タバコの葉が成熟期に達したとぎ, 窒素肥料をあたえないで窒素飢餓の状態におかれると, 葉は黄色になってゆく. このとぎどのような生理的な変化がおこって, 葉緑素が分解してゆくかを, クロロフィラーゼ活性の変化を中心に観察した. この酵素はクロロフィルをフィトールとクロロフィリッドとに加水分解る. 後者は水溶性であるために, 以後の変化を受けやすくなるのだといわれてきた. クロロフィラーゼは, これまで水溶性の状態で得ることが困難であるとされていたが, われわれはn-ブタノールをもちいて, タバコの葉緑体から活性の大ぎな酵素を得ることができた. そこで一定の着位の葉にっいて, この酵素の活性の変化と, それと同時に葉緑素の量の変化とを,いろいろな時期に調べた. その結果, 若い葉で の酵素活性は大きいが, 古くなるにっれて低下すること,これに比例して葉緑素の量の増減することがわかった. したがって, タバコにおいてはクロロフィラーゼはむしろ葉緑素の生成に関係し, これを分解 し, 葉を黄変させることに大きな役割を果たしているようには思われない.
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