天然からはすでに, 多数の非タンパク性アミノ酸が報告されており, その研究は,タンパク性アミノ酸を含む普遍的な生体窒素化合物の代謝, 植物における窒素の二次的代謝, あるいはある種の高等植物における窒素の移動形等に関する研究に, 多くの証拠や示唆を与えており, 化学分類学の面でもいくつかの興味ある問題を提起している.
非タンパク性アミノ酸の研究には菌類を対象にしたものもかなりあるが, まだ極めて不十分な状態である.そこでわれわれは, まず手始めに自然状態から採集した真菌類73種の子実体について, 二次元ペーパークロマトグラフィを用い, タンパク性アミノ酸, 非タンパク性アミノ酸, およびいくつかのアミンの分布を調べ, その結果を表に示した. すでに多数報告されている高等植物についての結果と比較して, アミノ酸プールについて特に本質的な差異は認められなかったが, β-アラニン (48種に検出), α-アミノアジピン酸(32種), γ-アミノ酪酸 (66種), シトルリン (17種), オルニチン (11種), ピペゴリン酸 (6種) 等が,かなりひろく菌類にも分布することがわかった. また頻度は少いが, α-アミノ酪酸, システイン酸, 5-ヒドロキシピペコリン酸, ヒドロキシプロリンに相当するニンヒドリン陽性物質も認められた. エタノールァミンもまた極めてひろく存在する.
未同定のニンヒドリン陽性物質については, 検出された数だけを表示したが, そのいくつかのものについて, 現在その単離と化学的な研究を進めつつある.
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