植物学雑誌
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75 巻, 892 号
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  • 岩波 洋造
    1962 年 75 巻 892 号 p. 371-376
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    マツバボタンの花の雄ずいの運動に関する研究の一部として, 花糸の内部構造について調査を行なった.
    マツバボタンの花糸は, 周囲が厚い膜にかこまれているにもかかわらず, 全体がたいへん柔らかい感 じで, たとえば, ピスにはさんで切片を作ると, 花糸がつぶれてしまう. したがって, パラフィン法, 凍 結法によって切片を作り, その横断面, 縦断面を観察したところ, マツバボタンの花糸は, 表皮, 柔組織 および管東組織の3つの部分からなっていることがわかった.
    表皮の細胞は縦に長く(10×30×100μ3), 外側の膜だけが大へん厚くなり, その一部が突起となってい た. 柔組織の細胞も縦長で, 表皮細胞よりはかなり小型であるが, その大きさは大小さまざまで, ここに は細胞間げきが多くみられた. このような柔組織中の細胞間げきは, とくに花糸の基部において多くみら れ, そのため, ときには個々の柔細胞が細胞間げきのなかに浮いている状態にちかいところもあった. 花 糸の中央部にある管束の部分には, 3~4本の道管と, これを囲んで多くの師管が存在していた.
    マツバボタンと花の形や葉の形はたいへんちがうが, これと同属であるスベリヒユにおいても雄ずいの 運動がみられる (後報). このスベリヒユの花糸の内部構造は, 全体にマツバボタンのそれより小型である が, 細胞の並び方や細胞間げきがあることなど, ほぼマツバボタンと同様であった.
    マツバボタンの花糸を水で封じ, これを凍結させ (炭酸ガスの噴出による) て切片を作ったとき, 組織 が凍っているときはパラフィン切片と同様のことが観察されたが, 氷が溶けるにしたがってその切片は強 く収縮した. この収縮の過程において, 表皮の大きな細胞は, 突起の部分から内側に折れ曲るようにして 収縮してきた. したがって, 花糸の表皮細胞は, 本来そのように曲る膜の性質をもっていて, 自然状態に おいては, これが吸収による内圧によって押し拡げられていると考えられる. 生体のまま切片を作ると, 花糸の横断切片はすべてつぶれた状態になることや, 花糸が厚い膜につつまれていながら全体としてはご く柔らかい感じがするのは, そのためであろう. この表皮細胞の膜のうちがわに曲る物理的な性質は, 雄 ずいの運動の機構にある程度関与していると想像される. (横浜市立大学生物学教室)
  • 館岡 亜緒
    1962 年 75 巻 892 号 p. 377-383
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    種子でんぷん粒がイネ科の系統分類において意義のある形質であることは, 古くから認められてきたこ とであるが, 筆者は古くから信ぜられてきた見かたにあわない事実を見いだしたので, この形質を244 属, 766種について再検討した. その結果, イネ科の種子でんぷん粒には次の4型が認められることが明 らかになった.
    第1型 (コムギ型) は, 単粒で, その形は円形~だ円形, まれにじん臓形で, 1細胞中に大小さまざまの 粒がみられるものである. 第2型 (キビ型) は単粒であるが, その形が通常角ばっており, また1細胞中で の大きさの変異がはげしくないものである. 第3型 (ススキ型) は, 単粒と複粒の両方が1細胞中にでてく る型であるが, その複粒はそれを構成する粒子 (granule) の数が少なく, 典型的な複粒とは異なるもので ある. 第4型 (ウシノケグサースズメガヤ型) では, 細胞中のすべてのでんぷん粒が複粒のもので, その複 粒は通常たくさんの粒子からなっている.
    多くの属では, 種類によって種子でんぷん粒が異なることはなく, すべての種類が例外なしに上述の4 つの型のいずれかを示す. しかし, 第3型は明らかに第2型と第4型の中間的なもので, まれにその3つ の型が同一の属のなかにみられることがある. また, その3つの型がでてくる族は相当数ある. この点か ら, 第2型, 第3型, 第4型の間の差異は大きな分類学的意義をもつものとは思われない.
    一方, 第1型と他の3つの型とははっきりと異なり, その中間的なものはほとんどみられない. 第1型 はウシノケグサ亜科のコムギ族, ヤマカモジグサ属, スズメノチャヒキ属にみられるが, それらに近縁の 植物, つまりカラスムギ族, Monermeae, ウシノケグサ族 (スズメノチャヒキ亜族とヤマカモジグサ亜族 をのぞく) では, すべて第4型がみられる. 第1型と第4型とは, そのでんぷん粒の形成過程に相当の差 異があるように思われ, この2つの型の間の差異は分類学的に意義のあるものである. 古くから使われて いるような単粒と複粒にわける見方では, 種子でんぷん粒をイネ科の系統分類に正しく使用することがで きないことは明らかである. (国立遺伝学研究所)
  • 佐藤 妙子
    1962 年 75 巻 892 号 p. 384-390
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) ホソエガサの原形質流動は, 外液のK, Ca, Mgイオンの濃度の変化によって著しく影響される.
    2) 流動にたいするKイオンの最適濃度は, 正常海水中のKイオン濃度, すなわち0.01M付近にあ る. 濃度がそれより高くても, あるいは低くても, 流速は減少する.
    3) 外液のCaイオン濃度を正常海水より高くすると, 流動は促進され, 低くすると抑制される.
    4) Caイオンとは反対に, Mgイオンは, その濃度を正常海水よりも高くすると, 流速は減少し, 低くすると増加する.
    5) CaイオンとMgイオンは, 流速にたいしてのみならず, 細胞質の形態的変化にたいしても, 相互 にあい反する影響をおよぼす. (大阪大学理学部生物学教室)
  • 実験的研究
    村田 茂三
    1962 年 75 巻 892 号 p. 391-400
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ト•ショソ•ミラソスではかるmomentary method によって, 切断した葉の蒸散と同形同大の湿 紙蒸発を比較し, Jeffreysの提唱した気孔蒸散に関 するwet leaf hypothesisの検証を行な:った. 結果 は否定的で, 同説が成立しないことを示した.
  • サワギク族の核型分析
    荒野 久雄
    1962 年 75 巻 892 号 p. 401-410
    発行日: 1962年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. The somatic chromosome numbers and the karyotypes were studied in nine species and subspecies belonging to subfamily Carduoideae.
    2. The numbers of somatic chromosomes were counted in five species of Senecio, two species of Ligularia and two species of Farfugium for the first time.
    3. All the members of Senecio studied have, in general, symmetrical karyotypes suggesting to be phylogenically primitive. Senecio cannabifolius has a characteristic symmetrical karyotype which resulted from high polyploidization of the basic number of 5 or 10.
    4. On the basis of the karyological data obtained, the taxonomic positions of Farfugium japonicum and F. hiberniflorum were considered.
    5. Ligularia and Farfugium species have the same chromosome number of 2n=60, but are karyologically different. And Farfugium species has a karyotype more asymmetrical than that of Ligularia.
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