いろいろな酵素はすでに1944年代からEmswellerら
2)によって顕花植物根端および花粉母細胞の染色体の染色に応用されてきたが一般に使用されるにはいたらなかった. 酵素使用の主な目的は根端の中層および細胞膜を分解し, 細胞の分離と染色おしつぶしの際, 染色体を一様におし拡ろげ, 詳しく染色体の形態を調べることにある. 最近ÖstergrenおよびHeneen
7)はペクチナーゼをフォイルゲン染色法に応用して,根端の硬いイネ科植物で成功をおさめた.
本研究では改良したオルセイン染色法に, ペクチナーゼおよびセルラーゼを組みいれて, 染色体の小さいナス科, ゴマノハグサ科, サクラソウ科の植物の根端に用い良好な結果を得た. これらの植物は従来のオルセイン染色法では染色体の染色および細胞の分離, 拡散が非常に悪く, 一様に広がった染色体のめいりょうな像は得られにくかった.
根端を固定後, 5%のペクチナーゼまたはペクチナーゼおよびセルラーゼの1:1の混合液で1-2時間, 温度25-30°で処理すると非常に軟らかくなる. この軟らかくなった根端はアセトオルセインまたはラクト•プロピオニック•オルセインで長時間染色した後でも硬化しない. ナス科, ゴマノハグサ科, サクラソウ科植物の根端の固定には, イネ科の材料に用いられたÖstergrenとHeneenの固定液が用いられ, 広く応用のきくことが確められた.
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