植物学雑誌
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75 巻, 891 号
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  • Yozo IWANAMI
    1962 年 75 巻 891 号 p. 331-335
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    マツバボタンの雄ずいは, 刺激と反対の方に曲がる運動を行なう (L3) が,この曲がった雄ずいは, やが て静かにもとの位置にもどりはじめる (L4). これらの運動の途中に細いガラス棒をおいて雄ずいの動きを 妨げ, それぞれの場含の運動のしかたの変化について調査した.
    L3の運動の途中にガラス棒をおいて雄ずいの動きを妨げると, 雄ずいはそのまましばらく止まっていた が, 一定時間が過ぎるとガラス棒から離れて, もとの位置にもどりはじめた. このばあい, 運動が早い時 期に止められるほど, ふたたび動きはじめるまでの時間は長く, おそくになって止められるほど, 早く動 きはじめた.
    L4の運動が始まろうとするとき, ガラス棒でそれを妨げ, しばらくしてこのガラス棒を離すと, 雄ずい は急に一定距離の間を動き, やがて静かに本来のL4の運動に移った. これらのことは, 雄ずいは運動の 途中で, 物理的にその動きが妨げられても, 運動の原因となる花糸の内部の変化は, 運動を行なっている ときと同じように進行していることを示している.
    花糸の表皮細胞には小さな突起がある. ただし, 花糸の基部の細胞の突起はたいへん大きく, ときには 細胞全体がふくれたような形態をとっていて, このような大きな突起の内部には原形質流動がみられた. 流速は約3.4μ/秒であった.
    花糸のなかには, ある種の気体が含まれている. この気体は正常のときには花条全体に散在しているら しく, そのために花条を水で封じてみると, 表皮細胞以外の部分は全体が黒ずんでいて細胞や組織の形が みえないが, 花糸を軽く押えると内部に大きな気泡ができてきて, 気泡以外の部分は透明になってくる. この気泡は, 花糸の切り口から外にとりだすことも可能である. この種の気体の存在は, オジギソウの葉 においても知られているので, 運動の機構とある種の関係をもっているのではないかと考えられる.
  • 館岡 亜緒
    1962 年 75 巻 891 号 p. 336-343
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    イネ科植物において, 花(りん皮•雌ずい•雄ずい)およびえい果が系統的な相互関係をよく示す形質であることが, 最近の諸研究によって確かめられた. このことは, 染色体や葉の構造 ,あるいははいの構造などの諸形質を調査することなしに, 外部形態のみによっても, 換言すればおし葉標本の調査のみによっても, かなりつっこんだ群別(属のまとまり)がでぎることを裏づけるものである. この観点から, ウシノケグサ族の属をひとつひとつ検討し, 属のレベルでの分類に問題のある場合には, 主として花とえい果の特徴にもとづいてそれぞれの問題について考察した. その結果, 全世界で54属がウシノケグサ族に含まれることが明らかになった. 日本には native のものとしてヤマカモジグサ属, スズメノチャヒキ属, ヒロハノコヌカグサ属, チシマドジョウツナギ属, ハイドジョウツナギ属, スズメノカタビラ属 ,ウシノケグサ属, 帰化品としてドクムギ属, ナギナタガヤ属, カモガヤ属, コバンソウ属, ヒゲガヤ属がある.
    ウシノケグサ族を構成する54属の分布をみると, そのほぼ半数が地中海地方およびその周辺に分布するものである. 全世界的に広く分布している属 (ウシノケグサ属, スズメノカタビラ属など) も少数あり, またそれらのあるものに強くむすびつくもので, 地中海地方から離れた地域に分布する属 (たとえば, 北米にみられる Hesperochloa はウシノケグサ属に非帯に近い) も若干ある. ほかに, 世界のいろいろな地域に固有の小さな属がある. このような分布をみると, 地中海地方がウシノケグサ族の発祥地のようにみえる. しかし, ウルガイに固有の Erianthecium, コロンビア~ボリビアに分布する Aphanelytrum ,アンデスに固有の Anthochloa, Juan Fernandez にみられる Megalachne, ニューギニアの山地に特産のAncistragrostis などの小属は, 原始的な形質, または独特の形態をもっていて, 地中海要素と強くむすびついているものとは考えられず, 少なくともそのあるものは古固有の属とみるべぎものである. このような事実を考えると, ウシノケグサ族全体としては, 非常に古い複雑な進化の歴史をもっており, 地中海地方はいわばその “二次的” な分化の中心地とみるべきものと考えられる. また, スズメノカタビラ属, ウシノケグサ属, ヤマカモジグサ属のような全世界的に広がっている属は, 古く分化した種類と, 地中海 地方で “二次的” に分化した種類とが混合してできているものとみてさしつかえないように思われる.
