発芽後 4 日間暗所におき, 茎が異常に伸びたヤエナリの幼植物を, それぞれ100, 75, 50, 30, 20% の自然光下におき, その生長を物質生産の面から追跡し, 暗処理をしない対照区のヤエナリと比較した. 1. 乾量生長および葉面積生長に対する光の強さの関係は対照区 (前報) の場合とほぼ同様であった. ただし, 実験後期におけるヤエナリの個体重, 葉面積は, いずれの相対照度のもとでも, 暗処理区の方が対照区より明らかに小さかった.
2. 暗処理をしたヤエナリの相対生長率 (RGR), 純同化率 (NAR), 葉面積比 (LAR) と光の強さとの関係も, 全体として, 前報で報告した対照区の場合と同じような傾向を示した.実験初期 (8月13日~27日) のNAR (特に100, 75, 50%光下) は, 処理区の方が対照区よりかなり大きかったが, LARは逆に対照区の方が大きく, その結果, RGR にはほとんど暗処理の影響はみられなかった. 実験後期には, NAR, LAR, RGR のいずれにも, 両区の差はほとんどみられなかった.
しかし暗処理終了直後の3日間 (8月11日~13日) についてみると, 処理区のRGRは0.14mg/mg/day で, 対照区の 0.23mg/mg/day にくらべ, 著しく低かった. これが暗処理区と対照区の最終個体重にみられる差のおもな原因と推定された.
3. 暗処理をしたヤエナリの葉面積/葉重 (F/F) の比は, 光が弱まるほど大きくなり, 対照区とほぼ同じ結果を示した. 自然光下で育ったヤエナリの C/F 比は, 実験期間をつうじて, 約1.0~1.5の値を維持するが, 暗処理をして自然光下にもどしたヤエナリのC/F は, 処理終了直後の約7~8の高い値から, 最初は急激に, ついで徐々に低下し, 次第に対照区の値に近づいた. 暗処理直後にみられる低い RGR の原因の一つは, この高い C/F 比にあると推定された.
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