つぎの4種の現生種ケイ藻につぎ, ケイ殻•環帯•中間帯•殻縫線•棘などの電子顕微鏡的微細構造をしるした
Arachnoidiscus Ehrenbergii var.
california (海産): ケイ殻の孔房は側膜のない偽孔房で, 内部の一次偽孔房と外部の二次偽孔房とからなる. 二次偽孔房は一次のものより小さく, 3-4個が1つの一次偽孔房の上に乗る. 偽孔房は側膜がなく, 水平および垂直の両格子組からなり, 二次偽孔房だけは外側が篩膜でなかば閉じている. 本種におけるように, 側膜がなく隣接のものが自由に通じている孔房を偽孔房(pseudoloculus) と名づけた. 殻孔外側を閉じる篩膜は二次偽孔房の柱状部の先端が分岐して水平の膜状となったもので, その基部からいく度か分岐し, おのおの先端部の縁辺は相対するものが咬合するように接近し, その間にわずかの間隙, すなわち篩孔をのこす.
Bacteriastrum hyalinum (海産): 群体の端殻の中心には円形または楕円形の小隆起があり, そこに細い裂口がある. 殻面他部はほぼ平らで, 特別な肥厚部がなく, まるい単孔が散在する. 群体の内部ケイ殻には円形の中心域があり, そこから多くの放射列肋線が出る. 各肋線間には1列にならぶ円形の単孔群がある. 本種には上下両殻間に多くの中間帯があることが確認された. 中間帯はカラー状で, 縦列にならぶ単孔を密布する. 端棘および内棘ともに管状で, その壁膜には棘軸に平行にならぶ単孔列があり, さらに棘の端部では小棘が散在する.
Amphipleura rutilans (海産): 殼縫線はケイ殻を貫いた裂溝で, 端節と中節のところでは, それぞれ同一側に短い側溝 (side cleft) を分岐する.端節および中節は側溝のある側では半円形に広くなっている. 側溝は
Pinnularia などに見られる Trichterkörper の原始型と考えられる. 殼孔は円形, 楕円形または角のまるい矩形などで, やや深い単孔であるか, あるいはそれらが横列に集まって共通側膜でしきられた不完全孔房となっているかのいずれかである. 本種にも明らかにカラー状の中間帯があり, そこに円形の単孔が, 2水平列にならぶ.
Cymbella tumida (淡水産): 光学顕微鏡的に肋線とよばれている部分は殻内へ薄膜状に突出し, 殻内面を左右に長い多くの一次不完全孔房に分かつ. 一次孔房は内膜がなく内方へ完全に開き, 外方は矩形または半月形をなす二次孔房の横列となる. 二次孔房は浅く, 内方は一次孔房へ全開し, 外方は篩膜でなかば閉じられる. 篩膜の篩孔は直線形, 波形, 分岐波形などである. 環帯には水平列にならぶまるい単孔が密布する.
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