植物学雑誌
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75 巻, 886 号
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  • 奥野 春雄
    1962 年 75 巻 886 号 p. 119-126
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    つぎの4種の現生種ケイ藻につぎ, ケイ殻•環帯•中間帯•殻縫線•棘などの電子顕微鏡的微細構造をしるしたArachnoidiscus Ehrenbergii var. california (海産): ケイ殻の孔房は側膜のない偽孔房で, 内部の一次偽孔房と外部の二次偽孔房とからなる. 二次偽孔房は一次のものより小さく, 3-4個が1つの一次偽孔房の上に乗る. 偽孔房は側膜がなく, 水平および垂直の両格子組からなり, 二次偽孔房だけは外側が篩膜でなかば閉じている. 本種におけるように, 側膜がなく隣接のものが自由に通じている孔房を偽孔房(pseudoloculus) と名づけた. 殻孔外側を閉じる篩膜は二次偽孔房の柱状部の先端が分岐して水平の膜状となったもので, その基部からいく度か分岐し, おのおの先端部の縁辺は相対するものが咬合するように接近し, その間にわずかの間隙, すなわち篩孔をのこす.
    Bacteriastrum hyalinum (海産): 群体の端殻の中心には円形または楕円形の小隆起があり, そこに細い裂口がある. 殻面他部はほぼ平らで, 特別な肥厚部がなく, まるい単孔が散在する. 群体の内部ケイ殻には円形の中心域があり, そこから多くの放射列肋線が出る. 各肋線間には1列にならぶ円形の単孔群がある. 本種には上下両殻間に多くの中間帯があることが確認された. 中間帯はカラー状で, 縦列にならぶ単孔を密布する. 端棘および内棘ともに管状で, その壁膜には棘軸に平行にならぶ単孔列があり, さらに棘の端部では小棘が散在する.
    Amphipleura rutilans (海産): 殼縫線はケイ殻を貫いた裂溝で, 端節と中節のところでは, それぞれ同一側に短い側溝 (side cleft) を分岐する.端節および中節は側溝のある側では半円形に広くなっている. 側溝は Pinnularia などに見られる Trichterkörper の原始型と考えられる. 殼孔は円形, 楕円形または角のまるい矩形などで, やや深い単孔であるか, あるいはそれらが横列に集まって共通側膜でしきられた不完全孔房となっているかのいずれかである. 本種にも明らかにカラー状の中間帯があり, そこに円形の単孔が, 2水平列にならぶ.
    Cymbella tumida (淡水産): 光学顕微鏡的に肋線とよばれている部分は殻内へ薄膜状に突出し, 殻内面を左右に長い多くの一次不完全孔房に分かつ. 一次孔房は内膜がなく内方へ完全に開き, 外方は矩形または半月形をなす二次孔房の横列となる. 二次孔房は浅く, 内方は一次孔房へ全開し, 外方は篩膜でなかば閉じられる. 篩膜の篩孔は直線形, 波形, 分岐波形などである. 環帯には水平列にならぶまるい単孔が密布する.
  • 横浜 康継, 石川 茂雄
    1962 年 75 巻 886 号 p. 127-132
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    非かんけつ照射においては, イワアカバナ種子とオトギリツウ種子とはともに長時間の照射を必要とするにもかかわらず, 従来, かんけつ照射はイワアカバナ種子にのみ有効であると考えられていた. しかしイワアカバナ種子に対するかんけつ照射の効果をさらに解析した結果, イワアカバナ種子とオトギリソウ種子の長時間の照射を要求する性質は共通の機作に由来すべきものと考えられた. それ故に, オトギリソウ種子に種々の構成のかんけつ照射を試みた結果, 10,000ルクス1分間の照射を6時間間隔で18回くりかえすことによって, 非かんけつ照射の場合に2日間以上の照射でなければ得られない 46% の発芽率を得ることができた. この結果および他の未発表の結果から, 非かんけつ照射の場合に長時間の照射を必要とする種子は一般に, 合計して数分間以下にすぎない照射時間からなるかんけつ照射でも発芽し得るものと考えられる.
  • 岩波 洋造
    1962 年 75 巻 886 号 p. 133-139
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    マツバボタンの雄ずいは, 花糸に曲げる刺激を与えると, それと反対の方向に倒れる運動を行なう. マツバボタンの花に一本だけ雄ずいを残し, これを解剖顕微鏡で観察したり, 8mmのフィルムに連続撮影をしたりして運動の速度, 方向, 刺激の与え方による変化などについて調べた.
    刺激に応じて運動を行なった直後, その雄ずいは次の刺激に対して反応を示さないが, しばらく放置しておくと, 前と同様の運動を行なうようになる. 完全に同じ運動をくり返すための刺激の間かくは, 同一方向へのときには約12分, 反対方向への運動のときには約3分である.
