峯のミヤコザサ, 北八ツ岳麦草峠のニッコウザサ, 尾瀬ケ原のオゼザサ, および北海道南部ニセコ火山群ワイスホルン岳のチシマザサのよく発達した純群落の地域を調査地として選び, 夏季に層別刈取り法を用いて, 葉重, 桿重, 地下部重, 全重, 群落高, 桿数, 生産構造, 葉面積指数などを測定した. またこれら四つの地域の気温, 降水量, 土壌条件の概況もあわせて検討した. これらの四つの地域の種類を異にするササ群落の間では単位面積当たりの桿重, 地下部重,現存量, 桿数, および群落高, 桿の平均寿命, およびC/F比はいちじるしく異なっている. 現存量は桿の平均寿命が長く, 群落高の高い種類ほど大きい. 桿の平均寿命が9.2年のチシマザサ群落では最大の約11kg.d.w./m.
2の現存量を示し, 桿の平均寿命の最小の (1.8年) ミヤコザサ群落では約.5kg.d.w./m.
2であった (図4,表5). 日本の他の草原群落の現存量に比べて, 前者はかなり大きく, 後者はほぼ似た値であった. 一方, 葉重, 葉の垂直的分布の型は種類を異にする四つの群落の間でいちじるしい差はみられず, いずれも葉面積指数4.5~5.4, 群落の吸光係数0.7~0.9, 葉の透過率約10%の範囲の値を示した (図5, 表6). また主に葉によってきまる群落内相対照度も四つのササ群落の間でいちじるしい差はみられず, 地表面近くの平均相対照度は1~2%で低く, その変動の幅もきわめて小さいことが明らかにされた (図6).
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