植物学雑誌
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79 巻 , 936 号
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  • 尾形 英二
    1966 年 79 巻 936 号 p. 271-282
    発行日: 1966年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    最近海藻の培養液として, トリス•ヒドロキシメチル•アミノメタン(CH2OH)3CNH2を用いてpHを調整 した人工海水を用いる例が多い. このような人工海水中で, アサクサノリ•セイヨウハバノリ•アオサな どの紅•褐•緑藻の光合成を測定すると, トリス無添加の人工海水中におけるより光合成速度が顕著に増大 しているのが認められた.
    この原因をしらべるために, トリス濃度•トリス添加後の経日経過•重炭酸塩添加の有無•容器の密閉程 度などの各項目について, それぞれ海藻の光合成速度•培養液のpH変化•全炭酸含量の変化などを測定 した.
    その結果, トリスを添加することで炭酸塩•重炭酸塩を含まない場合でも, 人工海水中の全炭酸含量が 増加すること, その増加の程度はトリス添加後の経日経過とともに増大すること, しかしその程度は容器 の密閉の程度でも変化することなどがわかった.
    また炭酸塩•重炭酸塩を含まない人工海水のpHはかなり低いので, トリス添加によるpHの上昇も光 合成促進に寄与している. ただし適当な炭酸源の供給がない場合, 単なるpHの上昇だけでは光合成の促 進が説明できない.
    上記の点から, トリスはpHの適当な上昇と周囲の空気中からのCO2ガスの吸収による炭酸源増加の 両要因によって, 人工海水中における海藻の光合成速度を増大させるものと考えられる.
  • 謝 萬権
    1966 年 79 巻 936 号 p. 283-292
    発行日: 1966年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    北海道から台湾にわたる地域に自生するイノモトソウ属 Pteris を分類学的に検討した結果, 34種, 3変 種に整理できることがわかった. このうちマツザカシダは新種であるという結論に達し P. nipponica と 命名した. 今までこの属の分類には葉脈の形質すなわち葉脈が遊離するか結合するか, 結合した場合はそ の形, が最も重要だと考えられていた. しかしこれは割合変わりやすい不安定なものであることがわかっ たので, 私は非常に安定した形質である葉の分岐の仕方すなわち羽状に分かれるか, 三出するかという性 質を第一に重視するとこにした. それに鱗片, 葉縁, 葉脈, 偽脈の有無などのいろいろの形質を考慮して, 次のような新分類系をたてた.
  • 河野 昭一
    1966 年 79 巻 936 号 p. 293-307
    発行日: 1966年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ヒロハコメススキ群 (the Deschampsia caespitosa complex) は南北両半球に広く分布する10内外の microspeciesよりなる, コメススキ属植物の内でも最も多型なグループの一つである. この研究で北太西 洋上のアイスランド (北緯63°-67°)より入手した種子より発芽, 生長した11株, スウェーデン, ノルウ ェー, カナダ産の4株のD. caespitosaでそれぞれ染色体数, 核型, 外部形態の変異, 繁殖様式の変化な どをしらべた. 染色体数はアイスランド, Hraugerdiよりの2株が根端細胞で1または2この過剰染色体 を持つていた他は全て2n=26であった. 核型はK(2n)=26=4V+10J+12Iで前報 (Kawano 1963) の結 果と一致する.
    注目すべき点は, アイスランド, Snarrót,およびDálakstadir, スゥェーデン, Dalarna, ノルゥェー, Dakka産の株がいずれも, 米国 Wisconsin 州 Madison (北緯43°, 夏期の最長日長約15時間, 冬季約 11時間) で栽培された時に “むかご型” の小穂を数多くつけ, 無性繁殖型に変ったことである. このこと は以前にLawrence(1945)が同じく極地, 高緯度地方産のD. caespitosaを米国California州Stanford およびTuolumneの実験愀圀場で栽培した時に同じような反応を示し, 幾つかのものが有性繁殖型より無性 繁殖型に変化したこと, またNygren (1949)が8時間の人工短日長下で極地産有性繁殖型のD. caespitosa を栽培した時に全く同じ反応を示したこと, などの結果と考え合わせてみると非常に興味深い. これらの “むかご型”.はいずれも小穂中の外花穎, 内花穎の部分が異常に伸長し, 同時に通常外花穎基部もしく は基部よりの部位につく長さ2-3mmの芒が穎頂端または上部に移動し, 短くなる点が非常に特徴的であ る. Scholander (1934) はこうした “むかご” が地面に落ちて発芽し, 成植物にまで生育することを観察 している.
    ここで一般に北半球 (南半球でも同じく) の極地に近い高緯度地方では年間を通じての日長変動のリズム は低緯度地方のとは著しく異なり, 冬(冬至)には少なくとも一度ほとんど日長が0時間となり, 夏(夏至) には24時間とその変動振幅のリズムが幅広いことに注目したい. このことはD. caespitosaがこうした高 緯度地方での特殊な環境条件下で有性生殖で繁殖しているのが, 低緯度地方での環境下で栽培すると有性 生殖はおこなわれなくなり栄養繁殖型に突然変化するということ, いいかえると生活リズムの変動によつて 生活型にも変化をきたすということ, しかしながらD. caespitosaは低緯度地方にも広く分布しており, そこでは正常な有性生殖様式で繁殖しているわけであるから, 実際は非常に幅の広い環境条件への反応様 式を包含し, 遺伝的反応規格の幅の広い集団系であるということを意味する. このことはさらにまたD. caespitosaと非常に近縁なD. alpinaとの進化学上の関係を考える上に役に立つ. Hedberg (1958) は Scotland 山岳地帯に生育するD. alpinaと呼ばれている植物個体群が “むかご型” を含み, 染色体数も 2n=26, 39, 52と極地に分布するD. alpinaと同じ特徴をもつものではあるが, 小穂の形態ではむしろ Scotland低地に生ずるD. caespitosaに近いことから,D. caespitosaと北太西洋-極地域に分布する “むかご型',で大型の小穂をつけるD. alpinaとの関係と進化学的位置を論じた. 本研究で得られた幾つ かの事実はHedbergの見解と,また著者(Kawano 1963)が以前に指摘したようにcaespitosa-littoralisalpina caespitosaという系統関係とを裏書きするものである.
