みかけの個体重の増加分の光合成系および非光合成系への分配の割合が遮光の程度によってどのように影響されるかを検討した結果, 光合成系への分配の割合は遮光によって減少することがわかった. ことにきびしい遮光の下では減少の程度が著しかった. さらに, このような条件の下では 光合成系の枯死の割合が高くなるので, 生きている部分のみについて与えられる
C/F 比は著しく大きくなる.
植物の物質経済の動態を把握するためには物質再生産という概念の導入が必要である. そこで, 実験期間中のすべての生育期 (各週) について総生産を求め, それの各部分への分配の割合を算出した. この場合, 同化産物から新しい器官系が構成されるさいの転形率を0.5とした. 計算の結果から, 総生産にたいする純生産および維持をもふくめての光合成系への投資の割合が遮光によって低下することがわかった. ことに, 光合成系の構成への投資の割合は遮光によって著しく低下した. この結果は, 次の期間における生産の規模を縮少することになり, このようなことがくり返されれば, 生長率の停滞, ないしは減少をもたらすことになる. きびしい遮光下にみられる植物の枯死は以上のような点から説明される.
おわりにいろいろな光条件下におかれたヒマワリ, ヤエナリ, ツリフネソウの一種についての相対生長率を比較して, 耐陰性が, 上の配列の順に強くなることを示した. さらに, それぞれの種について, 光合成系へのみかけの個体重の増加分の分配の割合を求めて, これが, 耐陰性の強さと密接に関連しているという先の検討の結果をうらづける結論にたっした.
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