植物学雑誌
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75 巻, 887 号
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  • 高橋 憲子, 師尾 武子, 橋本 徹, 八巻 敏雄
    1962 年 75 巻 887 号 p. 163-169
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ブライトィエロー種タバコ種子の暗発芽に対する有機酸の影響をM/100の濃度で発芽床に与えられたピルビン酸, 酢酸, クエン酸, α-ケトグルタル酸, コハク酸, リンゴ酸, 酒石酸などのpHを NH40H, KOH で pH0.2間隔で調整することによって検討した. 実験の範囲では酢酸とα-ケトグルタル酸を除き他の酸は NH40H で pH を調整された場合に, かなり広い pH 域にわたって暗発芽をひきおこす. その最適 pH は 4.7 附近である. これらの酸はまた, それ自体では発芽を起こさせることのない濃度のジベレリンと共存させられることによって, pH4.0より酸性の域で顕著な発芽をひきすが, それとともに pH4.7附近でもこうした作用が認められる. また pH4.7 での有機酸と NH40H とによってひきおこされる暗発芽は, 貯蔵期間の長い種子では次第に低くなり, ついにはジベレリンを共存させても発芽しなくなる. これらのことからこの pH における暗発芽に注目をした. この pH 域における暗発芽には有機酸とNH40H とから合成されると思われる物質と, ジベレリンによって代用される物質とが必要であり, 貯蔵期間の短いものではこの両物質ともかなり (暗発芽をおこすには少し不足) の量で含まれており, わずか補給するこにより発芽がおこると推察する. この場合ジベレリン様物質の不足の程度はやや軽微であり, 有機酸とNH4OHが与えられれば, 種子中に残存する合成機能が発揮され必要な物質がつくられ, 発芽がおこるが, 貯蔵期間が長くなると発芽に必要な両物質の不足が大きくなり, また合成能の低下に伴ってジベレリンも補給する必要が生じ, さらには有機酸の NH4OH およびジベレリンを与えても発芽が起こらなくなることが考えられる.
  • 信夫 隆治, 島田 善夫
    1962 年 75 巻 887 号 p. 170-175
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1960年7月, 岩手県小繋駅の土壌から分離された放線菌 No.722は, その形態, 生理および培養研究に基づいて, 新種と同定され, Streptomyces griseoverticillatus と命名された. 種名は空中菌糸の色およびその輪生分枝形成を意味する.
  • 藤井 良平
    1962 年 75 巻 887 号 p. 176-184
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    暗発芽ミトリササゲ胚軸の切片を, 二価金属イオン, Ca++, Fe++, Mn++, Mg++, Zn++, Co++, Cu++, Ni++, とHg++ 溶液中に浸したのち, 赤色光を照射し, これら各種イオンが, その伸長に及ぼす影響を調べた. 金属イオン未処理の胚軸切片は, 赤色光によって約55%, その伸長が抑制された. この抑制は, Ca++, Fe++, Mn++, Mg++, _??_ Zn++ (I イオン群) によって最も著しく, 次いでo++, Cu++, _??_ Ni++ (II イオン群) によって促進された. Hg++ はこの抑制を部分的に取り除いた. 伸長に関与する“.長酵素” を想定し, 胚軸切片の伸長 (“生長酵素”) におよぼす金属イオン作用の解析を試みた結果,I イオン群は非拮抗性, II イオン群は拮抗性, Hg イオンは非特異性阻害剤として3群に分類された. これまでとは逆に, 光を照射したのちにイオン処理を行なったところ, Hg イオンのみが異なった影響, すなわち光による抑制を促進するような影響をおよぼすことを知った. そこで, Hg イオンは胚軸切片の感光反応系に影響をおよぼすのではないかと考えた.
  • 門司 正三, 岩城 英夫, 倉石 晉, 佐伯 敏郎, 野本 宣夫
    1962 年 75 巻 887 号 p. 185-194
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    発芽後 4 日間暗所におき, 茎が異常に伸びたヤエナリの幼植物を, それぞれ100, 75, 50, 30, 20% の自然光下におき, その生長を物質生産の面から追跡し, 暗処理をしない対照区のヤエナリと比較した. 1. 乾量生長および葉面積生長に対する光の強さの関係は対照区 (前報) の場合とほぼ同様であった. ただし, 実験後期におけるヤエナリの個体重, 葉面積は, いずれの相対照度のもとでも, 暗処理区の方が対照区より明らかに小さかった.
