植物学雑誌
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82 巻, 971 号
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  • 沢村 保昌
    1969 年 82 巻 971 号 p. 183-190
    発行日: 1969年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ミゾソバ (短日性一年生草本) の山地型が三重県北部, 藤原山の標高700-900mの高所に産する. 分類 学的にはオオミゾソバ var. stolniferum Makino にあたるが, この変種を認めない分類学者もあるので 藤原山型と名付けて取扱った. この植物に (1) 津市の自然条件下における開花期及びその限界暗期の長さ を求める, (2) 9種類の短日処理を与えて反応を検する, (3) 明期が13,14,15,24時間の日周サイクルにな がく置いて開花を検するなどの実験を施したが, 結果はかなり敏感な短日植物であること 示した. また これを日本の各地産のミゾソバと比較した. ミゾソバは北方産のものほど催花の限界暗期が短く, 短日 処理に敏感に反応し, 南方産はこれに反し, 光周的感受性は緯度の高低に従って変化していることはすでに 報じたが, 351/6°N. に産する藤原山型をこの系列中に置いてみると仙台産ミゾソバ (391/4°N.) に最も近 い. 標高の高い山地は生育期間が短い点で高緯度地と同じであるが, 藤原山型が催花の限界暗期が短く季節 的に早く開花するのは, この生活環境に適応的である. 藤原山型は初夏に一度開花•結実する. これは北海 道•青森など北方産ミゾソバにもみられる. またストロン生をじ閉鎖花をつけ地中で結実する. ストロンの 形成は短日処理により促進された. これらの開花習性も同様に適応的である. ミゾソバでは短い生活期間内 に開花•結実する性質が発達して北方及び高地への分布を可能にしたと考えられる.
  • カルボン酸の影響
    美濃 羊輔
    1969 年 82 巻 971 号 p. 191-196
    発行日: 1969年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    凍結乾燥したアースロバクターの一種によるインドール酢酸 (IAA) 酸化におよぼす種々のカルボン酸 の影響をしらべた. 1) 置換されていない鎖状のモノおよびジカルボン酸の阻害作用は炭素鎖が長くなるに つれて増大し, モノカルボン酸の方がジカルボン酸よりはるかに阻害作用が大きい. α-炭素にアミノ基また は水酸基を導入すると, モノヵルボン酸の阻害作用は低下するが, ジカルボン酸の場合は逆の傾向を示した. アミド誘導体およびケト酸は阻害作用を示さなかった. いくつかの芳香族カルボン酸にも阻害作用のあるこ とが認められた. 2) カルボン酸による阻害効果は, pHの低下につれて増大するので, 電離していない酸が 阻害に関与しているものと思われる. 3) 桂皮酸による阻害度はIAAの濃度により殆んど変化しなかった ことから, 桂皮酸による阻害は基質 (IAA) との競争的なものではない. 4) 桂皮酸による阻害はCoA添 加によって影響されなかった.
  • 広瀬 弘幸, 熊野 茂, 真殿 克麿
    1969 年 82 巻 971 号 p. 197-203
    発行日: 1969年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1. 藍藻綱所属の31種1変種, 紅藻綱所属の14種1変種より得た phycoerythrin の示す吸収スペクト ルを既知のものと比較した.
    2. 藍藻綱16種から得た phycoerythrinと c-phycoerythrin (Type I phycoerythrin とよぶ) で あった.
    3. 藍藻綱の Chroococcus minutus から得た phycoerythrin は紅藻綱のチノリモの B-phycoerythin (Type II phycoerythrin) に似た吸収スペクトルを示した. Oscillatoria princeps var. minor および Lyngbya confervoides からは紅藻綱のオオイシソウにみられるものと同様に 565mμ に極大, 545mμ に 肩をもつ吸収スペクトル(Type III phycoerythrin) が得られた. また Oscillatoria irrigua からは 495mμ, 565mμ に極大, 545mμ に肩をもつ, 2ピーク型のR-phycoerythin (Type IV phycoerthrin) が得られた.
    4. 紅藻綱ウシケノリ科のタニウシケノリ, ウミゾウメン目カワモズク科の2種, チスジノリ科のチスジ ノリからは, 2ピーク型の R-phycoerythrin が得られた. しかし同じ目のベニモズク科のベニモズクおよ びカモガシラノリからは, 3ピーク型の R-phycoerythrin (Type V phycoerythrin) が得られた. また カクレイト目(4種), スギノリ目 (2種) およびイギス目 (2種) からは, 例外なく3ピーク型の R-phycoerythrin が得られた.
    5. 以上のように Type II, III, IV phycoerythrin は, 藍藻綱, 紅藻綱のいずれにも存在が認められる ことから, 両綱の系統上の近親性が推察される. また紅藻綱のウミゾウメン目は phycoerythrin の吸収ス ペクトルからみて2つの群に分けることができる. すなわち2ピークの R-phycoerythrin (Type IV) を もつアクロケチウム科, カワモズク科, およびチスジノリ科の1群と,3ピークの R-phycoerythrin (Type V)ををもつベニモズク科, カギノリ科, およびガラガラ科の1群とである.
  • 米田 芳秋
    1969 年 82 巻 971 号 p. 204-209
    発行日: 1969年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    クレピス•カピラリスの葉片をリンズマイアー•スクーグの寒天基本培地にインドール酢酸およびカイ ネチンを単独もしくは組合わせて添加した培地に, 暗黒中で1カ月培養し, これらのホルモンと器官形成と の関係を調べた. 基本培地では葉片は何らの形態的変化をも示さない. インドール酢酸(0.1-10ppm) は 濃度が高くなるほど発根を促進する. 基本培地に生育した幼植物の葉片に対して, カイネチンは単独で不定 芽形成を誘導するが, カイネチン培地に生育した植物の葉片に対しては, インドール酢酸とカイネチンが共 存するときにのみ, 不定芽形成がみられる. カイネチンの最適濃度は 0.5ppm である. カイネチンは濃度 が高くなるほど発根を阻害する.
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