植物学雑誌
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80 巻, 944 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 沈水大型植物の日光合成量におよぼす水深の影響
    生嶋 功
    1967 年 80 巻 944 号 p. 57-67
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    光合成-光曲線と水面または水中における光の強さの日変化を組みあわせて, 任意の水深にある水中の緑色植物の1日の光合成を天気や湖水の透明度または吸光係数を考慮してもとめた. 日総光合成量-水深の関係を生理的要因 (光合成や呼吸の能力) と環境要因 (日最大水平照度, 日照時数や水中照度) の関数として (8), (9) 式でしめした. この式がしめす理論曲線は自然でみられる沈水大型植物や湖沼•海洋の停滞期にみられる植物プランクトンの1日の光合成量の垂直分布によくあった. 水中の緑色植物の補償深度は, それらが生育している水体の透明度によく対応するというこれまでの経験的法則に対して, 理論的な根拠をあたえた. 春から秋にかけての晴天下での日補償深度はグラフから (図7, 8), 冬の晴天および四季をつうじての曇天•雨天での日補償深度は (16), (17) 式から理論的にもとまる. このようにしてもとめた日補償深度は吸光係数に反比例し, 透明度に比例する. 琵琶湖に生育する Elodea occidentalis について月平均の補償深度/透明度の値 (上の関係における比例定数) をもとめると1月は2.0, 4月は2.4, 7~8月は1.4となった. Chlorella ellipsoidea についての補償深度/透明度の値は, 1月の雨天の0.9から7~8月の晴天における2.5の範囲にあった.補償深度が透明度のほぼ2倍の水深に一致することは注目される. 群落下層部の葉茎の日総光合成量や日呼吸量は群落上層部の葉茎のそれよりも小さい値であり, とりわけ光合成能の低下は著しい. このことからも群落全体についての日補償深度は, 単に群落上層部の葉茎のみから算出した深度よりさらに浅い位置にあると考えてよい.
  • ナスのカルスからえられた3系統の胚形成
    山田 卓三, 中川 裕子, 篠遠 喜人
    1967 年 80 巻 944 号 p. 68-74
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    先に TradescantiaPaeonia のカルスは混倍数性をしめし,細胞学的には不均一な細胞集団であることをたしかめた. このカルスの不均一性が個体の変異となってあらわれるかどうかをたしかめるためにナスを用いて器官の誘導をこころみてきた. ナスは真黒 (B) と関東青 (KA) の二つの品種を用いた. Bカルスは1961年6月に胚よりカルスをえ, 1963年分離した二つの系統, すなわち一つは光条件下で葉緑素を形成し “胚” をつくる系統 (BD), 他は半透明のカルスで増殖率はよいが葉緑素形成を “胚” 形成もみられない系統 (BND) であり, KAカルスは1965年に胚より分離したもので基本培地の上では “胚”.形成はみられないが葉緑素を形成する. この3系統を用いてオーキシン, カイネチンその他の条件のもとにおこなわれる器官形成の状態をみた. BDは基本培地の上に “胚” を分化し, オーキシンで “胚” の形成を或る程度調節でき, KAは光条件下でIAAとカイネチンとの適当な組合せの範囲で芽を誘導することができる. BDは種子胚と同様な胚形成をおこない, KAは芽の原基の形成にさきだって球形のプロトコーム状のコロニーを多数生じ, これに原基がつくられて不定芽となる. BNDでは芽の誘導は現在のところ成功していない. 培養細胞は変りやすい. BDの “胚” 形成能は選択によって維持され, 分化しやすいカルスと分化しないカルスとが分離してくる. 誘導は種類によってはもちろん, 同一種類でも系統やカルスの古さによっても条件が異るので, 誘導過程の一般理論化を困難にしている. 現在までにナスではカルスより育成した個体について変異植物はえられていない.