    これとは別にapomictsへの”.gamospecies”.いう概念の適用(Löve 1960), また高等植物の繁殖様 式と集団構造の基礎的単位-その変動パターンの解析と把握, phytochromeおよびHER (High Reaction System), 開花ホルモン, 光周性, 繁殖型との関連性といった将来解明されるべき数多くの問題点が あることをここで指摘しておきたい.
  • 石倉 成行, 林 孝三
    1966 年 79 巻 936 号 p. 308-314
    発行日: 1966年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    さきに著者らは, アカダイコンではアントシアニン形成に及ぼすロイシンの効果がフェニルアラニンの それに匹敵することを報告したが, 今回, その生合成的機作を調べるために, ロイシンーU-14Cおよびロイ シンー1-14Cのアントシアニンへの取り込みが色素分子のどの部分におこるか, また同時に, 諸種の共在成 分にその14Cがどのように分布していくかを調べた.
    ロイシン-1-14CおよびロイシンーU-14Cは, いずれもペラルゴニジンの複素環を構成しているC3-部分とB 環とに大量に取り込まれ, A環への取り込みは非常に少ない. C3-部分には, ロイシンー14Cによっても 高い放射活性が示されることから, その構成にロイシンのカルボキシル炭素が効果的に使われるものとみ られる. したがって, その取り込みはロイシンからピルビル酸を経て進行するものと考えられる.
    ロイシンの遊離糖への転入は, 有機酸への転入よりも少ないことからすると, アントシアニン形成に及 ぼす促進的な効果は, ロイシン→糖→アントシアニンの過程を経るのではなく, むしろロイシン→有機酸 →アントシアニンの過程をたどるものとみられる. なかんずく, 有機酸区分中で最も高い放射活性がリン ゴ酸にあることからすると, アントシアニン合成系とリンゴ酸代謝系との関係が今後の課題となるであろう.
  • 村上 浩
    1966 年 79 巻 936 号 p. 315-327
    発行日: 1966年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1. A bioassay method based on the gibberellin-induced release of reducing sugars from endosperm, which was originally reported with barley by Nicholes and Paleg, was applied to rice endosperm and the results were compared with the rice seedling method, in which the elongation of leaf sheath was used.
    2. Various compounds were screened for their possible effects on the release of reducing sugars from rice endosperms (Table 1).
    Organic acids (200, 500μg), amino acids (20, 200μg), vitamins (20, 200μg), auxins (2, 20μg) and kinins (2, 20μg) showed no positive effect in the rice endosperm test.
    Gibberellin A3 (GA3) and its degradation products, gibberellenic acid, and 2, 3, 7-trihydroxy-1-methyl-8-methylenegibb-4-ene-1, 10-dicarboxylic acid (dicarboxylic acid) stimulated the release of reducing sugars but allogibberic acid was inactive.
    Helminthosporol, which is a metabolic product of Helminthosporium sativum, and its derivative, helminthosporic acid, were active from the concentration of 10μg/ml.
    3. Ten varieties of rice were tested for their responses to GA3. Their sensitivity is variable and may depend on their previous history as well as genotype. Aged seeds, whose germination percentage decreased, were less sensitive to GA3 than fresh ones (Table 2).
    4. The isolated endosperms obtained from developing seeds of more than 18 days after flowering responded to GA3, but those from much more immature seeds did not (Fig. 3). Also in endosperms of germinating rice, GA3 was able to induce the release of reducing sugars (Fig. 4).
    5. GA3 can be bioassayed in the range from 0.001 up to 0.1μg/ml using varieties Aichiasahi and Tanginbozu (Fig. 5). This eneosperm method is ten times more sensitive than the rice seedling test.
    6. Extracts from the following plant species (Figs. 7-11) and human urine (Fig. 12) were examined for the presence of gibberellin-like substances: Pharbitis nil (immature seeds), Oryza sativa (shoots), Cryptomeria japonica (leaves), Equisetum arvense (sporophylls), Porphyra tenera, Chara coronata, and Saccharomyces sp. They were separated by paper chromatography and were found to contain active substances in terms of the release of reducing sugars from rice endosperms. However, the histogram pattern using the endosperm test was not always coincident with that using the rice seedling test. As a typical example, the histogram of gibberellin-like substances of extracts from rice shoots was shown in Fig. 9. By means of the endosperm test the remarkable activity appeared at two zones of Nos. 1 and 8, but in the seedling test the activity was observed at the zone of No. 4 with tailing in Nos. 2 and 3.
    7. Fig. 12 shows evidence for the presence of gibberellin-like substances in human urine. With the endosperm test, an active zone appeared but by means of the seedling test weak active zones were obtained at different places on the histogram.
    8. Attempts were made to compare GA3, its degradation products, gibberellenic acid, allogibberic acid, and dicarboxylic acid and helminthosporol on rice endosperm and seedling tests. The relative activities of these compounds to GA3 on the endosperm were different from those found for the seedling (Table 3).
    9. These findings indicate that there are some differences in the response to gibberellins between the various tissues of the same species.
    10. The rice endosperm test is very sensitive to GA3, but when the problem is concenrned with elongation, seedling tests are more suitable method than endosperm tests.
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