キヌガサタケは“.gg”.呼ばれるとき既に内部で托 (傘, 茎, マント) が完成し, 胞子も成熟している.茎とマントは無数の小胞からなり, “egg”.中では小胞の壁は折りたたまれている. 壁の細胞が吸水して大きくなると折りたたまれた壁は伸びて小胞も大きくなり, 茎は“.gg”.上端を破って急伸し, マントは展開する. 細胞容積は伸長前の約12倍になる. このとき, 栄養や水分を“.gg”.外側から与えなくてもよい. 細胞が吸水するための水源は, 小胞や茎中央の空所に初めあった寒天様物質 (浸透価は約2気圧)であろう. 伸長は“.gg”.らとりだした茎やマントを小片にしても起こる. 小片から寒天様物質をできるだけ取り去った後伸長させると(水欠乏状態), 細胞搾汁の浸透価は初めの約9気圧から約14気圧に昇るが,正常に伸びたものや水中で伸びた小片では上昇しない. 細胞内には伸長する前, グリコーゲンがみられるが, 伸長に比例してなくなり, 還元糖が増える. 伸長の終りには, グリコーゲンは検出されなくなる.
細胞伸長の原因は主として細胞壁の自発的伸長とみられる. このとき, 水の吸収は細胞液と寒天様物質との間の浸透価の差に基づいて行われる. グリコーゲンの分解による溶質分子の増加は, 水欠乏の状態で伸長させたとき細胞搾汁浸透価が増大することの原因になっていると考えられるが, 正常な伸長の場合には, 細胞容積が増して細胞液浸透価が低下することを防ぐのに役立っているのであろう. また, 細胞容積が増えると細胞壁の平均曲率半径は大きくなる. 膨圧によって細胞壁を引き伸ばすように働く張力は壁の曲率半径に比例するから, 細胞液浸透価が変らなくても細胞直径が増すと張力も増大する. この力も細胞伸長の1要因として考えなければならない.
分解したグリコーゲンがどれほど細胞伸長のエネルギー源として使われたかについてはまだわからない.
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