植物学雑誌
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81 巻, 958 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 丸の内 棣, 森 健志
    1968 年 81 巻 958 号 p. 179-189
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1. 硫黄細菌 Thiobacillus thiooxidans の硫黄酸化能は, 中性およびアルカリ性において高級脂肪酸によって阻害された. 阻害度は脂肪酸の溶解度に比例しているように思われる.
    2. 硫黄酸化はデオキシリボヌクレアーゼ, リボヌクレアーゼ, リパーゼ, セルラーゼおよび数種のプロテアーゼによって阻害されなかったが, リゾチームと蛇毒酵素によって阻害された. 細胞をアルカリ処理すると両酵素によりさらに強く阻害された. 細胞浮遊液の濁度はリゾチームの添加によって減少せずにむしろ増大した. 2つの酵素による硫黄酸化阻害の機作を考察した.
    3. この細菌から単離された細胞壁は, トリプシンによって速かに消化され, 消化後に繊維状構造が電子顕微鏡的に観察された.
  • 葉緑体における DNA の細胞学的検出
    増渕 法之
    1968 年 81 巻 958 号 p. 190-197
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    本実験で観察されたアオミドロは4種であったが, いずれの種も葉緑体部位にフォイルゲン染色陽性の小顆粒の存在が確認された. なおこれら小顆粒はメチルグリン•ピロニン二重染色法によっても同様の結果を得た.
    これら小顆粒は直径が1ミクロン前後の球形として現れ, 時に楕円体であった. なおこれらの大きさはRis と Plaut によるクラミドモナスの観察結果と一致する. アオミドロではこれら小顆粒は各ピレノイドの周辺部および葉緑体バンドの中心軸に沿って存在する. なおその大きさや存在する部位については種によってそれぞれの特異性をしめすようであった.
  • ガンマー線照射の影響
    和田 清美
    1968 年 81 巻 958 号 p. 198-209
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    アサガオ (紫) の芽ばえを用い, 花芽分化にたいする電離放射線の影響をしらべる一連の研究の一部として, コバルト60 (約1キロCi) よりのガンマー線を用いて実験をおこなった. 照射は長期にわたる緩照射(chronic irradiation) はおこなわず, 短時間の急照射 (acute irradiation) のみとした. 尚, 照射は幼植物全体にたいするもので, その線量は幼芽の位置で測定した.
    結果は次のようであった. 1) このアサガオは, 花芽分化に関してとくに放射線感受性が高い. すなわち,1000R以上の線量では勿論, 450~660R の範囲の線量で花芽分化は甚大な影響を受ける. 一方, 同一線量で茎の伸長, 葉芽での葉原基形成はほとんど影響を受けなかった. 2) 低線量 (300R以下)を, 花成誘導に必要な暗期前に照射した場合, 幼芽に存在する各腋芽および頂芽で花芽分化の促進•抑制がみられた. このことは, 前報2)で報告したごとく, 幼芽に存在するそれぞれの生長点分裂組織の生理的(physiologicalage)に差異があることをはっきりと示す. この差は, 暗期後の照射の場合にもはっきりと示された. 3)花成誘導に必要な暗期の前後 (24時間前から120時間後まで) のいろいろな時間に短かい照射をおこなったところ, その時期により, (a)一旦花芽分化を開始したが再び葉芽へと完全に逆戻りする. (b)一対の苞葉だけが形成されたのち葉芽へ逆戻りする. (c)3-4枚の苞葉に似た形態の葉が形成され, それ以外の花葉はすべて?損する. (d)苞葉が3-4枚のほかは, 正常な花芽といったように, いろいろな奇形花芽が生じた.これらの奇形花芽の発生とガンマー線照射の時期とを合わせ考えることにより, 暗期後での花芽分化の初期段階 (暗期開始後14-16時間から3-4日までの期間) をその放射線感受性の差によって細分することができる. この点についての詳細は, X線についての続報およびX線とガンマー線の局部照射についての続々報で報告する.
  • 山下 愼子, 高橋 昭一郎, 佐々木 喜美子
    1968 年 81 巻 958 号 p. 210-218
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    アオミドロの接合過程における細胞の染色性, 電子顕微鏡による細胞表層の微細構造, ならびにこの過程における炭水化物量の変化についてしらべた.
    接合期に入ると, 細胞の2,3,4-triphenyltetrazolium chloride およびosmic acidによる染色性は低下し, このさいの染色性は接合管部位で著しいことが観察された.
    接合期には, 細胞表面の粘液層が次第に消失してゆき, 同時に細胞壁部位の著しい膨潤が起こっていた.接合細胞では熱水可溶性 •エチルアルコール又はアセトン不溶性多糖類の減少が認められた.細胞内の遊離糖量は接合管形成に先立つ時期 (膨潤細胞) に最も多く存在し, 特にarabinose は接合管形成期に最も多量存在していることが観察された.
  • D. MISHRA, G. C. PRADHAN
    1968 年 81 巻 958 号 p. 219-225
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    生長抑制剤CCCとB-Nine, および殺菌剤PMAと8-HQは, 若いトマト植物体に噴霧すると, 蒸散による水分損失を20-35%減少させ, 気孔の幅を10-33%減少させ, 土壌の乾燥による萎れを約1週間おくらせた. これらの薬剤の, 気孔をせまくし植物の萎れをおくらせる効力の順位は, PMA>CCC>B-Nine>8-HQである. 土壌乾燥条件下での植物の生存に関係して気孔の薬剤による閉塞の意義と機作とが論じられた.
  • 和田 喜徳, 黒田 昭太郎
    1968 年 81 巻 958 号 p. 226-231
    発行日: 1968年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    タバコ葉の生育にともなう平面上の部分および,表裏面の光合成能力を赤外線炭酸ガス分析計を用いて測定した.
    葉の先端, 中央, 基部の光合成能力および生長速度は葉の生育のstageによって顕著な差があった.光合成能力は葉のそれぞれの部分の展開が終了する少し前に最大値を示した. そのため, 葉の展開の初期には葉のどの部分の光合成能力が最も高いかを指摘するのが困難であった. しかしながら, 基部の展開が終了してから後はそれぞれの部分の光合成能力には一定の傾向があり, 基部で高く, 先端では低く,中央部分はその中間的な値であった.
    Old leaf の表面の光合成能力は通常低かったが,光照射後まもなく一時的に高くなりすぐに低下してもとの値にもどった.
    裏面では, 光合成一照度曲線における飽和点がageの進行にともなって高照度側に移動した, しかし表面についてはこのような変化がみられなかった.光を葉の上方から照射しても下方から照射しても,飽和照度および単位面積あたりのCO2固定量に差はなかった.
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