    2. 暗処理をしたヤエナリの相対生長率 (RGR), 純同化率 (NAR), 葉面積比 (LAR) と光の強さとの関係も, 全体として, 前報で報告した対照区の場合と同じような傾向を示した.実験初期 (8月13日~27日) のNAR (特に100, 75, 50%光下) は, 処理区の方が対照区よりかなり大きかったが, LARは逆に対照区の方が大きく, その結果, RGR にはほとんど暗処理の影響はみられなかった. 実験後期には, NAR, LAR, RGR のいずれにも, 両区の差はほとんどみられなかった.
    しかし暗処理終了直後の3日間 (8月11日~13日) についてみると, 処理区のRGRは0.14mg/mg/day で, 対照区の 0.23mg/mg/day にくらべ, 著しく低かった. これが暗処理区と対照区の最終個体重にみられる差のおもな原因と推定された.
    3. 暗処理をしたヤエナリの葉面積/葉重 (F/F) の比は, 光が弱まるほど大きくなり, 対照区とほぼ同じ結果を示した. 自然光下で育ったヤエナリの C/F 比は, 実験期間をつうじて, 約1.0~1.5の値を維持するが, 暗処理をして自然光下にもどしたヤエナリのC/F は, 処理終了直後の約7~8の高い値から, 最初は急激に, ついで徐々に低下し, 次第に対照区の値に近づいた. 暗処理直後にみられる低い RGR の原因の一つは, この高い C/F 比にあると推定された.
  • 浦山 隆司
    1962 年 75 巻 887 号 p. 195-198
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    寒天培養基中のC-N (しょ糖-ペプン) 組成がフクロタケ菌糸の生長に及ぼす影響について研究した結果, 次のことがわかった.
    1) 一定のしょ糖濃度では, 菌叢密度はペプトン濃度が増すにつれて高くなり, その割合はしょ糖濃度が高くなるほど大であった.
    2) 菌糸の伸長速度はC-N組成の相違によって著しい影響は受けなかったが, 各しょ糖濃度につきペプトン濃度0.1, 0.2, 0.4g/dlにおいて多少促進される傾向を認めた.
    3) 栽培床においてフクロタケ菌糸のじゅうぶんな生長を促すためには, わが国での従来の退床材料である稲わらに, 床内のC-N組成を考慮した適量の栄養物質を添加することが必要であると思われる.
  • 熊野 茂, 広瀬 弘幸, 瀬戸 良三
    1962 年 75 巻 887 号 p. 199-204
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. Batrachospermum ectocarpum, B. moniliforme, B. virgatum の3種の輪生枝束の半径, 輪生枝最基部付近の細胞1個の長さ, 輪生枝1枝を構成する細胞の総数, 造果器を先端につけている枝の長さ, 同枝を構成する細胞1個の長さ, 同枝を構成する細胞の総数, 造果器 (受精毛を含む) の長さの計測を行ない, それぞれの種の形態上の変異性を分析し比較した.
    2. 造果器の長さの変異と, 造果器をつけている枝の長さの変異について以上の3種を比較すると,B. ectocarpum, B. moniliforme, B. virgatumの順に造果器をつける枝が短くなり, 同時に受精毛がよく発達する傾向がみられる.
    3. 造果器をつける枝の長さの変異は3種間に連続し, 輪生枝束の半径の変異は3種間に重なりあう.
    4. 造果器の長さの変異は種間で非連続なので,この性質により3種を識別することがでぎる. B. ectocarpum の造果器は最も小さく, B. moniliformeのそれは比較的大きく, B. virgatum のそれは最も大きい.
    5.B. ectocarpum では退果器をつける枝の長さはそれを構成する細胞の数と個々の細胞の長さとの両方によってきまる. これに反し, B. moniliformeの場合では主として細胞数によってきまるけれども, 細胞数が減少すると個々の細胞の長さが増してくる傾向があるので, 結果として退果器をつける枝の長さの変異の巾はそれほど大きくならない. また B. virgatum でも細胞数が減少すると個々の細胞の長さが増してくる傾向があるが, その長さの変異の巾はきわめて小さい造果器をつける枝の長さは非常に短い.
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