アサガオ (紫) の芽ばえを用い, 花芽分化にたいする電離放射線の影響をしらべる一連の研究の一部として, コバルト60 (約1キロCi) よりのガンマー線を用いて実験をおこなった. 照射は長期にわたる緩照射(chronic irradiation) はおこなわず, 短時間の急照射 (acute irradiation) のみとした. 尚, 照射は幼植物全体にたいするもので, その線量は幼芽の位置で測定した.
結果は次のようであった. 1) このアサガオは, 花芽分化に関してとくに放射線感受性が高い. すなわち,1000R以上の線量では勿論, 450~660R の範囲の線量で花芽分化は甚大な影響を受ける. 一方, 同一線量で茎の伸長, 葉芽での葉原基形成はほとんど影響を受けなかった. 2) 低線量 (300R以下)を, 花成誘導に必要な暗期前に照射した場合, 幼芽に存在する各腋芽および頂芽で花芽分化の促進•抑制がみられた. このことは, 前報
2)で報告したごとく, 幼芽に存在するそれぞれの生長点分裂組織の生理的(physiologicalage)に差異があることをはっきりと示す. この差は, 暗期後の照射の場合にもはっきりと示された. 3)花成誘導に必要な暗期の前後 (24時間前から120時間後まで) のいろいろな時間に短かい照射をおこなったところ, その時期により, (a)一旦花芽分化を開始したが再び葉芽へと完全に逆戻りする. (b)一対の苞葉だけが形成されたのち葉芽へ逆戻りする. (c)3-4枚の苞葉に似た形態の葉が形成され, それ以外の花葉はすべて?損する. (d)苞葉が3-4枚のほかは, 正常な花芽といったように, いろいろな奇形花芽が生じた.これらの奇形花芽の発生とガンマー線照射の時期とを合わせ考えることにより, 暗期後での花芽分化の初期段階 (暗期開始後14-16時間から3-4日までの期間) をその放射線感受性の差によって細分することができる. この点についての詳細は, X線についての続報およびX線とガンマー線の局部照射についての続々報で報告する.
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