植物学雑誌
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77 巻, 913 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • I.植物抽出液による亜硫酸の還元
    田村 五郎
    1964 年 77 巻 913 号 p. 239-246
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    (1) 微生物の場合と同様にして水素→ヒドロゲナーゼ→メチルビオローゲン系を用いて高等植物の亜硫 酸還元酵素活性を測定したところ調べたすべての植物にこの活性が見られた.なおこの酵素は100000×g, 60 分の超遠心分離により沈降することなく,すべての活性がその上澄液に認められた.
    (2) 上記酵素反応の至適pHは7.5であり, Asp. Nidulans の亜硫酸還元酵素の場合と同様の値を示し た.なおこの高等植物の亜硫酸還元酵素は藤茂らの報告したホウレンソウの葉に存在する光化学的亜硝酸 還元酵素と同様にリン酸イオンの存在によって初期酵素反応速度は減少する.
    (3) この高等植物の亜硫酸還元酵素は比較的未精製の状態ではかなり熱に対して安定であり,60°,5分 の加熱処理を行なっても酵素活性は保持されている.この性質は微生物の亜硫酸還元酵素とはかなり異な る点である.
    (4) NADPH生成系と共役させることによりある段階(硫安分画)の酵素液は亜硫酸を還元することがで きる.しかし植物体よりの粗抽出液またはアセトン処理区分ではこの酵素活性は認められなかった.
  • 辻 英夫
    1964 年 77 巻 913 号 p. 247-252
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    イネおよびエンバクを暗所で蒸留水のみを与えて発芽させ, 2日から8日までのあいだshootの酸溶性リン酸エステル量および無機リン酸の量を測定した.
    1)イネ, エンバクとも,発芽の初期にはshootの酸溶性PのうちエステルPがしめるわりあいは かなり高く, イネでは酸溶性 P のうち約50%,エンバクでは約70% がエステル型である.しかし発芽がすすむにつれてこの値は急速に低下してゆく.
    2) shootの酸溶性リン酸エステル含量自身は発芽とともに増加してゆくが,これを乾量あたりでみる と,エンバクでは発芽初期の数日間に減少して一定の低いレベルにおちつぎ, その後もこのレベルが維持される. イネの場合はすこしおくれてゆるやかな低下がはじまるが,やはり低いレベルにおちつく.
    3) これに対して乾量あたりの無機リン酸の量は, エンバクでは測定全期間をつうじて直線的な増加 をつづけ, イネの場合もこの期間全体としては明りょうな増加を示している.
    4) エンバクの shootあたり酸溶性リン酸含量, および乾量あたりの酸溶性リン酸量は, 測定全期間 をつうじてイネよりも高い値をとっているが, 生量あたりの値ではほとんど差がない.
    5) 発芽初期に, 酸溶性リン酸エステルのレベルに関して, イネとエンバクのあいだにいちじるしい差がみられる.
  • 松原 聡
    1964 年 77 巻 913 号 p. 253-259
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1) 0.06モルの硝酸アンモニウムは幼胚の生長を促進する.硝酸カルシウム,硝酸ナトリウム,第二リン 酸アンモニウム, コハク酸アンモニウム, グルタミン, シスチンでも好結果を得る.
    2) Seitz ろ過した硝酸アンモニウムは加圧滅菌したものより効果的である.
    3) 硝酸アンモニウムを含む培養基はpH7.2で加圧滅菌したものが最もよく,加圧滅菌後調節 した場合にはpH6.2が最適である.
    4) 0.0075 モルの硝酸アンモニウムを含む培養基の浸透圧を種々変えると, 0.06モルの硝酸アンモニウム含む培養基と同じ浸透圧のとき, 最大の生長を得る. 培養基の浸透圧を一定にすれば, 幼胚の生長 促進はほとんど硝酸アンモニウムの濃度の増加に影響されない.
    5) 硝酸アンモニウムはとくに若い胚の生長を促進し, 成熟した胚にはほとんど効果はない.
  • 霧ケ峰の気候, 土壌および植生
    翠川 文次郎, 岩城 英夫, 宝月 欣二
    1964 年 77 巻 913 号 p. 260-269
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    山地草原, 特にススキ型およびトダシバ型草原の年間純生産および栄養元素の循環などを明らかにするため,長野県霧ケ峰において, 1959年-1962年の3年間, 一連の調査をおこなった. 本報では,この研究の第I 報として, 霧ケ峰の気候, 土壌および植生分布について報告する.
    1. 霧ケ峰草原 (標高1600-1800m) は, 日本各地の山地草原と比較して気温が低く(温量指数=48°), 草の生育期間はほぼ5月-10月の6カ月である.
    2. 霧ケ峰草原は大部分, 火山灰によっておおわれ, 土壌の腐植含量はきわめて高く, 硝酸態窒素の含量: は非常に低い. トダシバ型草原の土壌は, ススキ型の土壌とくらべて, Caの含量が著しく低く, 土壌の団粒構造の発達も悪い.
    3. 霧ケ峰の各種植生の分布地図 (Fig. 1) を作製し (1960年8月調査), 植生分布と地形との関係をしらべた. 最も分布面積の広いササ型群落は, 主として冬季の卓越風が直接あたる南斜面および尾根の頂上附近に分布し, またススキ型•大形多年生草型は主に北斜面に発達することが明らかにされた(Fig.2). また帯状トランセクト法による調査の結果, 植生分布と積雪量•凍土層の厚さとの間にも関連があることがわかった. すなわち, ササ型群落は冬季の積雪量が少ない風衝地に発達し, 一方, ススキ型•大形多年生草型は, 冬季の積雪量は 1m をこえ, 凍土層の厚さが薄い場所に発達する. 土壌A層の厚さは, 大形多年生草型の場所が最大 (約 90cm), ササ型の場所が最小 (約50cm) であった.
    4. 群落地上部の現存量 (8月下旬測定, 乾量) はススキ型•大形多年生草型が最大が 460-500g/m2, それに次いでトダシバ型の 210~260g/m2, ササ型は最小の 190-240g/m2 であった.
  • 林 俊郎, Albert C. HILDEBRANDT, Albert J. RIKER
    1964 年 77 巻 913 号 p. 270-273
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    植物しゅようの一種であるクラウンゴールは Agrobacterium tumefaciens の感染または人為的接種 によって形成され, その病原菌がしゅよう内に共生する. この組織を培養基に移した場合,まれに無菌の しゅよう組織が得られるが, かならずしも容易ではない. 著者らは抗生物質を用いることにより随時, 無 菌のクラウンゴール組織を得る方法を見出した. 用いた9種類の抗生物質のうちオーレオマイシン, ペニ シリン, ヴァンコマイシンが有効であることがわかった. また多くの場合このしゅよう組織に混在するカビ を防ぐために, マイコスタチンを併用した. これら抗生物質の効果は寒天培地での処理より振とうした液 体培地での処理がすぐれている.
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