  • 山岸 秀夫
    1962 年 75 巻 891 号 p. 344-348
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    アミミドロの細胞質か粒を研究して,中性赤によくそまり,リピドを多く含んだ,直径0.5-1.0μの球 形のか粒が存在することをしった.このか粒は形態的にはPernerの提唱するspherosomeとにている. しかし,Burstoneによって改良されたナジ反応に対して陰性であるため,cytochrome oxidaseの存在を 確認できず,この点でspherosomeとことなっている.このか粒のほかに,ヤヌス•グリーンBで染色さ れ,改良ナジ反応に陽性である,棒状のミトコンドリアの存在がたしかめられている.
  • 福田 育二郎
    1962 年 75 巻 891 号 p. 349-355
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) 好熱性および好酸性のラン藻である,Cyanidium caldarium Geitlerの代謝系のうち,とくに光 と関係のある,光合成およびヒル反応について,その活性度を比較検討した.
    2) この藻細胞のヒル反応活性を,ヒル混液, p-キノン,しゅう酸第二クロム,2, 6-DPIP,など種々 の試薬をヒル反応試薬に用いて測定し,その反応速度を比較検討した.さらに種々の阻害剤によるヒル反 応の阻害現象を解析した.
    3) この藻細胞のヒル反応の温度依存性について検討した.この反応の至適温度域は50゜~55゜にあっ た.
    4) この藻細胞のヒル反応の見かけの活性化エネルギーは,17Kcal(55゜~35゜)および,ほぼ45Kcal (35゜~30゜)と計算される.通常の緑葉において適当な温度域(30゜近辺)でも,著しい活性の低下が認めら れ,25゜ではほとんどヒル反応は見られなくなる.
    5) この藻細胞の代謝活性の熱に対する安定性が比較検討された.光合成,ヒル反応は60゜,10分間の 熱処理によって,それぞれ50%,30%阻害され,呼吸は50%促進された.
    6) 細胞磨砕物は,なお1/3程度のヒル反応活性を有するが,光合成活性は完全に失われた.
  • 荒野 久雄
    1962 年 75 巻 891 号 p. 356-367
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. The karyotypes of eight species in the genus Artemisia were studied by the smear method with the pretreatment of 8-oxyquinoline.
    2. The chromosome numbers of A. apiacae and A. montana are here reported for the first time, and for A. montana, a number different from the previous determinations has been recorded.
    3. Based on the karyotypical stand point, A. princeps and A. montana seem to be amphidiploid forms of a basic number of 17 and 26, respectively.
    4. The common karyotypical characteristics of the genus Artemisia are represented by the existence of a pair of short chromosomes with subterminal constrictions and of the larger chromosomes which have the secondary and terminalized primary constrictions. And the karyotype is generally symmetrical.
    5. A. montana may be derived from some species with the same chromosome number of 2n =18 as in A. stelleriana by a loss of a pair of trabants of median-sized chromosomes which have secondary constrictions and show variations in some other minute karyotype details.
    6. The basic chromosome number of most species in the genus Artemisia appears to be 9. However, in A. Feddei, a diploid number of 16 was observed. Some species with higher chromosome numbers (2n =34, 52) are presumably of amphidiploid origin.
  • 山本 幸男, 大山 秀夫
    1962 年 75 巻 891 号 p. 368-369
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
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