ルチンはプルラリア菌から抽出された酵素標品によって酸化分解を受け, プロトカテチュ酸, フロログルシンヵルボン酸およびプロトカテコイルフロログルシンカルボン酸を生ずる. この分解の機構は, まずクェルセチンのC-2,C-3間が開裂してプロトカテコイルフロログルシンケトカルボン酸が生じ, これがCO を放出してプロトカテコイルフロログルシンカルボン酸が生ずるものと考えられる. こうして生じたデプシドはデプシダーゼの働きによりプロトカテチュ酸とフロログルシンカルボン酸とに加水分解される. またフロログルシンカルボン酸を脱炭酸してフロログルシンに変える酵素も菌の培養基中に見いだされる.
クェルセチンは単独ではプルラリア菌によって分解されないが, ショ糖, ルチノース, 核酸およびその分解産物 (遊離の糖, リン酸を除く) と共存する場合には分解される. この機構については, ショ糖と共存する場合にはクェルセチン•フラクトシド, ルチノースと共存する場合にはクェルシトリンが生成し, これらがまず第一段階の酸化を受けるものと考えられるが, 実験的にもクェルセチンフラクトシドらしきものが反応液中に見いだされる. また核酸およびその分解産物と共存する場合には, クェルセチンと五炭糖との結合物, または塩基との反応産物が生じて, これらが第一段階の酸化を受けるものと思われる.
フラボノイド化合物の中でプルラリア菌により分解されるのはフラボノールだけで, フラボン, フラバノン, フラバノノールは分解されない.
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