  • 森 久子
    1967 年 80 巻 944 号 p. 75-85
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ミトリサンゲ Vigna sesquipedalis の発芽期間中に, 各器官のプロトヘミン体が, どのような変化を示 すかを, カタラーゼ, ペルオキシターゼおよびプロトヘミンについて, それぞれ適当な定量法を考案して調 査した. 測定された酵素能, およびヘミン量を個体当り, 乾量当り, 酵素能比 (カタラーゼ/ペルオキシターゼ), 酵素能のヘミン量換算値で検討した結果: (1) 子葉は幼葉と同じく, カタラーゼが著しく強く, 葉性器官の性格が顕著で, 根部と対照的である. (2) 上, 下胚軸は同じ傾向を示し, ただ上胚軸が伸長開始すると, 下胚軸は発育が停り, ヘミン量も, ペルオキシターゼ能, カタラーゼ能も, 頭打ちとなる. (3) 幼葉, 幼根は共に発芽期間中急速にヘミン濃度が増大する. 全ヘミン中, カタラーゼの占める部分は, どの器官も非常に小さいが, ペルオキシダーゼは幼葉や根では, 略50%に達する. (4) 子葉は貯蔵物質を失って小さくなるが, 全ヘミン量は一定のレベルを保つ. したがつて後期には濃度として葉の程度まで濃縮される. 子葉ではペルオキシターゼの割合が特に小さい. しかし子葉の著しいb型チトクロム帯とそのNOとの反応性などから子葉には多量の低い酵素能しか持たないペルオキシダーゼ類似のb型チトクロームが存在すると考えるべきであろう. (5) 子葉のカタラーゼは, 発芽前期に甚だ強大となり, 後期に激減する. この強大なカタラーゼの消長は, 子葉の発芽初期後期でチトクロム型, 硝酸還元能, 脱水素酵素能などの顕著な代謝系の転換と関連するものであろう.
  • 赤色花弁の反射曲線とアントシアン溶液の透過曲線との比較
    安田 斉
    1967 年 80 巻 944 号 p. 86-91
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    (1) 種々の濃度のシアニン溶液の分光透過率曲線 (透過曲線と略称) と, 赤色系バラ花弁の分光反射率曲線 (反射曲線と略称) とを巨視的な立場で比較した. (2) バラ花弁中, 主としてアントシアンを含む部分のpHは指示薬法により3.0前後と推定されたので, シアニン溶液のpHは2.0~3.5の範囲にした. (3) シアニン溶液ヘルチンを添加するとき, そ の透過曲線を反射曲線に近づける効果がある. (4)花弁の表面観から, その反射光には内部の色素による選択反射光のほか, 色素に影響されない所謂表面反射光が小部分あると判断されるので, 両曲線を比較する場合には, これを考慮に入れなければならない. (5) 以上の点を考慮すれば, シアニン濃度が比較的高いときは, 両曲線の形は基本的に近いといえる. 本研究に当り御指導を賜った信州大学中山 包先生および反射率測定法を御教示下さった竹村寿二先生に深甚なる謝意を表する.
  • 児玉 明
    1967 年 80 巻 944 号 p. 92-99
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1) マメ科植物の7連 (tribe), すなわち, Cassieae, Trifolieae, Loteae, Galegeae, Hedysareae, Vicieae, Phaseoleae に属する19種の根粒の染色体および根粒の形態を観察した. 2) 観察されたセメ科植物の根粒には2倍性と4倍性のものがみられた. これらは分類学上のtribe によってほぼ一定である. 3) 観察されたマメ科植物の根粒には分裂組織が先端にのみある先端型と, 周囲に散在する周囲型とがあり, これらは分類学上の tribe によってぼほ一定である. 4) 周囲型の根粒は主として2倍性で, tribe Hedysareae, Phaseoleae に, 先端型の根粒は主として4倍性で, tribe Cassieae, Trifolieae, Galegeae, Vicieae の種にみられる. 5) 根粒細胞の倍数性は, 種または tribe の本質的な性質と推定される.
  • 増田 芳雄, 和田 俊司
    1967 年 80 巻 944 号 p. 100-102
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
  • 1967 年 80 巻 944 号 p. 107
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
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