1. ハッショウマメの暗所でそだてためばえの上胚軸の上部をきりとり, そのまま暗所に保つと, 切口からカルス状組織がいちじるしく発達することがみとめられた. (このばあい, カルスという言葉を広義に用いて, この組織をカルスとよぶこともできるが, カルスの意味する内容が人によってまちまちに解されているので, 本報では, 植物体にコブ状に形成されるもの一般をよぶのに用いられている 'outgrowth'を, さしあたり使うことにした).
2. ソラマメ, エンドウのめばえについて, 同様の処理をおこなったが, ハッショウマメにみられるようなoutgrowthはできなかった.
3. このoutgrowthは, 植物しゅようとしての特性をいくつかもっている. すなわち, a) 外見がクラウンゴール•遺伝的しゅよう•ビールスしゅようなどの植物しゅようとにている. b) 組織培養した場合, 外からオーキシンを加えることなしに, ある程度の生長がみとめられる. c) 正常の組織とくらべて分化の程度がはるかにひくい.
4. このoutgrowthはクラウンゴールと外見はにているが,
Agrobacteriumを接種せずに無菌的な条件下で, 上胚軸を切りとることだけで生成するから, クラウンゴールとはちがうものである. また, 遺伝的内因でできる遺伝的しゅようやオーキシン類で誘発されるしゅようなどの 'outgrowth' ともちがうあたらしい型のoutgrowthである.
5. 光はoutgrowthの生成に阻害的であるように思われる.
6. 上胚軸の先端から1cmまでのところに生長帯があるが, 生長帯の部分をきっても, outgrowthはできない. Outgrowthのできるのは, それよりも下の部分である. Outgrowthの生成が切断した場所 に左右されるのは, 諸実験から先端の部分にoutgrowthの生成に対する阻害物質が存在するためではなくて, むしろ切った部分の複雑な反応性によるものであるように思われる.
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