    刺激(花糸を曲げる角度)が大きいほど雄ずいは大きな運動を行なうが, 曲げておく時間が短いほどよく運動を行ない, 雄ずいを4秒以上曲げておいてからはなすと, 反対方向への運動を全く行なわなくなる.
    雄ずいの運動は, 花の内部, 外部に向かって行なわれるだけでなく, いずれの方向に対しも同じように倒れる運動を行なう.
  • 秋山 優, 広瀬 弘幸
    1962 年 75 巻 886 号 p. 140-142
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    今回島根県•三瓶, 浮布池で採集した緑藻は, C.E. Taft が1945年に設立した1新属1新種 Pectodictyon cubicum Taft と同属であって, 種が異なるものと考えた. 米国産の基本種に日本産の新種を加えるために, 属の原記載を新しく変更し, 日本産の種については, その細胞形態の特徴にもとづく Pectodictyon pyramidale Akiyama et Hirose と命名した.
    なお, 基本種の産地については Taft の報告した米国オハイオ州以外にはどこも知られていない.
  • ヨーロッパ産アスターの染色体
    藤原 悠紀雄
    1962 年 75 巻 886 号 p. 143-149
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ヨーロッパ産Aster属植物について染色体数の算定と核型分析とを行ない, Aster tripolium, 2n=18; A. alpinus, 2n=18,27; A. amellus, 2n=18,54,66; A. ibericus, 2n=18,54; A. amelloides, 2n=54と決定した. 染色体基本数は9で, 3x および6xはヨーロッパ種としては新しい倍数レベルである. ヨーロッパ種の核型は対称で, 染色体は大形であり, 既報のアジア種の核型と類似し, 北アメリカ種の核型が非対称で, 染色体が小形であるのと対照的である.このことはヨーロッパ種がアジア種と共通の祖先型をもち, 原始核型を保持していることを示すものである.
  • 浦山 隆司
    1962 年 75 巻 886 号 p. 150-152
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    子実体の発生初期に栽培室内の気温が比較的高くなると, その後しばらくのあいだ発生するハラタケの幼茸はゆちゃくを生じやすく, そのゆちゃくにも種々の段階があり, 一見, 一つの子実体のようなゆちゃく体を生じることもある.
    また, 子実体のかさから子実体が発生したように見えるものも, 二つの子実体のゆちゃくによって生じることがわかった.
    ゆちゃく部付近のひだ部の発達はかなりわるく,ゆちゃくした子実体をつくる各子実体はゆちゃく部の方へわん曲する傾向を認めた.
  • 肥田 美知子, 小野 佐恵子, 原田 恵美子
    1962 年 75 巻 886 号 p. 153-157
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    J. Parker reported that sugars in coniferous leaves are physiologically significant for cold resistance. On the other hand, the nature of sugars occurring in the leaves of conifers has been considered to have some taxonomical significances as stilbenes and flavonoids. In view of these situations we have attempted to examine the sugars of coniferous leaves throughout the year. Studies were made by means of paper chromatography with twentynine species and one variety. The results are summarized as follows:
    1. Fructose, glucose and saccharose are almost regularly found throughout the year.
    2. In winter the leaves of ever-green conifers contain raffinose besides fructose, glucose and saccharose, and those of Taxus, Araucaria and Sciadopitys contain stachyose in addition to these.
    3. In leaves of deciduous conifers, the saccharose content decreases before the fall of leaf.
    4. In Larix, Pinus, Tsuga, Cryptomeria, Glyptostrobus, Metasequoia, Sequoia, Sequoiadendron, Taxodium, Chamaecyparis and Thujopsis, the saccharose content of leaves seems to be less than that in other conifers.
    5. In respect of the sugars in the leaves, Metasequoia appears to be more closely related to Sequoia, Sequoiadendron, Taxodium and Glyptostrobus than to other members of the Taxodiaceae.
  • 菊池 正彦
    1962 年 75 巻 886 号 p. 158-160
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1.An unknown pigment spot f (designated by Shibata et al.5), ) found in a series of anthraquinones in Penicillium islandicum Sopp. NRRL 1036 was purified paperchromatographically and identified as dicatenarin by paperchromatographic studies on degradation products of spot f by means of reductive cleavage (Table 1 and Fig. 1).
    2.Based on the facts that the spot f is a dimer of catenarin, and that almost simultaneous appearance and disappearance have been encountered in these two pigments (Table 4 in the Literature 3), the biosynthetic route for the formation of anthraquinones in Penicillium isladicum Sopp. that was proposed in the preceding paper (Fig. 4 in the Literature 4) is modified in part as illustrated in Fig. 2.
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