植物学雑誌
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80 巻, 948-949 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 川松 重信
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 233-240
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    明所と暗所で生育したアカマツの芽生えの子葉でプラスチッドの構造とラメラ形成を観察した.
    明所で生育した芽生えではラメラ形成は顕花植物のものと全く同じようである.
    暗所で生育した芽生えのプラスチッドは明所の場合と同じ過程でラメラ構造が形成される. ラメラ形成が完成したのち, ストロマラメラはなくなり, グラナ構造だけとなる. これはアカマッでは暗所においてクロロフィルが形成されるので, 当然期待されたことである.
  • 滝本 敦
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 241-247
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    アサガオの花芽形成に関与する光周反応には二種の内生リズムが関与している1,2). これら内生リズムの発現を支配する光条件を調べて次の結果を得た.
    8時間の暗期後5分~2時間の光照射を行い, 続いて48時間の主暗期を与えて主暗期中種々の時期に赤色光による光中断を行うと, 光中断の作用は最初に与えた8時間の暗期開始時に発現したリズムの支配をうける. すなわち5分~2時間の光 (4000ルックス) は暗期開始時に発現したリズム (light-off rhythm)をあまり妨害せず, またそれ自身新しいリズムを発現さす能力を持たない. 光照射時間を4~8時間にすると最初の8時間暗期開始時に発現したリズムは消失し, この光が新しいリズムを誘発して主暗期中の赤色光による光中断の作用は新しいリズムの支配を受ける. この場合, 新しいリズムを発現するのに必要な光の強さは, わずか70ルックスであるが, 照射時間が2時間以下の場合には4000ルックスの光を与えても無効である. 新しいリズムの発現には照射光の全エネルギー量よりも, むしろ照射時間が重要な意味をもつ.
    リズムの発現に最も有効な光は赤色光であり, 青色光はかなり強い場合にのみ有効で, 近赤外光は無効である.
    光 (白色) の強さを4000ルックスから急激に10ルックスに減ずると, その時にlight-offリズムが発現する. 4000ルックスから250ルックスへの減光はリズムを誘発し得ないが, 250ルックスから暗黒への移行はリズムを誘発し得る.
    4000ルックスの白色光から種々の強さの各種波長光に植物を移した場合, リズムの発現に必要な波長光の強さは赤色光で1.5μw/cm2以下, 白色, 緑色, 青色光では夫々4, 5, 20μw/cm2以下である. 近赤外光に移した場合には, 近赤外光中でのリズムの進行が妨げられるらしく, リズムの発現は見られなかった.
  • 短枝と側枝の発生
    塙 順
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 248-256
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    アカマッの短枝と側枝の発生と, その生長点の構造について観察をおこなった. 短枝の芽は, 母軸生長点に新しい冬芽が準備される7月から9月にかけての期間に, 母軸の鱗葉腋に生じ, それらの腋芽の最後に生ずる栄養性側芽が側枝 (長枝) となる. 腋芽の発生様式は一般の腋芽形成のそれと異らない. 母軸生長点の生長活動は9月半ばに終るが, これら腋芽の生長は10月末ごろまで続く. それまでの期間に短枝生長点は9~12の鱗葉を生ずる. それにつづいて針葉の原基が形成されるが, それらは休眠前に形成される場合と,翌春枝の伸長開始に先立って生ずる場合とが見られた. 生育地の気候条件がよければ生育期間がのびて休眠前に生ずるものと思われる. これら鱗葉と針葉は, 最初の2鱗葉 (前出葉) が対生であるのを除いて, 2+3葉序に並んでいる. 針葉が短枝生長点の周辺組織のすべてを用いて形成される結果, その形成後は生長点は極めて小さくなる. 針葉は4月から生長を始め8月に発育が完了する. そのころ短枝生長点は再び増大して鱗葉を生ずる. 3年目の秋に脱落するまでに短枝は総計20ほどの葉器官を形成する.
    長枝となる腋芽は短枝のものよりやゝ大きい. 発育の初期 (第1年目) に, その生長点の表層にはかなり明瞭な tunica 様の構造が見られる. しかしそれは翌春以降は消失する. 4月以後, 側枝生長点は急速に増大して, 7月までに母軸生長点に匹敵する大きさとなり完全な長枝生長点の構造を示すようになる. それは新しい母軸となって, 翌年の伸長のための冬芽の形成をはじめる.
    短枝生長点の分裂組織は, (1) 頂端始原細胞群, (2) 亜頂端始原細胞群, (3) 中央組織および (4) 周辺組織の4組織帯に分けることができる. これは長枝生長点のものと基本的には同じ構造であるが, 長枝に見られる中央母細胞群と髄状分裂組織1) の発達がわるく, それらはそれぞれ亜頂端始原細胞と, rib meristemの形状を示さぬ中央組織とによって置換されている. これに対し長枝となる腋芽ではその発育初期より中央母細胞群と髄状分裂組織がみとめられる.
  • 渡辺 光太郎, 吉川 勝好
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 257-260
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ヤマザクラPrunus jamasakura•エゾヤマザクラP. sargentii•オオシマザクラP. lannesiana var. speciosa•イトザクラP. subhirtella var. pendulaおよびソメイヨシノP. yedoensisには, いずれも自家不和合の性質があることがわかった. ソメイヨシノは自家•他家受粉とも種実を形成しない. この植物の結実は他種のサクラとの交雑の結果と見てまずあやまりがない.
    われわれは多年同一地域の, ほゞ同じ環境下にある16本のヤマザクラについて調査し, 開花状態や花• 葉などの諸形質に顕著な個体差のあることを認めた. 自家不和合性は, このような著しい変異を生ぜしめた一因であると考えてよかろう.
  • 藤田 安二
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 261-271
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    Classification and phylogeny of the genus Cinnamomum (Lauraceae) were discussed from view-point of the constituents of essential oils and a cubic system of this genus has been proposed.
    A schema is presented to explain the modes of appearance of the elements of formation of essential oils.
  • 卜蔵 建治
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 272-278
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    イネの葉の伸長におよぼす光の波長の影響を明らかにするため, 青, 緑, 赤色光のカラードランプを用い, 日本のイネ30品種と外国のイネ6品種について,第2葉における葉鞘と葉身の光生長反応について調べた.
    葉身の伸長は光の波長には無関係であったが,葉鞘の伸長には光の波長が強く影響した. 葉鞘には,緑色光で伸長が最も大きく,赤,青色光がこれに次いでいる第1の型と,青,緑,赤色光の順に伸長が大きい第2の型とが認められ,二つの異なった光生長反応系の存在が推定された.
    第1の型には, 日本のイネ30品種全部とブイリピンのイネ3品種とインドのイネ1品種が属する.この内,日本イネにおいては, 開花に対する感光性.シベレリンの感受性の高低には無関係に青, 赤色光のもとにおける伸長の比は全品種を通じてほぼ一定の値を示した.第2の型には, 東パキスタンのイネ2品種が属する.
  • 笠原 和男
    1967 年 80 巻 948-949 号 p. 279-287
    発行日: 1967年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1. 原則として, ワカメ (Undaria pinnatifida) の 粘液腺は表皮細胞のいずれかに由来する.
    2. 遠藤氏のいわゆる “supraglandular space” は 存在しないものと思われる. すなわち, 粘液腺 は葉部の表面に露出している.
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